【連載】全日本大学女子選手権直前対談 最終回 後藤若葉×浦部美月×三谷和華奈

ア式蹴球女子

 最終回はDF後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)、DF浦部美月副将(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)、MF三谷和華奈副将(スポ4=東京・十文字)の3人。今季のア女を引っ張る、チームの重鎮たちだ。4年目を迎え、最後の全日本大学女子選手権(インカレ)を目前に何を思うのか。それぞれの熱い思いを語っていただいた。

※この取材は12月16日に行われたものです。

 

「(浦部は)『全員で』を象徴するような人」(三谷)

対談中笑い合う3人。左から三谷、後藤、浦部

――まずお互いの、ピッチ外の他己紹介をお願いします

浦部 自分は和華奈と1年生の頃から仲が良くて、どこにいても2人だけの空気感があるんです。2人にしか分からないボケとかもあったりして(笑)。アホなことをやってきた記憶しかないからかっこいい言葉では説明できないんですけど、今振り返ると、そういう何気ない時間がすごい自分の中で思い出として残っているので、和華奈の存在はピッチ外でもすごい自分の中では大きかったなというのは今思います。

三谷 でもさ、不仲な時期あったよね(笑)。

浦部 不仲ではないけど(笑)。

三谷 全く喋らなかった時期があったんだよね。

浦部 2年生の時ね(笑)。

後藤 何かがあったってわけじゃないんでしょ?

三谷 そう、その後くらいに「気づいたらなんか喋ってなかったよね?」って。

後藤 あとは、ここにプラスで綺乃(笠原綺乃、スポ4=横須賀シーガルズJOY)と3人でワイワイやっていることもよくあって。本当に「バカだな」ということしかやっていないんですが、そんなことで笑い合えるのも楽しかったし、それがあとちょっとだなと思うと寂しいなと、昨日綺乃の誕生日を祝っている時にふと感じました。和華奈とは小学6年生の時にメニーナ(日テレ・メニーナ)のセレクションで出会って、高校3年間は別々のチームだったけど、またここで一緒にできたというところで。話さずとも分かるだろう、感じてくれているだろう、みたいなところはピッチ内はもちろん、ピッチ外のところで特にあります。今シーズンは(三谷と浦部)2人にいっぱい助けてもらった中で、自分から相談しなくても感じて、何気ない言葉をかけてくれて。そこから相談できたとことも多かったので、本当に今年は2人がいてくれたことが大きかったです。

三谷 ありがとうございます。照れます(笑)。

――それでは後藤選手の紹介をお願いします

浦部 若葉のピッチ外は、最近は甥っ子しか浮かばない(笑)。

三谷 間違いない。

浦部 叔母さん感がすごくて。同い年なのに(笑)。

――Instagramのリール動画でも最近ハマっていることに「甥っ子のためにアンパンマンのグッズを集めること」を挙げていましたね

後藤 今年の4月に兄のところに子どもが生まれまして。今一緒に暮らしているので、毎日癒してもらって。しっかり叔母さんしてます(笑)。 まだ赤ちゃんだからアンパンマンだって好きか分からないのに、勝手に集めています(笑)。

三谷 あとはクレーンゲームのプロじゃない?マジで上手いと思う。

浦部 あとは(洋服の)センスが良い、学年の中でも。

三谷 着こなしとかおしゃれだよね。劣等感感じる。

後藤 なんでやねん(笑)。

三谷 「かっこいいなー」って(笑)。若葉が私のことを紹介してくれた時は「メニーナの時から」って話してくれたのに、(後藤の紹介)は薄くなっちゃうな(笑)。

浦部 自分は和華奈のことは知らなかったけど、若葉は小学校の時のトレセンで一緒だったので。当時はそんなに仲良かったわけでもないけど、小学校の頃から知っていました。ピッチ外だったらこの4年間でディズニーにも一緒に行きましたし、学年会のドライブとか行って結構遊んでる仲ですね。

三谷 でも最初のイメージで言うと、若葉は「大人」みたいな感じだった。

後藤 そう?

三谷 でも1回高校で別れて、また大学で同じチームでやることになって、「あ、若葉ってこういう面もあるよな、同い年だよな」みたいな。

浦部 でもそれは和華奈も一緒だよ。小6の頃のトレセンで男子の方に行っていて、名前は聞いたことあったの。(三谷は)ハリーって言われたじゃん?

三谷 小さい頃(三谷が)ハリー・ポッターに似ていたらしくて(笑)。

浦部 それで名前だけ知ってて。十文字のキャプテンっていうイメージがあったから、同じチームになってから「三谷和華奈ってこんなやつなんだ」ってなった。

三谷 もっとしっかりしてると思ったでしょ?よく言われる(笑)。でもそれが若葉にもあるというか。身近になったからこそより人間味を感じる。それが嬉しかったよね。やっぱり代表歴とかもあるから、最初はそこから入るじゃん。

後藤 そうそう、先入観がね。

三谷 良くないよね、先入観って。…これ対談として大丈夫?(笑)

一同 (笑)

後藤 大丈夫、ここからだから(笑)。

――皆さんは小学生の頃は男子と一緒にプレーしていたのでしょうか

後藤 女子チームにも入っていましたが、基本的には男子とプレーしていました。

――当時の自分を客観視して、男子より上手かったですか

浦部 でも体格とかはでかい方だったから。男子って成長遅いじゃん。

後藤 確かに。まあ、上手かったよね。

浦部・三谷 まあね(笑)。

後藤 でもその時までだよね、互角で一緒にできていたのは。小6とか中1とかそれくらい。

三谷 それこそForza(Forza’02、ア女の練習試合相手となるジュニアユースクラブ)とやったら難しいし。

後藤 自分は小5、小6で地区のトレセンに選ばれて、それが本当に嫌でした。小5、小6の男子って女子を意識し始めて、ちょっと避けるんですよ。

三谷 握手しなくなるよね!

後藤 そうそう。話していると「お前なに話してるんだよ〜」って言われて、その子が話しかけにくくなるみたいな。それが本当に嫌で。月曜日はスフィーダ(世田谷FC)のサッカースクールに行っていたのですが、仲が良い女の子たちと(サッカーが)できて楽しいからそっちに行きたかったんです。でもお母さんにも「せっかく(トレセンに)選ばれたんだから行きなさい」って言われて。毎日帰ってきたら泣くほど、マジで憂鬱でした(笑)。でも6年生の最後にトレセンの大会があって、そこでスタメンで入った時に円陣する時に、普通にみんなが肩組んでくれたんですよ!それがなんか嬉しくて。「やっと認められた」って(笑)。そこで一緒にやっていたメンバーが、高校から大学サッカーに進んで色々なところでみんな頑張っていて、Jリーグクラブに行くことが決まった子たちもいるので、そういうつながりができたのは嬉しいんですけど。本当に嫌でした(笑)。でも自チームの男子とは仲良かったよね。基本みんな多分女子としてそんなに見てない。

――続いて、浦部選手の紹介をお願いします

後藤 美月は基本、誰かにちょっかいかけてる(笑)。自分たちは「またやってる」って感じだけどそれで空気も良くなるし、(声をかけられた)下の子たちも色々と悩んでいる中で、それをやってもらったことでチームから離れなかった子もいると思うし。美月は楽しんでやっているけど、それはやっぱり大事なことだし自分にはできないことなので。でも「だるいだろうな」って思っている時は結構あるよね(笑)。

三谷 自分が「だるいな」って思う時もあるしね。「今絡んでくる?」みたいな(笑)。

一同 (笑)

三谷 昨日ちょうど美月の『4年生の想い』(ア女が行う4年生の部員ブログ)が更新されて読んだんですけど、もう泣きそうになって。あと8人分も持つかなって感じなんですけど(笑)。改めて振り返ると、シーズンを通してやっぱりしんどい時とかもあった中で、美月が後輩とコミュニケーションを取ってめっちゃ明るく振る舞っていて、「正直今そんな明るい気分じゃないんだよ」と思っても、それで救われた人も本当にたくさんいるだろうなって。もう度が過ぎて優しいから、絶対私にはできないと思っています。今「全員で」というのを掲げている中で、その言葉を聞くと美月が私の中で一番思い浮かぶんです。なんかそれを象徴するような人物像だなって。

 

「(スフィーダFC戦は)ゾーンに入ってた」(後藤)

全日本女子選手権(皇后杯)2回戦スフィーダ世田谷FC戦(11月25日、●0-1)でドリブルする後藤

――それでは次にピッチ内での紹介を、まず浦部選手についてお願いします

後藤 (浦部は)体力おばけ。

三谷 間違いない。この前何メートルいったっけ?

浦部 2560かな。

――何の距離でしょうか

後藤 シャトルランみたいな感じの体力を測るテストの数値なんですけど、ア女の平均が2000メートルくらいで。他大学とかと比べても、大学のサッカーのスタイルによって全然違うとは思うのですが、ア女は高い方なんですよ。ただその中でもトップの数字を残していますし、試合を見ていてもあれだけ走れるのは本当にすごいし、助かるなと思っています。

浦部 まあ、それが売りなんで(笑)。

――夏の合宿でもだいぶ走り込みをしたそうですね

浦部 合宿の走りはまた違うキツさがあったよね。山の中で全然整備がされていない、でこぼこの道を走っていたので。でも坂道のダッシュは和華奈に1回も勝てなかった(笑)。10本ぐらい2人でダッシュするメニューがあって、「和華奈も疲れるから最後くらい勝てるだろう」と思っていたんですけど、短いダッシュなので勝てなかったですね。

三谷 勝たせていただきました(笑)。今季はお互いに両サイドをやることが多いんですけど、私が縦に仕掛けるという武器をもっている中で、(浦部が)逆サイドで組み立ててくれていることでチームとしての攻撃手段の幅が増えるんです。体力だけじゃなくて、技術や頭を使ったプレーもできるなと思います。

後藤 あとはロングスローじゃない?

三谷 あれでコーナーの角とれるもんね。今シーズン、チームとしてはスローインはめちゃめちゃ課題だけど。

後藤 美月が投げればどうにかなるよね。女子であそこまで投げられる選手って少ないので。一つの攻撃のパターンにもなるし、流れを変えられるし、自分たちにとってもありがたいです。

三谷 そういえば1、2年生の時に美月に「自分武器がないんだよね…」って相談されて「スローインめっちゃ武器じゃん!」って言ったのはすごく覚えてる。美月は「それだけじゃん」って言っていたけど、今となってはすごい武器だもんね。

――続いて後藤選手についてお願いします

三谷 「圧倒的守備力」って感じ。

浦部 「安心感」とかじゃない?いるのといないのとで全然違う。

三谷 確かに。皇后杯(全日本女子選手権)のスフィーダ戦、あの時キレてたよね?

後藤 うん、キレキレだった。多分ゾーンに入ってた(笑)。

三谷 ア女の他の選手もみんな上手いんですけど、やっぱり一個一個のプレーの質が高いというか。それこそ守備の体の入れ方や、ボールをとめる位置とか、代表レベルだなと思います。選手として尊敬しますね。あとは上手いだけじゃなくて熱い女なんで(笑)。

浦部 それがすごいよね。勝手な印象ですけど、代表とかに行っていると「自分が」ってなると思うんですよ。でも若葉はそういうことが全然なくて。感情も前面に出してくれるからついていきたい、一緒に(チームを)作っていきたいと思える。プレーはもちろんずっと見ていれば分かると思うんですけど、闘志をむき出しにしてア女を引っ張ってくれている姿が、特にこの4年目はすごく見られたと思います。あとは駆け上がりもすごいよね、守備だけじゃなくて。

後藤 最近ちょっと自粛気味(笑)。

浦部 インカレで見せてくれるでしょ(笑)。

――最後に三谷選手についてお願いします

後藤 最初の頃はスピードもあって、十文字には毎年「矢」がいるんですけど。4年間で和華奈にもケガなど色々とあった中で、より洗練されたというか、研ぎ澄まされてきたなと思います。何回も繰り返しああやって仕掛けられるのは、相手にとっても嫌だと思いますし。あとは美月のボールから和華奈が決めるということもあって、2人はここぞという時に頑張ってくれるんです。今年は得点力が自分たちにとって大きな課題だったと思うんですけど、色々な選手が点を取れるということ。フォワードだけじゃなくて、サイドの選手がシュートを打ったりクロスに入っていって点を取ったりできるというのは大きいですね。後ろから見ていても頼もしいですし、いつも和華奈には「なんでもいい!やってこい!」という感じで。「ゴールライン突破しても良いから!」って(笑)。

一同 (笑)

浦部 それが和華奈だよ、それ1本は見せないとね(笑)。

三谷 減ったんじゃない?1年生の時は結構多かったよね(笑)。

浦部 でも若葉の言った通りです。この4年間の中で和華奈も、(ドリブルで)全然抜けない時期があったと思うんですよ。試合を見ていても練習でも、全部相手に引っかかってしまったりすることがあって。でも自主練は自分が納得いくまで欠かさずやっているのも、後輩のたがし(田頭花菜、スポ3=東京・十文字)とかを誘って1対1の練習をしているのも見てきた中で、自分に対してストイックだなというのはすごく感じています。自分もそれを見て刺激を受けてきましたし、この4年間でそれが、縦に仕掛けるだけじゃなく切り返したり、そこからもう一度切り返して深くえぐっていったりと色々な武器につながっているので。インカレでもそういったプレーを沢山見たいと思います。

――今年1番心に残っている試合を教えてください

後藤 関カレ(関東大学女子リーグ)前期の第2節、アウェイの東京国際大戦(4月29日、〇1-0)が心に残っています。関東リーグ(関東女子リーグ)の開幕戦(4月15日、関東女子リーグ第1節、△0-0)で引き分けて、関カレの開幕節(4月22日、△0-0)でも引き分けて。「やっぱり今年点取れないわ」ってなったんです。4年生としてチームを勝たせたい気持ちがあった中でなかなか点を取れなくて、苦しい中で守ってくれているディフェンスラインもいるし、得点をとることがいかに大事かを感じていました。苦しい展開ではあったけど、綺乃(笠原綺乃、スポ4=横須賀シーガルズJOY)が決めてくれて。誰の得点でも嬉しかったですが、4年生である綺乃が得点を取った瞬間は今でも映像として全部思い出せるし、1点の重みはすごく感じた瞬間でもありました。勝ち点3の重みもすごく感じられましたし、自分の中ではすごく印象に残っている試合です。

浦部 その前(笠原のシュートの前)も全部4年生だった、若葉のボールから和華奈のクロスで。

後藤 確かに。あれはマジで「うわー!」ってなったよね。綾乃のシュートの瞬間もスローモーションに見えたし。

三谷 被っちゃって申し訳ないけど、自分も東国(東京国際大)戦です。まだ2節目だったんですけど、本当に「やっと勝てた…」みたいな。やっぱり昨年のFW陣が抜けてしまったのもあって今季は得点力というのはずっと言われていて。そこに対する不安感もあったし、勢いに乗っていきたいという気持ちがありながらも、最初は良いイメージが生まれなかったんです。「今季はこういう試合が多くなるんだろうな」と痛感すると同時に、「勝利ってこんなに嬉しいものなんだ」、「だからサッカーが辞められないんだな」ということを感じられた試合でした。

後藤 2節で泣くとは思わなかったよね(笑)。本当に安心しちゃって。

三谷 自分も泣いたわ!

浦部 自分は足つってたな…(笑)。

三谷 ウイングをやったのが初めてだったもんね。

「向き合い続けて良かった」(浦部)

今シーズンを振り返る浦部

浦部 自分は後期の東国戦(7月29日、関カレ後期第2節東京国際大戦、〇3-2)かな。皇后杯の吉備国際大戦(11月18日、2回戦吉備国際大学Charme岡山高梁戦、〇2-1)もそうですが、自分たちは1点決められたら全然取り返せずに、そのまま負けるということばかりだったんです。帝京平成大戦(6月24日、関カレ後期第11節、●0-4)とか。でもあそこで逆転勝ちできる力がついたことは自分たちの自信にもなったし、得点を決めた由真(﨑岡由真、スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)や育(築地育、スポ3=静岡・常葉大橘)たち後輩に助けられたという意味でも、すごく印象に残っています。

三谷 うちらって本当に、全員が一緒に集中力切れない?

浦部 帝京平成大戦はやばかった(笑)。

三谷 マジで後輩に助けられてるよね。

――同じようにやられてしまった試合だと、皇后杯予選3回戦の十文字高戦(9月9日、●0-3)もありましたね

浦部 忘れてた(笑)。

三谷 うわ…、母校(笑)。あれは得点の匂いがしなかったな。

浦部 若葉はいなかったし、和華奈も足を負傷して途中交代したよね。

三谷 あれはめっちゃ痛かった、今でもしびれてるわ。

浦部 本当に?(笑)

――チームとして一番うまくいっていなかったのはその時期ですか

三谷 未熟感がありましたね。チームとして「これが私たちのサッカー」というのが確立していないな、というのはあって。その中での試合だったので、試合をやる中で収穫は色々あったんですけど、それが勝ちにつながるということがあまりなかったです。あの試合はチームとしての自信みたいなものも危うく喪失しかけたなと思います。

浦部 中盤の選手とかはめっちゃ悩んでたよね、4年生は綺乃しかいないし。

三谷 そうだね。ア女の中盤ってつながりがないと厳しいですし、あの時期は頭が良い中盤の選手たちにとっても難しかったと思います。

――良くなかった時期を挙げてもどうかとは思いますが、関カレ前期の終盤3節、勝利が無かったですが、どんな雰囲気でしたか

後藤 東洋のアウェイ(6月17日、関カレ前期第9節、●0-1)は…。和華奈のヘディングか(笑)。

三谷 あれかー。あの時、史さん(後藤史監督、平21教卒=宮城・常盤木学園)が「4年生は今のままで大丈夫?」みたいな。

浦部 積み上げてきたものが崩れるというわけじゃないけど、「間違っていたんじゃない?」「それでいいの?」みたいなことを言われて。メンタルにきていたよね。

三谷 結果だけを見れば勝てていなかったから、自分たちが重ねてきたことや方向性は間違っていたんじゃないかとか、これって甘さなんじゃないかとか、どんどんネガティブな方向に紐づけていってしまって。東洋大戦は特にそういう記憶があります。そこからの帝京平成大戦で0-4ってなかなかだよね。

浦部 しかも最後の大東文化大戦(7月1日、関カレ後期第11節、△2-2)で、2点とってから追いつかれるっていう。

後藤 弱さを突き付けられた感じだった。

三谷 これでもかっていうくらいね。でもそこから夏合宿に行って。そういう意味では見つめ直す期間になったのかな。

後藤 すいません、自分いなかったです…(笑)。

三谷 (笑)。若葉もメンタルがきていたよね。

浦部 自分も夏合宿の時が一番ピークだったかも。

三谷 成功体験が少なかったのがあると思います。何を頼りに踏ん張っていたんだろうという感じで(笑)。

――シーズン中盤でまだ良かったですね

三谷 確かに。

後藤 あれが早めにきたのは良かったかもしれない。

浦部 変にできちゃったりしているとね。

三谷 最初に勝ちが続いていると、それはそれで自信になっていくとは思うけど、あそこで1回つまずいたからこその今なので。

後藤 あとはシーズンが始まってピッチ外のところで結構ミスがありました。部則も4年生で話し合って作った中で、「これについてはどうするの」みたいな話し合いが毎日練習後に続いていたりして。自主練したいしケアもしたいし、リハビリもしたいのに後回しにして、それを話さなきゃいけないのがすごいストレスでした。でも自分たち4年生はピッチ外のところもちゃんとやろう、ということを掲げてシーズン初めからやってきたので、「サッカーに集中したいのになんでこんなことを話さなきゃいけないんだろう」とその時はつらかったけど、その時に頑張ったからこそ今サッカーに集中できているのかなと思います。

浦部 向き合い続けて良かったよね。

後藤 本当に嫌だったけどね。「また今日もか…」みたいな(笑)。

――ちなみにピッチ外でどんなミスがあったのですか

後藤 伝達ミスとか、本当に細々したものです。でも自分たちは『誇闘』というスローガンを掲げていて、誇りの部分はピッチ内のことだけじゃやないと思うし、ここに来るときはもちろんどこに行くときにも早稲田の、ア式蹴球部の一員であるということを全員に意識してほしかったので。ちょっとのゆるみが大きくなるから許してはいけないというところで徹底していましたが、自分たちが細かすぎる部分も正直あったとは思うんですよ。でも掲げたからにはそれをやり通さなきゃいけないと思うし、自分たちが1年生の時は確かに分からなかったけれど、4年生の方たちが教えてくれたから今があるので。早稲田大学は他の大学とは違うと思うし、そういうところは伝えていかなきゃいけないなと思っていました。ア女は学年によっていろいろな色がありますが、自分たちはしっかりしている人が多い学年だったので、「自分たちの普通は普通じゃない」で終わらせちゃいけない、ということに一番苦しみました。

浦部 価値観とか捉え方とか、変えられないものに対してどうアプローチしたら良いのかということに頭を抱えていたというか。

後藤 「普通さ、」とか言った後に「ああダメだった」みたいな(笑)。

三谷 「普通」の強要はだめだからね(笑)。

――そういったものをチームメイトや後輩に浸透させていくのが難しかったと

浦部 押し付けたくもなかったんですよ。だから言われた人がちゃんと考えて、取捨選択できるようにしてほしいという思いがあって。

後藤 そういうことを色々な立場で考えていくと、話がまとまらなくて1日じゃ終わらないみたいな。自分たちは話し合いが下手くそだったよね(笑)。

浦部 そうそう、シーズン始まる前からそうだった。

三谷 2分ぐらい沈黙、みたいな。ファシリテーターがいないから、「ファシリ作ろう」って言ってたよね(笑)。懐かしい。

 

「(得点力は)自分の中でア女での最後の仕上げ」(三谷)

今シーズンを振り返る三谷

――ここからはお三方それぞれにお聞きしていきます。まず後藤選手、先日の対談で大山選手(大山愛笑、スポ1=日テレ・東京ヴェルディメニーナ)が「高校の時とは違う」と話されていましたが、ご自身の中でどのようにリーダー像が変化してきましたか

後藤 どう違うんだろう、聞いたことがないから分からないな(笑)。

――声を出すというよりプレーで引っ張るタイプだったというのは言っていましたね

後藤 メニーナにはチームのサッカーというのがあって、やらされているわけではないんですけど、それをやっていれば良いし、それをやらないと良い選手じゃない。当たり前にそれがあったから「もっとこうしていこうよ!」みたいに言うことも、あまりなかったです。周りにもっと上手い選手がいて、自分は技術よりも気持ちのタイプだとは思っていたんですが、確かに当時あまりそういう部分を出していなかったとは思います。それこそア女に来て1年目はそういう自分がいたから、「どんどん自分を出して主体性をもって」というア女の雰囲気が自分の中では難しくて。先輩方にも「若葉はどんなことを考えてやってるの」「若葉のやりたいようにやっていいよ」とは言われていたけど、逆に「それって何だろう」って。合わせてやっていただけだから、考えていないわけではないんですけど、ちゃんと言語化できていなかったんですよね。でも1年目から試合に出させてもらってそういうことを求められる中で、自分も伝えていかなきゃいけないというのは、少しずつ感じるようになっていきました。それから2年生の終わりにケガをして、皇后杯の直前に復帰したんです。両足を捻挫していて、痛いけどやらなきゃいけない、でも無理したら今後にひびく、というような葛藤の中で、手を抜くわけでもないけど怖いからどこかやりきれないで練習をやっている自分がいて。その時自分は「100パーセントでできないのが申し訳ない」と思ってモヤモヤして、一度練習を抜けたんです。その時、4年生のちなさん(並木千夏、令4スポ卒=現オルカ鴨川FC)が「どうしたの」って声をかけてくれて。その他の選手たちも「セーブしてくれているのも分かるし、若葉はそれでいいよ」と言ってくれたんですが、自分はそんな中途半端じゃ嫌だなと。ケガをしたらしたで仕方ないし、100パーセントでやろうという気持ちでやるようになったんです。周りからできることが多いと言ってもらっても、それに甘えていたら自分自身の向上もないと思うし、周りにも良い影響がないと思うので。自分がやらなきゃいけないことは大きいな、と思うようになりました。だからこそ毎日の練習でも、口で伝えるのはあまり得意じゃないので、プレーで見せる、やるべきことをしっかりやるということは意識してやっています。その上で今年、4年生で主将という立場もあって締めるところは締めなきゃいけないので、声も出すようになったから愛笑にもそう見えるのかなと思います。(主将として)何が正解か、今も分かっていないんですけど。あとはあまり選手と近くなりすぎてしまうと、主将として言わなければいけないことが言いにくくなる自分がいたので、そこの距離感はちょっと工夫はしてるというか、意識してはいますね。私生活では1年生とも全然しゃべるし、楽しむ時は楽しむんですけど、責任感がやっぱり大きいから(高校時代との)違いはあるのかなと思います。

――続いて浦部選手に質問です。今年副将を務める中で、後藤選手や三谷選手というキャラクターの強い2人との活動だったと思います。ご自身の中でチームの役割はどんなことだとお考えですか

浦部 今年の副将を決めるとなった時に、もともと自分は立候補するかどうか迷っていたんです。というのも、昨年卒業した真央さん(吉野真央、令5スポ卒=現サンフレッチェ広島レジーナ)が、主将・副将の立場ではない中でたくさん意見を発信していて。真央さんのように幹部ではないけど意見を言える人になりたい、とも思っていたんですが、やっぱりア女やア女のみんなに対する思いも強かったので、副将に立候補しました。でも始まってみて、歩実(夏目歩実、スポ4=宮城・聖和学園)も含めてみんな選抜にも選ばれていてチームにいない中で、2、3月は「自分がやんなきゃ」みたいなことでいっぱいいっぱいで。練習試合のプレーや練習でもうまくいかなくて、「どうしよう」という感じになってしまったんです。でも自分は技術に長けているわけでもなくて、どちらかと言えば泥臭いタイプなので、プレーであれば献身的なプレーでチームに見せようと思ってきたし、ピッチ外のところでは「ダル絡み」だと思われるかもしれないけれど、下級生とも仲良くなるきっかけを作ってチームの雰囲気を良くできるようにしてきたつもりです。やっぱり下の学年になればなるほど、試合に出られなかったりチームに関われなかったりすると疎外感をみたいなものを感じちゃうと思うんですよね。でもそういう選手たちにも、一緒に戦っているんだよ、ということは伝えたくて。2人にはそれぞれ良いところがあるし、自分は自分にできることをしよう、と苦しかった時期を乗り越えて思えるようになったので、プレーで引っ張ることは難しいかもしれないけど、そういうアプローチについては意識していました。

――続いて三谷選手に質問です。昨年に比べても4年生の攻撃陣が少なかった中で、難しかったことはありますか

三谷 やっぱり最高学年の攻撃陣として、得点を取れる選手でありたいと思っていました。今シーズンを振り返っても3得点(※注:今季4得点)しかしていなくて、私自身の中で得点については納得がいけていないです。でも切り込み隊長として前半から攻撃に勢いをもたらしたり、ディフェンスラインが頑張って守備をしているしんどい時に、少しでも前にボールを運んでゴールに向かうプレーでチームを鼓舞したりとか。1年生の時から色々と経験させてもらって、私の中でそれがア女で自分がやらなきゃいけないことだということが確立されてきたと思います。そういう意味では、結果だけじゃなくて引っ張っていくプレーというのは、自分の自信にもつながっています。今年の4年生には守備陣がすごく多いですが、それこそ美南(大森美南、スポ4=東京・八王子学園八王子)や綺乃(笠原)も前線でプレーする選手として一緒にやってきた中で、2人とも違う良さをもっています。私の中での課題感はあるんですけど、ア女を引っ張っていく4年生として各々が良さを発揮して、チームを作り上げていくというのが今年の色だと思っているので。難しいところ、と言われると答えになっていないかもしれませんが、この1年で攻撃が課題と言われた中で、もがきながら色々やったことは私自身良い経験になったなと感じます。得点のところはインカレを前にして、今まさに自分自身の中で課題感としてもっているところです。ウイングでもゴールに向かっていく選手はもっと怖さが増すと思うので、ゴール前まで侵入してシュートを打つというところは、自分の中でア女での最後の仕上げの部分だと思って取り組んでいます。

――後藤選手は今季、選抜や代表活動、ケガなどでチームを離れることが多かったと思います。チームに合流するときに感じたことはありましたか

後藤 夏合宿を経てチームが一段とまとまったなというのはすごく感じましたね。シーズン初めの選抜は他にも抜けている選手がいたので、あまり変化は無かったですが、夏の合宿とでは1番きつい2日間にいられなかったので、どんなことをやっていたかも分からなかったんです。参加できなかった申し訳なさと、みんなで乗り越えたという雰囲気に入っていきづらいというのはなんとなく感じていました。ただそこからケガ明けで練習に入ってからは、チームとしてまとまったなというか。皇后杯予選ではうまくいかないこともあったけど、しっかりと本戦の出場権を獲得できたのはチームの頑張りの成果だったと思うので。あとは代表活動中も関カレの試合はずっとYouTubeで見ていたんですけど、しっかり勝ち切っていましたし、本当に頼もしいと感じていましたね。あとは下の子たちが、最初はなかなか試合になじめない感もあったんですけど、シーズン後半にかけて躍動して得点をとったり、少しずつ責任感も芽生えてきたりしたのかなとも思います。1年生の活躍はチームにとっても良い刺激を与えてくれますし、一緒に試合に入って戦うと「成長したな」というか。親心みたいになっちゃうんですけど、やっぱり下の子が成長していくのを見るのは嬉しかったですね。でも逆に言えば、アジア競技大会で一緒に戦う選手たちや海外の選手たちのレベルの高さを感じた中でチームに帰ってきて、自分がチームに伝えなきゃいけない、還元しなきゃいけないと感じる中で、帰ってきてすぐにケガしてしまったので。今だから笑えるんですけど、関カレ最終節の大東文化大戦が終わってから史さんに「もちろん美月と和華奈と朋香は、若葉の代わりになってチームを引っ張ってくれている。でもこのチームの主将は若葉だろ」と。「若葉自身もやらなきゃいけないことがあるし、和華奈と美月も代わってあげるんじゃなくて若葉を支えることも大事」ということも言われて、今になればすごくひびく言葉なんですけど、その時の自分にとっては右から左で。本当に腐っていたんですよ(笑)。

三谷 同じ空間にいるのに、どっか行ってたよね。

後藤 その試合も引き分けに終わってしまったけど、「あー終わっちゃったんだ」みたいな。やばいとは思っているけど、どうしていいのか分からない。言われているけど、それにも何にも感じられなくてやばい、みたいな。あの時は3人にもすごく迷惑をかけちゃったんですけど。でも1日オフを挟んで家族と会って相談して。ピッチの中でできることは少ないかもしれないけど、リハビリを早く来て早く終わらせて、チームの練習の時間は練習を見て一つでも一人にでもアドバイスをする。自分にできることをやっていこう、と思い始めてから少しずつ気持ちが戻ってきましたね。チームを離れる期間が長かったから、チームと一緒に戦えていないというか。やりたいし、戦いたいとはどっかで思っていたはずなのに、どこか他人事になってしまっていた時はしんどかったですし、申し訳なかったというふうには思っていますね。

――続いて浦部選手に質問です。先日の『4年生の想い』で「前後左右いろんな角度に予防線を張って、完璧を求めた。…でもそんな完璧は、すぐにメッキが剥がれて自分たちの弱さを露呈させた」という文がありました。真意をお聞きしてもよいですか

浦部 ア女にいたら誰でも、試合に出られない子も出てくる中で、メンタルにくる時とか挫折とかがあると思うんですよ。最初はそういうことが起きないようにというスタンスで後輩たちにもアプローチしていたんですが、誰にだって落ち込むときはあるよなって。むしろその時に何ができるかが大事なんじゃないのかなと思ったんです。あとはさっきも言ったように、細々としたミスが続いていて、そういうことが起きないように色々なところにアンテナを張って事前に準備して、それこそ部則も突き詰めて作ったはずだったのにミスが何回も起こって。「全然足りていなかったんだ」というか、突き詰めた「つもり」だったいうところに対して弱さが出たなと思ったというのが真意ですね。

――部則はどういった方向で作ったのですか

後藤 自分たちが一番大事にしていたのは、選手たちがそれぞれ育ってきた環境が違う中で、それをある程度統一していくことでした。例えばグラウンドや試合会場に来るときの服装ですね。所属していたクラブによっては移動がジャージというのが普通だった人もいると思うんですけど、やっぱり公共交通機関を使う時にはちゃんとした格好をしよう、とか。そういうことを部則には書いたはものの、私服の定義が違ったりするというのは盲点でした。色々な価値観があって、その突き詰めは難しかったですね。

――始まってみたら意外と、みたいな

浦部 自分たちからしたら作った時は「もう不備は無いよね?」みたいな感じで完璧に用意したはずだったのに、それこそ一番最初のアウェイの試合や練習の前とかでも、連絡が足りていなかったりして。さっきも言ったように何度もミーティングをかけてという感じでした。

――ここ2年は右サイドを主戦場にされていますが、得点という観点で言うと左の方がシュートを打ちやすかったりするのかなとも思っていて。そこに関してはなにか感じることはありますか

三谷 左だと右足でカットインできるじゃないですか。そこからシュート、というイメージは、2年生の時に自分の中でブームっぽかったんですよね(笑)。「打ったら入るな」みたいな。

――その後は右サイドに戻って、ウイングバックをやったりすることもあったと思います

三谷 ビルドアップに参加するのはあまり自信がないんですけど、攻撃重視のサイドであればどこでもあまり抵抗はないですね。ウイングバックは下がって守備をすることもありますが、それがポジションとしての役割だと思っているので、むしろそれを求められているのであればしっかりやらなきゃいけないと思います。左右差に関しては、もともと高校の時から私は右しかできなくて。右・左どっちがいいかを聞かれて「右です」としか答えられないのが、些細なことですけど私の中では嫌だったんです。ありがたいことに大学に入ってから左をやらせてもらうことが多くて、最初は抵抗があったんですけど、2年生の時に成功体験を重ねて良いイメージがもてたので、そういう意味では左サイドでもできるという自信になったのかなとは思います。

――三谷選手は昨年スウェーデンリーグにも参加されていましたが、価値観が変わったりしましたか

三谷 日本人って人を思いやる気持ちがすごくあるな、と思って。それで逆に、自分を責めすぎて自己犠牲になってしまったり、もっと自分勝手でも良いところを「でもあの人が辛いだろうな」と想像して思い切って行動できなかったりすることもあると思うんです。その点海外の人は「その人はその人」と良い意味でスパッとしている感じはありましたね。言語の壁という意味での苦しさはあったんですけど、良い意味でほっておいてくれる居心地の良さみたいなものは、私的には「こういうところもあるんだな」「でも日本人のそういうところも素敵だな」というのは、肌で感じましたね。

 

「(ア女は一人ひとりも違うし、学年でも全然違う)」(浦部)

関カレ後期第5節、国際武道大戦でドリブルする浦部。見事なクロスで3点目をアシストした

――今季ここまでを振り返ってください

三谷 一言じゃ表せないよね…。でも皇后杯の吉備国際大戦の時の、早スポさんの記事の最後の「等身大で…」みたいな(大胆不敵ではなく等身大で、ロマン主義でなく現実的)。あの言葉が象徴しているのかなと思います。特別タレントぞろいなわけでもなく、華があるわけでもなく、でも一人ひとりが確実に自分のできることを考えて。その中で大敗したこともあったし、何度も失敗して自分のことを嫌いになることもあったけど、それでも等身大で人間味のあふれるチームだと思いますし、誰しも失敗はするけど踏ん張って成長していこうとするというのは、今年のチームの良さだなと思います。やっぱりそういうチームの中でサッカーをするのってめちゃくちゃ楽しいなって思うので。

浦部 色々な試合があったからね…。でも、その一戦一戦の全てが今の自分たちにつながっているとすごく感じます。さっきも言った通り、例えば吉備国際大戦でもちょっと前のア女だったら前半のうちに点を取り返せなかっただろうし、関カレ、関東リーグ、皇后杯とずっと全員で闘ってきた中で勝ち取った試合だったと思います。スフィーダ戦は負けてしまったけど、すべての試合に意味があったというか、今につながっているのかなと思います。

後藤 怒涛だったからこそなのかもしれないけど、自分自身は夏からの空白感がすごくあって。でもこの時期になって、やっとチームが出来上がってきたな、と日々の練習の中で感じます。インカレの前だからもちろんみんな気持ちも入って良い練習になるんですけど、ただそれだけではなく、やっぱり積み上げてきたものがあるんだなと。まだまだ修正することはあるんですが、今インカレに向けて楽しみな気持ちがもてているのは良いことだなと思っています。関カレに出られなかった選手たちも関東リーグで成長してくれたと思うし、関東リーグも選手が少ない中で苦しい試合も本当にいっぱいあったと思います。それこそ前期のVONDS戦(5月20日、関東リーグ前期第4節VONDS市原FCレディース戦、〇1-0)とか、たった1本のシュートを決めて全員で守り切る、みたいな経験をしてきているからこそ、今の強さはあるんだろうなと。自分たち4年生はもちろんやるべきことをやるんですけど、自分たちじゃでなかったことも本当にあったと思うし。皇后杯やインカレはどうしてもメンバーが削られて遠征に行ける人行けない人が出てきてしまうけど、そこでいかに全員で積み上げてきたものを出せるか、全員で闘っているんだというところを示せるかが大事になると思います。皇后杯は目標としてたところまで行けなくて本当に悔しいけど、そこをプラスに捉えられれば、この2、3週間チームで積み上げたものをインカレにぶつけられる。皇后杯でスフィーダに負けたあの試合よりも、確実に強くなれていると思うから、今は楽しみという気持ちが大きいです。

――2年前のインカレ優勝の時のチームを思い出して、今チームに必要なものを敢えて挙げるとすると何になるでしょうか

三谷 求め合う厳しさ。それこそ美月が「最初は完璧を求め続けて」という話をしていたと思うのですが、誰一人あぶれないよう、にということが一時期甘えにつながってしまっていたというか。日本一を目指しているのに、厳しく要求するのではなく優しさでカバーしてしまって、4年生同士でも求め合うことができていない時期があったんです。それが今年の4年生の良さでもあるんですけど、やっぱりまだまだ「求める質」というところはもっと上げなきゃいけないなと思います。そういうところは、2年前のキャプテンだったのんさん(加藤希、令4スポ卒=アンジュヴィオレ広島)は絶対に曲げなかったので。下級生は色々思っていたかもしれないんですけど、あの厳しく求め続けるスタンスには最高学年になってから偉大さを感じます。かといって急に厳しく言うのは違うと思うし、私たちにできる伝え方はあると思うので、そこの質だけはもっともっとチーム全体が上げていけるんじゃないかなと思います。

浦部 練習中の声の質もそうだし、内容自体も2年前とはギャップがあるなとは感じますね。

――加藤さんは怖かったですか

三谷 1個下の子たちは当時1年生だったので、「めっちゃ怖かった」と言ってました(笑)。のんさんたちがこの記事を見ていたらあれだけど(笑)。その印象があるということは、それだけ求めていたんだろうなと思いますね。のんさんに言われたもんね、「言い合えよ」みたいな。

浦部 言われた言われた、「うわべだけなんじゃないの」って。

三谷 今思えば見透かされていたのかなって思うよね(笑)。

浦部 でも自分が1年生の時もプレーが終わった後に当時の4年生に、「今どういう意図でやってた?」みたいなことを言われていました。全部考えてプレーできていたわけじゃないから、答えるのに超困った思い出があります(笑)。

三谷 こわ!「考えていなかったです」って言うのもなんかね。

浦部 2、3年前については思います。でもそういうところを全く妥協していなかったなと。

後藤 そういうところが自分たちの甘さや弱さにつながっていたとは思うけど、「チャレンジを怖がってほしくない」というのはすごくあって。チャレンジしたことに関しては、練習だからこそできることだしやらないと上手くならないから。でも、そこに対してかける言葉ってすごい難しいんです。例えばゴール前の練習にでシュートのかたちまでいかなくて、自分たちも一緒にプレーしている中でどんな言葉をかけられるか。(ミスをした選手も)やっていないわけじゃないから「やれよ」とは言えないし、今もまだ着地はしていないです。でもそういうチャレンジを認める雰囲気を最初から大切にしてきたからこそ、今下の子たちも自分たちに意見を言ってくれるんで。良い面でもあって、甘さでもあるんだと思います。そういう意味では、自分たちが最初に求めていたチームのかたちはできてきているのかな。でも優勝した時のチームの厳しさにはまだ足りていないのかなとも感じます。

浦部 どっちができていれば良い、というわけでもないしね。

三谷 伝え方の質って本当に難しいよね。

――代によっても正解が違うと

三谷 ア女の面白いのはそこだよね、他大学もそうだとは思うけど。

浦部 一人ひとりも違うし、学年でも全然違うから。

――インカレの注目選手・スタッフを教えてください

後藤 自分が挙げたいのは愛笑(大山)です。愛笑は今年入部してきて最初はケガで長く離脱していた中で、「自分(後藤主将)と一緒にサッカーをしたい」というのを理由の一つに早稲田を選んでくれて。一緒にプレーできる試合も、もう最大であと4試合しかないんですが、そんなふうに思って来てくれているというのは自分にとってもすごく嬉しいし、最後の4試合は絶対にやり切りたい。それに、自分が1年生の時にメニーナ感が抜けなかったように、愛笑も今まだメニーナの雰囲気があると思うんです。愛笑が残りの3年間を過ごしていくことを考えた時に、今よりももっとチームのために、ア女のためにとなっていってほしいと思っていて。それをピッチで伝えられるのもインカレの最後の4試合しかないので、愛笑だけじゃなく後輩みんなに対して、自分たちがもっているア女に対する熱さみたいなところは伝えていきたいです。愛笑自身も、大きいケガと苦しいリハビリを乗り越えて今があるといます。インカレの舞台でも、大学サッカーの選手の中ではずば抜けているプレーを見せてほしいですし、自分自身も一緒にプレーできる最後の機会を楽しみたいです。

三谷・浦部 …決まってる?

一同 (笑)

三谷 私はと由真(﨑岡)とりり(千葉梨々花、スポ1=東京・十文字)。やっぱり今シーズン、去年の前線の選手がごっそり抜けて、さっき言ったように得点力に課題を感じていた中で1年生ながら前線を担ってくれて。1年生からスタメンで得点を求められるってすごいプレッシャーだと思うし、私の中で申し訳なさも少しあるんです。その中で由真とりり自身がたくさんトライして、何度もうまくいかないことはあったと思うんですけど、今紅白戦やトレーニングマッチで得点する機会も増えていて、その姿を見て学年とか年齢は関係なく尊敬していて。やり続けて結果を出すメンタルの強さとか、図太さというところはすごいなと心の底から思います。そういう意味では、この記事を読んで自信にしてほしいし、背負いすぎずに自分のできることを思い切りやってくれれば、役割は十分に果たしてくれていると思っているので。彼女たちの1年間の成長に、注目してほしいなと思います。

浦部 由真を含め3人いたんですけど、由真には言いたいことを言ってくれたから…。育(築地)となーさ(生田七彩、スポ2=岡山・作陽)で。育は個人的にもピッチ内外で仲が良くて話す機会が多くて、ア女の10番だし、注目選手中の注目選手じゃないですか。敢えて挙げる必要もないかなとも思ったんですけど、育が3年生になって本当に責任感が生まれていて。近くで見ていて、本当に去年や一昨年から変わったなと思うんです。特に今年の夏、育がチームに対して本当に苦しんでいて、それでも逃げずに向き合い続けたのも見てきたんで。あとは去年、育は最後のPKを外してしまった選手でもあって責任を感じているとも思うし、より一層インカレにかける思いは強いんじゃないかなと思っています。今年1年間で強くなった育をみんなに見てほしいので、挙げさせてもらいました。あと、なーさはみんなが挙げたいと思う。3月の練習試合で前十字(じん帯)をケガして、競技を続けること自体迷っていたのも知っていて。リハビリもうまくいかない、体も言うことを聞かないという時期もあって辛かったと思うんですけど、そんな素振りは表に全然見せないで自分と向き合い続けていたのも知っています。それでも「4年生ともう一回ピッチに立ちたい」と言ってくれていたので。なーさのア女に対する姿勢はみんなが知っていますし、ぜひ注目してほしいです。

 

「最後の船が鳴った時に全員が後悔しないように」(後藤)

インカレへの意気込みを語る後藤

――ご自身の注目プレーを教えてください

三谷 注目してほしいプレーは4年間磨き上げてきた突破と、チームに勢いをもたらす推進力です。やっぱりこの4年間、ア女のサイドに魂を捧げたと言っても過言じゃないので(笑)。ボールのもち方とか仕掛ける間合いについては、本当にそれくらいこだわってきたところですし、関カレでも本当に嬉しいことに注意人物としてマークされることはあったと思うんですが、その中でも一個二個とびぬけたプレーというのは、今の私に求められていることだと思います。インカレが最後と言わずに自分自身の向上のためにも、そこはトライし続けたいなと思います。

浦部 注目してほしいプレーはクロスと運動量です。クロスに関しては1年生の頃から。アホみたいに練習してきて(笑)。

三谷 アホみたいに練習してたし、ずっとあまり良いボールが上がんなかったよね(笑)。

浦部 和華奈や綺乃(笠原)にはたくさん中に入ってもらいました(笑)。それで実際今シーズン、得点にもつながるクロスを上げられて自信にもなっているので、そこはインカレでも発揮していきたいと思っています。あとはもう走ってなんぼの選手なので、後半のラストでもオーバーラップをガンガン仕掛けて、守備でも走って、ア女を勝利に導けたらなと思います。

後藤 これというプレーは無いですが、試合全体を通して、チームを後ろから支えて安定させるプレーがしたいです。あとは2年前に優勝した時は無失点優勝で、やっぱり失点しなければ負けないので。トーナメントなので何があるかは分からないけれど、失点しなければ負けないというところは、守備の人間としてこだわっていきたいと思います。今季得点力も課題だったけど失点も多くしていて、チャレンジしているからこそ生まれる部分ではあると思うけど、ゴール前の守備のところは自分の強みでもあるので、最後まで泥臭く粘り強く、どんなかたちであれゴールを割らせないということにはこだわっていきたいです。

――最後に大会に向けての意気込みをお願いします

三谷 大学生活最後の大会になりますし、それも副将としてチームを背負って戦えるというのは誰もができる事ではないので、すごく光栄なことだと思います。ア女のみんながいて、OB・OGの方々がいて成り立っているので、そこに対する感謝は絶対に忘れずに。あとは家族にこの4年間本当にお世話になって、思い出すだけで泣きそうになるんですけど(笑)。それくらい感謝しているので、その気持ちはピッチで、プレーで存分に表現したいと思います。絶対日本一、獲ります!

浦部 日本一はずっと目指してきましたし、2年前ア女が日本一になったとき自分は一分も試合に出られなくて見ているだけだったので。2年前に経験できなかった、ピッチで日本一を獲る瞬間を手にしたいとすごく思います。ア女のみんなのことが大好きですし、もう限られた時間でしかア女でサッカーできないので、日本一を獲るのはもちろんなんですけど、一分一秒一瞬をかみしめてプレーしたいと思います。

後藤 今シーズン目標を考えるにあたって、ア女は日本一を毎年掲げてやっているけどそう簡単じゃないと思っていたし、自分たち4年生にはそれを掲げるだけの責任があると思っていました。皇后杯ベスト8も目標として掲げた中で、それを達成できなかったということには、自分たちが感じなくてはいけない責任があったと思います。苦しい厳しい道のりになるということは分かっていたけど、目指したかったし、自分たちなら目指せると思って掲げた目標だったので。でも全然たどり着かなかったというのが自分たちの現状で。受け入れるしかない、強くなるための過程にするしかないと思って、この2、3週間やってきたので、もう一つ掲げた「日本一」は絶対につかみ取りたいと思っています。そしてスローガンとして掲げた『誇闘』。4年間で色々なスローガンを掲げてやってきたけど、「誇り」って目に見えるものじゃなくて、人それぞれによって違うものだと思う。でも自分たちが伝え続けてきたことで、絶対に一人ひとりがそれぞれの「誇り」をもってくれていると思うし、特に4年生はそこにかける思いが強いと思います。どんなかたちであれ、絶対に日本一はつかみとりたいけど、最後の笛が鳴った時に全員が後悔しないようにやり切りたい。そのために自分も自分のできる事を精一杯、120パーセントの力を試合で出し切りたいし、本当に後悔したくないので。自分たちが掲げた「誇りをもって闘う」ということを最後まで体現したい。その先で、絶対にこのチームで日本一を見たいと思います。

三谷 なんか、若葉がキャプテンで良かったって思う。

浦部 うん。

 

――ありがとうございました! 

 

(取材 大幡拓登、星野有哉)

 

インカレに向けての意気込みを書いていただいきました!

 

◆後藤若葉(ごとう・わかば)

2001(平13)年6月4日生まれ。162センチ。日テレ・メニーナ出身。スポーツ科学部4年。守備の要であり、主将としてア女を引っ張るチームの精神的支柱。

 

◆浦部美月(うらべ・みづき)

2001(平13)年6月24日生まれ。159センチ。スフィーダ・世田谷FCユース出身。スポーツ科学部4年。圧倒的な走力と、持ち前の明るさでチームを引っ張る副将。

 

◆三谷和華奈(みたに・わかな)

2001(平13)年10月2日生まれ。159センチ。十文字高出身。スポーツ科学部4年。副将を務め、攻撃の戦術となるチーム1の韋駄天アタッカー。