リーグ戦のリベンジ達成! 山梨学院大を下しアミノ杯初戦を突破

ア式蹴球男子
アミノバイタルカップ2023 第12回関東大学トーナメント大会 兼 総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント関東予選
早大 0-1
2-0
山梨学院大
【得点】
(早大)61’山市秀翔、90+2’植村洋斗
(山梨学院大)38’金津力輝
 

 2023年のアミノバイタルカップ(アミノ杯)が開幕した。関東1部から、各都道府県リーグに所属している大学まで、関東の全ての大学が参加する今大会。6位以内に入れば総理大臣杯の関東代表の権利も獲得することができる。そのため今季は2部での戦いを強いられるア式蹴球部(ア式)にとって、日本一という目標を達成するための挑戦権を得られる数少ないチャンスといった意味でも、重要な大会となってくるのだ。

 そんなア式を含めた1部、2部のチームは3回戦からの出場となる。ア式の初戦の相手は、今季のリーグ戦で一度敗れた山梨学院大。加えて目下リーグ戦4連勝中と絶好調な相手との難しい一戦となった。序盤から拮抗(きっこう)した展開が続く中、38分にクロスから失点を喫し、1点ビハインドで前半を折り返す。それでも、後半は兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)の「もっと相手を動かしてテンポ良くボールを回そう」という指示の下、積極的に相手陣内へと迫るア式。そして61分、クロスのこぼれ球に詰めたMF山市秀翔(スポ2=神奈川・桐光学園)が同点ゴールを決める。これで勢いづいたア式は、交代カードも切りながら攻撃により拍車をかける。迎えた後半アディショナルタイム、エリア内でMF平野右京(人4=兵庫・滝川)がファウルを受けPKを獲得。このPKをMF植村洋斗副将(スポ4=神奈川・日大藤沢)が冷静に決め、逆転に成功する。試合はそのまま終了。2-1で勝利し、見事アミノ杯初戦を突破した。

山市の得点後に喜びを分かち合う部員たち

 11分、右サイドの山市のクロスから、この日久しぶりの先発出場となったFW奥田陽琉(スポ4=柏レイソルU18)が合わせるが、これは枠の外へ外れる。その後はボールこそ保持できるが、なかなか攻め切れないもどかしい時間が続く。シュート本数も増えない中、流れは徐々に山梨学院大へ。すると38分、リスタートから自陣右サイドを突破されると、最後は打点の高いヘディングで合わされ先制点を許す。リードされたまま前半を折り返した。

先制点を決めた山市。この日は球際の部分など、持ち前の闘志が全面に出るプレーが多く見られた

 後半、同点、逆転へ向かうためにより攻撃的になるア式。相手が敷くブロックに風穴を開けるべく、兵藤監督の指示もありパス回しのテンポを上げ、自分たちでどんどんアクションを起こしていく。徐々にゴールの匂いもしてくる中、迎えた61分。中央でボールを受けた奥田が左サイドの平野へ展開。平野はそのまま敵陣深くまでボールを持ち込むと、左足でクロスをあげる。これは相手GKに弾かれるがこぼれ球に反応したのは山市。「仲間を信じて走ったら、運良くボールがこぼれてきた」とそのままゴールへと流し込む。ボールはネットを揺らす前に相手DFにクリアされたが、ゴールラインを割っていたと判断され貴重な同点弾を奪う。この1点で流れをつかんだア式。直後の65分、DF森璃太(スポ4=川崎フロンターレU18)がクロスを送ると、相手の処理が中途半端になり、最後は逆サイドでフリーの平野がシュートを放つも、これは枠の外へ。80分には、MF安斎颯馬(社3=青森山田)のクロスから、ニアサイドでフリーの奥田が合わせるが、これも惜しくも枠を外れた。1-1のまま時間は過ぎていき、このまま延長戦に突入するかと思われたが、ついに試合が動く。残り時間が少ない中、MF植村洋斗副将(スポ4=神奈川・日大藤沢)のロングスローからゴール前に混戦をつくると、途中出場のFW鈴木大翔(スポ1=ガンバ大阪ユース)がシュート。これは相手GKのファインセーブに遭うが、こぼれ球を拾った平野を相手DFが倒してしまい、土壇場でア式がPKを獲得する。PKのキッカーは植村。プレッシャーのかかる場面であったが、冷静にゴール右へと決め、逆転に成功する。試合はそのまま終了。2-1でア式が勝利し、前期のリーグ戦で敗れた山梨学院大相手にリベンジを果たした。

途中出場でチームに勢いをもたらした平野。この日もPKを獲得するなど、ここ最近は得点に絡むプレーが増えてきている

 リーグ戦では現在3連敗中。決して良いチーム状況とはいえない中での、今季一度敗れている相手との一戦。一筋縄ではいかない試合であったことは間違いない。そんな中でも、「1回負けている相手に負けないという気持ちで入った」(植村)、「リベンジできる中で『やってやる』という強い気持ちを持っていた」(山市)と、気持ちの面で相手を圧倒する。同じ轍(てつ)は踏むまいと、随所に各選手から気迫を感じることができるプレーが見られた。兵藤監督も勝因として「メンタルの整え方がすごくよくなってきた」と気持ち、精神的な部分での成長を挙げる。山市からも「負けたくない、勝ちたい、インカレに行く、総理大臣杯に出るなど強い気持ちが勝負を分けた」という強い思いが感じられる言葉を聞くことができた。この勝利で、4回戦に駒を進めることになったア式。次の対戦相手は1部の日大だ。2年前のアミノ杯で敗れている相手でもあり、公式戦での対戦はその時以来となる。中1日での試合ということもあり、コンディション的にはもちろんきつくなってくるが、勝ってその先の総理大臣杯の出場権を得るために絶対に負けるわけにはいかない。自分たちより格上の相手とはなるが、成長しつつある「気持ち」、「メンタル」のところで再び相手を上回り、次戦も必ず勝利を手にしてほしい。

(記事 髙田凜太郎 写真 栗田優大、水島梨花)

PKを決め、味方の元に駆け寄る植村

 

早大スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 山田 怜於 社4 神奈川・鎌倉
DF 安斎 颯馬   社3 青森山田
DF ◎平松 柚佑  社4 山梨学院
DF 中谷 颯辰 基理4 静岡学園
DF 森      璃太 スポ4 川崎フロンターレU18
MF 10 植村 洋斗  スポ4 神奈川・日大藤沢
MF 小倉 陽太 スポ4 横浜FCユース
MF 14 山市 秀翔   スポ2 神奈川・桐光学園
MF 23 成定 真生也 スポ3 神奈川・日大藤沢
→70分 26 鈴木 大翔 スポ1 ガンバ大阪ユース  
MF 17 本保 奏希 スポ2 JFAアカデミー福島
→55分  22 平野 右京 人4 兵庫・滝川
FW 奥田 陽琉  スポ4 柏レイソルU18
→85分 15 東  廉 スポ3 清水エスパルスユース
◎=キャプテン
監督:兵藤慎剛(平20スポ卒=長崎・国見)

コメント

兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)

――率直に今日の試合を振り返っていかがでしたか

 勝つことが最大のミッションだったので、まずはそれを達成できて良かったです。また、少しメンバーを変えて、リーグで3連敗して流れが悪かった中でエネルギー量が多い学生を使って、しっかりと(エネルギーを)出してくれました。これがきっかけになってチームが上向くと思うので、しっかりと次に向けて準備していきたいなと思います。

――前期のリーグ戦では敗れた山梨学院との一戦でした。自分たちのスタイルを貫くことは変わらないと思いますが、前回対戦を踏まえてより意識したことはありますか

 一回負けてる相手に次負けるというのはみんなも悔しいと思いますし僕自身も嫌なので、そういうところではお互いどちらが積み上げられたかを証明する場だと思っていました。勝ち切ってはいますが、自分たちがやりたいサッカーというのはまだまだ上のところにあるので反省も多いです。良くなっているところはまた全員で共通認識を持って次に進んでいきたいと思います。

――前半からシュートまで持ち込めないものの、押し込む時間はつくれたと思います。前半の攻撃をベンチからどのように見ていましたか

 まだまだ焦れている場面だったり、90分をどうデザインするかというときに、相手を動かして間を通すところがまだまだだったり、(相手を)よく見てパスをして、相手を動かして次の選択をもっと早くしていけば相手をより動かしてズレやギャップが出てくると思います。そこのタイミングを共有するためのボールの動かし方だったり、ボールがない時の動き出しだったりの制度を高めて、前半で仕留められなくても前半で相手を動かすことで後半体力的に相手は落ちてくるので、そこのジャブにもなるというところでは、もっと相手を動かしてシュートまでいけるようなボールの動かし方をやらないといけないなと思います。

――前半を0ー1で折り返すというのはゲームプランとしては想定内でしたか

 いろいろなプランを考えた中では想定内でしたし、じゃあその中でどうやるのかというのもある程度プランを練っている状態で臨みました。アクションを起こそうかなというタイミングで自分たちでしっかりと点を取れたので、そこはいい流れを継続させるために交代せずに次の二の矢をどこで打つかを探っていました。後半ぐらい相手に何もさせなければいいなというところもあるので、今回の試合の後半をベースにまた次の試合に臨めればいいなと思います。

――ハーフタイムではどのような指示をチームに行いましたか

 ボールを動かす時に、相手がズレ切れていないところで真ん中を狙いすぎるというところがあったので、もっと相手を動かしてテンポ良くということは伝えました。そうしたら絶対ズレてくるから間ももっと空いきますし、そこをうまくやりながら足元にはなりすぎずに、しっかりと仕留める裏に飛び出すというアクションを止めないというところで、交代で入った右京(平野右京、人4=兵庫・滝川)は自分の武器をしっかりと生かして、相手にとって嫌な裏への動きだったり仕掛けを表現できたので、そこはよかったのかなと思います。

――今日の試合の一番の勝因はどこにあると監督自身は考えていますか

 ここの何日間で急にうまくなるということはないので、メンタルの整え方はすごくよくなってきたのかなと思います。自分たちは90分やるべきことをやれば勝てるということに自信を深めてもらって、さらにそこに対するクオリティを全員で突き詰めていければなと思います。

――中1日で次の試合を迎えます。意気込みをお願いします

 まだ対戦相手が決まっていないという状況ですが、しっかりと相手のことをスタッフで分析しながら、選手自身は今日の課題をチームとして個人としてはどうやって修正していくか頭の整理をしつつ、中1日なのでコンディションをどれだけ戻せるかというところにもチャレンジして次にいきたいなと思います。

MF植村洋斗副将(スポ4=神奈川・日大藤沢)

――今日のゲームプランを教えてください

 プランは特になくて、自分たちのサッカーをしようという入りのところと、1回負けている相手に負けないという気持ちで入ったという感じです。

――前半はシュートシーンまで持ち込めないシーンが続いたようにも見受けられましたが、ピッチ上ではどのように感じていましたか

 確かにゴールまでのところはなかなかいけていなかったですけど、自分たちは保持する時間が続いて悪い前半ではなかったです。でも1本を簡単に決められたというところで、そこの課題は出たものの、ハーフタイムでも全然やれている印象で、ポジティブに後半に入れたのでこういう結果が出たと思います。

――前半を踏まえて変えた部分は何かありましたか

 璃太(森璃太、スポ4=川崎フロンターレU18)と安斎(颯馬、社3=青森山田)のポジションを変えましたが、プランとしては引き続きやっていこうというところで、後は交代して入ってくる選手が大事となる中、交代もうまくハマって、自分たちのサッカーで勝てたのかなと思います。

――得点シーンを振り返っていかがでしたか

 後半に追い付いて、最後まで勝ちたいという気持ちを持ってPKを取れたと思いますし、あそこは決めるだけだったのでちゃんと決めて勝てて良かったと思います。

――次戦への意気込みをお願いします

 中1日で試合が来ますし、自分たちの目標は日本一というところなので、次も絶対に勝ってその次に繋げられるようやっていければいいなと思います。

山市秀翔(スポ2=神奈川・桐光学園)

――試合を振り返っていかがでしたか

山田君(怜於、社4=神奈川・鎌倉)のスカウティング通り、前に蹴ってくる感じで相手はきました。跳ね返すボールになっていたのですが、あのように自分のサイドを攻撃されて崩されて、点を入れられてしまいました。そのようなところは引き締めなくてはいけないと思いました。逆転できたのは非常にうれしかったです。

――先週までイタリア遠征に行かれていましたが、疲労やコンディションなどはいかがでしたか

イタリアで6日間5試合ほぼフルで戦ってきました。サッカー選手である以上、コンディション管理というところは大事になってくると思います。アミノバイタルカップも連戦ですが、その中で良いパフォーマンスを全員が出せるチームになれるようしっかりやっていきたいです。

――前期で負けた山梨学院大との一戦でしたが、その対戦を踏まえたことはありましたか

前期の山梨学院大戦は自分のプレーが良くなかったです。リベンジできる中で「やってやる」という強い気持ちを持っていました。セカンドボールや落ち着いて広い視野を持って逆サイドにサイドチェンジするということを意識して試合に臨みました。実際に試合でやれたのでそこは良かったと思います。

――前半1点ビハインドの中、ハーフタイムでどのような指示がありましたか

やられているシーンは失点シーンとセカンドのところを拾われてピンチになったという部分だけでした。そこを調整できれば失点はないなと自分もみんなも言っていました。起点を切るところや入っていくところをやっていこうとハーフタイムで話しました。あとは「負けたくない、勝ちたい、インカレに行くんだ、総理大臣杯に出る」など強い気持ちが勝負を分けたと思います。

――得点シーンを振り返ってください

兵藤さん(慎剛監督、平20スポ卒=長崎・国見)からも逆サイドでボール持ってる時はしっかり(中に)入っていけと言われていました。自分もそこに入っていかないと自分の特徴が出せないと思っていました。しっかり仲間を信じて走ったら、運良くボールがこぼれてきてそれを入れた感じです。ゴールネットは揺らせませんでしたが、次同じような機会があればゴールネットを揺らせるように頑張っていきたいです。

――今日は球際のところでも相手に負けないという気持ちが多く見られたと思いますが

球際などは本当に気持ちだと思っています。絶対一つ一つのデュエルなどは負けたくないですし、負けたら自分の価値はないと思っています。絶対やられないぞという強い気持ちを持っていました。イタリアでもそのような一つの球際だったり、空中戦が勝負を左右すると感じました。そのようなところを体現して、チームに還元するという強い気持ちでやりました。

―― 中1日で次の試合となります。意気込みをお願いします

中1日でみんなもきついと思います。連戦の中でも勝って、総合力が落ちずにできるのが強いチームだと思っています。しっかりとリカバリーをして、次どの相手かわからないですが頑張りたいです。勝たないとインカレには行けないので、4年生をインカレには出すためにやっていきたいです。