夜空に響いた「紺碧の空」 観衆を魅了するプレーで慶大を圧倒

ア式蹴球男子
第73回早慶サッカー定期戦
早大 1-0
1-0
慶大
【得点】
(早大)37’平松柚佑、’73小倉陽太

 試合終了後、大学サッカーの聖地・西が丘サッカー場に響き渡った『紺碧の空』。3年ぶりに声出し応援が解禁された第73回早慶サッカー定期戦は、早大の完勝で幕を閉じた。一昨年はドローに終わると、昨年は後半アディショナルタイムに劇的な決勝点を許し、屈辱の敗北を喫した早大。宿敵・慶大から3年ぶりの勝利をつかむべく、この一戦に臨んだ。

 

早大の攻撃を活性化した安斎

  試合は終始早大が主導権を握る展開に。サイド攻撃を中心に攻撃を組み立てる中、MF安斎颯馬(社2=青森山田)やDF藤本隼斗(スポ3=柏レイソルU18)にチャンスが訪れるもネットを揺らすことはできない。すると37分、左サイドから安斎がクロスを上げると、最後はMF平松柚佑(社3=山梨学院)が押し込み先制に成功。追加点を狙う早大は後半も果敢に慶大ゴールへと迫るが、フィニッシュの精度を欠き、決定機を決めきることができない。それでも73分、MF小倉陽太(スポ3=横浜FCユース)のミドルシュートがゴールに吸い込まれ貴重な追加点を奪う。そのまま2-0の快勝を収め、早慶戦で3年ぶりの勝利を手にした。

得点後喜ぶ小倉

 序盤からボールを握る早大は12分、FKの流れから安斎がシュートを放つが枠の外へはずれる。29分には安斎が敵陣中央で前を向き、右サイドのDF西尾颯大(スポ4=流通経大柏)に展開。西尾はそのままクロスを上げると逆サイドの藤本が飛び込むがこれもゴールとはならない。先制点を奪えない嫌な流れが続く中37分。自陣でのパス回しに慶大ディフェンスが食いついたところを見逃さず、左サイドでフリーの安斎へパス。安斎はそのまま敵陣深くまで切り込みクロスを送ると、ゴール前でFW奥田陽琉(スポ3=柏レイソルU18)が合わせる。これは阻まれるがこぼれ球を平松が詰め待望の先制点が生まれた。「走っていたらいい所にこぼれてきてくれた」(平松)。チームのために走る平松の前に、ボールがこぼれるべくしてこぼれてきたゴールとなった。

 1点リードの中、後半開始直後は慶大に攻め込まれる時間が続くが、DF平瀬大(スポ4=サガン鳥栖U18)を中心に集中を切らさない守備を見せ、相手に主導権を渡さない。69分、DF鈴木俊也副将(商4=東京・早実)のコーナーキックからDF監物拓歩(スポ4=清水エスパルスユース)がヘディングで狙うも、ゴールにはつながらない。迎えた73分、背後へのボールに抜け出したFW駒沢直哉(スポ2=ツエーゲン金沢U18)が、相手DFとの競り合いに勝ち、エリア内へと侵入。シュートまでは持ち込めないがボールがこぼれると、「こぼれてきた時は打ってやろうと思った」という小倉が右足を一閃。シュートは相手GKの手の届かないコースに決まり、リードを2点に広げる。その後は途中交代で入ったGK平田周(スポ4=東京・国学院久我山)を中心に安定した守備で慶大に反撃を許さず。2点リードを守り切り、無念の敗北から1年、見事に昨年の雪辱を果たした。

トロフィーを掲げる柴田

 「早稲田でサッカーをやる意味に繋がる」と外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)が語る早慶サッカー定期戦。この伝統ある一戦で、早大イレブンは見ている観衆を魅了し、まさしく「感動」させるプレーを見せた。特にサッカーの本質とも言える、チームのために「走る」ことが徹底されていたこの日の早大。実際に、こぼれ球に対し中盤の選手がサボらず走っていたことが、2得点につながった。この「フォア・ザ・チーム」の精神は何もピッチでプレーしていた選手に限らない。メンバー入りが叶わず、悔しい思いをしている選手はもちろん多くいる中、得点後はチーム全体で歓喜の輪が形成された。ケガのため長期離脱を余儀なくされている柴田徹主将(スポ4=湘南ベルマーレU18)は、試合中ベンチからチームのことを鼓舞し続けた。「早慶戦という特別な舞台だからこそ全員で喜びを共有して早稲田としてどのように勝ちに、前に進んでいけるかというところが大事」と柴田。全員で勝ち取った「勝利」の2文字。だからこそこの早慶戦という舞台に携わった全ての人が、今宵この勝利を噛みしめていることだろう。そしてここから先、リーグ戦が再開する。残留争いに巻きこまれている早大としては、いわば「崖っぷち」の状態だ。この熾烈な戦いを勝ち抜くためにも、今日見せた姿勢は貫き続けていかなければならない。「浮つかないようにもう一回締め直して行きたい」と平松。この早慶戦を通過点として、また一つ洗練された早大の姿を見せてほしい。

(記事 髙田凜太郎 写真 熊谷桃花、永田怜、前田篤宏、有川隼翔)

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ヒル 袈依廉 スポ2 鹿児島城西
→89分 31 平田 周 スポ4 東京・国学院久我山
DF 24 西尾 颯大 スポ4 千葉・流通経大柏
DF 平瀬 大 スポ4 サガン鳥栖U18
DF 監物 拓歩 スポ4 清水エスパルスユース
→73分 13 中谷 颯辰 基理3 静岡学園
DF ◎鈴木 俊也 商4 東京・早実
MF 小倉 陽太 スポ3 横浜FCユース
MF 平松 柚佑 社3 山梨学院
→86分 山下 雄大 スポ4 柏レイソルU18
MF 安斎 颯馬 社2 青森山田
MF 10 植村 洋斗 スポ3 神奈川・日大藤沢
MF 12 藤本 隼斗 スポ3 柏レイソルU18
→77分 22 平野 右京 人3 兵庫・滝川
FW 奥田 陽琉 スポ3 柏レイソルU18
→60分 11 駒沢 直哉 スポ2 ツエーゲン金沢U18
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
コメント

平松柚佑(社3=山梨学院)

――早慶クラシコ3年ぶりの勝利で終わりましたが、試合を終えた感想いかがですか

 自分が入学してから1回も早慶戦勝ったことがなかったので、初めて勝った景色が見れて嬉しかったです。

――その中でも決勝ゴールを決めたということについて、あの決勝ゴールはどのように振り返ってますか

 やはり監督からも自分の特徴は走ること、ランニングすることと常々言われていたのでカウンター気味で左サイドが上がった時になんとか最後間に合えばいいなという気持ちで最後走っていたらいい所にこぼれてきてくれてたのでラッキーだったと思います。

――入った瞬間はどんな気持ちが湧き上がってきましたか

 最高でした。

――6月11日の順天堂戦もそうですが西が丘に強いなという印象はありますが

 大学デビューも1年生の時西が丘だったので、色々縁がある場所だなと思いつつ相性がいいのかなと思ってます。

――この試合全体を振り返ってゲームの流れ的なものに対してはどのような感想を持っていますか

 結構締まったゲームで両チームあまり隙ないゲームだったんですけどその中でしっかり後ろの4年生が体を張って守ってくれてたので前は下級生、3年生以下が多かった中で4年生が上手く持ち上げてくれたというか。4年生のおかげかなと思っています。

――これで入学後初めての勝利ということで、これまで連覇を続けてきたこともありますが、来年の早慶クラシコに向けて意気込みはありますか

 もちろん自分も来年ラストなので、しっかり勝つという所ももちろんですが、やっぱりリーグ戦今厳しい状況なので、まずもう1回全員ベクトルをリーグ戦に向けなおしてインカレ出場残留というところに向けてまた1からやっていきたいなと思います。

――この勝利でチームもだいぶ上向いたように感じます

 そうですね、それが浮つかないようにもう一回締め直して行きたいと思っています。

小倉陽太(スポ3=横浜FCユース)

――3年ぶりの早慶戦勝利に対する率直な感想をお願いします

本当にうれしくて、一昨年、昨年と勝ててなくて今年なんとしてもという思いがあったので、勝ててうれしいです。

――序盤は小倉選手に対するプレッシャーが強いように感じましたがプレー中に意識していたことは

最初センターバックに吸収されすぎてポジションが低くなっててプレッシャーを受ける場面が多かったですが、そのあと監督から指示があってフォワードのラインの一個後ろの方にポジションを取ったことでプレッシャーもあまり来なくなって、スムーズにプレーできたかなと思います。

――西尾選手に対する縦パスが多いように感じましたが、それは意図していたものだったのですか

そうですね。西尾が足速い選手というのもありますし、慶大が横パスを入れてスイッチを入れてっていうチームだったので、その裏をかくじゃないですけど、そこを狙っていました。

――ゴールシーンは振り返っていかがでしたか

いやー、あんまり覚えてなくて(笑)。自分自身そんなに点を取るキャラでもないし、練習でもあまりシュートが入らなかったのですが、勝ちたいという思いが強くて、1ー0のままいくよりも2点、3点取れた方がチームとしても楽だなと思ったのであそこは思い切って、その思い切りがあのシュートにつながったのかなと思います。

――ボールを受けた瞬間にシュートを考えていたのですか

こぼれてきた時は打ってやろうと思っていました。

――ここから先、後期リーグをどのように戦っていきたいか

関東リーグは早慶戦とは違うものがありますし、強度とか相手のうまさも一回り二回り違ってくると思いますけど、そこに臆することなく自分たちのサッカーを貫いて確実に勝ち点を積み上げていければなと思います。