ア式蹴球部卒業記念特集 第1回 DF西尾颯大『勝つことがすべて』

ア式蹴球男子

『勝つことがすべて』

 「結果にこだわる、結果を出してから内容というのが自分の考え」ーーー。そう語ったのは西尾颯大(スポ=千葉・流通経大柏)だ。西尾にとってラストイヤーとなった2022年は、関東大学サッカーリーグ全22試合中20試合に出場。13節、駒大戦では見事なアシストも記録し、「早稲田のDF」としてスタメンに定着。攻守ともに何度もピンチを救った。しかし、西尾のア式蹴球部での4年間は決して順風満帆なものではない。サッカーに出会ってから現在に至るまで、西尾のサッカー人生を追った。

 

 右サイドを駆け上がる西尾

 サッカーを始めたのは、小学1年生の時。「小学校にサッカーチームがあって、何かスポーツをやろうとたまたまサッカーを選んだ」。そんな西尾は、「自分のプレーがうまくいった時もそうだし、勝って貢献できた時がすごく嬉しかった」とサッカーの魅力に引き寄せられ、サッカー漬けの日々を送り始めるようになる。

 「勝つこと」を求め、強豪・流通経大柏高に進学。西尾自身、自分のターニングポイントを「高校に入ったタイミング」と話す。「今までとはサッカーのレベルも練習強度のレベルも違って、圧倒されました」。同級生には、現在鹿島アントラーズでプレーする関川郁万をはじめ、名だたるメンバーがいた。「周りもみんな日本一を目指して入ってくるチームなので、プロになりたいのが全員だし、そういったところではすごい良い影響だったのかなって思います」。厳しい練習も全ては、「日本一」を取るため。高2・高3時は選手権の大舞台で決勝まで進出した。しかし、結果はどちらも敗戦。準優勝にとどまり、日本一まであと一歩届かなかった。

 

 自身の強みは気の利いたプレー。その言葉通りチームメートを助けるプレーが随所に見られた

 「日本一を取る」。高校時代の最大の目標であり、夢に再びチャレンジするため、早稲田大学の門を叩いた。高校では華々しい成績を残し活躍していた西尾。しかし大学では、なかなかトップチームに絡むことができなかった。当時を西尾は「グレてた」、「サッカーをやっていてもつまらないし、やめようかなと思った時期もあった」と振り返る。新型コロナウイルスが流行し始め、寮での生活が送れなくなったり、思うように練習や試合が行えなくなったことも相まって、とても苦しい時期を過ごした。

 
 出場機会が減り、サッカーへの楽しさを見出せなくなっていた西尾だが、大学3年時に変化が起きる。「BチームからAチームに上がったのが一番でした。Aチームでやってみたら匠(丹羽匠、スポ4=ガンバ大阪ユース)とか雄大(山下雄大、スポ4=柏レイソルU18)うまい人がいて、サッカーがだんだん楽しくなった」。自分より先に活躍していた同期の刺激も受け、リーグ戦では待ち望んだメンバー入り、デビューも果たした。

 

 サイドバック、ウイングバックにセンターバックと、多くのポジションで活躍した西尾

そんな中迎えた2022シーズン。ラストイヤー。「日本一を目指す」という自らの目標にチャレンジできる最後の一年だ。4年目にして西尾は、ようやくスタメンの座をつかみ取った。「試合に出るからといって特別何かが変わるってことはなかったです。でも出るからには勝ちたいし、チームが勝つためにできることはやろうと思ってました」。そう意気込んでいたものの、チームの歯車は合わず、結果的にリーグ戦22試合中勝った試合はわずか3試合。2部降格となってしまった。「今年はプロに行く人も多くて、メンバーはいるのに、何で勝てないんだろうな」と思案させられた日々。学生主体である早稲田だからこそ生じた問題に対し、なかなか正解を見つけることができない。チームとしても西尾にとっても「すごく考えさせられた」一年間だった。

 

 最初で最後の早慶戦。西尾は攻守にわたって躍動し、まさに”魅せる”プレーで観衆を沸かせた

 西尾にとっての目標であり、夢の「日本一」は、かなえることができなかった。その悔しさは計り知れない。しかし、この大きな夢は決して西尾だけではなく、チームメイトも共に抱き、追いかけてきた。長い時間を過ごしてきた同期たちの存在について西尾は、「4年間一緒にサッカーをして頑張ったから、これだけの友情、同期で良かったなという感情が生まれると思っています。何もしてないのに友達になったら、ここまで深くはなれてないのかな思うので、辞めなくて良かったしア式で良かった」と語った。同期と励まし合い、時にはぶつかりながら、嬉しさも悔しさも共有してきた。そんな同期との固い絆は西尾にとって大きな支えとなり、大学生活を振り返る上で欠かせないものとなった。

 卒業後はサッカーの第一線からは退き、一般企業に就職するという西尾。16年間のサッカー人生は一度幕を閉じることとなる。何よりも「勝つこと」に執着し、結果を求めてここまで走り続けてきた。サッカーから得た幾多の経験を糧とし、新たなステージでも輝いていくことだろう。

(記事・写真 熊谷桃花、写真 髙田凜太郎、藤田珠江、前田篤宏)

◆西尾颯大(にしお・はやた)

2000(平12)年7月21日生まれ。174センチ62キロ。千葉・流通経大柏高出身。スポーツ科学部。関東大学リーグで、1部通算22試合出場。昨年開催されたカタールW杯の優勝国予想をア式の同期の間でされていたとのこと。西尾選手は「(予想を)イングランドにしてて、応援してたんですけど負けちゃいました(笑)」と、同期との仲良しエピソードを教えてくださいました!

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