共に湘南ベルマーレユースの出身。熱き魂と『湘南スタイル』を持つ、GK上川琢(スポ4=湘南ベルマーレU18)とDF柴田徹(スポ3=湘南ベルマーレU18)。長らくの付き合いである2人に、ユース所属時代のお話から今季の戦い、さらにインカレへの思いを語っていただいた。
※この取材は12月3日に行われたものです。
「試合に出場させてもらっている喜びや幸せを実感」(上川)
国士舘大戦でコーチングを行う上川
――リーグ戦を終えて、今のお気持ちはいかがですか
柴田 苦しかったですね。昨年はタイトルこそとれなかったですが、良い結果を残せていたし、得点もかなりとれていたので、それと比べてしまうと今年は苦しいシーズンでした。自分自身ケガもしてしまって、なかなかコンディションが整わない状態でいたので、満足のいくシーズンではなかったです。その中でも一試合一試合や目の前の練習にこだわれたので、それが最後の法政戦で結果として表れたのではないかなと思います。
上川 個人としては、苦しくて悔しいシーズンでした。シーズン前にケガをしてしまって、復帰が9月くらいになってしまって。そこから試合には出させてもらったのですが、コンディションが整わなくて気持ちよくサッカーができませんでした。でもその中で、試合に出場させてもらっている喜びや幸せを実感しました。自分が勝たせられたという試合は少なかったですが、チーム一丸となって戦えたところや、徹も言ったように最後の法大戦でギリギリになりながらもインカレへの切符をみんなで勝ち取ったところは良かったと思います。4年生については、結果が伴わなかったり、早慶戦のスタメンが公文(翔、スポ4=東京・東農大一)だけで、4年生があまりピッチに立てなかったりと悔しさもありましたが、残りの準備期間、チームを引っ張って頑張っていきたいと思います。
――お二人とも「苦しいシーズンだった」とのことですが、その苦しさはどのように乗り越えたのでしょうか
柴田 ケガをして、外からチームを見ることが増えて、自分がピッチに立てないもどかしさや悔しさはすごく強かったです。自分が抜けた時期はチームの調子が悪く全然勝てなかったので、「俺が出ていれば勝てたかもしれないのに」とか「なんでケガしているんだろう」とか思ってしまうこともありました。苦しい時期ではあるけれど、「自分がピッチに戻ったら勝たせよう」「勝たせた先にリーグ制覇や日本一が見えてくる」という気持ちで、自分には今何が必要か、どうしたら進化できるのかを常に考えていました。
上川 苦しい時期に支えになったのが、自分の周りにいる人たちでした。ケガをしたときにサポートしてくれた人や、ケガをするまで練習に参加していた福島(福島ユナイテッドFC)の方々にはとても支えていただきました。ケガをしてリーグ戦に出場する前に(福島ユナイテッドFCへの)加入を決めたことも、自分の中では心の支えになったというか、焦らずに復帰できました。また、ピッチの外での自分の役割を模索していたときに、自分が関わった第10節の法大戦のセットプレーで点をとれて、プレー以外のところでの喜びを感じられたことは自分の中で大きかったです。
――お二人から見て、今季良かった選手を挙げるなら誰でしょうか。もちろんご自身でも大丈夫です
柴田 自分は活躍していないので。
上川 (笑)
柴田 大西翔也選手(スポ4=浦和レッズユース)ですかね。あまり目立つ選手ではないですが、確実にチームを支えていたと思います。同じサイドバックだからこそ分かります。熱い感じではないし、めちゃめちゃ目立つこともないですが、淡々と自分のやるべきことやできることを追究し続けてくれたと思います。
――または、「この試合のあの場面が良かった」というものはありますか
上川 2つあります。1つは、先ほど言った法大戦でのセットプレーから翔也が決めたヘディングゴールです。もう1つは、桐蔭横浜戦での雄大(田中雄大主将、スポ4=神奈川・桐光学園)の暴れっぷりですね。あそこで逆転して勝利をつかめたのはすごく大きかったですし、その後の国士舘戦でも逆転勝利できたのはキャプテンの雄大のおかげです。
「人よりも頑張るみたいな精神」(柴田)
城西大戦で前線へとボールを運ぶ柴田
――ここでお互いについて紹介してください
上川 最初に会ったのは自分が高校2年生で徹が高校1年生で、徹がベルマーレのユースに入ってきたときでした。そこから仲良くなったのが国体でした。自分が早生まれで徹の代で国体に出て、そこで結構仲良くなりました。ユースの時もいろいろ話して、結構真面目でそれこそユースの時はキャプテンをやったりしていてかなり責任感の強い人柄だと思います。大学入ってきて、まさか同じ大学になるとは思っていませんでしたけど、こうやって一緒にまたプレーすることができてよかったと思います。プレー面ではアグレッシブに行きますし、その反面バランスのとれたプレーも徹自身できていると思います。また、ユースでキャプテンをやっていたというところで、リーダーシップだったり、チームを鼓舞するような声だったりというところも、見てもらえれば分かると思います。そういうところが徹の性格かなと思います。あとは部屋行ったら昼寝しているくらいです(笑)。
――今の聞いていかがですか
柴田 こんな高評価いただいちゃっていいのかなって感じですけどね(笑)。ありがとうございます。
上川 (知り合って)5年目?もう友達みたいな。
柴田 そうだね、友達感強いよね。
――それでは柴田選手から見た上川選手は
柴田 琢くんは・・・
上川 緊張するな
柴田 琢くんも今言っていたように本当にすごく仲良しです。サッカーのおかげで大学3年まで関係が続いていると思うし、自分が早稲田に来られたのも琢くんのアドバイスというか、琢くんといろいろ会話して早稲田に行きたいという思いが強くなったという部分もあるので、めっちゃ感謝していますよ(笑)。琢くんは優しい人という一言に尽きるかなと思います。いろんな人とコミュニケーションとっている姿も見るし、コミュニケーションとっているときもお互いが笑顔になっていい空気があるなというのは感じているので、琢くんがいることで助かっている部分は自分的にもチーム的にも大きいのではないのかなというふうに思います。
上川 ありがとうございます。
――どうですか
上川 満足です(笑)。
――お二人ともベルマーレユースご出身ということですが、どのようなチームでしたか
上川 ベルマーレと言えば湘南スタイルというのが代名詞になると思うのですが、アカデミーにもその血というのは入っていて、フォーメーションもスリーバックでどんどんアグレッシブにというかたちでした。ボールを取ったときの選択肢も後ろか横というよりは絶対前というイメージを持つように指導されていました。徹も結構アグレッシブにオーバーラップというところもありましたけど、そういったところもベルマーレユースの特徴としてあげられます。今自分が好きなサッカースタイルといったらそのようなアグレッシブなサッカースタイルで、その方が見ていて楽しいし、自分が中に入っていてもキーパーから見ていたらすごく楽しいですけど中でやる選手は大変そうですね。
柴田 楽しいよ。
上川 中でプレーしている選手も外から見ている人も楽しめるサッカーというところがありますね。
柴田 とにかく攻撃的でしたね。失点しても良いからその倍点をとれという感じでした。とにかく攻め続けて、自分たちのスタイルを貫き通そうみたいな空気感は強かったと思います。あと精神は本当に鍛えられたと思います。たくさん走りましたし。試合を見ていてもわかると思うのですが、湘南は運動量がすごく大事になるチームなのできつくても走るとか、きつくてもゴール前に戻るとかそういう当たり前のことを当たり前以上にやるみたいなところはすごく強かったです。人よりも頑張るみたいなそういう精神面はかなり鍛えられたかなと思います。
上川 精神面はかなり鍛えられたね。
「琢くんは心のよりどころ」(柴田)
早慶クラシコで喜びを爆発させる柴田
――柴田選手は福島出身ですが、U18から湘南に来たのはどういう経緯ですか
柴田 ビアンコーネ福島というチームでやっていて、その監督と今福島ユナイテッドFCの監督をやっている時崎(悠)監督(7日に退任発表)が湘南とつながりがあってそこで紹介してもらって、ベルマーレユースの活動に何日か参加させてもらって入団する形になりました。
――福島県出身の柴田選手から、福島ユナイテッドFCに加入される上川選手へ、福島のおすすめのものを紹介していただけますか
柴田 いっぱいあるよ!喜多方ラーメンは絶対に食べるべき。白河ラーメンも。あと福島は、実は海がめっちゃきれいだから行ってほしい。
上川 福島って広くて。日本で何番目だっけ?
柴田 3番目!
上川 だそうです。(柴田は)それにすごく誇りを持っているんですよ(笑)
柴田 まあ、それくらいしかないからね(笑)
上川 果物やお米もおいしいですよ。
柴田 桃ね。
上川 そうそう。福島ユナイテッドFCは桃ユニや米ユニを試合で着ているので、それもぜひ注目してください。
柴田 冬は雪が降るので、ウィンタースポーツもいかがでしょうか。
上川 あと、日本酒もおいしいらしいです。
柴田 日本酒は、僕が福島にいた頃は未成年だったから分かんないや。
上川 (笑)。
――ユース時代のお二人の関係性はいかがでしたか
上川 国体から結構仲良くなりました。大会自体が結構長くて、合宿とかリーグ戦もあったりした中で最後に国体の本大会で1週間横浜Fマリノスとか川崎フロンターレの選手とかと一緒に10人部屋で過ごしました。そこを経て2年生3年生の時からはすごく関わるようになりました。
柴田 でも今とそんなに変わらないよね。
上川 フラットだよね。
柴田 湘南ユース自体上下関係がそんなに厳しい方ではなかったので誰とでもフラットな感じで話せたことが多かったのかな。
上川 とくにエピソードは・・・
柴田 そんなにないよね。
上川 大学に入ってからはご飯に行ったりとか。高校時代はそういうことなかったので。
――ユース時代も今とあまり変わらない関係性だったとおっしゃっていましたが、大学に入ってからの関係性やエピソードなどあれば教えてください
上川 自分が大学に入って徹がユースの3年生だったときは入試の話とかもそうですし、ユースの話とかもしていました。徹が入ってきてからは、自分が入部したときはベルマーレの先輩とかいなくてあまり関わりとか無かったので。徹が入ってきたときは意識して話そうとは思っていませんでしたけど、徹が先輩とか周りとの関係を築いていけるようにとは思っていました。徹が2年生になって試合に出るようになってからは学年リーダーとかやっているように責任感が増して、ピッチの中で声を張ってプレーしている姿を見て、関係性ではないですけど頼もしくなったなと思います。
柴田 褒めすぎじゃないですか(笑)?
上川 寮も部屋は違いますけど一緒に遊んだり3ヶ月に1回くらいご飯行ったりしています。焼き肉に言ったらこいつタンしか食べないんですよ(笑)。
――柴田選手は今の聞いていかがですか
柴田 琢くんは俺が1年のとき頼もしいというか心のよりどころみたいな感じでしたね。何か困ったらとりあえず琢くんのところいこうみたいな。ユース時代から大学の話も聞いていましたし、大学に入ってからもア式とはなんぞやみたいなところから始まり、「頑張ろうよ」って話したり。助けてもらってばかりで頼りになる先輩です。エピソードではないかもしれないですが、個人的には試合に勝った後の「ウェーイ」みたいなやつが好きです。
上川 エピソードは2年生の順天堂との試合の・・・
柴田 俺が点決めた試合か。
上川 俺が肉離れから復帰したときの。そこで初めて一緒に試合出たよね。エピソード薄いですね(笑)。
柴田 6年目にしてこの薄さ。
上川 日々の関係性がちゃんとしているからこそね。
――ユース時代の経験でア式で生きていることなどはありますか
上川 サッカー面で言ったら、ユースで攻撃的なサッカーを求められてそこは大学に入ってからも意識していますし、コーチングでもあまり保守的にならずにプレーしていこうと考えながらやっています。それがそもそもベルマーレユースとほかのクラブユースとの違いだと思っています。そこで違いを作り出せるというのは湘南で培ってきたものだと思います。ピッチ外のことでいったら、大学に入ってからもベルマーレの試合も結構観ていましたし、あとはユースでお世話になったスタッフの方とも初蹴りとか頻繁にお世話になったりしています。そこのつながりの大切さというのは改めて実感しています。ベルマーレのスタッフは優しい方が多いと思います。
柴田 小中高とサッカーやってきた中でベルマーレで過ごした時間はとても濃かったです。今の自分のプレーを形作ったのもベルマーレユースだし人間性も高校生時代に育まれたものだと思うので、その3年間が今の大学でのア式での日々にそのまま生きていて、ユース時代の延長線上に今があるのかなと思います。
――ちなみに柴田選手が早稲田に来ると聞いたとき上川さんはどのように思われましたか
上川 うれしかったです。早稲田に入る入試制度が、ベルマーレの人は大抵スポーツ推薦だと思うのですが、全国に行った経験のある人しか入れないので自分の1個下は徹しかいませんでしたしね。それでも早稲田を選んでくれたのはすごくうれしかったですし、ベルマーレの話を共有出来る人が増えたのはありがたかったです。
――話は変わりますが、柴田選手は上川選手のお父さんと名前が全く同じだそうですね
上川 そうなんですよ(笑)。漢字も同じ「徹」で。何かの運命かな。
柴田 運命だね。俺もビッグになる。
「日本一をとって、みんなで笑って終わりたい」(上川)
拓大戦後に奥田陽琉(スポ2=柏レイソルU18)と抱き合う上川
――インカレに関して、チーム全体としては日本一という目標を掲げていると思うのですが、個人としてはどのような目標を立てていますか
上川 個人としてはしっかり自分が試合に出てチームを勝たせるっていうのはもちろんですけど、去年は法政大以外は無失点で3試合とも無失点で勝ち進めたこともあるので、無失点で決勝まで勝ち進んで優勝まで行きたいという目標があります。トーナメント戦になったときにPK戦はあるかもしれないですけど、無失点だったら仲間が点を決めてくれるチャンスはありますし、勝てる可能性を少しは増やせると思うので。自分が出てもでなくても、活躍することがチームにとっていいことかどうかはわからないので、自分が活躍しないってことはシュートを打たせないということなので、そういうブロックを作る守備の強化などをしていきたいと思います。
柴田 自分としては楽しみたいなということがあります。1日の練習へのこだわりを持って、インカレまでの1日1日をどれだけ突き詰められるかだと思います。試合が始まってからは緊迫した試合を楽しめるかというところが大切だと思います。楽しんだ先に自分の特徴が出てくると思うので、日本一を目指しながらも1試合1試合楽しみたいです。
――日本一になるためのカギはどのようなことだと思いますか
上川 総力戦に間違いなくなると思うので、最初の1、2回戦で連戦になった時にメンバーを全体的に底上げして勝つことができるかっていうのは、日々の練習にかかっているので、明日から全体としてのレベルアップを頑張りたいです。ピッチの中だけでなく外との関わりだったり、中だけでは気づかないことがあったときに外から気づいて、チーム全体で戦うことができるか、90分全体を通して集中していけるかということがカギになってくると思います。ベースとして戦う部分がありつつもそういったところで戦っていくことが鍵になると思います。
柴田 思いの強さがプレーに現れるので、勝てるかなという気持ちでは前に進み続ける力が足りないと思います。俺らなら絶対勝てるという強い思いで、自然と体を前に進めていきたいです。その思いを生み出すために日々の練習でどれだけ爆発させれるかがカギになると思います。練習でできないことは試合でできないというのは本当にその通りだと思うので技術面だけではなくて心の質も高めながらやっていきたいです。
――インカレで自分のここに注目してほしいというところはありますか
上川 自分が今、心がけていることはポジショニングです。側からみたらわかりづらいんですけど、ボールがどこに移動していってもしっかり正しいポジショニングをすること。加えて、ディフェンスラインのカバーというところは意識していきたいです。ゴール前になった時は丁寧なポジショニングを取って、ディフェンスとのコミュニケーションをとって守るべきところを明確にしたいです。来年以降自分がサッカー選手としてやっていく中でもカギになると思うので、しっかり今のうちに意識していきたいです。
柴田 アグレッシブなところをみて欲しいです。あまり目立つ選手ではないので、何気ない守備などビックプレイじゃないところにあえて注目してほしいです。1発で試合を決めるような選手ではないからこそ、90分通してプレーを心がけていきたいです。
――インカレにむけて意気込みをお願いします
柴田 日本一がもちろん目指してるところなんですけど、笑って終わりたいです。先輩とも今年で最後なんで笑って送り出したいです。今の4年生にはお世話になった人が多いので、試合に絡めない4年生も含めて、たとえ勝てなくても笑顔で締めくくれたらいいなと思います。
上川 後悔のないように終えたいです。終わった後の後悔は誰でもあると思うんですけど、それをどれだけ減らせるかだと思うので、自分の中で意識して、自分が試合に出ても出れなくてもチームに対して尽くすことは早稲田のこの4年間で学んだことなので、そこを発揮したいです。この苦しい1年間を戦ってきた同期だったり、下級生たちと共に戦っていって、終われるようにしたいです。また、ここでどれだけいい結果を残せるかによって、後輩たちが周りから見られる目が増えたり、早稲田からプロになる道が増えると、自分たちがいなくなった後でも誇らしいことなので、まずはしっかりインカレで結果を残していきたいです。最終的には日本一をとって、みんなで笑って終わりたいです。日本一をとることで後悔もなくなると思うので、必ずそこへ向けて、練習、練習試合と頑張って、今まで積み上げたものをチームとして発揮して、必ずいい締めくくりをしたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 大滝佐和、土生諒子、永田伶 写真 橋口遼太郎、内海日和)
全国大会への意気込みを書いていただきました!
◆上川琢(かみかわ・たく)(※写真右)
2000(平12)年2月23日生まれ。179センチ。湘南ベルマーレユース出身。スポーツ科学部4年。クリスマスプレゼントには「福島で寮生活をするので、プロジェクターみたいなものがほしい」。充実の寮生活を目指します!
◆柴田徹(しばた・とおる)(※写真左)
2001(平13)年2月18日生まれ。172センチ。湘南ベルマーレユース出身。スポーツ科学部3年。クリスマスプレゼントの希望は「服。サーフ系なら何でもウェルカム」。流石は湘南の男です。