第45回全日本女子サッカー選手権大会 皇后杯1回戦 | ||||
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早大 | 2 | 1-1 0-0 延長前半0-0 延長後半1-0 | 1 | 吉備国際大Charme岡山高梁 |
【得点】 (早大)43分:笠原綺乃、109分:築地育 (吉備国際大Charme岡山高梁)18分:板倉楓 |
第45回全日本女子サッカー選手権(皇后杯)が幕を開けた。ア式蹴球部女子(ア女)はこの日、吉備国際大Charme岡山高梁と対戦。18分にカウンターから先制を許したが、43分にMF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)の見事なミドルシュートで同点に追いついた。後半はペースを握るが相手の好守に苦戦し、30分の延長戦にもつれ込む。互いに攻め合った中での延長後半109分に、コーナーキック(CK)をMF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)が頭で合わせ勝ち越しに成功。ア女は逆転勝利で、皇后杯初戦を突破した。2回戦は25日、スフィーダ世田谷FCと対戦する。
役者が試合を決めた。得点シーンは「やろうとしていたことがバッチリとハマった」としたり顔
この日の会場は栃木県グリーンスタジアム。咋年の前回大会でア女が2、3、4回戦を戦った会場である。「緊張感は適度にはあったと思うが、それはあって然るべき」(後藤史監督、平21教卒=宮城・常盤木学園)、「チームはガチガチではなかった」(築地)と、初戦特有の緊張も目立たずア女のペースで試合は進む。7分にはMF三谷和華奈副将(スポ4=東京・十文字)がしかけて上げたクロスに、ニアでFW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)が合わせるが枠外へ。17分にはMF大山愛笑(スポ1=日テレ・東京ヴェルディメニーナ)の浮き球のパスに崎岡が飛び出したが打ち切れず。再びボールを拾った三谷が笠原の頭に合わせるが、へディングシュートは枠の左に飛んだ。しかし迎えた18分、左サイドを一気に突破されるとそのままゴール前まで運ばれ失点。度重なるチャンスを決めきれない中での手痛い先制点となった。それでも43分、エリア前のスペースで受けたパスを中にコントロールした笠原が、そのまま切り込んでシュートを放つと強烈な弾道はニアポストに当たりゴールイン。チームを救う一発で試合を振り出しに戻した。
裏抜けを繰り返した崎岡。中盤やサイドとの関わり合いでも好プレーを見せた
1-1で前半を折り返し、勝負の行方は後半へ。ア女は追加点を奪うべくさらに攻勢を強める。60分には大山から笠原、MF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)へとパスがつながり、思い切りよく放ったシュートはキーパーに抑えられる。63、64、65分と、それぞれ夏目、築地、大山がミドルシュートを放ったが、惜しくも全て枠外に飛んだ。前半同様にチャンスを決められず流れが悪くなった終盤、84分には、中盤でボールを奪われたところからショートカウンターを食らうが、シュートは力なく枠外へ。89分にも遠距離からのフリーキックをバックヘッドで合わせられたが、わずかに枠の右へ逸れ窮地を逸する。互いにチャンスを作り合った中で、前後半の90分は終了。試合は、30分の延長戦に突入した。
延長戦に入ると、100分に関東大学リーグ(関カレ)後期第9節、東洋大戦(10月14日、〇3-1)以来の公式戦出場となる、DF後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)を投入。両サイドから攻撃を繰り出しペースをつかんだ中迎えた109分、ついにスコアが動く。右サイドからの大山のCKを、築地が頭で合わせゴール。勝ち越しに成功した。試合はそのままア女がリードを守り抜き、2-1で終了。120分間の激闘は、ア女の逆転勝利で幕を閉じた。
公式戦復帰となった後藤主将。シーズン終盤のカップ戦で復帰するのもこれで3年連続
「負けたら終わり」が常に脳裏にちらつく、トーナメント特有の緊張感あふれる激闘となった。この日ア女は、今季掲げた目標の1つ「皇后杯ベスト8=WEリーグクラブの撃破」に向け、初めの1歩を踏み出したことになる。「みんなの諦めなかった気持ちが得点につながって勝ちきれたというのは、逆転というのも含めて1つア女の強さ」と振り返ったのは先制点の笠原。トーナメントにおいては、何よりもまず結果が求められる。逆転で勝利を得たことは、大いに自信にするべきポイントだ。休む暇なく、勝負の日はやってくる。「自分たちのサッカーができるように」(築地)。大胆不敵ではなく等身大で、ロマン主義でなく現実的。だからこそ、今年のア女は強い。
(記事、写真 大幡拓登、写真 前田篤宏)
スターティングイレブン
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 石田心菜 | スポ3 | 大阪学芸 |
→HT | 16 | 丸山翔子 | スポ3 | スフィーダ世田谷FCユース |
DF | 2 | 夏目歩実 | スポ4 | 宮城・聖和学園 |
DF | 4 | 堀内璃子 | スポ4 | 宮城・常盤木学園 |
DF | 5 | 田頭花菜 | スポ3 | 東京・十文字 |
DF | 6 | 浦部美月 | スポ4 | スフィーダ世田谷FCユース |
→100分 | 3 | 後藤若葉 | スポ4 | 日テレ・メニーナ |
MF | 7 | 笠原綺乃 | スポ4 | 横須賀シーガルズJOY |
MF | 8 | 白井美羽 | スポ3 | ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ |
→67分 | 27 | 新井みゆき | スポ1 | 埼玉・浦和レッズレディースユース |
MF | ◎9 | 三谷和華奈 | スポ4 | 東京・十文字 |
MF | 10 | 築地育 | スポ3 | 静岡・常葉大橘 |
MF | 30 | 大山愛笑 | スポ1 | 日テレ・東京ヴェルディメニーナ |
FW | 28 | 﨑岡由真 | スポ1 | 埼玉・浦和レッズレディースユース |
→81分 | 26 | 千葉梨々花 | スポ1 | 東京・十文字 |
◎=ゲームキャプテン |
コメント
後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)
――前半はボールを持ちながら中々得点が生まれず失点というかたちでした。どのようにご覧になりましたか
中が固いというか、ゴール前を堅く閉じてくることは試合前から想定していたことなので、そこに関しては焦れずに、という感じでした。ただあの失点の仕方は、相手のストロングである13番のスピードで少ないチャンスを決められたというかたちで、あまり良いかたちではなかったのですが、(失点を)取られた時間帯は非常に早かったので大丈夫かなとは思っていました。
――全体としてはサイドから攻撃していこうという布陣だったのでしょうか
中を窺いながら、(縦パスを)当てられるところや前半ならフォワードが抜けることを狙っていました。ただやっぱり中はしっかり絞められていましたし、4バックに2ボランチがしっかりと入っている状態だったので、どうしてもサイド展開になる予想はできていました。ただうちは基本的にワイドに突破のできる選手たちがいるので、比重としてはそっちが重くなったという感じです。
――勝ち越しゴールはCKからでした。課題にしていた攻守両面でのセットプレー、手応えはありますか
特に今日は試合前にセットプレーのリーダーになっている選手たちが、私からのミーティングの前に確認をしていたので、非常にそれを体現できたということは何より素晴らしいことだと思います。
――前後半ともに、立ち上がりの時間帯に裏やスペースへのロングボールを多用されていたという印象です。狙ったかたちでしたか
三谷の足を生かしたい部分はありましたし、フォワードで言うと崎岡の走り出しというのもチームのストロングです。あとは(相手の)ディフェンスがしっかりと引いてくるのか上げてくるのかというところを判断して、前半は高い位置まで上げてきたので、そこはピッチの中でラインを見て選手たちが判断したのかなと思います。
――皇后杯初戦とはいえ選手たちはそこまで緊張はなかったと話されていました。監督から見てチームの戦いぶりを評価していかがですか
初戦の中で緊張感は適度にはあったと思うんですが、それはあって然るべきなものなので、そこの準備も含めて入りからしっかりと戦ってくれたかなと。うちは3枚しか選手を替えていないですし、90分以上出場した選手たちは相当きつかったと思うんですが、最後まで自分のできることをやり尽くしてくれた結果かなと思います。
――タフなゲームになりましたが、この結果をどのようにつなげていきたいですか
次も確実にタフな試合になりますし、まずはこの120分間のケアをして、体力を回復して、もう1つ2つタフな相手に対してどう戦うか整理して、自分たちの力をぶつけられるように、1週間しかないですが、しっかりと準備したいと思います。
MF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)
――得点シーンを振り返っていかがですか
チャンスがあればシュートを狙いにいくということは意識していました。相手のブロックに当たりそうかなと思ったのですが、振り切った結果、綺麗に入ったので良かったです。
――何回か打とうとしているシーンがあった中でのゴールでした
最初の方にもうとうと思ったシーンはあったのですが、ボールの置き所が悪かったのもあって打ちきれず、そこから失点してしまいました。前半のうちに1点返したいと思っていたので、得点シーンはとにかく振り切ろうという感じでした。
――120分間ゲーム全体を振り返っていかがですか
前半の入りはア女のペースで、和華奈のクロスも結構上がっていました。前半の内に得点をとって良い流れに持っていきたかったのはあったんですが、結果的には気持ちで粘り勝ったというかたちになりました。早いうちに得点したかったですし、後半はセカンドボールの回収や中盤のバランスも良くなかったと思うので、そこら辺は修正をして来週に備えたいと思います。
――後半相手ペースになった時間帯もありましたが、そこにもっていかれた要因はどのあたりだとお考えですか
セカンドボールが拾えなかったというところと、色々なポジションチェンジや人の入れ替わりがあった中で、守備面含めバランスがあまり整っていなかったなと思います。そこは声をかけ合いながらチームで話し合って修正していきたいです。
――リーグ戦の終盤に見られた左サイドの4年生の攻撃に関しては今日も健在だったように思いますが、手応えはありますか
今日はあまり崩しきるところまでいった印象はないんですが、4年生として一緒に4年間やってきたのでそれぞれの特徴は分かっているというのは大きいと思います。和華奈なら縦突破がありますし、美月(浦部)はオーバーラップをしてくれるので、時間を作ってとかそういったところのやりやすさはあると思います。
――結果的にはセットプレーで勝利しましたが、延長戦はどのようなことを考えてプレーしていましたか
後半の途中から得点の匂いが薄れてきて「やばいな」というのはあったんですが、でもやっぱりみんなの諦めなかった気持ちが得点につながって勝ちきれたというのは、逆転というのも含めて1つア女の強さかなと思います。
――ここからさらに相手のレベルも上がってくると思いますが、どのように準備して戦っていきたいですか
今日以上に来週は球際の強度やや技術面で1、2段階高まってくると思います。今日の前半の決定力のところや球際、中盤のセカンド回収のところも、今日の試合を通じてこちらも1段階レベルアップしないといけないと思いますし、簡単に勝てる相手ではないので、1週間しかないですがそこの部分をチームのみんなで高めあっていけたらいいなと思います。
MF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)
――まずは120分間を振り返っていかがですか
自分たちのペースでやって90分間で終わらせるつもりだったのですが、やっぱりこれが皇后杯だなというのは1年ぶりに感じました。
――個人としてチームとして、緊張みたいなものはありましたか
チームはガチガチではなかったと思います。自分は全く緊張していなかったですし、むしろお客さんがいつもより入って「自分のプレーを見てほしい」と思っていたので楽しみでした。序盤から固くなりすぎずに自分たちのやりたいことはできていましたが、相手の守り方は普段のリーグ戦にはない感じでしたし、そういうところから120分になってしまったのかなと思います。
――ア女ペースではありながら、後半の終盤など押し込まれるシーンはあったかと思います。流れをもっていかれてしまった要因、課題になる部分を教えてください
やっぱり引いてきた相手に対して自分たちがどう攻めるかというのは課題になっているところで、良い崩しはできていたから最後の質のところとか、もう1つ高い位置で奪うために切り替えを速くする、後半にかけてそういったアラートさの部分が、運動量と共に徐々に落ちてきてしまったところで、相手に1度ペースを握られてしまったのかなと。自分たちのサッカーはやはり運動量ベースですし、そういうところで落ちてしまうと、今日のように相手にボールをもたれる時間が増えて苦しくなってしまいます。そういうところに関してはハーフタイムや延長戦前にも話したので、自分たちも分かっている部分で、皇后杯を戦う上では絶対に切らしてはいけないところだと思います。
――CKからのご自身の勝ち越しゴールは狙っていたかたちが出たという感じですか
狙い通りでした。1度目に自分はファーサイドを狙って、それは相手も警戒しているのを分かった上で、ニアにしっかりと外せたところは自分たちがやろうとしていたことがバッチリとハマったと思います。今日も試合前に1度確認をしましたし、愛笑(大山)もすごく良いボールを上げてくれました。
――タフなゲームになりましたが、今後の相手はさらにレベルが上がってくると思います。次戦に向けてどのように準備し、戦っていきたいですか
自分たちはWE撃破を目指している中で、まだまだ勝たなければいけない試合が何回も残っています。一戦一戦自分たちのサッカーをしっかりすることでそこに近づけると思うので、課題というよりまずは自分たちのサッカーができるように、また1週間しっかりとやっていきたいと思います。