【連載】ア式蹴球部学生スタッフ対談『INSⅠDE:WASEDAーAFC』【最終回】学生コーチ対談 矢萩啓暉×濵田祐太郎

ア式蹴球男子

 最終回には学生コーチの矢萩啓暉(教3=山形南)と濵田祐太郎(商2=埼玉・市浦和)が登場。学生ながらコーチとして指導を行っているというお二人に、ア式蹴球部(ア式)内での自分の役割やコーチという立場だからこそ考えることを伺った。
※この取材は2月15日に行われたものです。
※原則として新学年表記にしてあります。

(濵田は)独自に練習メニューをつくるからすごい

――学生コーチの役割を教えてください

濱田 組織と競技で分かれているよね。  

矢萩 難しい立場ではあります。学生とついてはいるのですが、コーチではあるので、社会人スタッフの方と一緒に練習メニューの作成とかオーガナイズとか指導のところを含めて、実際にコーチみたいな役割をしている感じです。動画の分析だったり、選手とコミュニケーションを取って戦術を考えたりもします。  

――社会人の方と学生コーチとの違いみたいなものはありますか

濵田 学生なので、立ってる土俵ややらなきゃいけない仕事とかは、社会人ではなく部員や選手と同じなのかなと思います。サッカーの指導という面では社会人と変わりはないです。  

――社会人の方と衝突することはありますか

矢萩 ほとんどないです。監督とかコーチの方も自分たちの意見をすごく尊重してくれるので、意見を言ってくれる時はありますけど、自分たちの意見を尊重して自由にやらせてくれるので、あまり衝突とかはないです。  

――練習メニューはつくられることが多いですか

濵田 そうですね。最近はあまりないですけど、シーズンが始まったら最初から最後のゲームのところまで全部考えます。  

――学生主導の部分が多いですか

濵田 やらせてくれるところは全部やらせてくれます。練習メニューもそうですし、練習中のコーチングのところとか笛を吹いたりも全部やらせてくれます。  

――練習メニューはどのようにつくられますか

矢萩 僕は正直クリエイティブさがあまりないので(笑)、Twitterとかでプロの練習の動画とかを参考にしてるんですけど、濵田君は自分で独自につくっていてそこはすごいなと思います。  

濱田 そんなことないです(笑)。テーマを最初に決めてそこから逆算して、それこそ参考にもしますし、組み合わせや同じメニューでルールを変えたりもします。  

――どういうふうに参考にする練習を探していますか

濵田 情報は絞った方がいいと思っています。似ているゲームモデルを持ったチームを大体3、4個頭に入れといて、こういう戦術をやりそうだなという時にその練習メニューを調べます。そこになかったらまた違うどれかをやる感じです。  

――選手の反応が良かった練習メニューなどはありましたか

矢萩 反応かあ。難しいな(笑)。  

濵田 選手がどうかは分からないですけど、シンプルなメニューだったらこのテーマもこのテーマもできるしみたいな、汎用性が高い練習はよくやります。  

公式みたいなものを与えるようにしている

練習見つめる矢萩

――学生コーチという立場から見てア式はどういったチームですか

濵田 大学1、2年の時はア式ではなく他のチームにいた身としては、去年一年やってみて、歴史や伝統は他のチームと違うなと思いました。結構サッカー以外の面でシビアな部分もあるんですけど、周りから評価される組織だからこそないといけないものなのかなと思います。  

矢萩  自分も高校まではサッカーをしていたんですけど、その高校時代とか他のチームとも比べて少し特殊な組織なのかなとは思います。後は来年100周年を迎えるというのもあるのですが、濵田さんが言ってくれた通り、歴史や伝統というものはあるのでそういったところは継承されているのかなと思います。部則とか規則も大事にしていますし、学生主体でやっているからこそ、学生ならではの雰囲気や文化やルールが生まれていると思います。それがサッカー外の部分で生まれているからこそ、サッカーの部分でも学生主体というか学生ならではのサッカーになってるのではと思います。 

――選手のレベルの高さを感じる部分はありますか

濵田 選手のレベルは去年とか本当に高いなと思っていました。 

矢萩 やっぱり良いチーム、良い高校から選手が集まってくるので、技術のレベルに関しては本当にピカイチだなと感じました。  

――学生コーチをやっていて選手に物申したいことはありますか

濵田 物申したいこと…。僕は逆によくサッカーをしていない僕の話よく聞いてくれるなと思っています。  

矢萩 僕もそうですね。全く同じです。  

――選手に話をしたり、逆にアドバイスを求められたりする機会は多いのですか

矢萩 立場上ありますし、社会人スタッフに気軽に聞けないことをパッと聞いてくれたりとか、選手も信頼してくれているのかは分からないですけど、聞いてくれる人とかもいます。  

――お二人はやはり戦術とかは好きですか

濵田 もちろん。  

矢萩 そうですね。  

――サッカーの試合を見ることも多いですか

矢萩 そうですね。最近はあまり見れていないですけど(笑)。  

濵田 僕も見れていないです。  

矢萩 まあ、海外の試合とか好きなチームを含め見るようにはしています。  

――具体的に好きな戦術とかはありますか

矢萩 ざっくりだと魅せるサッカーが好きです。  

濵田 僕はバルサが好きなので、源流をたどるとクライフのサッカーとかは個人的に好きです。それをたどってペップとかシャビとかはよく見ます。  

矢萩 見ててすごいなという戦術はいっぱいありますね。自分の好きなチームで言ったらチェルシーで、今はポッター監督になっちゃったのですが、トゥヘル監督時代は好きでしたね。トゥヘル監督自体が好きだったので、監督が代わってほしくなかったですね。  

――戦術を落とし込むことも必要になってくると思うのですが、その上で意識していることは何かありますか

濵田 自分の考えを落とすというのはあまりしないようにしています。自分たちでできるだけ考えてプレーできるように、これをやってとかをなるべくなくした練習にしようとは思っています。  

矢萩 僕も考え方が似ていて、強制はしないというか、「こういう判断もあるんじゃない?」みたいな、助言じゃないんですけど、強制させるようなことはなくて、一個ヒントみたいなものを話すようにはしています。  

濵田 イメージとしては公式みたいなものを与えるようにしています。具体的な数字とかは、状況に合わせて選手たちに自分でいれてもらって、答えを自分たちで出せるような練習をつくろうとしています。  

サッカー自体は好きだけど、サッカーをプレーするのは好きじゃないと思った(笑)

質問に答える矢萩

――お二人のサッカー遍歴を教えてください

矢萩 なんでサッカーをやっていたのかは分からないのですが、多分親が勝手に自分のことをサッカースクールに3歳くらいから入れていて、そのまま知らない内にサッカーをずっとしていました。小学校もクラブチームに入って、中高はモンテディオ山形のジュニアユースに入ってプレーをしていたのですが、強制的に始めさせられたせいなのか分からないですけど、何も考えずにプレーをしていたので、高校が終わったタイミングでよく考えたら、体を動かすのが好きじゃないなと思いました(笑)。サッカー自体は好きだけど、サッカーをプレーするのは好きじゃないなって思って(笑)。それでやめて学生コーチという立場になろうと思いました。  

濵田 僕はサッカーを全然やっていなくて、逆に自分からサッカーをやりたかったのですが、小学校の頃から空手を始めていて、高2の頃まで続けていました。小学校の時とかは空手で結果を出していて、親にサッカーをやりたいと言ったら、「ダメだ」と言われて、空手があるからできなかったです。それで中学になって初めて部活としてサッカー部に入ったのが始まりで。部活は中高で続けて、どっちもサッカーをやっている時間が少なかったので、いろいろ考えながらやらなきゃいけないとなっていたら考える方が楽しくなって、それでコーチをやりたいと思いました。  

――ア式に来た理由は何かありますか

矢萩 特にないんですけど(笑)、一応勉強はちゃんとしていたので、早慶を目指していました。元々は慶応を目指していたのですけど、いろいろあって早稲田に来たという感じです。  

濵田 僕は浪人をしているのですが、浪人をしていた時はここに来たいとかはなく、とにかくどれくらい勉強を自分ができるのかというので初めました。それで目標にする大学は決めた方が良いとなった時に、いろいろサッカー部があるかつアシスタントコーチみたいなのができるかどうかを頭の中で思いつく大学にメールをして聞いて、できるとなったところで(レベルが)高かったのが早稲田だったので受験しました。ア式に来たのは、自分が持てる環境の中で、サッカー面で一番レベルが高かったというのが一番の理由です。入ってみたらサッカーだけじゃないと気付いたのですが、入ったきっかけはサッカーで一番レベルが高かったことです。  

――濵田さんは大学3年時にア式に入部されましたがその理由は何かありましたか

濵田 大学1年の時に見学には来たのですが、自分も指導者というのが初めてだったので、でも選手たちはギリギリプロに行けなかったり、高校の選手権で活躍していたり、そういうレベルの高い選手たちだったので、この状態で自分が入ったとしたら逆に足手まといになってしまう、力になることができないと判断しました。それで大学1年、2年の間は他の高校の外部指導者というかたちで経験を積ませてもらって、それで去年入部し直したという感じです。  

――改めて入部しようと思ったきっかけみたいなものはありましたか

濵田 ギリギリまでア式に入ろうとは思っていなかったのですが、(元々いたのが)が良いチームで指導者もすごく良くて、同じ指導者から教えてもらうということは永久にその指導者を追い越すことはできないなと思っていました。そうだったら他の経験を積まないと今教えてもらっている指導者の人を追い越せないし、そういったことを考えた時に選べる選択肢がア式だったというのがあります。  

――お互いの紹介をお願いします

矢萩 お互いの紹介か(笑)。そうですね、濵田君は最初はすごく堅い感じなのかなと思っていたんですけど、いざ一年を一緒に過ごしてみて話すようになってからは、すごく柔らかくて喋りやすい方という感じです。自分と年齢的には3つ4つ離れてはいるんですけど、すごくラフな関係で話してくれますし、自分の意見とかも聞いてくれます。すごく話しやすくて優しい方だなと思います。  

濵田 僕はすごく尊敬できる部分しかないと思っていて、まずやることが一個一個丁寧だなと思います。すごく細かいところですけど、動画をみんなに見せる時とかにすごく画質を気にしていたり(笑)。  

一同 (笑)  

濵田 そういった細かいところが節々に出ている感じです。戦術の落とし込みのところでもそういった面が出てくるし、他にもサッカー面以外でも組織のことをすごく考えて行動をしていて、丁寧だったりみんなに気を配るところとか人としてすごく尊敬しています。  

――普段から関わりが多いと思いますが、どういった話をされますか

矢萩 基本はずっとサッカーの話です。それこそ練習や試合が終わった後とか、前の試合どうだったとか、基本はサッカー中心です。  

――オフの日にされることはありますか

矢萩 僕はオフは買い物に行くかサウナに行くかですね。  

――ア式の人はサウナ好きが多いイメージがあります

矢萩 そうですよね。でもこれだけは言わせてもらいたいんですけど、ア式の中だったら僕が一番サウナーです。  

一同 (笑)  

矢萩 それだけはちょっと譲れないです。  

――サウナはア式の方と行かれることが多いのですか

矢萩 そうですね。一人で行くのも好きなので一人で行くこともありますけど、ア式で仲の良い子もいるのでその子と一緒に行ったりとかします。  

――濵田さんは何か趣味はありますか

濵田 温泉に行くくらいですかね。サウナはあまり好きではないですけど。一人でいる時に何かしたいこととかはないので、友達と遊べないとかになると一人でサッカーのことを考えたりはしてますね。  

――今もありましたが、オフの日にもサッカーのことを考えたりしますか

矢萩 僕はマジで考えないです。本当にサッカーに触れたくないので、なるべく極力触れないです。自分の好きなことだけしていたいので、サッカーが嫌いというわけではないですけど、あまり関わりたくないです。  

濵田 これだけ見てると関わりたくなくなっちゃうよね。  

――濵田さんはサッカーのことを考えたりする時間もあったりしますか

濵田 友達といる時はなるべく考えないようにしていますけど、1人だったらずっとサッカーのことは考えています。  

――W杯はご覧になりましたか

濵田 あまり見れてないんですよ。  

矢萩 僕も見てないです。部員とかはみんな見ていて盛り上がったりしていましたけど、僕は基本的に寝ていて(笑)。結構早めに寝て朝はすぐに起きてという感じだったので、あまり見てなかったですね。  

濵田 メッシを応援していたのでアルゼンチンはみていましたけど、たとえばスペインと日本みたいな完全に力の差があるところを見てもしょうがないので、拮抗(きっこう)しそうな試合を選んで見ていたりしました。  

強烈な存在になりたい

質問に答える濵田

――ア式の話に戻りますが、昨年はなかなか勝ことができなかったですが、学生コーチの立場からみてどのような要因があったと思われますか

濵田 自分は相手や自チームの分析をして、いろいろ提示はしたのですが、それを後は任せたみたいな感じで放り出してしまった感じはありました。ちゃんと最後まで、落とし込むまでやれば良かったなと思います。  

矢萩 僕は練習とは違うのですが、監督の考え方と4年生の考え方がずれてしまっていたのが一つの原因かなとは思っています。外池監督(外池大亮氏、平9社卒=東京・早実)はサッカーはもちろん、サッカー以外のところも大事にされていて、学生主体というのを尊重していろんなことを任せてはいたのですが、去年の4年生はサッカーを一番大事にするという選手が多くいたので、そこがうまく乗り切らず、組織としてア式として結果が出なかった要因かなと思います。まとまりや組織力というところで他チームとの差を感じました。  

――新体制の雰囲気はどのように感じていますか

濵田 サッカー面では、監督主導で落とし込もうという動きがあるので、サッカーの部分は絶対に良くなっていくなと思います。  

矢萩 僕も同じで、兵藤さん(兵藤慎剛監督、平20スポ卒=長崎・国見)は経験もあるので、サッカーの部分で良くなっていくんじゃないかなと思っています。  

――今季の注目選手を教えてください

矢萩 僕は一個下の山市選手(山市秀翔、スポ2=神奈川・桐光学園)です。技術面もしっかりしていてトップレベルですし、献身性も兼ね備えていて、全てにおいてクオリティの高い選手だなと思っています。なおかつリーダーシップも取れるので、まだ2年生ですけど、4年生を追い越す勢いでチームを引っ張ってくれる存在になるんじゃないかなと思います。そうしたら技術もあって、ムードメーカーで本当に誰もかなわないような選手になるなと思います。  

濵田 駒沢選手(駒沢直哉、スポ3=ツエーゲン金沢U18)はすごい頑張ってほしいなと思います。去年も活躍していて、今年はもっとプレーの関わりも増えてくると思うし、去年よりも得点など結果は求められてくると思うので、期待に応えてほしいなと思います。  

――今年に向けての抱負をお願いします

矢萩 チームを勝たせられるような存在になっていきたいと思います。アドバイスやヒントで、何かしら選手に一個でもアイデアを与えられるような存在ではいたいなと立場上思っています。それ以外でも、自分が社会人になった時に活躍できるようにサッカー以外の部分にも力を入れたいと思っているので、学生コーチという立場とは関係ないですけど、そういう部分にも目を向けながら自分はやっていきたいなと思います。  

濵田 サッカー面に関しては、今後プロの指導者にならなかったとしても何らかのかたちで指導をしていきたいなと思っています。日本の中でもア式の選手はトップレベルなので、育成をしていく中での目指すべき目標をしっかり持てるように、まずいろいろなことを吸収できるようにしたいです。もう一個は今年で最後で、ア式には合計で2年間しかいないという面で考えると、簡単に1年後くらいに「ああ、いたな」と思われるだけだと寂しいので、ちゃんとみんなに覚えてもらえるように、少なくとも今の同期には彼らが卒業する時に忘れられてる状態にはしたくないなと思います。強烈な存在になりたいです。  

――ありがとうございました!

(取材、編集 髙田凜太郎、星野有哉)

◆矢萩啓暉(やはぎ・けいき)(※写真左)

山形・山形南高出身。教育学部3年。モンテディオ山形ユース出身の矢萩さん。ユース時代の先輩には世代別代表にも選ばれている半田陸選手(現ガンバ大阪)がいるとのこと。小中高と一緒にやっていたので頑張ってほしいと、今後の活躍に期待を寄せているそうです!

◆濵田祐太郎(はまだ・ゆうたろう)

埼玉・市立浦和高出身。商学部2年。バルセロナが好きだという濵田さんはスペインへの留学経験もあるそう。最近のスペインのサッカーについても熱く語っていただきました!