上位進出に向けて手痛い勝ち点1 MF三谷の関カレ7節ぶり得点も後半失速

ア式蹴球女子
第37回関東大学女子サッカーリーグ
早大 1-0(前半)
0-1(後半)
日大
【得点】
(早大)15分:三谷和華奈
(日大)55分:久保華恩

 関東大学女子リーグ(関カレ)は後期第7節を迎えた。ア式蹴球部女子(ア女)が主導権を握った前半14分、最終ラインのDF田頭花菜(スポ3=東京・十文字)からのスルーパスに抜け出したMF三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)が、冷静に決めて1-0とする。しかし後半立ち上がりに相手に押し込まれる時間が続くと、55分に右サイドを崩され失点。その後ア女がペースを握ったが得点は生まれず、悔しいドローでの決着となった。

 

左サイドで上下動を繰り返したDF浦部美月(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)。強度の高さが目立った

 前期は2-0と完勝した日大戦。この日ア女は、西日の差し込むホーム・東伏見にて日大を迎え撃った。開始直後こそ日大の勢いに押されたア女だったが、徐々に流れを掌握。13分にはエリアの角、いわゆる「ハーフスペース」でボールをおさめたMF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)が、抜け出したMF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)にスルーパス。笠原のシュートはネットを揺らしたが、惜しくもオフサイドの判定となった。そして14分、最終ラインからボールを運んだ田頭から、左サイドから相手ラインの裏に飛び出した三谷へ地を這う鋭いスルーパスが通る。受けた三谷は迷わずゴールへと快足を飛ばし、冷静にキーパーの右を射抜き1-0。貴重な先制点をもぎ取った。33分にはコーナーキックの場面、クリアボールを後ろで拾ったDF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)からMF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)、落としを受けた笠原のクロスに三谷が合わせたが、キーパーに防がれてしまう。46分にも三谷の左サイドからのクロスに、逆サイドから夏目が走りこみシュートを放ったが、ボールのバウンドを上手く捉えきれず枠外へ。ア女の波状攻撃は続いたが、追加点を得ることなく前半を1-0で折り返した。

 

三谷の得点を喜ぶ選手たち

 後半頭からFW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)を投入したア女。試合展開は、前半とはがらりと様変わりし日大ペースとなる。51分には右サイドを突破されるが、築地が戻りエリア内ながらキレのあるタックルで何とかブロック。しかし55分、再び右サイドで裏を取られると、マイナスに入ったクロスを決められ1-1。相手ペースとなった時間帯に関しては「奪った後、キーパーまで下げてもう1度始めるというプレーが多く、流れを変える意味でももっとシンプルにサイドの裏を狙っても良かった」と後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)も反省を述べた。反撃に出たいア女は70分、コーナーキックをファーサイドで築地が合わせたがキーパー正面。82分には途中交代のMF大山愛笑(スポ1=日テレ・東京ヴェルディメニーナ)が中盤で受けたパスを背面にフリック。それを白井がワンタッチで縦に通したが、受けた千葉は惜しくも決めきれず。悔しい表情を見せた。89分にはエリア前で受けた大山が、追加タイムにも右サイドにポジションを受けた三谷がシュートを放つも、双方相手の堅守に阻まれゴールとはならず。ア女は最後まで攻めあぐね、悔しい1-1での痛み分けとなった。

 

中盤に入り流れを作った大山。終盤にはシュートも放った

 全体としてア女の試合内容が悪かったか、と言えばそうではない。多くの場面で相手を上回ったが、後半立ち上がりの約15分間、受けに回った時間帯に勝負の分かれ目があった。「私たちが引き分けとか負ける試合はこういう試合が多い。インカレ(全日本大学女子選手権)とか皇后杯(全日本女子選手権)までにしっかり改善していきたい」と三谷。勢いのある相手をいなし、主導権を握り続けられるかどうかが今後、シーズン終盤の課題になってきそうだ。引き分けたが決して悲観すべき内容ではなく、その暇もない。さらなる上位への進出に向け、勝負はこれからだ。

(記事 大幡拓登、写真 永田怜)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 石田心菜 スポ3 大阪学芸
DF 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ4 宮城・常盤木学園
DF 田頭花菜 スポ3 東京・十文字
DF ◎6 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 笠原綺乃 スポ4 横須賀シーガルズJOY
MF 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 三谷和華奈 スポ4 東京・十文字
MF 10 築地育 スポ3 静岡・常葉大橘
MF 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
→HT 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
FW 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
→75分 30 大山愛笑 スポ1 日テレ・東京ヴェルディメニーナ
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――悔しい引き分けになりましたが、90分間振り返っていかがですか

 悔しい結果です。決め切る時に決め切らないと苦しいというのが1つと、相手が勢いよくきた時に1回切るとかスペースに蹴るとか、そういったゲームコントロールの部分ですね。奪った後、前半でやっていたようにシンプルにサイドを使ったりせず、1度後ろまで下げて奪い返されるなど、自ら自分たちの状況を苦しくしてしまった時間帯はすごくもったいなかったかなと思います。それ以外の時間帯に関しては自分たちでボールを保持しながら狙い所をつけていたと思うので、失点した時間帯のもったいなかった部分をしっかり修正して次に臨みたいなと思います。

――前期対戦時には互角の展開が多かったですが、今日の前半は完全にア女が主導権を握っていた印象です。前半押し込めていた理由はどこにあるとお考えですか

 守備の狙い所もしっかりはめれていましたし、多少サイドでいかれることはありましたがそこまで大きく崩れることもなかったです。今自分たちでボールを動かすというところを練習の中でもやっていますし、加えて相手の守備ラインが高ければサイドの裏を狙うとか、その辺の共通認識がチームの中で取れているというところが、保持し続けられた1つの理由かなと思います。

――まず改善したい部分というと、押し込まれた際にシンプルにプレーする方向なのか、そもそもその悪い流れを作らせない方向なのかどちらが優先とお考えですか

 クリアボールが小さくて切りきれずに拾われ、また放り込まれるというパターンは前期から多く課題だと思います。せっかく攻撃が良くなってきているのに、前期で積み重ねたものをまた無くしてしまうのはもったいないですし、前期から「修正しよう」と言ってきたことを一人ひとりが思い出して、その対応面は課題として改善していかなければならないと思います。そこは自分たちの1つの課題ですし、これからやる日体大や帝京平成大などもカウンター狙いで、しかもパワーのある相手ですし、そこの課題の部分は思い出していかなければいけないです。ただ愛笑(大山)が途中で入ってから少しリズムは変わりましたよね。後半始めに中盤のバランスが少し崩れてしまって、美羽(白井)とか前半ボールを触れていた選手がボールに触れなくなっていたことで、つなぎ切ることができず、カウンター攻撃を食らう流れがあったので、そこの崩れ方を修正する、ということもその流れに持っていかせない意味での課題なのかなと思います。その2つを修正しつつ、より自分たちの時間を増やせるようにしたいと思います。

――後半頭からの千葉選手の投入は、前半の良い流れを受けての判断だったと思われますが、結果としては千葉選手の良さが生きてきたのは失点後になりました

 多分少し構えちゃったのかなと。前半みゆきは仕掛けの部分ですごく良いしごとをしてくれましたが、後半和華奈(三谷)と由真(崎岡)をサイドに置くことで両サイドバックの裏が狙えるし、それによってセンターバックも下がらざるを得なくなります。その狙いはあったのですが、まずサイドを使えなかったですね。前半和華奈はかなり左サイドを使えていて、相手を下げさせていたので、後半はより梨々花が生きてくると思ったのですが、あまり上手くいきませんでした。私が思うに、(ボールを)奪った後に下げすぎていたかなと。奪った後、キーパーまで下げてもう1度始めるというプレーが多く、流れを変える意味でもシンプルにサイドの裏を狙っても良かったと思います。そこはもう少し私がしっかりと修正できていたら良かったかなと思います。

――大山選手が投入されてからは中盤の構成も変わりました。そこに関してはどのような印象ですか

 目に見えて流れは変わりましたよね。愛笑は和華奈を走らせるプレーも得意なのですが、和華奈がだいぶ体力的にきていたので、中央を崩していってくれました。順調に上がってきていると思います。

――連戦、強豪との対戦が続きます。どのように準備して戦っていきたいですか

 日体大が日大に勝っているので、日体大はすごく勢いがあるんじゃないかなと思います。前線からガンガンかけてくると思いますし。今の自分たちにとっては、その勢いを抑えたいですし、むしろ自分たちがもっと勢いを出していきたいというところだと思います。ここから上位との試合が続くので、この悔しさはまず明日関東リーグ組が晴らしてくれると思いますし、今日のメンバーも自分たちでそれができるように、もう1つ2つ気合を入れて頑張りたいです。

 

三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)

――試合全体を振り返っていかがでしたか

前半は相手のラインが高いということもしっかり予想していたので、自分自身も背後を狙いながら実際に得点にもつなげられて、先制点も取れたところは良かったです。後半相手も1点取り返す気できていて、前からプレスも激しくなってきて、もう少し最初の段階で背後に出しても良かったのかなと思ったんですけど、切りきれなかったりクリアしきれなかったりというところで、なんとなく悪い流れのまま失点してしまいました。私たちが 引き分けとか負ける試合はこういう試合が多かったりするので、そこはインカレとか皇后杯までにしっかり改善していきたいなと思います。良い課題だと思って次に向けて頑張りたいです。

――ご自身の得点シーンを振り返っていかがですか

試合前に監督に1点決めてくるという感じで宣言していて、決めたらベンチに合図で、という風に言われていたのでしっかり有言実行できました。自分自身の中では収穫はすごく大きなもので、そこはポジティブに考えています 。ただ自分のプレーが良かったからと言ってチームが勝てるわけではないですし、もっと得点のチャンスやアシストできる場面はたくさんありましたし、そこを決めきれるか、上げ切れるかというところはもっともっと課題としてあるので、しっかりと質を上げていきたいと思います。

―― いつもと違うポジションで出場していたと思うのですが、そこに関してはいかがですか

元々ア女にきて1年生の頃とか下級生の頃は右(サイド)しかできなかったんですが、今の監督さんとか前の監督さんが結構積極的に左サイドでも使ってくださいました。その中で4年目として 左(サイド)でも起用してもらえるようになって、 左サイドだとカットインからのシュートとかも打てるので、また右サイドとは違った感覚でまたプレースタイルの幅を広げられるなという感じです。 私の中で右だから左だからというのはあまりないんですけど 、4年間通してできることは 増えてきているなと思っています。

―― 今日の試合の勝負の分かれ目はどんなところだったと思いますか

勢いのあるチームに対してうまくかわせなかったり、真正面からプレスを食らってしまったりというのが私たちのチームとしての今年の傾向だなっていうのがあります。前からプレスかけられてもしっかりサポート作れば、全然ロングボールだけじゃなくて速い ボールではがせると思いますし、中盤とかにもしっかりつけながらできればいなせる選手は中にもいると思います。出し手もそうですし、受け手も準備の早さはもっともっと上げていきたいなっていうところはあります。

――今後の試合についての意気込みをお願いします

明日も関東リーグがありますが、私たちにとって関カレがダメだったから関東リーグがいいってわけではないです。 関東リーグも1位を目指しています。今日試合に絡めなかった選手や絡んでも悔しい思いをした選手っていうのは、いっぱいいると思います。明日の公式戦はやっぱり練習試合とは違うと思うので、良い準備をしてしっかり勝ちにこだわっていきたいです。そこで勝てればチームとしても底上げというか、上を目指す基準は上がってくると思うので、まずは明日の試合も大事にしていきたいなと思ってます。

 

白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)

――まずは試合を振り返っていかがですか

 結構チャンスも多かったですし、前節の良い流れで続けたかったので率直に悔しいです。

――前期対戦時と比較すると、ア女がペースを握っていた時間もより多かったのかなと思います。そこら辺はいかがですか

 前期より攻撃面で練習した成果が出ていて、守備も前半は前線ではめることができていました。ただ後半にかけて、攻撃で奪われ方が悪く、カウンターで攻められることが多くはなってしまったかなと思います。

――前半押し込んでいた中で、後半15分間ほどかなり押し込まれる時間がありましたが、そうなってしまった要因はどこにあると感じますか

 自分たちの課題でもある、悪い流れを断ち切るというところで、なかなか相手の裏までひっくり返せなかったのが要因かなと思います。

――1-1になってからア女が再び主導権を握りましたが、中盤の選手としてどのようなことを意識していましたか

 相手がガッツリプレスに来るので、ワンタッチのパスなどで相手のプレスを避けて、リズムよくいけたらと思って、ワンタッチプレーを意識していました。

――まだまだ強豪との対戦続きますが、意気込みをお願いします

 今週も試合がありますし、まだ連戦が続くのでしっかりと勝ち切って、目の前の相手に負けないように頑張ります。