厚かった関西王者の壁 早大の日本一への挑戦は2回戦で幕を閉じる

ア式蹴球男子
第47回総理大臣杯全日本大学トーナメント 2回戦
早大 0-1
0-1
関学大
【得点】
(早大)なし
(関学大)15’小西春輝、84’渡邉颯太

 初戦で立命大を相手に3発快勝を収めた早大。2回戦は春の早関定期戦では0ー1で敗れている関西王者・関学大との対戦となった。前半は立ち上がりから拮抗(きっこう)した展開が続く中、15分にコーナーキックから失点。その後も関学大のサイド攻撃に終始苦しめられるが、追加点は許さない。後半に入ると一転、早大が流れをつかむ。こちらもサイドを起点に立て続けにゴールに迫るが、なかなか得点を奪うことができない。すると終盤に再びセットプレーから失点。そのまま0ー2で試合終了となり、ア式の総理大臣杯は2回戦で幕を閉じた。

 

試合後に挨拶をする部員たち

 この試合、最初にビックチャンスを迎えたのは早大。6分、左サイドでボールを持ったMF小松寛太(教4=東京・早実)から右サイドのMF山市秀翔(スポ2=神奈川・桐光学園)へと大きく展開。そこへ走り込んできたDF石川真丸(スポ3=名古屋グランパスU18)、そしてエリア内にいたMF成定真生也(スポ3=神奈川・日大藤沢)へとつなぐと、成定が倒れながらもゴール前にボールを供給する。このボールに対する相手のクリアが甘くなり、最後はMF伊勢航(社3=ガンバ大阪ユース)がエリア内から強烈なシュートを放つが、惜しくも相手ゴールキーパーに阻まれた。両者拮抗(きっこう)した展開が続いていた序盤であったが、15分、コーナーキックから相手に先制を許してしまう。ここから試合は完全に関学大のペースに。18分には右サイド、23分、33分には左サイドを完全に崩されピンチを迎える。それでも最後のところで体を張った守備を見せた早大。追加点は許さず0ー1で前半を終える。

 

先発抜てきとなった藤本

 「自分たちの時間を自分たちで持ってこれた」と兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)が話すように、後半の立ち上がりは一転して早大が主導権を握り、立て続けに相手ゴールに迫る。最初のチャンスは49分、センターサークル付近でボールを受けたMF植村洋斗副将(スポ4=神奈川・日大藤沢)から、成定、山市へと連続して縦パスをつなぎ、最後は裏に抜けたFW駒沢直哉(スポ3=ツエーゲン金沢U18)がシュートを放つが、ここはキーパーの正面に。その後51分には伊勢、駒沢、DF藤本隼斗(スポ4=柏レイソルU18)、55分には植村、駒沢、MF小松寛太(教4=東京・早実)の連携でいずれも左サイドを崩しエリア内に侵入するが、なかなか得点には至らない。さらに58分、内寄りにポジションを取っていた藤本が小松からのスルーパスを受けクロスを供給。このボールにファーサイドの駒沢が反応するが、ボールに対して滑り込むかたちになってしまいミートすることができず。このチャンスでも得点を奪うことができなかった。再三相手ゴールに迫りながらもフィニッシュの精度を欠いた早大。それ以降は決定的なチャンスをつくることができず、ボールをつなげたい場面でのミスも出始める。すると84分、フリーキックのこぼれ球から縦パスをつなげられ失点。試合終盤に痛恨の追加点を許してしまった。試合はそのまま0ー2で終了。ア式の総理大臣杯は2回戦で幕を閉じた。

 

試合後涙を見せる小倉

 「(後半立ち上がりで)決め切れなかったところが完全に流れを持ってこれなかった要因だと思います」と兵藤監督。後半立ち上がりのチャンスをものにできれば全く違う試合展開になったことは間違いない。自分たちの時間帯で確実に得点を奪うことができるか。それが今のチームの課題の一つであり、関学大のような強いチームとの差なのだろう。また、この試合ではシーズンを通して課題となっているセットプレーでまたしてもほころびが出てしまった。セットプレーからの失点をどう減らしていくか。これは今後のリーグ戦を戦う上でも一つの鍵になりそうだ。

 この敗戦で早大の日本一への挑戦は終わった。しかし、1部昇格というもう一つの目標達成に向け、全国の舞台で戦ったからこそ得られたものは大きい。「自分たちに足りないところも分かりましたし、今後どうやっていけばいいかも相手から学べた」(GK山田怜於、スポ4=神奈川・鎌倉)。「ネガティブな部分に目が行きがちですけど、ポジティブな部分もたくさんあるので前向きに取り組んでいきたい」(伊勢)。今大会の経験と学びを生かし、10月に再開するリーグ戦でまたさらに成長したア式のサッカーを見せてくれることに期待したい。

(記事 安岡隼人 写真 髙田凜太郎、永田怜)

 

早大スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 山田 怜於 社4 神奈川・鎌倉
DF 石川 真丸 スポ3 名古屋グランパスU18
DF ◎平松 柚佑 社4 山梨学院
→74分 福井 寿俊 文構4 東京・国学院久我山
DF 小倉 陽太 スポ4 横浜FCユース
DF 12 藤本 隼斗 スポ4 柏レイソルU18
→84分 13 神橋 良汰 スポ3 川崎フロンターレU18
MF 10 植村 洋斗 スポ4 神奈川・日大藤沢
MF 24 伊勢  航 社3 ガンバ大阪ユース
MF 14 山市 秀翔 スポ2 神奈川・桐光学園
MF 26 成定 真生也 スポ3 神奈川・日大藤沢
→61分 17 本保 奏希 スポ2 JFAアカデミー福島
MF 11 小松 寛太 教4 東京・早実
→78分 22 平野 右京 人4 兵庫・滝川
FW 18 駒沢 直哉 スポ3 ツエーゲン金沢U18
→77分 26 鈴木 大翔 スポ1 ガンバ大阪ユース
◎=キャプテン
監督:兵藤慎剛(平20スポ卒=長崎・国見)

コメント

兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)

――試合全体を振り返っての感想お願いします

 試合の入りで、少し緊張気味だったのかなというところでは、イージーミスが多かったりだとか、そういう部分でチームに流れを持ってこれなかったです。そこら辺のメンタルのところのもろさが、まだまだ課題としてあったのかなというところだったり、チームとして戦い方的には前半は引き込んで0-0の状態を長くしたり、1-0の状態というのが理想のプランだったのですが、セットプレーから失点してしまいました。後半、相手を見ているとちょっと緩くなる傾向があったので、後半勝負だなというところはありました。そこで前半も含め仕留め切れないところがあったりだとか、自分たちの時間帯で点が取れなかったことが痛かったのかなと思います。

――早い時間での失点はやはり想定外でしたか

 やられるならセットプレーかなというところはあったので、その中で気持ちを切らさずにやりたかったというところと、どうしても相手がボールを動かすチームではあったので、早めに失点してしまうとミドル(ゾーン)に引き込むというよりもボールを持たれるふうになっちゃうのかなというのはありました。前半中に変えると、全員に伝わらないなど難しい部分があるのかなと思ったので、後半の頭から(前から)はめに行くというところで、チームが混乱しないように、時間帯的にはハーフタイムが終わった後しかやり方を変えることができなかったのかなと思います。

――後半相手が緩くなるという話もありましたが、後半の開始直後は自分たちの時間もつくれていました。ハーフタイムには具体的にどんな指示を送りましたか

 相手のボールの動かし方だったりはみんなも把握できている部分ではあったので、そこでどういうはめ方をしようというのをチームとしてしっかり共有して、それを後半の10分ぐらいでフィットさせて、相手も何もできなかったような状況を作れました。その中から、自分たちの時間帯を自分たちで持ってこれたというのが収穫かなというふうには思いますけど、その先に誰が点を取るんだというところで、やはり決め切れなかったところが完全に流れを持ってこれなかった要因だと思います。1点取ったら変わっていたというか、相手のメンタルも少し落ちたと思うので、そういうところでは0を1にするプレイヤーが誰なのかというところだったり、チームとしてももっとオプションを増やすべきだったというふうに思います。

――決め切る部分も含めて、監督自身が一番感じた差はどこでしたか

 凌ぐところで凌いで、決め切るところで決め切るというところ。それにセットプレーの重要さ、自分たちにチャンスはありながらも決められず、逆に失点を0で抑えられるかどうかというところもあります。今年の早稲田に関して言えば、1点取られても、2点、3点取れるようなチームにするという中では、0に抑えられたというところも課題かなと思いますし、必ずしも全部が抑えられたというわけではないので、この微々たる差を追求していくには本当に日々の取り組みを積み上げていくしかないと思います。全国、関西1位、そういった相手を倒すにはまだまだ力が足りなかったですし、積み上げが足りなかったのかなと思います。

――日本一という目標には届きませんでしたが、リーグ戦はまだまだ続きます。この経験をどうこれからのチームに還元していきたいですか

 やはりこの「悔しい」をこの一瞬で終わらせないことは大事かなと思います。日本一という称号自体はなくなったのかもしれないですけど、今年やってきたことが日本一だったということを自分たちが信じ切れるような残りのシーズンにしたいなと思うので、下を向くことなく、もう一つ掲げている(1部昇格や2部優勝という)目標に向かってまた前進していきたいなと思います。

GK山田怜於(社4=神奈川・鎌倉)

――率直に試合を振り返っての感想お願いします

 やはり1失点目のところが一番悔いの残るところです。自分自身のある意味ウィークだとは思っていた、セットプレーのところから実際に失点してしまって、そこから関学さんのペースになって、なかなかうまくいかない時間が続いてしまいました。結果、後半は修正して自分たちのやりたいことができたと思いますが、最初の失点がすごく強く響いてしまった試合だったかなと思っています。

――前半からかなり押されてしまう試合展開でした。立ち上がりのところは今シーズン通しての課題である中で、この試合でもその課題が出てしまったという印象ですか

 自分たちが4-4-2で引いて引き込むというところは、最初から決めていたことではありました。でもやはりそこで引いた中で、縦に入れさせてというところがありましたが、なかなか相手にうまく(ピッチを)広く使われて、最後に1対1をやられてしまっていたので、自分たちの狙いとはまた別のところで、相手の変化についていけずにやられてしまいました。結果的にそれが実際の課題のところにつながったなと思います。

――関西王者相手に一番感じた差はどこでしたか

 ゲームを通した試合運び。このタイミングでしっかり(ボールを)回すだったりとか、相手ににぎらせるとか、意図的に相手をコントロールするみたいなところが自分たちにはまだないところだと思います。自分たちは自分たちがやりたいことをやるというところをメインにしていて、そこはもちろん大事なところではあると思いますが、そこに相手をどう動かすとか、そういった視点はまだ少なかったと思うので、そこが実際に経験できた明確な違いや強さだったと思います。

――これで全国の舞台での試合は終わりましたが、この経験をチームにどう還元していきたいですか

 自分たちは関東で戦っている中で、さっきも言いましたけど関西のトップチーム、 王者と自分たちの実力差だったり、クレバーさなどしっかり相手のものを見ることができました。その中で、自分たちに足りないところも分かりましたし、今後どうやっていけばいいかも相手から学べたと思うので、そこを自分たちに還元して、今まで自分たちがやってきたことをより高めていく精査していくということが、今後の自分たちにつなげられることかなと思います。

――今年掲げていた日本一という目標は達成できずに終わりましたが、1部昇格、2部優勝に向けた戦いはまだ続きます。そこに向けての意気込みをお願いします

 日本一という自分たちが掲げた目標には届かずに終わってしまいましたが、自分たちは去年苦しい戦いをして実際に2部に落ちて、去年の苦しさも覚えていますし、1部でどれだけ自分たちが実力差をつけられるかというところも覚えていました。それを実際、今年2部に落ちて、1年で(1部に)返すというところは誰しもが願っていますし、いろんな思いがありますし、その思いを絶対に無駄にしちゃいけないと思うので、より一層、この学びを生かして1部昇格につなげられるように頑張っていきたいと思います。

――最後に、山田選手自身の大学生活も残りわずかとなります。自身の大学生活の締めくくりという意味でも、残りのシーズンをどのようなものにしたいですか

 大学の最初はやれると思って入学してきましたけどなかなかうまくいかず。その中で、主務も含めて自分がやれることをしっかりやるというところで、人間的にもサッカー選手としても成長できて、今こうやってスタメンで出してもらっています。なので、自分自身が軸となってやるべきことをやるってところは変えずに、しっかりシーズンを終えられるように頑張っていきたいなと思います。

MF伊勢航(社3=ガンバ大阪ユース)

――今日の試合を振り返っていかがでしたか

 前半は自分のシュートチャンス含めて自分たちのシュートチャンスがあったのに決め切れなかったですし、そこで失点してしまったところで仕留める力と守り切る力が足りていなかったと思います。前半に関しては相手に自由にやらせてしまったところがあるので、そこを打開できなかったところが弱さかなと思います。

――前半の流れが悪かったところから、後半流れ変わったところもあったと思うのですがどういうところを変えていきましたか

 ハーフタイムに思い切ってリスクを冒してマンツーマンで前から当たっていこうという話はしましたし、自分たちに失うものはないので前からチャレンジしようという気持ちで挑みました。後半それが機能していたので前半からそれができなかったのが悔しいです。それを試合中に修正できないのが自分たちの弱さだと思うので一回きちんと自分たちでそこに向き合っていきたいと思います。

――関西との差がでた試合となりましたが、関西出身として何か感じることはありましたか

 関西はノらしたらノってくるチームというのは最初から分かっていたのですが、相手の2ボランチのキーマンに自由にやらせてしまいました。相手がうまいのは分かっていたのですが、そこのうまさに対応し切れませんでした。そこのうまさを上回るような自分たちの個の力だったり組織の力が足りなかったので、さっきも言いましたが、そこはもう一回自分たちにベクトルを向けてやっていきたいと思います。

――今日の試合を踏まえてこれからのリーグ戦どのようにしていきたいですか

 今日負けたことで日本一という目標にはチャレンジできませんが、自分たちは1部昇格を目指しています。全国でも今日は負けましたけど、確実に成長できた部分もあると思います。ネガティブな部分に目が行きがちですけど、ポジティブな部分もたくさんあるので前向きに取り組んでいきたいです

――今年の日本一は目指せなくなりましたが、来年に向けて思うところはありますか

 全国に来ないと味わえない雰囲気だったり悔しさだったりはありますし、今日メンバーに入った人、試合に出た人、スタンドで応援してくれた人も含めてやっぱりそこはみんなが感じた部分だったと思います。来年は4年生はいませんけど、4年生の悔しい思いだったり、日本一にチャレンジしたいっていう思いだったりを自分たち3年生以下の下級生がしっかり汲み取って、来年こそは日本一取れるようにやっていきたいと思います。