【連載】ア式蹴球部新体制特集『PURSUIT』【第4回】中谷颯辰×平野右京

ア式蹴球男子

 第4回には新4年生となるDF中谷颯辰(基理4=静岡学園)とMF平野右京(人4=兵庫・滝川)のお二人が登場。大学最後の年、チームの中心となることが期待されるお二人に、今シーズンにかける思いなどを伺いました。
※この取材は3月29日に行われたものです。

チームを引っ張るところはディフェンダーとして欠けていた(中谷)

 セットプレーの際に前線に上がる中谷

――昨シーズンを振り返ってみてください

中谷 2年の時と比べると出場機会が減って、チームに貢献できていない心境は常にありました。平瀬(平瀬大、令5スポ卒=現サガン鳥栖)や監物(監物拓歩、令5スポ卒=現清水エスパルス)などケガ人がいた中で2年の時は結構出てて、彼らが帰ってきて結局ポジションを奪われて取り返すエネルギーを出し切れず、脅かすところまでもいけなかったです。試合には勝ててないけれどセンターバックはあの2人しかいないという雰囲気になっていたことが自分個人としての力のなさを感じました。サッカーで出れなくなってチームに何かできていたかと言われるとチームに何もできていなかったことを痛感しました。

平野 個人的には出場できる機会があったりなかったりと波が激しくて、コンスタントに出続けることができなかったシーズンでした。全体としてはなかなか勝てないチーム状況の中でうまく回らなかったり、チームの運営状況がしっかりできてないことが結構ありました。大学で一番模索した時期が去年でした。

――個人として課題と感じた部分は

中谷 サッカーでいうと、チームを引っ張るところはディフェンダーとして欠けていた部分でした。2年の頃、自分の代は自分だけがセンターバックでトップチームでずっとやっていて、1年の頃は4年生がすごかったですし、1個上も俊也(鈴木俊也、令5商卒)もセンターバックをやったり西田(西田翔央、令5商卒)君や監物、平瀬、西尾(西尾颯大、令5スポ卒)とかもやっていて常に上がいました。上に頼り切っていた自分がいた中で、3年になってそんなことを言っていられなくなってきた状況になり、チームに対する働きかけやピッチ内外での信頼が欠けていることを自分でも思って、ピッチ内でも存在感を徐々に出せなくなっていました。どちらかと言うと、プレーというよりはチームとしてのメンタリティ面を考えるところや声かけができていなかったと思います。

平野 自分自身は一生の課題ではありますがメンタルです。今もなんですけど、調子がいい時に保守的に回ったり自分の地位を守りにいくプレーがメンタル的にあったのでそういったところが課題だと思っています。その繰り返しが、コンスタントに出続けられなかった要因でもあります。

――逆に自分の中で成長した部分や実践できたところは

中谷 個人的にはほぼないと思っています。

平野 自分が目指しているものは何個かつかめた感覚があります。一つは早慶戦。自分が憧れて入ってきたので、そこで出場することができのは大きな経験でした。もう一つはプロの練習会に行ったことで、他人から自分を評価されて認められたことはよかった点です。

――チーム状況がうまくいかない中で考えることは多かったですか

中谷 そんなにいい影響をチームに与えられてなかったし、監督から言われたこともありました。そういったところは良くなかったと思うし、自分自身も考えられてなかったと思います。2年生は1年生のことを指導したりとやることがありますが、3年生は何もない時期で4年生の陰に隠れてやっていたと個人的には思います。チームが良くない状況だけど、結局4年だと思って自分から何もすることもなく隠れたまま終わってしまいました。

平野 影に隠れていたところは大きくあって、「なぜ4年生が示さないのか」と、4年生に対するベクトルが向いてしまいました。4年生に対するベクトルが強くなってしまったことで、3年生と4年生の関係性を模索し、考えさせられました。

――厳しい戦いが続いた中で印象的な試合は

中谷 降格が決まった流経戦です。3年生以下だけでスタメンを組んでやろうとした中、自分たちでは無理だったし4年生の影に隠れてきた結果が突きつけられて自分たちの力で降格を決めたところは、悪い意味ですが印象深かったです。

平野 試合だと自分がスタメンで出た明治戦です。0ー4で明治に圧倒されてグラウンド内での不満や、スタンドの人が負けたにも関わらず笑い声がしたり、ウルトラスからの厳しい横断幕がはられていたことが、グラウンドに立っていた中ですごく印象的でした。試合が終わった後にチームも分裂しました。自分たち3年生以下でやった方がいいのではないかという案もたくさん出て、内部断裂も起きて降格に向かって行った試合でした。試合外で印象に残ったことは、国士舘戦に向かう時の確認ゲバ(紅白戦)の時に、自分がいいプレーをして監督から「今週いけるか」と言われて、普通なら自信持って「行けます」と言ってベンチ入ってチームに貢献できることを考えますが、自分は行けるかと言われた時に「全然コンディション揃ってないです」と逃げた発言をしてしまいました。そこは自分の中で今でも後悔していることです。

(同期は)サッカーをやめても集まりたいと思う集団だなと思う(中谷)

 ドリブルをする平野

――相手に直してほしいところは何かありますか

平野 結構一緒にいることが多いので、直してほしいとことは、軸があるので全部否定から始まるところです。軸を曲げないので吸収力はあってほしいと思います。

中谷 全員と仲良くしようとするので。みんなと仲良くなれればベストですけど僕は無理だと思ってるし、サッカーをやる上である程度関係性を築けてれば僕は大丈夫だと思ってるんですけど、(平野は)無理に踏み込んで逆に関係が悪くなることがあるので「そういうのはやめた方がいいよ」と日頃から言っているのでそこは直してほしいところです。

――逆に尊敬し合うところはありますか

中谷 尊敬してるところは人前に立って一発ギャグとかできるところはすごいと思います(笑)。

平野 苦しい時に横にいてくれることがいいところかなと思ってます(笑)。

――結構お二人は一緒にいることが多いですか

平野 そうですね。先週の日曜日もくら寿司で3時間ぐらい2人で語り合うぐらい仲良いです。

中谷 まあまあです(笑)。

――平野選手はYouTubeチャンネル「ブカピ 部活ONE」に出演されましたが、反応はありましたか

平野 部員もそうですし、地元帰った時やメールでも面白いと言われて一発芸が通用するんだと言う自信が持てました。

――一番うけたギャグは

平野 アシックスがうけました(笑)。

中谷 僕は見てないです(笑)。

――自分の変えたいところはありますか

平野 保守的に回るところは変えたいです。くら寿司で話した時に曲を教え合うことをしてたんですけど、曲の中に自分にぴったりな歌詞があって「お前(平野)みたいだよ、保守的に回ることでその地位を奪われてるよね」と颯辰から言われて響いて。保守的に回るのではなくていい状態の時こそミスを恐れずに挑戦し続ける姿勢を今後続けたいです。

中谷 (平野は)結構怒ってきたりするんですけど、人に怒れること、ちゃんと言えることがすごいなと最近思っています。僕は結構楽観主義みたいに何でもどうにかなると思ってるし、人にもそんなに腹立つこともないですけどその感情を持てることがすごいと思っています。意外とそれが難しいし、自分にはできないのでできるようになりたいです。4年生になって上の立場になるので、後輩にも厳しく言える人を見ると「かっこいい」と思うように最近はなりました。自分にも責任が返ってくるので、自分はそれが怖くて、できる人がかっこいいと思ってます。

――今年で早稲田4年目ですが共に過ごしてきた同期はどのような存在ですか

平野 僕は(酒で)ベロベロになって意識がなくなっても、一緒に日本一を獲りたいと思える同期だなと思います(笑)。最近、そういうことがあって、その時に泣きながら日本一をお前らと獲りたいということを言っていたらしいので、それくらい熱い思いをさせる同期かなと思います。  

中谷 サッカーをやめても集まりたいと思う集団だなと思います。僕は小中高で人付き合いが苦手な時期もあって、大学に入ってから変わった部分もあったんですけど、サッカーを差し引いても関わりたいと思う人たちなのかなと思います。  

――今年は大学生活最後年になりますが、ここまで過ごしてきた早稲田大学に対して名残惜しさはありますか

中谷 僕は卒業や人と離れることに対して、あまり悲観的ではないので、大学生活にも名残惜しさはないのかなとは思っています。でも、同期とのつながりとかは卒業後もつなげていきたいなと思います。  

平野 颯辰とは真逆で、僕は名残惜しさをめちゃくちゃ感じる人です。結構感情が揺さぶられるというか、一試合が終わると一つ一つが終わっていく感覚じゃないですけど、そういうことには気持ちが入ってしまいます。自分の中ですごく心が揺さぶられる何かがあります。  

1年でしっかり帰るという圧倒的な強さを示し続けないといけない(平野)

 対談後に色紙に書く内容を話すお二人

――新体制の雰囲気はどのように感じていますか

中谷 去年とは全く変わったというのがファーストインプレッションです。実際、外池さん(外池大亮氏、平9社卒=東京・早実)とは目指している場所は違うのかなと。早稲田という軸がある中で、監督が持っている考え方とかが違うのかなとは感じています。去年も結果を求めていた中で、兵藤さん(兵藤慎剛監督、平20スポ卒=長崎・国見)はより「結果を残す」という考え方で。競技性を見直すところでは、強度の高い練習やメニューを組んでしますし、監督もそういった発言をしています。自分たちも始めの頃はついていくのに精一杯という感覚でしたけど今やっと慣れてきて、基準もちょっとずつ上がってきている段階かなと思います。  

平野 やっぱり外池体制が残っているところも少しあるので、そこのプライドを捨てきれていないのが現状なのかなと思います。そこを一個捨てて、違う船に乗るという話も最初兵藤さんからあったので、違う船に乗った気持ちで兵藤体制に乗っていかないとうまくいかないのかなと思っています。競技の部分での強度とかは変化があるなと思うんですけど、運営や体制のところで新しい変化を求めにいくろころにシフトチェンジしていかないと、この先のチームが良くなっていかないのかなというのはあります。  

――お話しにあったように練習の強度が高くなったと伺いますが、かなり違う感覚をお持ちですか

中谷 今強度が上がって、みんなが笑えないくらいきついコンディションにもなっていますし、去年と比べて相当上がったなというのは確かだと思います。  

平野 今までは水風呂に浸かっていたなという感覚です。  

中谷 水風呂は逆に浸かりたくないけどな。  

平野 水風呂じゃなくてぬるま湯か(笑)。そういったところでやっていて今強度が上がった分、ケガ人出たりして、そこは目に見えるかたちであるのかなと思います。  

――平野選手は先日の天皇杯予選でゴールを決めるなど、調子が上がっているように思えますが

平野 シーズン始めは体制が変わって、頭で考えるサッカーというところができていない分、最初の1カ月くらいはすごく模索しました。それからポジションが変わった中、新しいポジションがうまくハマって、今は結果もついてきているのかなと思っています。  

――ポジションが変わったことで視点や視野が変わった感じがあったのですか

平野 なんて言うんでしょう。自分は考えてプレーするのが苦手で、本能で動くというのがあるので、その本能で動くというプレーをするときに新しいポジションでより効果的に出せているのかなと思います。  

――お互いに最高学年になったことへの自覚みたいなものは生まれましたか

中谷 僕は最高学年となった中で、去年はやろうとはしていたけど、思ったようにいかず自分が意図したことと違った捉え方をされた時もありましたし、自分の個性の出し方を分からなくなった時期もありました。それでオフを挟んで兵藤さんが来られてからは、自分の個性や持ち味を出せて、前よりはチームに貢献できている部分はあるんじゃないかなとちょっとは思います。でもまだ足りないと思うので、頑張っていきたいと思っている感じです。  

平野 自分は自覚は結構あります。試合でも結果を求めたりとか、チームを勝たせることが4年生の役目だと思うので、そこは意識して取り組んでいる部分だと思っています。  

――今年は2部での戦いとなりますが、どのような戦いになると予想されていますか

中谷 みんなが言っていると思いますが、2部だからといって簡単に勝てるわけではないと思います。実際、専修大が2年連続で降格したり、立正大も2部でくすぶったり、中央も1年で昇格してくるかなと思ったけど2、3年かかって昇格してきたので、やっぱりそう簡単にはいかないだろうなという感覚は自分の中にもありますし、チーム全員が持っているところだとは思います。今年兵藤さんが、歴代最高勝ち点で2部を優勝して、1部昇格というところまで目標を定めてくれたので、分かりやすい目標がある以上はそこに向かってチーム全員でやっていかないといけないところだと思います。でも(天皇杯予選で)法大に負けた試合の内容や試合運びだと、そこに到達できていないなという思いがあるので、ここからもう一個ギアを上げてチームとしても個人としてもやっていけたらなと思います。  

平野 それこそ颯辰がさっき言っていたように基準は下がらないというか、関東2部でも1部にいるのと同じように戦って、1年で1部に返り咲けるように強度も基準も一つずつ上げて、1年でしっかり帰るという圧倒的な強さを示し続けないといけないのかなと思っています。  

――今年のア式の中での注目選手は誰ですか

中谷 僕は松尾(松尾倫太郎、人2=千葉・八千代)です。松尾は1年生の時に練習生から部員になれず、でもその時から良い選手だなと思っていたし、去年入部した中でちょくちょく試合に出た時は存在感を出していました。今年に入ってよりいっそうプレー面も変わっている部分があるし、発信というところもできるようになった部分があって、チームのエース格として今後やっていける存在ではあると思うので、試合を重ねていって今年、来年もエースとしてやっていけるような選手になってほしいなと個人的に思っています。  

平野 どうしようかな…。じゃあ、1人、山市君(山市秀翔、スポ2=神奈川・桐光学園)だと思っています。早稲田らしさやひたむきさ泥臭さというのを彼は持っていて、早稲田の中盤はすごい選手がそろっている中でも、自分は一番心を打たれる選手だと思うので、見てる人を感動させるようなプレーを今後も期待したいなと思っています。グラウンドを走り回っている姿が一番輝いていると思っているので、 その外池さんの頃からある姿勢というのは見てほしいなと思います。 

――最後に今シーズンに向けての抱負をお願いします

平野 抱負としては、一流になるというところです。1部に上げることもそうですし、サッカー以外の部分でも自分は目指しているところがあるので、そういった部分で全部一流を目指せるようにしていきたいかなと思います。  

中谷 さっき言ったように、兵藤さんの掲げた歴代最高勝ち点で関東2部優勝、1部昇格というところを実現したいなと思っています。チームとして総力戦になってくると思うので、ピッチに立てない時もやれることを考えるというか、去年問われたことを出せるようにチームの勝利に違う角度からでも貢献したいなと思います。それでピッチに立った時は、無失点というところを継続して、強い早稲田を取り戻すというのを個人の目標にしたいです。  

――ありがとうございました!

(取材、編集 髙田凜太郎、渡辺詩乃)

 

◆中谷颯辰(なかたに・そうしん)(※写真右)

2001(平13)年9月12日生まれ。179センチ68キロ。静岡学園高出身。基幹理工学部4年。同期の藤本隼斗選手(スポ4=柏レイソルU18)とよくスマブラをするという中谷選手。最近では2人以外でもスマブラが流行り始めて、本保奏希選手(スポ2=JFAアカデミー福島U18)といった後輩選手とも一緒にやり、寮で盛り上がっているそうです!

◆平野右京(ひらの・うきょう)

2001(平13)年10月15日生まれ。173センチ60キロ。兵庫・滝川高出身。人間科学部3年。最近、英語のシャドーイングを始めたという平野選手。TOEICで高得点を取るために、今必死に勉強しているところだそうです!