終盤の1点に泣く 大学女王にリーグ4戦ぶりの敗北

ア式蹴球女子
第37回関東大学女子サッカーリーグ
早大 0-0(前半)
0-1(後半)
東洋大
【得点】
(早大)なし
(東洋大)77分:大箸桜子

 関東大学女子サッカーリーグ前期第9節、ア式蹴球部女子(ア女)はアウェイで東洋大と対戦。前半序盤から前線での守備が効果を発揮し、ア女が主導権を握った。しかしなかなか得点が出ず、相手ペースで試合が進んだところで77分。相手コーナーキック(CK)を中で合わせられ、MF三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)の頭でのクリアボールがゴールに向かい0-1。その後も相手の堅守を崩せず、4試合ぶりの敗戦となった。

 

前半の給水タイム。この日の気温は30度を超えた

 この日の東洋大板倉キャンパスサッカーグラウンドには、強い日差しが降り注いだ。第8節終了時点で2位を走る東洋大のア女との勝ち点差は2。結果次第では順位が交代する、「6ポイントゲーム」となる一戦に臨んだ。ア女は序盤から整備された守備でボールを奪い、チャンスを作る。6分、左から流れてきたボールをもらった三谷が突破し、シュートを放つが正面。7分にも、スローインをMF宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)が受け、グラウンダーのクロスにMF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)が合わせたが惜しくもバーの上に飛んだ。16分には逆に左サイドを突破されクロスを上げられたが、GK石田心菜(スポ3=大阪学芸)が飛び出し弾き出す。20分にも左サイドをFW門脇真依(東洋大)に突破されたが、クロスは逆サイドの三谷が絞ってきてクリアした。30分、ア女がCKを獲得すると、ニアサイドでDF堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)が合わせるが枠外。39分には自陣でボールを失うと、それを運ばれシュートを許したがDF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)が機敏な動きでブロックした。

 

この日もア女の攻撃をけん引した三谷。マッチアップしたのは学連選抜でチームメイトだったDF藤生菜摘(東洋大)

 一進一退の攻防を繰り広げた前半が終わり、勝負の行方は後半へ。72分、右サイドでパスを受けた三谷が中にコントロール。そのまま左足でミドルシュートを放ったがキーパー正面に飛んだ。前半のペースを維持したいア女だったが、じりじりと押される展開に。「自分たちのペースに持っていくにはまず相手陳内に入らないと厳しい。奪ったあとになかなか攻撃につなげられなかったのが、相手ペースになってしまった要因」と後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)。前半からの暑さも手伝って、守備の隙をつかれ始める。そして迎えた77分。相手のCKから中に精度の高いボールが入る。相手のヘディングシュートに三谷が反応し頭でクリアしたが、結果的にネットを揺らされ0-1。攻撃の糸口が見いだせない中で、あまりに痛い先制点となった。その後もア女は主導権を握ることができない。82分には中央を突破されピンチになるが、石田が逆を取られながらも驚異的な反応でセーブ。86分にもディフェンスラインを突破されたが、堀内、夏目が駆け戻りブロックした。結局最後まで反撃の機会を見いだせず、試合は0-1のまま終了。東洋大との順位交代はならず、悔しい4試合ぶりの黒星となった。

 

冷静なプレーをみせたDF杉山遥菜(スポ1=東京・十文字)。裏に走る三谷へのロングボールも通した

 「良い位置でボールを奪っているのに、その後すぐに奪い返されてしまったり、ゴールまで行ききれなかったりする部分が多かった。ア女ペースの時間があった中でゴールを奪えなかったのが私たちの現状だなと感じた」(後藤監督)。前半は主導権をにぎったがただ一つ、ゴールが遠かった。ハイプレスを展開する以上無視できない、終盤におけるプレス強度の低下も目立った。「攻め込まれた中でもディフェンスラインは体を張って守ってくれていたと思う。そこに前線がどうやって応えられるかというところは課題」と話したのはMF後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)。大学屈指の強豪と対戦したことで、これまでも存在を否めなかった課題が顕在化したとも言えよう。苦しい時期を迎えてもシーズンは続く。次節の帝京平成大戦、その後も続くリーグ戦を戦いながら、課題は体当たりで解決していくしかない。

(記事、写真 大幡拓登)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 石田心菜 スポ3 大阪学芸
DF 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ4 宮城・常盤木学園
DF 25 杉山遥菜 スポ1 東京・十文字
MF ◎後藤若葉 スポ4 日テレ・メニーナ
MF 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 笠原綺乃 スポ4 横須賀シーガルズJOY
MF 三谷和華奈 スポ4 東京・十文字
MF 10 築地育 スポ3 静岡・常葉大橘
MF 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
→64分 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
MF 11 宗形みなみ スポ2 マイナビ仙台レディースユース
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――上位対決になりましたが、90分間振り返っていかがですか

 これが今の、ア女の現在地なのかなというのが正直な感想です。

――前半はア女ペースの時間も多くあったと思いますが、そのあたりの手応えはいかがですか

 この1週間準備してきたことがしっかりと出せたと思います。ただせっかく良い位置でボールを奪っているのに、その後すぐに奪い返されてしまったり、ゴールまで行ききれなかったりする部分が多かったかなと。確かにア女ペースの時間はあったんですけど、そこでゴールを奪えなかったのが私たちの現状だなと感じました。

――後半は相手も変えてきたのかなとは思うんですが、前半うまくいっていた部分がはまらなくなった感覚はありましたか

 そもそも後半の入りが悪かったです。自分たちのペースに持っていくにはまず相手陳内に入らないと厳しいですし、その中で奪ったあとになかなか攻撃につなげられなかったのが、相手ペースになってしまった要因だと思います。相手も後半の入りでロングボールを蹴ってきて、それを回収したはよいものの、その後の作りができていなかったというのも改善点の一つかなと思います。

――リーグの首位が交代しました。山梨学院大とは違った強さがあったと思いますが、東洋大に対しての印象はいかがですか

 去年ともベースは変わっていないですし、東洋大、という感じでした。どちらかといえば自分たちの甘さに目を向けて突き詰めていかないと、勝ち点を積み重ねていくことが難しくなってしまうかなと。ただ逆に言えばそこを突き詰められれば自分たちのリズムで、守備から入れる良いチームになれると思ってもいます。まだリーグ前期中で、いくらでも(順位は)ひっくり返ると持っているので頑張っていきたいと思います。

――結果としては敗戦になりましたが、前半の守備を含め収穫も多かったと思います。具体的にどんなことを得られましたか

 もちろん前半の守備のところやサイドチェンジなど、結果だけでなく出来たことは選手たちに自信にして欲しいです。ただ(大学)日本一、WEリーグを撃破しての皇后杯ベスト8という目標を掲げている以上、4年生を中心にもっと危機感をもって、できているからこそ積み上げていきたいですし、時間はあるとは言えど有限なので、選手も私自身も危機感をもってチームを作っていかないと間に合わない、というところを突きつけられた1試合でした。

――6月は関カレも関東リーグも残っていますが、どのような準備をしていきたいですか

 とにかくまず明日、南葛とやるということで。前期は私たちも引き分けでしたし、非常に強い相手だと思うのでしっかり戦っていきたいと思います。関カレ帝京平成大戦に関しても、内容はこだわりながらとにかく落としてはいけない試合ですし、もう一度気を引き締めて準備していきたいです。

 

後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)

――試合を振り返って率直にいかがですか

 東洋大は(パスを)つないでくる手強い相手だということは分かっていましたし、この1週間チーム全員で良い準備をしてきました。前半は自分たちのペースで守備もはめて、ということができていたのですが、後半相手も修正してきた中で点を取りきれずセットプレーから失点して負けてしまう、というのが今の自分たちの現状で立ち位置なんだろうなと感じました。

――前半は相手のアンカーの中心選手を抑えるなど対策してきたかたちがハマったという印象でした。そういったところの手応えはいかがですか

 今週ずっとスカウティングの中であそこは消していこうという話はしていたので、フォワードの2枚含め、全員で相手の1番やりたいことをやらせていなかったというのはよかったと思います。ただ相手もそこを消されてきたら改善はしてくると思いますし、その段階から一歩先へ進むという意味でも成長しなければならないと感じました。

――山梨学院大が首位に立っていましたが、山梨学院大とは異なる技術的、戦術的な強さもあったと思います。今季の東洋大に対してはどのような印象をもちましたか

 大学サッカーの中では珍しいつなぐサッカーをしてきますし、そこを目指すわけではないですが蹴らないという自分たちの良さに関しては共通しているかなとも思います。東洋大とは対戦したかったですし、実際戦ってみて上手かったなと思うところもありながら、自分たちが突き詰めていけば通用する部分は多くあると思ったので、後期戦う際には絶対勝つことができるように積み上げていきたいです。

――結果としては0-1の敗戦になりましたが、収穫も多かったと思います。具体的に挙げるとするならどういった部分ですか

 攻め込まれた中でもディフェンスラインは体を張って守ってくれていたと思いますし、そこに前線がどうやって応えられるかというところは課題かなと思います。これだけ守ってくれていても点が取れないとどうしても難しくなりますし、どんなに流れが悪くてもシュートを打って、流れを変えていきたいと思いました。

――前半は特に暑さもあったと思います。終盤は疲れましたか

 相手にボールを持たせているというマインドでプレーしているとはいえ、持たれていたので必然的に走る距離は長くなったのかなと思います。ただ相手も暑いのは同じですし、ここからどんどん暑くなっていくと思うので、そういったフィジカル面は上げていきながら頭も動かして90分間戦い続けられる強さをつけていきたいです。

――連勝はストップしましたが、東洋大相手に互角に渡り合った試合でした。この経験をどのように生かしていきたいですか

 ここまで2敗している相手が上位のチームというところで、自分たちの甘さ、弱さや立ち位置を痛感しました。ただそこで下を向いている暇もないですし、逆にやるしかないという感じになったので、次の帝京平成大戦、まずはそこに勝てるように1週間全員で良い準備をしていきたいです。

 

笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)

――試合を振り返って率直にいかがですか

 前半は自分たちの思う形で積極的に守備をかけて奪って、攻撃につなげるというよい進め方ができていました。ただ暑さもありましたし、相手が動きを変えてきたのもあって、後手になってしまい個の面でも緩さが出てしまったのかなと思います。

――現在首位を走る東洋大への印象はいかがでしたか

 例年戦っていた中では特に前半、手応えのあった試合でした。自分たちの流れがきている時間帯に先制点を取るのが鍵になってくるのかなと思います。あとはパスを繋いでくるチームなので、マークの受け渡しなどの連携面も重要になってくると思います。

――試合を通して得た収穫や課題はありますか

 暑さはどうしようもないと思うので、頭を切らさないというか。予測や声かけ、集中力を切らさずに一個一個緩みがないようにプレーしていきたいです。

――次節の対戦相手帝京平成大は順位も近い相手だと思いますが、次節に向けて意気込みをお願いします

 順位が同じくらいの相手ですし、ここでしっかりと勝利して勝ち点3をつかんで、順位も上げられるように頑張っていきたいです。