【連載】全日本大学女子選手権直前対談 第3回 菊池朋香×黒澤舞水×大庭愛叶

ア式蹴球女子

 第3回は菊池朋香主務(政経4=東京・早実)、黒澤舞水トレーナー(スポ4=埼玉・伊奈学園総合)、大庭愛叶副務(人3=神奈川・桐蔭学園)の3人。ピッチ外からア女の活動を支える3人に、全日本大学女子選手権(インカレ)へのそれぞれの思いを伺いました。 

※この取材は12月14日に行われたものです。

 

「マネジャー様様ですね」(黒澤)

マネジャー2人への印象を語る黒澤

――お三方それぞれの他己紹介をお願いします。まずは大庭さんについてお二人から

黒澤 カフェやおしゃれなところに行っていて、女子大生という感じのことをしているなと思います(笑)。あとサンフレッチェ広島が好きで、オフに弾丸で広島まで行ってゴール裏で応援しています。

菊池 愛叶(大庭)は、見た目の通り女の子って感じです。

大庭 絶対違うでしょ(笑)。  

菊池 いやいや本当に女の子って感じで(笑)。でもバイトとかインターンも含めて、本当にマルチタスクにこなせる人で、仕事量とか作業量とかがの抱えている幅がめちゃくちゃ広いです。私は部活とバイトの両立ができないので、部活シーズンになるとバイトをおろそかにしてしまうんですけど、愛叶は気付いたらお金を稼いでます。「あ、今日もちゃんと働いてたんだ」みたいな部分が多いです(笑)。でもそういった部活とかバイトとかインターンとかをしながらも、趣味やサッカーにも熱を注げている辺り、愛叶は1日24時間じゃないんじゃないかなと思います。 

――次に菊池さんの紹介をお願いします

黒澤 朋香(菊池)はねえ…。割と常にプライベート充実してるよね。  

菊池 そうかな?  

黒澤 そう、プライベートを楽しんでいるなという印象です。薄いな(笑)。  

菊池 まさかの4年目なのにめっちゃ薄いという(笑)。  

黒澤 プライベート全然知らないんだよな。  

菊池 確かに良い意味で、自分も舞水(黒澤)も部活の時には部活のことをやるけど、部活から出たらア女のことをあんま考えないかな。

黒澤 本当にあんまり何やってるか分からないです(笑)。  

菊池 えー!ショック!(笑)

大庭 オフの日でも怖いメールが来たりとか、やばい仕事が来た時には連絡を取るんですけど、いつも焦ったり仕事をしたりしながらちゃんとオフは遊んでいます。ア女の子たちってオフの日もア女で一緒にいることが多いんですけど、朋香さんは交友関係が広いなと思います。

――最後に黒澤さんの紹介をお願いします

菊池 舞水は…。  

黒澤 怖い怖い怖い。  

菊池 確かに私生活何してるかあまり知らないな。基本バイトか激辛なものを食べているかです。それをストーリーに上げていて、「こいつまた辛いの食いに行ってるな」って思います(笑)。常にバイトとかに追われていて、ア女では今年からGPSを練習で使っているんですけど、それを入れる袋に有名な栄養ドリンクじゃなくて…。  

黒澤 その辺で買った安いやつね(笑)。  

菊池 安いような栄養ドリンクが入っていたりして、そういうのを飲まなきゃやっていけないような生活を送っていると思います。  

大庭 私も激辛が最初に思いついていて(笑)。試合の後とかも激辛を食べに行ってます。後は私が言われたことに関係させると浦和レッズが大好きで、レディースのゴール裏にいるなって思います。あとはオフじゃないんですけど、今トレーナーが1人ということもあって、GPSの作業が大変そうだなと思います。オフとかでもそういうことを頑張ってやってくれているなと思います。  

――今の紹介にも少し共通してくるかもしれませんが、お互いの仕事ぶりをみていて尊敬できるなと感じるところはありますか

菊池 愛叶に関しては、私にないマルチタスクのところがピカイチだなと思っています。自分がめちゃくちゃ要領が悪くて慌ててしまうところを、愛叶はちゃんと仕事に順序をつけながらこなしていくところがすごくうまいと思います。そういうのはうらやましいし、尊敬できるし、その能力に助けられているなと感じます。後はクリエイティブ的な能力もすごいので、今年の(WEリーグ、なでしこリーグ加入内定の)リリースの画像とかも、私にとって同期のリリースということですごい思い入れとかもある中でかっこいいのに仕上げてくれました。しかも1個だけじゃなく色々と案を出してくれて、本当にア女のプロモーションを変えたというか、他の大学と比べてもア女のクオリティーはすごいので、ああいういろんな人の目に触れるものを愛叶がプロモーションでやってくれるのは尊敬しているし、すごいなと思います。  

黒澤 朋香が結構言ってくれたんですけど、とりあえずクリエイティブなところ、ア女のプロモーションのクオリティーは愛叶が入ってくれたことで爆上がりしたなと思います。1、2年生の頃はカメラマンもやってくれていたし、ア女の魅力を外部に発信するというところでは、愛叶の存在はめちゃくちゃ大きいんだなと思います。しかもそれをパパっとこなしているのが、自分には全くできないのですごいなって思っています。マネジャー業のところで言うと、視野が広くいろんなことに気付けるので、二人ともそうではあるんですけど、ピッチ内で何かあったらすぐにパッと動いて気を効かせてくれるというか、目何個ありますかって感じで(笑)。マネジャー様様ですね。

――次に菊池さんについてお願いします

大庭 さっき朋香さんは「自分にないものが私にある」って言ってくれましたが、私にとっては本当に逆で、私ができないところを全部できる人です。私自身は選手を鼓舞する声を出すことが苦手で、それは克服しなきゃなんですけど、そういうところはすごくできますし、言葉だけじゃなく本当にア女の勝利に一番貢献している人だなと感じています。目に見える声で鼓舞するところもそうですし、普段の練習からもリハビリの子やちょっと調子の悪い子に一番最初に気付いて声をかけて、声かけた選手たちのモヤモヤが晴れて、笑顔で練習に参加している姿も毎日見ていているので。4年生全員そうですけど、一番影響力があってチームに欠かせない存在だと心の底から思います。

黒澤 とにかく熱量がすごいです。練習中も試合中もとりあえず声を出して、チームが苦しい時でも盛り上げようとしてくれているところは本当にすごいなと思います。あとは主務として2年間やってきて、本当にいろんな大変なことがあったと思うんですけど、沢山泣きながら(笑)。

 

菊池 笑うな!(笑)

 

黒澤 でも手は抜かずに、外部とのやり取りとかをオフを返上してまでもやってくれたりしています。目に見える貢献もそうですけど、見えないところでのチームへの貢献が大きいんだなと思うし、朋香がいなかったら遠征を含めア女の活動が回らないので、本当にいつもありがとうございますという感じです(笑)。本当はトレーナーがやらなくちゃいけないであろうリハビリの選手への声掛けとかも、自分が得意ではないこともあって朋香がやってくれたりして。リハビリの選手とかは(気持ちが)マイナスになりがちなんですけど、朋香がいてくれることによってそれをプラスに変えてくれることがあって、すごく助けられていますね。  

――最後に黒澤さんについてお願いします

菊池 舞水は本当に成長したなと思います。私は4年間見てきて、学生スタッフが2人という中で本当に1年生のころはボロカスに言いまくってました(笑)。本当に何度泣きながら怒ったか。グラウンドの外で前々主将の加藤希さん(令4スポ卒)彼女のことが関係して学年で怒られた時に、私は泣きながら「あなたの立ち位置はここだよ」って言って床を指さすくらい、号泣して周りの同期も引いちゃうくらい怒ったりしたこともあったんですけど(笑)。それでも彼女がすごいのは、トレーナーが一人になっても絶対にア女はやめないし、もちろんミスとかで怒ることはあったんですけど、ア女のために何かをやってやるという心が絶対折れないところ。それこそ選手のケアやテーピングとかも含め学生トレーナー1人で回すというカツカツで苦しい状況の中でも、4年間やり続けてくれました。ここに初めて体験に来た日から一緒だったんです。最初からクセが強くて、「これが同期か」って思った時期もあったんですけど(笑)。最後までやり続けてくれて、本当に頼もしいなと思います。 

――ちなみにどういったミスだったのですか

菊池 もう色々です(笑)。シンプルに1年生のころとかは寝坊とか遅刻とかでした。めちゃくちゃ面白いのが、電車で寝過ごしちゃうっていう。グループLINEで「朝起きました、電車乗りました」って送るんですけど、彼女の場合は結局電車で爆睡して降りる駅で連絡がないから、電話したら「爆睡してて気づきませんでした」みたいなことがあって。そういうのはもうどうしようもないじゃないですか(笑)。 でもそういうのから始まって、歴代のトレーナーの先輩とかがとことん付き合ってくれたので、今の舞水がいるなと思います。 

――色々なことがある中で黒澤さんはア女をやめようと思ったりはしなかったですか

菊池 すごいですよね本当に。  

黒澤 やめたら逃げだなって思って。自分が将来女子サッカーに関わりたいという思いもあったので、やめようとは思わなかったですね。やめたら負けと思ったのが一番ですね。  

――大庭さんから見て黒澤さんの仕事ぶりはどのように映っていますか

大庭 同じなんですけど、舞水さんは本当に芯が強いなって思います。それこそトレーナー1人になって、仕事量多いし、知らないところでやっていることとか、誰よりも早く来て準備したり遅くまで選手のケアをしたりしてすごく大変だと思うのに、振り返った時に舞水さんが弱音を吐いている時を見たことがなくて。めちゃくちゃ大変なはずなのに全然それを言わないから普通にすごいなと思っていて。私もつらい時とかは朋香さんに話したり、選手に弱音を吐いちゃうこともあるんですけど、それを全然していないから本当にすごい人だなって思っています。誰よりもトレーナーとして大変なこともある中で、女子サッカーがすごい好きなのもあるし、向上意識や学び続けて選手やチームのために頑張っている。もしかしたらそういう意識もなく自然とできているのかもしれないですけど、そこがすごいなと感じます。  

 

「ちょっかい出すことを意識しています(笑)」(大庭)

選手との関わり方を語る大庭

――お三方はピッチ外からア女を支えている立場にいますが、ピッチ内の選手との関わり方で意識されていることはありますか

黒澤 基本的にトレーナーは社会人のフィジカルコーチの方が毎日来てくださることもあって、メディカルの部分をやることが今年は多くて。ピッチに立てない何かを抱えている選手と一緒にやることが多かったので、コミュニケーションや人の感情を読み取ることが自分はとても苦手なんですけど、だからこそとりあえず話を聞いたりとか、その子たちをどうやってピッチに戻すために何ができるかを考えて、自分が持っているものを全て出すというのは意識していたかなと思います。  

――ア女で今まで見てきた選手の中で、この選手に対しては思い入れが深いと感じる選手はいらっしゃいますか

黒澤 大森美南。美南は6月にひざをケガしちゃって、時期的にもインカレが厳しいとなった中で、授業中とかも一緒にいることが多いんですけど。美南が弱音を吐かずに走っていたり、リハビリ中なのにトレーナー業を手伝ってくれたりとか、思い入れが深いというよりは頭が上がらないです。今はサッカーはできないけどリハビリはちゃんとやっていて、ボールも少しずつ蹴れるようになってきたので、最後どこまでやれるようになるかは現段階では分からないですけど、同期としてもそうだし、美南が良いかたちで終えられたらいいなと思います。  

菊池 美南と舞水って同期の中でも本当にすごくて。いつも美南が舞水に対して怒るという構図が出来上がってるんですよ(笑)。  

一同 (笑)  

菊池 舞水の?り役は …

黒澤 美南みたいなね。  

菊池 でも怒られてるのにこんなにいいことを言うから…。

黒澤 読んでほしいね、美南に(笑)。  

――菊池さんはいかがですか

菊池 二つあって、一つは選手の立場になって考えるという部分です。これは意識してはいるけど、自分が感情移入してしまう部分でもあるので何とも言えないんですけど、基本的にはその選手の立場になる。ただ立場になるといっても自分は選手ではないので、リハビリのつらさとかうまく自分のコントロールができない選手に対して、自分が同じ気持ちになることはもちろん難しいと思うんです。でも同じ温度感で悩みを引き出せるように、例えばうまくいっていない選手がいたら「大丈夫?」と声を掛けるというよりも、少し一緒に自主練に付き合ってボール拾いとかをして、「今のいいじゃん!」みたいに話しているうちに、「そういえばどうしたの?」って聞いて引き出したりとか。帰る方面が一緒の選手とかは、一緒に帰って何気ない話をした後にそういう話を引き出すとか、相手の立場になって考えるというよりは同じ立場に立って同じ温度感になれるように、自分を合わせに行くという部分は一つのこだわりです。もう一つは、就活の時の自分の強みでも話していたんですけど、「プライドがない」というわけではないんですが、自分の弱みをみんなの前でさらけ出せるタイプで。自分がさらけ出さない状態でみんなに急に深入りしようとしても「急に来たな、うっとうしいな」となってしまうと思うので、私も全面に「私も今苦しいんだよ~」みたいなのをさらけ出しています(笑)。そういうことを言っているうちに、最近だったら和華奈(三谷副将、スポ4=東京・十文字)とかと話す時に「私は今これが苦しくて」と言うと、和華奈も「私も朋香と同じで今こういうこと悩んでいるけど、こういう風にしてるよ」みたいな。ある程度自分のことをさらけ出すことで相手とうまく話せたり、それこそ和華奈とかだったら「私もさ~」みたいな感じで相談してくれることもあるので、そういう意味では自分の弱さをさらけ出すというのは、選手との距離感を詰めることができるポイントなのかなと思います。良いのか悪いのかは置いといて(笑)。  

――続いて大庭さんはいかがですか

大庭  まず自分は(学生スタッフの中で)唯一サッカー経験があります。なので選手だった時の経験を生かすことは、学生スタッフの中でも自分しかできないと思っているので、いつも考えているのは大前提です。その上で意識してることは二つあります。一つは他の学生スタッフが苦手としているところとかを自分が引き受けることです。具体的なところだと、副審とかはよく自分がやるんですけど。私はサッカー経験もあってルールも元から知っているし、走るのも好きではないけど苦ではないので、副審はストレスが溜まるんですけど別に自分がやればいっか、みたいな感じでやっています。他の学生スタッフが苦手なところを自分がやろうとしています。二つ目は上手く言えないんですけど、ちょっかい出すことを意識しています(笑)。私は先輩と関わるのが苦手で、朋香さんや舞水さんは自分が3年になってやっとタメ口で喋れるくらいの関係性になれたんですけど、選手の4年生はいまだに全員タメ口では話せないです。しゃべるのはすごく好きだけど、自分からしゃべりかけにいったりするのが苦手でいまだにできていないです。でも3年生になって後輩が増えたりして、逆に後輩としゃべるのは自分が得意というか。自分が先輩に話しかけるのが得意じゃないからこそ、練習前に(後輩に)ちょっかいを出したりして(笑)。練習中で言うと、(ボールを)蹴った後に表情が変わることが多いんです。自分が選手だった時を思い出すと、一つ一つのプレーでうまくいった、いかなかったの気持ちの差が多くあったので、シュートとかの練習にしても「今のシュートは良くなかったな」みたいな表情をした子にちょっかいを出したり、気持ちが楽になるようなことを練習中さりげなくするように意識はしてやっています。

――黒澤さんは学生トレーナーが1人という状況が続いていたと思いますが、1人だからこその難しさや心がけていたことはありますか

黒澤  とにかくあまり他の人に仕事を振れることが少なくて、社会人のトレーナーもいなくて全部1人でやらなければいけない時は時間との戦いでした。タイムマネジメントがとても難しくて、何かアクシデントがあったりすると、計算はして動いているつもりですが、それによって練習開始が遅れてしまうということが何度かあったので、そこはチームに対しての申し訳なさもあり一番難しかったなと思います。その中でも絶対に手を抜かないことは自分の中でもっていました。忙しいからとか時間がないからといって、テーピングの質が下がらないようにとか、ケアにしてもただやるんじゃなくて、(選手から)ちゃんと聞いて「こうなのかな」という検討をつけながらやるとか。そこは絶対に落とさないようにしてました。

――菊池さんはここ2年間主務として活動してこられて、もう終わりに差し掛かっていますが振り返ってみていかがですか

菊池  苦しかった2年間だなとは正直思います。特に去年に関しては何もかもが初めてで、まだ愛叶も2年生でお互いに主務・副務の仕事が分かっていない中で、去年はコロナの影響での試合の調整などマニュアル通りにいかないことばかりでした。去年に関しては人に頼ることができなかったので、自分でやるしかないという感情に押しつぶされて体調不良になってしまったり。それでインカレでも結果が伴わなくなった時に、自分が否定された気持ちになって、そこでプツッと切れちゃった時期もありました。ただ2年目になってからは仕事の流れも分かるようになったし、4年生の同期に対してさらけ出すこともあったので、みんなに情報を伝えて10人に投げたら、誰かしらが「今これどうなってるの?」とか教えてくれるので、そういう意味では人を頼るということを覚えたし、自分の中でも仕事のこなし方を身につけてきたので、1年目に比べればただただ精神的に疲弊することが減りました。主務としても成長して、よりチームのことを考えられるようになったと思います。最後の終わり方として、2年間つらいこともあったけど(ア女を)やめられなかったのは、どうしてもこのチームで日本一を本気で取りたいという気持ちが強かったからです。インカレも何があるか分からないですし、どのメンバーで戦うかもまだ分からないですけど、その日ピッチに立つ11人を「胸張って戦っておいで」と送り出せるような、私自身も胸を張れるサポートをして日本一を取って去りたいなと思います。

 

菊池は今季毎試合、ロッカールームにチームメイトへの思いと激励のメッセージを書いたものを貼っている。写真はその原稿

――大庭さんは今年副務を務められていましたが、この1年をどのように振り返られますか

大庭  今年一時期朋香さんが休みだった時期があって、私自身としてはそれがあって逆に良かったのかなと思っています。去年も副務という役職には就いていたものの2年生でしたし、自分なりに頑張ってはいたけど見えていないところが多くありました。でも今年朋香さんが一時期いなかった時に、マネジャー1人で練習を回したりとか、遠征も主務の代わりとして帯同することが増えました。その時に朋香さんの偉大さも感じたし、自分がもっとしっかりしないといけないという自覚が芽生えました。今は朋香さんと二人体制ですけど、それまでは朋香さんが抱えていた仕事をどのように自分に分けてもらえればいいかも分からなかったのですが、その経験があったからこそ朋香さんも自分のことを頼ってくれるようになったし、私も朋香さんに対してアプローチできるようになったので、そこでお互いの仕事量やつらいことを分け合えた1年だったなと思います。

――今季1番心に残っている試合やイベント、出来事を教えてください

大庭 私はVONDS戦(5月20日、関東リーグ前期第4節VONDS市原FCレディース戦、〇1-0)がやっぱりすごく大きくて。私自身昨年から関東リーグを担当しているんですが、それこそちょっかいを出す相手も関東リーグのメンバーが多くて、関カレに出ている選手たちにも辛いことや悩みがあることは重々承知の上なんですが、関東リーグに出場している子たちのサポートというのは一層やっていきたいなというのはありました。実際に普段から悩みを聞いたり、帰りながら話を聞いたりすることも多かったです。その中であの試合は、みんなが勝つことに対して諦めていなかったというか。自分自身試合を見ていて感動しましたし、最後の最後まで点を決められるかなと不安だったけど、体を張ってみんなで粘って粘って勝てたので、あの試合はものすごく大きかったかなと思います。自分自身にとっても嬉しかったし、関東リーグに出ていた子たちにとってもプラスになって、その後の練習などでも自信をもって堂々とプレーできるようになっていったので、まだ分からないですが、4年間でもすごく印象深いものになるんじゃないんかなと思います。

――確かにすごいゲームでした

大庭 試合が終わった瞬間、みんなインカレ優勝したみたいに喜んでいました(笑)。

菊池 私が印象に残ったのは、皇后杯1回戦の吉備国際大戦(11月18日、吉備国際大Charme岡山高梁戦、〇2-1)です。自分たちにとっての最後の皇后杯ということもあって、「やんなきゃ」「ここからWEを倒すんだ」という気持ちで戦った初戦で。皇后杯の関東予選の時に、遠征前に台風があって当日色々動くかもしれないというバタバタもあって、自分の中でうまく遠征を回せた自信がなかったので、「今回は自分にできることをちゃんと尽くした上での遠征にしよう」というのはすごくあったんです。会場は昨年も戦った栃木(グリーンスタジアム)だったので、県のサッカー協会の方にも要項に書いていないことをめちゃめちゃ質問しちゃって、名前も覚えられちゃうみたいな(笑)。そんな感じですごく準備をした大会でもあったので私自身も思いがこもっていたし、緊迫した試合だった中で追いついて、美月(浦部副将)も足がボロボロで若葉も15分しか出られない。後半40分あたりとかは、「もしかしてこれ延長戦になっちゃう?」みたいな。それこそ自分は昨年のオルカ戦(2022年12月10日、皇后杯3回戦オルカ鴨川FC戦、0-0、PK5-4)の時はコロナでいなかったですし、4年間で延長戦にもっていかれるような緊張真っただ中の試合にいたことがあまりないんです。みんなの中でも「勝たなきゃ」という思いは強かったと思うんですけど、延長戦の前に円陣を組む際に、私の方が涙ぐんじゃって。声震えながら「大丈夫だよ」とか言っていて、「いやお前が大丈夫かよ」みたいな精神状態だったんですけど(笑)。本当に祈って声を出すしかなかったですし、ピッチ内を見てもボロボロの選手もいてギリギリだった中で、育(築地)がああいう風に決めてくれて。いつだったか私が、「点が決まった後に選手が(ベンチに)走りこんできてくれるのが夢だ」って語っていたので、育が走りこんできてくれたのがめちゃくちゃ嬉しくて、あれはもう涙が止まらなかったですね。交代したメンバーもあの瞬間はみんな情緒がやばくて、寒いから震えてるし、感動でも震えてるしみたいな(笑)。結局皇后杯は2回戦で負けてしまいましたが、前期は失点したらさらに失点してしまうチームだったのが、失点しても追いついて勝ち越せるチームになっていたということが証明された瞬間だったと思います。でもあのハラハラはもういいので、安心して勝ちたいです(笑)。

 

黒澤 個人的なことにもなってしまうんですが、夏合宿は思い出したくないくらいただただハードで。

菊池 あれはやばかったね…。

黒澤 やばかった(笑)。1、2日目は社会人のトレーナーがいてくれたのでまだよかったんですけど、3日目から1人になって色々やることも増えて、二部連なので自分の時間が全くなくて。ご飯をたべたらすぐ次の準備、みたいな。ケアをしたりGPSの管理をしたり、とりあえずハードすぎて記憶から消し去っています(笑)。寝る時間も全然なくて、どうやってまわしていたんだろうという感じです。朋香は同部屋だったので「何だこいつ」と思っていたと思うんですけど。

菊池 めっちゃ面白かったんですよ。私と舞水が隣のベッドにいたんですけど、「お休み」と言った時にパソコンを開いていて、私が起きたら(黒澤が)そのままの状態で寝ていて(笑)。「寝る前に見た光景と一緒だ!」みたいな(笑)。そもそも私たちにとっても初めての合宿で、グラウンドもちゃんとした正規のものがなくて自分たちでラインを引いて、ようやく9対9くらいのピッチができるみたいな。そこでもまたこいつはやらかしました(笑)。セミナーハウス内の扇風機のコードをぶっちぎるという。

黒澤 疲れすぎて足元が見えていなくて、足を引っかけてブチっといっちゃったんです。

菊池 私はそれにすごくイラついたんですけど(笑)。「足元ぐらい見ろよ!」みたいな(笑)。けどあまりにも疲弊していたので。あんなに弱っている舞水は見たことがなかったです。

黒澤 高校時代がめちゃめちゃハードだったので、基本それよりも苦しいものは無いと思って生きてきたんですけど、あれはもうそれに並ぶくらいハードでしたね。

――合宿は他の方の話を聞く限り楽しそうなイメージだったのですが

黒澤 選手たちはピッチ内外で楽しかったと思うし、それは間違いないんですけど。その裏で自分は1人、「やばい、あとちょっとだ」とか思いながらパソコンと向き合っていました(笑)。今年1ハードだったかもしれないです。

 

「大好きな仲間たちと日本一をとって、笑って終わりたい」(菊池)

インカレへの思いを語る菊池

――インカレの注目選手・スタッフを教えてください

菊池 私は4年生、その中でも幹部である若葉、和華奈、美月です。やっぱりシーズンを通して色々なことがあったけど、色々なところから「幹部どうなってるの」「幹部大丈夫」と言われることは多々あって。3人とも練習参加に行くことも多かったですし、若葉がアジア選手権でいない期間は和華奈と美月が「主将がいない分、自分たちが」というふうにチームを引っ張ってくれました。若葉に関してもア女で試合をしても結局またケガという感じで、試合に出て背中で示し続けるというよりはリハビリ期間がすごく長かったと思います。若葉自身そのリハビリ期間にも色々な思いがあって思うようにチームに向き合うことができなかったりする中で、それでもやっぱりチームに戻って「私は主将だ」というふうに引っ張り続けてくれました。あの3人は謙虚だし、あまり自分たちが幹部だからといって上から言うようなタイプではないのですが、それでも自分たちにできるベストを尽くすのみ、というところでやってくれています。シーズン当初から私の中で幹部は、チームがうまくいかない時にもその3人だけはブレない、というイメージがあって。各々進路とかで悩むことがあった中で、チームのことだけを考えられない時期もあったと思うんですけど、それでもやれることをやり尽くしてくれたと思います。それこそ私含め4人で飲みにいったこともあるんですけど、酔いながら「マジで日本一とろうね」みたいなことを言い合ったり(笑)。信じられる3人だし、ついていきたい3人だし、結果を残してくれる3人だと思うので。注目は幹部の3人で、きっとプレーで示してくれると思います。

――飲みにいって「日本一とろう」って言ってみたいですね

菊池 恥ずかしいですよね、でも酔っていたのもあって「やるしかなくない?」みたいな(笑)。

黒澤 自分は2年生の生田七彩(スポ2=岡山・作陽) です。今年3月の練習試合で膝をケガしてから今シーズンずっとリハビリをしていて、そろそろ復帰できるかなというところで。本当になーさ(生田)が1番苦しい思いをしてきて、その(リハビリの)一部を手伝うことしかできなかったんですけど。今も状態としては完全ではないと思うんですが、それでも絶対インカレには間に合わせるんだという強い気持ちをもってリハをしたり練習をしたりしています。「どうなっても良いからとにかくインカレに出る」という気持ちがとても伝わってきて、かつ練習に入った時は、なーさの武器であるスピードやシュートの強さを外から見て、「なーさが戻ってきたな」と感じます。だからこそインカレの舞台に1分でも良いから立ってプレーしてほしいし、その姿を多くの人に見てもらいたいなと思うので、注目選手に挙げようと思います。

大庭 どうしよう、4年生全員に注目してほしいし、なーさとか美南さんにも注目してほしいし、同期にも注目してほしいんですけど(笑)。でもやっぱりこの2人(菊池と黒澤)には注目してほしいです。今年は学生スタッフの人数の増えたり減ったりが多くて、なかなか安定しなかったんですけど、その中でもこの2人とは1番近くで3年間一緒にやってきて。選手が想像するのが難しいような大変なこともいっぱいあったと思うし、特に今年は4年生として、自分自身も見ていないところで辛いことや折れそうになることがいっぱいあったと思います。それでもここまでずっとやってきてくれて、自分自身にとっては2人の存在がすごく大きかったし、最後に優勝して一緒にトロフィーを掲げたいです。私は多分インカレのベンチに入ることができないですが帯同はできると思うので、自分にできることを探しながら2人が1番輝けるように、1年を通して2人が「やってきて良かったな」と笑顔で終われるように、全力でサポートできたら良いなと思っています。

菊池 良い後輩すぎません?感動です(笑)。

――最後にインカレに向けての意気込みをお願いします

大庭 皇后杯は自分が体調不良でどっちにも(1、2回戦とも)行けなくて。鳥取の前泊から1人でとんぼ帰りしたんです(笑)。本当にすごく行きたくて辛かったので、インカレでは体調を万全にするというのはもちろんですし、ベンチに入ることができない中でも、それこそ選手の精神的なところのサポートはできるかなと思っています。あと2週間もないですが、みんなが考えなくても良いところを考えずに、日本一を目指すことだけを考えられるような環境を作って、全員で1つ1つ勝って日本一をとりたいと思います。そのために全力でサポートしたいと思います。

黒澤 インカレでは昨年本当に悔しい思いをしたので、まずは東京に帰ってくるというところが目標ですが、スタッフってどれだけ強く願っても結果を左右することはできないので。だからこそ、その分自分にできることをやろうと思います。遠征なら前日や当日のケアになりますが、そこで本当にできることをやりきって、選手を100パーセントの状態でピッチに送り出すということは、絶対に揺るがずに決めていることなので。自分の出せるもの、サポートするものを全てやった上で、あとはみんなにかけるしかないと思っているので、できることを精一杯やるというのが意気込みです。

菊池 最後は日本一をとって終わりたいな、というのが何よりも強くあります。自分は2020年の4月に入部したんですが、その時のnote(部員ブログ)に「日本一のマネージャーになる」と書いていて、それを最近見返して「デカいこと語ってるな」と思ったんですけど(笑)。でもそれがサッカーのこともア女のことも分からない時から掲げてきた夢で、何をやっても日本一になれなかった私みたいな人間が、この組織に入って、日本一って本当にスケールが大きいじゃないですか。それを夢として掲げることができるというのも本当に幸せなことだと思うし、4年間それを追い続けてきて、もちろん2年生の頃優勝できたけど、今よりは全然チームに対しても貢献できていなかったので。自分のモットーが「全力で生きる」なんですけど、そのポリシーを崩さずにやってきた日々を経て、日本一をとって、1年生の時に掲げた「日本一のマネージャーになる」という夢を叶えて、自分がこれまで選んできた道は間違いじゃなかったということを証明したいなと思います。大好きな今の仲間たちと日本一をとって、最後は笑って終わりたいです。

――ありがとうございました! 

 

(取材 大幡拓登、髙田凜太郎)

 

インカレに向けての意気込みを書いていただきました!

 

◆菊池朋香(きくち・ともか)

2001(平13)年9月17日生まれ。155センチ。東京・早実出身。政治経済学部4年。ア女メンバーの中でも特に交友関係の広い菊池主務。大庭マネジャーによると「(instagramの)ストーリーを見ると、いつも違う友達と遊んでいる」そうです!

◆黒澤舞水(くろさわ・まみ)

2000(平12)年10月11日生まれ。156センチ。埼玉・伊奈学園総合高出身。スポーツ科学部4年。激辛フードを食べに行くことが好きという黒澤トレーナー。埼玉の幸手にある「金田亭」がおすすめだそうです!

◆大庭愛叶(おおば・あいか)

2003(平15)年2月8日生まれ。157センチ。神奈川・桐蔭学園高出身。人間科学部3年。アイスクリーム屋の店員をしているという大庭マネジャー。店舗広告など、広報の仕事もプロ級にこなしているそうです!