強力駒大攻撃陣を封じるも一点が遠く 敵地での一戦はスコアレスドロー

ア式蹴球男子
関東大学サッカーリーグ戦 2部 第17節
早大 0-0
0-0
駒大
【得点】
(早大)なし
(駒大)なし

  前節、攻撃陣が爆発して産業能率大相手に快勝したア式蹴球部(ア式)。今節の相手はア式が苦手としている関東2部首位の駒大。前半はほとんどチャンスをつくることができず、立ち上がりから相手に長い時間試合のペースを握られ続ける。それでも集中した守備でピンチをしのぎ前半を0-0で折り返す。後半は一転してア式も多くチャンスをつくる展開に。しかし、DF安斎颯馬(社3=青森山田)のクロスなどで決定機を迎えるも、シュートの部分で精彩を欠き得点を奪うことはできない。一方、ア式ディフェンス陣は前半に引き続き粘りの守備を見せゴールを割らせず、試合は0-0のままタイムアップを迎えた。

 

ドリブルをする安斎。クロスを中心に右サイドで多くのチャンスを演出した

  前半は立ち上がりから駒大ペースで進む。開始直後からロングボールを軸にア式ゴールに迫ろうとする駒大に対して、DF神橋良汰(スポ3=川崎フロンターレU18)、DF中谷颯辰(基理4=静岡学園)の両センターバックが体を張った守備ではじき返していくというシーンが目立った。8分にはコーナーキックのピンチを招くもFW奥田陽琉(スポ4=柏レイソルU18)が頭でクリア、続く15分のコーナーキックは相手にうまく合わせられるが、シュートはわずかに枠の外へ。20分を過ぎたあたりからア式がボールを持てる時間が多少できたものの、決定機には結びつかなかった。33分には相手の強烈なミドルシュートをGKヒル袈依廉(スポ3=鹿児島城西)が好セーブで防ぐ。さらに36分に駒大の波状攻撃でピンチを迎えるが、ア式守備陣の粘り強いディフェンスでここもしのいだ。その後も、相手のロングスローなどで押し込まれる展開が続いたが最後まで集中した守備を見せて得点を許さなかった。しかしア式の前半シュートは0本、終始圧倒されたまま前半を0-0で折り返した。

 

味方に指示を送るヒル

  後半の立ち上がりは両者ともにボールを持ち合う拮抗(きっこう)した展開となった。52分にはピンチを迎えたがヒルが再び好セーブを見せる。続く57分、MF植村洋斗副将(スポ4=神奈川・日大藤沢)がチーム初シュートを放つも、これは枠を捉えきれず。それでもこのシュートを皮切りに徐々にア式が相手ゴールに迫るシーンが増えていった。その中で迎えた69分、右サイドでボールを受けた安斎がカットインで中に入りペナルティエリア内で待つ植村の足元にパス。しかし、植村のシュートはうまくミートすることができずキーパーにキャッチされる。続く70分、後ろからのグラウンダーパスで奥田が裏に抜け出してキーパーと1対1の決定機をつくるが、奥田の後ろから戻ってきた相手ディフェンダーのスライディングに阻止されてしまう。ア式のチャンスはまだ続く。74分には再び右サイドでボールを受けた安斎が縦に駆け上がりクロスを上げると、スライディングで合わせたのはMF小松寛太(教4=東京・早実)。しかし、これもうまくボールが足に当たらず枠を捉えることができない。続く79分、途中出場のFW駒沢直哉(スポ3=ツエーゲン金沢U18)がうまく裏に抜け出しボールをキープすると中に走り込んできた植村にボールを渡す。植村は迷いなくシュートを放ったが、これは惜しくもキーパーの正面に。さらに84分、右サイド高い位置でボールを持ったMF山市秀翔(スポ2=神奈川・桐光学園)が後ろで待つ安斎にパス、ボールを受けた安斎がすぐにアーリークロスを入れると中で待っていたのは駒沢。完璧なヘディングで合わせたように見えたがボールはわずかに枠の左側に外れてしまう。幾度となく決定機を迎えたア式だったが、ゴールは遠かった。その後試合終盤にいくつかピンチをつくられたものの、ア式ディフェンス陣の粘り強い集中した守備で防ぎ切り、そのまま試合はタイムアップ。前半と対照的にア式の時間をつくることはできたものの、得点を奪うことはできず結果はスコアレスドローに終わった。

 

相手と競り合う神橋。エアバトルでは多くのシーンで競り勝ち、ロングボールを多用してくる相手への対策としての監督の起用にプレーで応えた

  前半攻め込まれた展開が続いた中で神橋、ヒルらの好守で得点を許さず、後半にかけて徐々にペースをつかんでいったア式。決定機は何度もつくることができていただけに、この引き分けという結果はもちろん悔しいものだろう。特に「最後誰が決めるのか」(兵藤慎剛監督、平20スポ卒=長崎・国見)という課題は再び浮き彫りとなった。これは昇格に向けて、強い早稲田のサッカーを取り戻すために、必ず乗り越えなければならない大きな壁だ。劇的な改善は簡単ではないが、それでも今季の残り5試合の中でどのようにチームとして向かい合い、乗り越えていくのか注目していきたい。この試合の内容は決してネガティブな面だけではなかった。リーグ屈指の攻撃陣を擁する首位チーム、前回対戦では4失点を喫して敗戦した相手に無失点という結果は自信につながるものだ。ロングボールを多用してくるチームに対してチーム全体できちんと対策をしてそれが試合で発揮されたということは、残り少ない今季の試合を戦う上での好材料だろう。首位チームと敵地での対戦という難しい試合をなんとか引き分けで終えたが、ここからは昇格に向けてもう本当に一戦も落とせない日々が続く。普段の練習からチーム一丸となって、ここまできた自分たちを信じて、残りわずかとなった今シーズンを最後まで駆け抜けていってほしい。

(記事 和田昇也 写真 髙田凜太郎、永田怜)

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ヒル 袈依廉 スポ3 鹿児島城西
DF 安斎 颯馬 社3 青森山田
DF 中谷 颯辰 基理4 静岡学園
DF 27 神橋 良汰 スポ3 川崎フロンターレU18
DF 森  璃太 スポ4 川崎フロンターレU18
MF 小倉 陽太 スポ4 横浜FCユース
MF 福井 寿俊 文構4 東京・国学院久我山
MF 14 山市 秀翔 スポ2 神奈川・桐光学園
→90+1分 15 東  廉 スポ3 清水エスパルスユース
MF 10 ◎植村 洋斗 スポ4 神奈川・日大藤沢
MF 11 小松 寛太 教4 東京・早実
→85分 22 平野 右京 人4 兵庫・滝川
FW 奥田 陽琉 スポ4 柏レイソルU18
→72分 18 駒沢 直哉 スポ3 ツエーゲン金沢U18
◎=キャプテン
監督:兵藤慎剛(平20スポ卒=長崎・国見)

関東大学サッカーリーグ戦2部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
駒大 36 17 11 35 19 16
関東学院大 32 17 10 45 23 22
山梨学院大 31 17 33 17 16
立正大 31 17 28 16 12
日体大 28 17 26 23
早大 26 17 34 22 12
順大 24 17 27 29 -2
立大 23 17 20 24 ー4
産業能率大 22 17 26 31 -5
10 青学大 20 17 26 28 -2
11 作新学院大 17 13 12 44 -32
12 亜大 17 13 44 -36
第17節終了時点
コメント

兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)※一部囲み取材より抜粋

――前半は後ろからつなぐというよりシンプルに前にボールを蹴っていたのは戦略でしたか

 いやつなぎたかったのですが相手の圧力にちょっとやられていたので、だったら後ろにひっくり返して、相手を自分たちのゴール方向に向けて走らせるプレーの方がいいのかなと思いました。けどそれでも、前半は相手の前にロングキックも落ちて、ひっくり返すプレーが少なかったので、コーナーキックもゼロですし、シュートに関してもゼロだったというところがあったので、じゃあ後半はそういうところをやりながら、(敵陣の)奥まで行ったら自由にやれるからというところでは、少しずつ良くなってきたり、相手のプレッシャーも連動できなくなってきている中で、中盤のフリックやサイドの崩しが有効になってきたので、これを前半のうちに数本見せることができたらもっと勝つチャンスを広げられたと思います。立正戦の入りから比べるとこの2試合で積み上げたものはあるかなと思いながらも、自分たちは3ポイントを取らないことには(上に)進めないです。またこれで引き分けすらも負けと同じという試合になってくるので、これをしっかり生かして、次の試合には向かわないといけないなと思います。

――駒沢直哉選手(スポ3=ツエーゲン金沢U18)を入れて、得点が取れていれば兵藤監督のプラン通りだったと思いますが

 そうですね。システム変更をするか、人を変えるかというところでちょっと迷っていました。そのタイミングで、人を変える時間をもしかしたらもう1個早くできたかもしれないしというところは、こちら側の反省でもあります。けど、そこの決断に耐えながら、なんとか良くなるなという兆しも自分の中では見えていました。そこをきちんとすり合わせながら、どっちがというところの決断(を迷ったところ)はやっぱり采配ミスかもしれないです。それでも、そうやって思わせてくれるような中身にはなってきていました。昔だったら決断を早くできたのですが、今は(ピッチの)中で自分たちから少しずつ変えようと共有する力だったり、それで実際に変わってくる部分も増えたので、そこはポジティブながらも、もしかしたらあと5分ぐらい(交代が)早かったらもっと面白いことが起こったかもなという部分もあるので、もう1回見直して自分の経験にしたいなと思います。

――前節、今節と交代カードを切るタイミングが遅くなったという印象がありましたが、それは先ほどお話にもあった、ピッチ内で選手たちが自ら変えようとしているのが伺えるからというのはありましたか

 外から伝える部分を少しずつ増やしてはいる中で、(ピッチの)中でしっかり変えようとして実際にそれを表現できているので、なら今、もう少し待った方がいいのかなというふうになっています。それでファーストチョイスの交代という部分でも、そんなに悪くないので、どこのタイミングで変えるかというところを、昔だったらこれちょっともう(変えないといけない)というところがあったのですが、それがある一定のレベルまで来てるからここで交代が遅くなったり、特に今日のゲームの流れだったらいきなり(試合に)入ってセカンドの対応やあのゲーム強度に対応しなければならないので、少し相手が落ちるのを待たないといけない、スッと入るためにはというところもちょっとありました。そこはもっと早かったら何か起きたかもしれないし、それもどっちにも転ぶかなと思っています。けど、やはり勝てるチャンスをもっと増やすために、次何ができるかっていうところだと思います。

――「常に3点以上取れるチーム」を目指している中で、この試合は無得点に終わりました。それでも、守備陣はリーグ屈指の攻撃力を誇る駒大相手に無失点で終われたというのは手応えを得た部分もあったと思いますが、いかがでしたか

 やはり前期に比べて後期の方が圧倒的に守備力が上がってくるのは、成長の段階なので普通だとは思っています。その中での攻撃力。確かにリーグ戦で一番、二番に点を取っているのは駒沢で、これだけダイレクトに(ボールを)入れられて、セカンドボールのシュートも枠を捉えてくるというところは、鍛えられているというか、ダイレクトのキック(の精度)も、早稲田より正直高いと思います。ただ、前期は4点取られたのを0に抑えたというのは、組織の構築という部分では前進かなとは思います。それでも、やっぱりあそこで仕留められなかったというのは、まだまだ勝負強さというところに至ってないです。あそこで誰が(決める)という、チームで残りの3分の1のゴール前まで運べてもどうしても個の能力というところになってくるので、もっと攻撃のチャンスを増やすためにしっかりとトレーニングを促していきながら、最後の質というところはもっと向き合ってもらってというところの、両輪で点を取れる回数を増やしていきたいなと思います。守備が良かったからオッケーっていうところでは当然ないと。これを3-0で終われるように、次の試合に向かっていきたいと思います。

GKヒル袈依廉(スポ3=鹿児島城西)

――駒大相手に無失点で終わりました。試合全体を振り返っていかがでしたか

 伝統ある駒沢のこの戦い方は、1年生の時からやり通されていました。逆にそういう戦い方を知っているからこそ、自分たちのプランとして1週間積み上げることができました。うまくコミュニケーションを取りながら今日に100パーセント出し切れたところが自信になったところでもありますし、来年以降も続けることだと思います。

――駒大に対してプランがあったというお話でしたが、具体的なプランのところを教えてください

 シンプルに(ボールを)放ってくる相手に対して、ファースト(ディフェンスを)まず誰がやっていくのかというところと、その次のセカンド(ボール)のカバーリングのところ、(ボールを)つけられる前にしっかりとコミュニケーションを取って、状況把握をしながらやっていました。応援がないからこそそれができやすかったこともありますし、プラスに捉えてできたなと思います。

――駒大の割り切った戦い方に対して、早大の攻撃の組み立て方としては後ろからつなぐのか、逆にロングボールで相手の圧力をいなすのかさまざまなやり方があったと思います。そこはどのように考えていましたか

 僕たちとしては一番後ろからつなぐというプランがあった中で、チャレンジしようとしたのですが、相手がファースト(ディフェンス)からハメにきていたこともあり、(ビルドアップを)あまり無理せずやっていたところもありました。ロングボールを蹴ってから、駒沢(直哉、スポ3=ツエーゲン金沢U18)とか、陽琉君(奥田陽琉、スポ4=柏レイソルU18)とかが、競り勝った後のプレーでつなげようというところを意識できました。最初は後手を踏んでなかなかつなげない部分、圧倒された部分もありましたが、それが試合を通して徐々に徐々に改善できたところは、この試合だけじゃなく、他のボールを蹴ってくる相手にも生かせられたらなと思います。

――ロングボールやセットプレーをストロングポイントとする相手に対して、ヒル選手のハイボール処理は試合全体を通して安定していたように見受けられましたが、手応えはいかがでしたか

 ロングボールに加えてロングスローをやってくるという分析がありました。そういった空中戦では自分が一番(身長が)高いので、出られたらはっきりと分かりやすく声を出して、セカンド(ボール)の対応をしてもらうという声掛けができていたと思います。周りとの支え合いもあった中で僕のプレーもあるので、すごく感謝しています。

――リーグでも屈指の攻撃力を誇る駒大相手に無失点で終われたことは自信につながると思いますが

 ガンガン来る相手に無失点で抑えられたところは自信になったと思います。点を取って負けたり、点を取られて勝った試合よりも、0-0の引き分けで無失点で終われた方がキーパーとしてはうれしいので、これからも無失点にこだわっていきたいです。

――今後の試合に向けての意気込みをお願いします

 もう勝つしかないので、もちろん無失点で、後ろからパワーを持って前線に気持ちよく点を取ってもらえるようなゲームを、残り5試合しっかりと心掛けたいと思います。

DF神橋良汰(スポ3=川崎フロンターレU18)

――試合を振り返っての感想をお願いします

 元々駒沢大学のやってくることは分かっていたので、それに対してどれだけ対応できるかというところで自分たちがゼロで抑えたというのは、すごく収穫だったかなと思います。けどやっぱりチームとして、今シーズン攻撃的なチームを目指してるという面で、駒沢相手にどれだけ点を取れるかというところではやっぱり得点力不足というところが課題かなと思いました。

――前半攻め込まれる時間が続いた中でご自身のヘディングで跳ね返すシーンも多くありましたがあれは想定内でしたか

 前期一度(駒大よ)やっていますしある程度のイメージが分かっていたので、FWに対してほぼ全勝する、しなきゃいけないなと思いました。監督の起用に対して答えなきゃいけないという気合を持ってやるというので、そこはモチベーション高くやれたかなと思います。

――駒大対策としてどのようなことを1週間かけて取り組んできましたか

 シンプルにボールを蹴ってくる相手に対して対応するというところも、チャレンジアンドカバーはいつも通り大事になってきますし、自分がすごくキーになるなというのは自分でも分かっていたので、そこは1週間かけていい積み上げができたと思います。

――後半はボールを持てるシーンやチャンスが増えましたが、ハーフタイムでの指示や何かここが変わったなって思う部分はありますか

 元々試合入る前から準備の時点で蹴ってくる相手に対して自分たちも蹴るとどうしても分が悪い部分もありますし、準備してる量は違います。自分たちは下からつないでというところを今シーズン目指している中で、自分としてはまだチャレンジが足りてないなと思いますけど、少しずつ立ち上がり10分か15分あたりぐらいでちょっとシフトチェンジしようっていうふうになって繋ぐっていうのは、少しずつチャレンジができましたけど、ちょっと力不足でした。

――惜しくも引き分けというかたちで終わってしまいましたが、残り5試合落とせない試合が続くと思います。今後に向けての意気込みをお願いします

 本当におっしゃってる通り自分たちも負けられないですし、今日首位に対してどれだけできるかというところでは、勝たなきゃいけなかったのですが、しっかりと引き分けを受け止めて、残りの試合を全勝できるように1週間いい準備をしたいと思います。