関東リーグ、格上に悔しい連敗 前期と比較して見えた「成長」と「課題」

ア式蹴球女子
第29回関東女子サッカーリーグ
早大 1-0(前半)
0-2(後半)
VONDS市原FCレディース
【得点】
(早大)11分:千葉梨々花
(VONDS市原FCレディース)60分:井上寧々、66分:西山皐月

 関東女子サッカーリーグ(関東リーグ)は後期第5節、VONDS市原FCレディース(VONDS)戦を迎えた。11分にFW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)が決めて幸先よく先制したア式蹴球部女子(ア女)だったが、後半に入ると60分、66分と連続で失点する。その後はチャンスを作り続けたが、相手の堅い守備を崩しきれず。前節に続き、悔しい敗戦となった。

 

コーナーキック(CK)のボールをGK丸山翔子(スポ3=スフィーダ世田谷FCユース)が弾き出す

 キックオフとほぼ時を同じくして、小雨が降り始めたこの日の東伏見サッカー場。開始1分に右サイドから攻め込まれ、丸山が弾いたところに打たれたシュートはポスト。リーグ2位につける強豪を相手に、不穏なスタートを切る。しかし、スコアを動かしたのはア女だった。11分、エリア内右側でボールを納めた千葉が、振り向きざまのシュートでキーパーの脇下を抜きゴール。先制に成功した。しかしその後は防戦一方の展開。23分には相手CKをニアで合わせられたが、落ちたところでDF杉山遥菜(スポ1=東京・十文字)がクリアした。35分には、中央左サイドで奪われたボールを中央まで運ばれるが、シュートは丸山が正面で抑えた。46分、MF新井みゆき(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)のドリブルから得たCKを、クリアされたところをDF藤田智里(スポ4=神奈川・大和)が拾いシュート。枠外に飛んだが反撃の姿勢を見せ続けるプレーになった。

 

先制点の千葉。「ターンからのシュートをたくさん練習してきた」と勝負強さを見せた

 後半は、さらに勢いを強めるVONDSに守勢を強いられる展開に。繰り返しサイドの裏を使われるが、ハーフタイムから左サイドバックに投入されたDF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)が獅子奮迅の守備を見せる。47分、52分と快足のフォワードに裏を取られるが、夏目が駆け戻りブロック。56分にもCKを夏目がクリアし、こぼれ球のシュートは枠外へ。しかし60分、守備陣の奮闘むなしく右サイドを崩され、クロスを逆サイドで合わせられ1-1。66分にもカウンターから右サイドの裏を突破されてしまい、失点。一気に逆転を許す苦しい展開に。なんとか勝ち点をもぎ取りたいア女は72分、夏目がMF阪本環(スポ2=日体大FIELDS横浜U18)とのパス関係で抜け出し、CKを取る。80分には左サイド深い位置からのフリーキックに千葉が飛び出し、懐に収めシュートを放つがブロックされてしまう。最後は拮抗(きっこう)した展開になったが、互いに追加点は生まれず、1-2のまま試合は終了。悔しい、逆転での敗戦となった。

 

ボールをコントロールするMF淀川知華(商2=山梨・日本航空)

 「後期の対戦の際には、もう1つ、2つレベルアップしたいなと思っています」(後藤史監督、平21教卒=宮城・常盤木学園)。前期対戦時(5月20日、〇1-0)の試合後インタビューだ。事実、内容面では大いに成長を見せた。それでも結果は敗北。最前線でチームを引っ張った千葉の、「成長を感じるけれど、突き詰めなければいけないことはまだまだ多いと感じた」という言葉が全てだ。リーグ全体を見てみても、各試合結果だけを見れば、後期は前期の数字に劣る。相手との実力差を泥臭さ、パッション(=情熱)で埋め、関カレメンバーにすら刺激を与えた前期。残り2節となり、一人ひとりが成長した姿を見せる中で、もう一度チームとしての勝負強さを取り戻す必要があるはずだ。

(記事 大幡拓登、写真 前田篤宏)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 丸山翔子 スポ3 スフィーダ世田谷FCユース
DF 15 小林舞美 スポ2 ちふれASエルフェン埼玉マリ
DF 25 杉山遥菜 スポ1 東京・十文字
DF 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
DF 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
→HT 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
MF ◎17 藤田智里 スポ4 神奈川・大和
→HT 18 栗田彩令 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 19 淀川知華 商2 山梨・日本航空
MF 22 阪本環 スポ2 日体大FIELDS横浜U18
MF 23 生谷寧々 スポ3 東京・吉祥女
→61分 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 29 川本美羽 スポ1 新潟・帝京長岡
FW 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――悔しい敗戦になりましたが、試合を振り返っていかがですか

 選手たちにも伝えましたが、結果として1-2で逆転負けしたところはしっかりと受け止めたい一方で、前期対戦時に自陣に引いて守備陣を形成して守り続けた試合展開と比べれば、得点やシュート数にも表れている通り、私たちのできることは増えていましたし、ピッチ上で戦えていた回数も増えていたと思います。結果は受け止めた上で自分たちの成長にも目を向けて、残りの試合を勝ち切れるようにやっていこうという話をしました。

――前期対戦時にシュート1本で勝利したところから、内容面でどのように成長していたのか教えてください

 今日の守備の仕方は、前線高い位置からプレスをかけるというよりもブロックを形成するかたち、それも自陣内ではなく中盤の辺りからというものでした。彼女たち自身が言っていたことですが、試合の中で「これはもっと前から(プレスを)ハメられるな」と判断して(プレスを)かけにいったんですよね。その結果前半、高い位置でボールを奪って得点にもつなげられましたし、試合の中で自分たちで変えてくれた部分が実はあって。前期対戦時、とにかく「引いて守る」ということだけを遂行していたのに比べて、自分たちの力でピッチ上で「こうした方が良いんじゃないか」と変えられるようになったというのは何よりの成長だと思いますし、素晴らしいと思います。

――前節からスタメンに変更がありましたが、どのような意図がありましたか

 さら(栗田)に関しては個人の理由があって、スタートから出すことができませんでした。ただ寧々(生谷)は私が想像していた以上に、非常に良い働きをしてくれたと思っています。本当に素晴らしかったです。

――結果的に前半の1トップのシステムは上手くハマっていたという印象です。前節や後半と比べていかがですか

 後半も同じく1トップのシステムでしたが、さらが相手の3バックの左センターの選手に守備時の牽制を指示していました。VONDSは結構下でしっかりとつないでくるチームなので、グッと牽制することで一回中に付けてくれたりすることを想定して入れたはものの、ものすごく大胆なプレッシャーをかけてくれました。結果的に相手は混乱していだと思います。みゆき(新井)は器用な選手で、前の選手が自由に動くのに合わせられるタイプなので、そこはあまり心配していないですね。

――両サイドバックの2人は本職のポジションではなかったと思うのですが、どのような評価をされていますか

 新井は、本職がサイドバックなんです。ユース時代にサイドバックをやっていて。戦術的なIQや技術はとても高いですし、私も彼女の本職はサイドバックだと思っていますがチーム事情もあって、関カレでは前をやってもらっているという状況です。本人はウイングとしてはまだまだと思っているようなのですが、 本職に見えるくらい素晴らしい動きをしてくれていると思います。由真(崎岡)もユース時代にサイドバックをやっていた時があって、初めましてのポジションではなく。4バックのサイドバックを、攻守両面で私は非常に大事だと思っていて、その上で彼女たちは2人とも本職と言っていいくらいよくできていると思います。

――関東リーグも残り2節となり、現実的には4位を狙っていくところだと思います。今後に向けてどういう準備をしていきたいですか

 勝ち点的には残留争いは回避できていると思いますし、この後東京国際大戦と筑波大戦、勝ち点の近い相手と戦うので、しっかりと上を見て一つでも順位を上げられるように。レイア、VONDSとの2試合で成長を見せられた反面、もう少しのところで結果がついてこなかった部分をみんな感じていると思うので、ピッチで取り返すために来週、再来週の試合で勝ち点を積み重ねていきたいと思います。

 

生谷寧々(スポ3=東京・吉祥女)

――試合を通して、ご自身のプレー振り返っていかがですか

 チームとして、共通認識をもっている(プレスの)ハメ方については、実践できたと思います。

――かなりプレスをかけて走行量的にも多かったと思いますが、体力的にタフな試合展開を振り返っていかがですか

 守備面では後ろから声をかけてくれたのですごくやりやすかったですし、前半は集中して相手の大外の選手をフリーにさせないように意識していました。

――前半は逆サイドからのクロスに入っていく惜しい場面もありましたが、攻撃に関してどのような意識をしていましたか

 サイドバックがボールをもった時には、外から中に、裏をとるような動きを狙っていました。まだゴールにはいけなかったので、今後改善していきたいと思います。

――関東リーグも残り2節となりましたが、チームとして、個人としてどのように戦っていきたいですか

 チームとしては関東リーグの良さを出せるように、ここまで積み上げてきたものを残り2試合でしっかりと体現できたらいいなと思います。個人としてはもちろんスタメン争いにも絡んでいけるように、もっともっと自分のできることを磨き上げていきたいと思います。

 

千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)

――90分間を振り返って率直にいかがですか

 前期(対戦時)できなかったことができるようになった反面、前期取れた勝ち点3が取れなかったので、成長を感じるけれど、突き詰めなければいけないことはまだまだ多いなと感じました。

――ご自身の得点シーンを振り返っていかがですか

 ペナルティエリアでボールを持ったら自分でシュートを打つということを課題にしていて、ターンからのシュートをたくさん練習してきたので、その成果が出たシーンだったと思います。

――前期対戦時はシュート1本で終わるような展開だったのに対し、具体的にどんなことが成長を感じられる部分でしたか

 前期は引いて守ってワンチャンスを決めて勝てるか、という戦い方だったと思いますが、今回は自分たちでボールをもつ時間もありましたし、CKを取ったりとか、引いて守るというよりは自分たちから守備をして前で奪うというところができたのは良かったと思います。

――前半良いかたちで終えた中で、後半は2点目をとりに行きたかったのか、守りに入るつもりだったのか、チームとしてどんな雰囲気でしたか

 相手も勝ちにきていましたし、あそこで守りに入ってしまえば絶対にやられてしまうと思っていたので、追加点を狙いつつ全員でゴールを守るという共通認識の下でプレーしていました。

――どういったところに敗因があるとお考えですか

 やっぱりクリアを大きくしきれないところを拾われたりとか、前からハメにいった時にハメきれずに空いたスペースを使われたりとか、(プレスに)いくところのいかないところの判断など、課題はたくさん見つかったと思います。

――現実的に目指すところは4位になってくると思います。あと2節、どのように戦っていきたいですか

 今日出た成果と課題をしっかりと見つめ直しながら、残り2節勝ち切って終われるように、全員でまた頑張っていきたいです。