【連載】「早スポ記者からJリーグへ」ヴァンフォーレ甲府・井尻真理子が語る『サッカークラブでの仕事術』

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 2022年10月、多くのサッカーファンを驚かせる出来事が起こった。J2に属するヴァンフォーレ甲府が、J1・サンフレッチェ広島を破り、天皇杯王者に輝いたのである。ヴァンフォーレ甲府は当時J2で18位、リーグ戦では目下7連敗中でありながら、天皇杯ではJ1クラブを次々と撃破。決勝でもPK戦の末、当時J1で3位のサンフレッチェ広島を下す『ジャイアントキリング』で、初のタイトル獲得を成し遂げた。

 そんなヴァンフォーレ甲府だが、かつては「J2のお荷物」と揶揄されるほどに厳しいクラブ状況にあった。J2に加盟した99年から01年まで、3シーズン連続でのリーグ戦最下位。00年には現在でもJリーグ記録として残る19連敗を喫すると、債務超過による経営難すら発覚し、チームは存続の危機に立たされることとなる。その後、フロントスタッフに加えて、選手、サポーターの懸命な活動により、なんとかチームは解散を免れた。黎明期(れいめいき)の『暗黒時代』を乗り越えた先でつかみ取った栄冠であった。

 チームが存続の危機を乗り越えた2002年、ヴァンフォーレ甲府に入社したひとりの女性がいた。井尻真理子(平9人卒)である。山梨県出身の井尻は、早稲田大学在学中に『早稲田スポーツ新聞会』にて学生記者として活動。早大卒業後には一般企業にて勤務すると、01年よりヴァンフォーレ甲府のボランティアスタッフを務め、02年からフロントスタッフとして活躍をしている。

 「早スポ記者からJリーグへ」。異色の転身を遂げた井尻に、サッカークラブでの仕事やヴァンフォーレ甲府の魅力、そして井尻が思い描く未来に至るまでを語り尽くしていただいた。

前編 〜学生時代と社会人のつながり〜(2/24)

中編 〜サッカークラブでの仕事〜(2/25)

後編 〜サッカーが切り開くミライ〜(2/26)