全日本大学選手権直前特集 第5回 小倉陽太×平松柚佑(12/8)

ア式蹴球男子

 全日本大学選手権(インカレ)を前にした今、早稲田大学ア式蹴球部では全員が日本一を目指し練習を重ねている。その中でもこの1年コンスタントにメンバーに入り、チームの勝利、そしてインカレ進出に貢献してきたのがMF小倉陽太(スポ2=横浜FCユース)とMF平松柚佑(社2=山梨学院)の2年生コンビ。今シーズン最後の大会を目の前に控えた今、同じポジションでもある2人はどのような思いを抱いているのだろうか。その胸中に迫る。

※この取材は12月3日に行われたものです。

「俺のこと好きっすね、おぐは!」(平松)

セットプレーの指示を出す小倉と平松

――他己紹介をしてください

平松 俺これいくらでもいけるな。

小倉 (平松は)真面目やな。サッカーの面で言えば、気持ちで全部やっている印象が強いです。しかし、気持ちだけではなくて学ぼうとする力もすごくあります。1年生の最初の頃は、自分に「どうやってボール取っているの」とか聞いてきてくれました。そのようなところから聞けるというところが、今のサッカーに生きていると思います。私生活で言えば、田中雄大主将(MF、スポ4=神奈川・桐光学園)にちょっかい出している印象が強いです。

平松 (小倉は)俺らの学年で1年生の頃から試合に出ていて、最初は手の届かない存在でした。高校の時からおぐのことは知っていて「早稲田に来る。ポジションも一緒だ」ということは思っていました。守備で奪う力もすごいですし、ボールも失いません。どちらかというと、攻守の中でも守備の方にフォーカスしている選手なので、負けられないという気持ちの方が強かったです。今ももちろん負けられないという気持ちを持ちつつ、リスペクトしていますね。ピッチ外では、マジで優しいです。自分はかなりいじられているのですが、おぐはその中でも優しいです。ディスってくるのですが、俺のこと好きだなということは感じます(笑)。俺のこと好きっすね、おぐは!

――チームとして今シーズン振り返っていかがですか

小倉 チームとしてはリーグ戦、シーズン通して苦しかったです。1年生の時から試合に出させてもらっていた中で2年目を迎えて、最初は3連勝しましたけど、その後からは勝てなくなってしまいました。そこで自分は、1年生の時にはあった自信がなくなって、チームに貢献できていないと思うようになりました。しかし、チームが苦しい状況の中でも前向きに勝ちにいこうという姿勢があったと思います。

平松 おぐも言っていましたが、後期は本当に苦しかったということが第一印象としてあります。前期は苦しいながらも、なんとなく勝ち点を積み上げることができていました。一方で後期は、引き分けられるという試合で負けたり、勝てる試合で負けたり、負けている感じがしないのに負けているという印象がありました。そのようなイメージが強くて、自分は基本的にベンチにいたのですが、その分苦しかったです。本当に(相手に)手も足も出ないくらいならば、自分たちも「もう一度見つめ直そう」という雰囲気になると思います。しかし、勝てそうで勝てないところで「なぜ」という感情は一人ひとりの気持ちの中になんとなくあって、そこがやはり互いへの不信感につながってしまっていたのではないかと思います。その中で、4年生は苦しい姿を見せずに前向きでした。簡単に言葉にできますが、あのような状況の中で前向きになられるということは本当にすごかったと思います。このリーグ戦を通して4年生の偉大さを感じました。

――そのような苦しい状況の中で、4年生はどのような姿を見せていたのでしょうか

平松 今の4年生が(先日)ブログを書き終えましたが、その中でも「一人にならない、させない」という言葉がありました。どうしても、苦しい時は一人で抱え込んでしまいます。そのような時に、自分も一人にならないし、周りもさせないというスタンスが良かったと思います。そこは自分もこれから今まで以上に意識していかなければいけないと思います。

――小倉選手はリーグ戦15試合に先発出場されていますが、個人として振り返っていかがですか

小倉 とても悩んだシーズンでした。下に後輩ができて自分が先輩になり、立ち位置が変わったことで、試合に出ている上でチームを背負っているという責任感が芽生えました。だからこそ、試合に勝てないときに自分はどうすれば良いのかということを考えるようになりました。1年生の時と比べるととても苦しかったと思います。2年生になり、攻守の要となる必要があったので、自分がただ攻撃に参加しているだけではチームは勝てないと感じるようになりました。そこで攻撃のアイデアがまだまだ足りないと感じました。守備でもネガティブに捉えてしまう部分があります。これらを含めていろいろなところで苦しかったです。

――平松選手も今シーズンは多くの試合でベンチ入りされ、後半戦ではスタメン出場する試合もありました。個人として振り返っていかがですか

平松 最初は関東(リーグ)のベンチに入れるというイメージがなかったので、ベンチに入れたという部分だけ見れば上出来のシーズンだったと思います。特にシーズンの序盤は1分も出場していませんでしたが、やまし(山下雄大、スポ3=柏レイソルU18)が国士舘戦で退場して、その次の桐蔭(横浜)戦で初めて試合に出ました。それまで出場機会がなかったという点では、すごく悔しかったです。自分から「Iリーグで出させてほしい」と言おうか悩んだ時期もありました。その中で、関東に出るという部分にフォーカスして、折れずにそこに向き合い続けられたという部分では、一つ自分を評価できるシーズンだと思いました。シーズン終盤ではスタメンで出させていただきましたが、それはやはりチームの戦術を変えて、もう一度守備から入ろうということで、小倉がセンターバックに行って、その空いた守備の部分を埋めるために出たというカタチだったので、スタメンを奪ったとは思っていませんでした。ただおぐがセンターバックにいったから、似たようなタイプの人間が出ているというだけです。まだまだ成長しなければいけないと感じたシーズンでした。

――小倉選手は「チームの中心となる覚悟」を持つようになったと話されていましたが、そのために実際に行なっている行動はありますか

小倉 自分はまだまだそこが足りないと思っています。しかし、誰よりも走るというところなどは意識しながらやっていますね。

――平松選手から見て、そんな小倉選手のことをどのように感じていましたか

平松 もちろん昨年より責任感持っているということは感じました。また、昨年以上に要求しているということは一番感じています。チームがうまくいかない時に行動ももちろんですし、「もっとこうしよう」「ああしよう」という発言が多かったことは、昨年にはないものだったと感じたので、とても頼もしかったと思います。

「少しでもベンチからプラスの声を」(平松)

早慶クラシコにおいてベンチから声をかける平松

――小倉選手は早慶戦以降センターバックで起用されることが増えましたが、そこにはどのような経緯があったのでしょうか

小倉 早慶戦の前の週の明治戦で、自分は累積で出場できなかったので植村(洋斗、スポ2=神奈川・日大藤沢)と山下がボランチを組んでいました。その試合での植村のコンディジョンが良く攻守で目立っていたこともあり、外池さんからセンターバックの話を持ちかけられたのがきっかけです。自分はボランチで出場するときも、ディフェンスラインの間に立ってビルドアップをする場面が多いので、それをセンターバックでもやるということになりましたね。

――センターバックをやる上で、外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)と具体的に話したことはありますか

小倉 具体的なことはあまり言われていませんが、監督も自分の守備の能力をかってくれていて、「お前なら任せられる」と背中押してくれました。

――コンビを組む鈴木俊也(商3=東京・早実)選手とは何か話をされましたか

小倉 特に試合中は、自分がやりやすいようにいろいろ声を掛けてくれますね。

――ご自身が何試合かセンターバックでプレーする上で感じたことはありますか

小倉 最初はあまりうまくいかなくて、自分の中でもボランチと違って、チームに貢献している感覚があまりありませんでした。しかし、試合を重ねるごとに慣れてきて、ちょっとずつ守備で奪ってそこから攻撃につなげるというプレーができてきて、そこでチームに貢献できていると感じられるようになりました。

――平松選手もボランチとして試合に出場されて、センターバックの小倉選手と同じピッチに立たれています。平松選手から見たセンターバックの小倉選手はどのような印象ですか

平松 自分はおぐのことをボランチの選手だと思っているので、早くボランチに戻ってほしいと思っています。しかし、センターバックでも関東のあのような舞台でしっかりプレーするということは、すごいです。そう簡単にできることではないですし、早慶戦という舞台でその週から急にセンターバックをやったのにも関わらず、パフォーマンスも良かったですし、監督の期待に応えていたのには自分も刺激を受けました。

――小倉選手は5月ごろ、関東大学選抜の活動に参加されていましたが、当時を振り返っていかがですか

小倉 早稲田で求められていることと、大学選抜で求められていることは同じところもありつつ、違うところもあります。早稲田では自分は守備にフォーカスされやすいので、自分たちが攻めている時にはリスクを管理する役割が大きくあります。しかし、大学選抜では攻撃の能力も求められていきます。大学選抜で攻撃のところにフォーカスしたことで、縦パスが増えたと自分の中でも感じていますね。

――平松選手は練習中も、試合中も人一倍声を出している印象ですが、そこに関して意識していることはありますか

平松 意識していることはあまりありませんが、小学校の頃からこのようなことをやってきたので、声を出すことは自分のサッカーの特徴でもあります。特に今年はベンチにいた時間が長い分、できることは限られてくるので、そこでチームが良い時も苦しい時も声を出していますね。本当に力になっているか分からないことも多いですが、その中で少しでもベンチからマイナスではないプラスの声を出せれば良いと思います。それは、幹(浦田幹学生トレーナー、スポ4=兵庫・夢野台)と話してやっていましたね。

――平松選手のnoteにFW加藤拓己(スポ4=山梨学院)選手への思いが書かれていたことが印象的でした。あのnoteを書くに至った経緯を教えてください

平松 中学から同じチームでやっていて、大学も同じで、もちろん拓己がいたから早稲田に来たわけではありませんが、一つの目標として拓己と一緒に試合に出たいということがありました。やっと(自分が)出始めたというところで、拓己がケガをしてしまって、「うわ〜、今か」ということは僕も思いましたし、僕以上に拓己が思っていたと思います。直接は恥ずかしくて言えないので、あのような部員ブログを通して感謝というか気持ちを伝えられれば良いと思い、書きました。

――そのnoteに加藤選手から反応はありましたか

平松 いやー、あまり話す仲じゃないので(笑)。その時(加藤は)清水にいたので、練習に来た時に「書いてたじゃん」とは言われましたね。ただ、自分もあまり触れられたくないです(笑)。引用リツイートとかしていましたけど!

――小倉選手にとって加藤選手はどのような存在ですか

小倉 寮内で部屋が隣で自分たちの部屋に来てくれるので、よく面倒見てもらっています。同部屋が藤本(DF藤本隼斗、スポ2=柏レイソルU18)なので、よく一緒にいじめています(笑)。平松が誕生日の時にゴリくん(加藤)が誰かの部屋からゴキブリを捕まえてきて、笑ったこともありました(笑)。(加藤は)いろいろな部屋に遊びに行っていますね、自分の部屋にこもることはあまりないと思います。

「本当に良いライバル」(小倉)

拓大戦で前線をうかがう小倉

――お二人が早大を選んだ理由を教えてください

小倉 僕は本当に運が良かったからですね。最初は早稲田を目指してなくて、高2の冬には中央大学さんからスカウトをいただいていました。自分もそこで中央大学を目指そうということで、セレクションも受けていたのですが、落とされてしまいました。そこで玉井さん(玉井智久コーチ、平12卒)がたまたま(僕と)レイソルと試合をしていた時に、陽琉(FW奥田陽琉、スポ2=柏レイソルU18)を見に来ていました。その時の試合で自分のパフォーマンスがすごく良くて、その後から声をかけていただきましたね。他に行くところはどこにもなくて、早稲田しかないと思い早稲田を選びました。

平松 自分もおぐと同様に早稲田に来るつもりはなかったというか、来られる場所だと思っていませんでした。他にも少し声をかけてもらっていたところはあったので、そこに行こうと思っていました。その中で高校の監督が玉井さんと話をしたらしくて、そこで「お前早稲田行けよ」と本当に軽い感じで言われました。僕も「早稲田っすか」という気持ちだったのですが、そこで自己推薦入試というものを知って、そこから練習試合をさせていただいたり、練習参加をさせていただいたりしました。そこで玉井さんと連絡とりながら、早稲田一本で行こうと思うようになりましたね。落ちてしまっても、山梨学院大学があったので、「落ちても仕方ないか」と思い、早稲田を目指しました。

――サッカー面でお互いはどのような存在ですか

小倉 本当に良いライバルですね。一回平松から「おぐからスタメンを奪って、俺が試合に出る」ということを言ってくれたことがありました。自分はそれがすごく印象的で、今までそこまで自分をライバル視してくれるような同期や仲間があまりいませんでした。本当にその時はうれしかったです。そこから平松には負けてられないと思うようになりました。本当に良い競争ができるライバルですね。

平松 今年になってやっと競争できる立ち位置になったと思っています。今おぐも言っていましたけど、こいつからポジションを奪いたいというか、出るとしたらおぐからスタメンをとってというカタチになると思います。もちろん一緒にボランチで組みたいとは思いますが、タイプも被ってしまうので、チームのバランス的にも今年は難しいのではないかと思ってもいます。あと2年一緒にやるので、おぐにはオリンピックとかW杯とか、そのような舞台にいってほしいと思っていることもあって、おぐに負けずに「俺はいつでもいるぞ」という意識を持っていきたいです。憧れというか参考にしているプレーヤーです。小っ恥ずかしいですけどね、隣にいてこんなことを話しているのは(笑)。自分にとって本当に良い存在です。

――ピッチの外ではお互いはどのような存在ですか

小倉 ピッチ外では仲の良い友達です。先ほどもお話しした通り、一緒に先輩をいじめることもあるくらいです。

平松 おぐはかまちょだなと思います。いつもちょっかいをかけてくるので(笑)。「しょうがない、かまってやろう」という感じです。

――お二人にとっての同期の存在について教えてください

小倉 本当に良い仲間に出会えたと思っています。今シーズンの初めに2週間奉仕活動をする機会がありました。その時に普段はあまり自分に対してあまり何も言ってこないのですが、いざそのような時になると自分にちゃんとぶつかってきてくれました。そこで自分は気づかされたというか、試合に出るにしてもただ試合に出るだけではダメだと気づかせてくれたので、本当に良い仲間です。

平松 同期は友達という感じですね。もちろんサッカーではバチバチ競争心を持ってやりますが、ピッチを離れればみんなで仲が良いですし、自分たちの代は人数が少ないので、より密に関われているのではないかと思っています。

「自分の中で思い描く最高になれれば良い」(平松)

明大戦でミドルシュートを放つ平松

――小倉選手は尊敬する選手として田中碧選手を挙げられていましたが、それはなぜですか

小倉 技術が他のJリーグのプレーヤーと比べた時に、群を抜けていると思うからですね。自分もオリンピックやW杯を目指すとなったら、プレースタイル的にそこを越えていかなければいけないと思います。まだまだ自分のスキルでは、世界と戦っていけないとも思います。そこで田中碧選手のように技術を持っている選手を尊敬していますね。

――田中碧選手の動画を見て参考にすることはあるのでしょうか

小倉 自分はかなり他の選手の動画を見るのですが、日本人だと田中碧選手の動画しか見ないですね(笑)。

――一方で、平松選手は尊敬する選手や目標とする選手がいないとのことですが、これについて教えていただけますか

平松 サッカーは見るのですが、あまり個人にフォーカスしては見ません。もちろん自分に似たプレースタイルの遠藤航選手などはいますが、体格も違いますし、スピードも違いますし、持っている考え方も違うと思うので、目標にしても(あまり意味がない)と思います。しかし、小さい頃はメッシが好きでした。大人になったというわけではないのですが、自分の中で思い描く最高になれれば良いという考え方があります。そのため、誰を目指すということではなく、自分を見つめながらやっていきたいと思います。

――加藤選手について書かれていたnoteに「一切憧れていません」と書かれていたこと印象的でした

平松 高校時代の選手権の時に、二人とも坊主頭で「憧れているんですか」と聞かれることがよくありました。まず、その点について「違うぞ」ということは伝えたいです。自分は小5から坊主だったので、坊主にするのは自分の方が早かったです。そこで笑いを誘いたかったということが(理由の)一つですかね。もう一つは、憧れて良い存在ではないと思うからです、まだ。自分が憧れて良いレベルではないというか、自分の立ち位置からは手の届かない存在です。また、私生活とかで馬鹿な面も見ているので(笑)。

――小倉選手はライバルとして同期の植村選手をあげられていました。植村選手の凄さはどんなところにありますか

小倉 守備のところは自信を持ってあいつよりできると言えるのですが、洋斗は攻撃面でボールを運ぶ力があり、それに比べれば自分にはまだ攻撃の厚みがありません。そこはまだ洋斗には及ばないところで、見習っていかなければいけないと思いますね。

――平松選手はこのライバル選手に関しても「いない」とされていましたが、それはなぜでしょうか

平松 単純に考えれば、おぐもライバルですし、洋斗も丹羽くん(MF丹羽匠、スポ3=ガンバ大阪ユース)もライバルです。しかし、先ほどもお話した通り、自分は自分なので。同じプレースタイルですが、また少し違ったタイプだと思います。全く同じ選手などいないと思うので、そこは楽しく上を目指して本気でやれれば良いなと思うので、そうしました。

――小倉選手は田中主将を仲の良い選手として、挙げられていましたがそこについてはいかがでしょうか

小倉 ピッチの中ではチームを引っ張ってくれる存在です。雄大くんにならついていけると思います。プレーもそうですし、声掛けについてもそうです。本当にそこは良い先輩として尊敬しています。ピッチの外では友達ですね(笑)。本当に優しくて、絡みにいってもいつもかまってくれます。「お前俺以外に友達いないだろ」とか毎日のようにお互い言い合っています。本当にそういうことができる仲なので、先輩というより友達かなと思います。

――主将としての田中選手にはどのような印象を抱かれていますか

小倉 いるだけでチームに影響を与えられる人です。チームが苦しい時にドリブルで打開してくれて、本当に『DRIVE』を体現している人だと思っています。

――平松選手の目には田中主将はどのように映っていますか

平松 「無理しているんだろうな」とは思いますね。たぶん、(昔は)あんなにチームのことを考えている人ではありませんでしたし、「キャプテンという役職に縛られずに、もっと自由にやっても良いんじゃない」と思う場面も今シーズンはありました。早稲田の主将というのは本当に大きなものなのだということは思っていて、プロがなかなか決まらなかった時も、背中でチームを引っ張ってくれました。おぐも、雄大くん自身も言っていましたが、『DRIVE』の姿勢をこのチームで誰よりも体現している存在だと思っています。

――4年生はお二人にとってどのような存在でしょうか

小倉 一言で言ったら「優しい」です。昨年からAチームの4年生は多く絡ませてもらっていました。本当にサッカーのことやピッチ外でも、いろいろなアドバイスをくれました。よくいろいろな人と話しているという印象はありますね。困っている人がいたら声を掛けていたり、苦しんでいる人がいたら手を差し伸べたり、本当にすばらしい人たちだと思います。

平松 先輩感がないとは思います。もちろん(僕が)ナメているのですが(笑)。リスペクトしていないわけではなくて、リスペクトしている中で、自分たちに付き合ってくれていると思います。一緒に温泉に行ったり、ご飯に行ったりもしました。自分たちが気を遣わないように関わってくれているとはかなり思いますね。 ちょっとナメてしまっているので、少し申し訳ないとは思っていますが(笑)。本当に良い人たちです。

「存在価値を高めていかなければいけない」(小倉)

流通経大戦で攻撃を組み立てる小倉

――インカレが決まる最終節までの1週間はどのような雰囲気だったのでしょうか

平松 始まり方に関しては、最悪だったと自分的には思います。順天に引き分けでも(インカレ出場が)決まっていたはずなのに、負けてしまいました。その後すぐに残留が決まったのですが、その次の法政は本当に強いチームなので、勝つなら順天で勝っておかなければいけないということはみんなの頭の中にありました。しかし(4年)早慶戦からの連戦で、出ずっぱりの人は心身ともに削りながらやっていた中で、ラスト1試合に向かいました。その中で週初めから4年早慶戦が法政戦を決めるという話がずっとありました。「そこまで4年早慶戦に重きを置くのか」と思いつつ、昨年の感じからは、本気ながらもどちらかというと楽しさが大きいものだと思っていました。その中で、普段出ていない人も、出ている人も強い気持ちで4年早慶戦を戦っていたのを見たので、やはり4年かっこいいと思いました。4年生のおかげなのかなとは思っていますね。

小倉 順天戦の失点は自分が絡んでいて、それで引退させてしまったらどうしようという気持ちで始まった1週間でした。自分的には「よっしゃ行こうぜ」という感じでいけるようなメンタルではありませんでした。その中でも、監督や4年生の懸ける思いを聞いていると、こんなに沈んでいられないということは思いました。4年早慶戦が終わると、気持ちの切り替えはスムーズにできて法政戦に向かいましたね。

――インカレまで1カ月の調整期間で、個人として取り組んだことはありますか

小倉 個人的には、存在価値を高めていかなければいけないとは思いました。自分はもともとボランチの選手ですが、プロの世界を見据えた時に、ボランチもセンターバックもハイレベルでこなせることが必要だと思います。センターバックとしての経験値を積んでいかなければいけないとは思っていたので、インカレまでの1カ月間で経験値を積めるというところで、自分のセンターバックとしての課題に目を向けてやってきたと思います。

平松 自分は今シーズンを通してですが、ボールを受けるということに対して、常に重きを置いてやってきました。守備はやれるということは手応えとしてありました。チームでは山下に練習後や練習中に「どうボールを受けて、どうさばけば良いのか」ということを聞いていましたね。

――その中で行われた早関戦を振り返っていかがですか

平松 自分は後半から出て、前半はアップもあったので見ていませんが、FWに強烈な選手がいたので、関東のチームとは違うということは思いました。しかし、手も足も出ないというほどではなかったので、改めて出た課題として『決め切る』ことが、あの試合を通して出ました。そこをもう一度見つめ直したいです。優勝は目標ですが、今のチームでは手の届かない場所ではないと思っています。手応え的には悪くなかったという印象ですね。

小倉 意外とやれたというのが印象です。試合を通して0で終えられたというのは一つの収穫だと思います。しかし、チーム全体を見た時にやはり相手の方が明らかに中盤でのスピードが速かったです。そのようなところを見ると、0−0という結果では終われましたが、あの時のレベルのまま全国大会に行くのは、個人的には不安かなと思っています。優勝するためには、あれ以上のものを作り上げないといけません。関西学院大学は関西1位ではありましたが、自分の感覚的には全然明治の方が強かったので、そのようなところを越えていくという面でも、関西大学との試合で出た課題を埋めていかなければいけないと思いました。

――関西のサッカーは具体的にどのようなところが関東と違うのでしょうか

平松 自分の感じ方の部分ですが、かなりボランチでボールを持ってくれたということはすごく思いました。それこそ最終節の法政は、中盤は1、2タッチで回してくる感覚が強かったです。しかし関学さんはかなりボランチも前を向いて、仕掛けてきたので、その分中盤ではボールを取りやすかったです。個の部分が他のチームよりも見えやすかったということはあります。

「自分がチームを勝たせたと言えるような試合にしていきたい」(小倉)

インタビューに答える2人

――初戦についてどのような心持ちでいらっしゃいますか

平松 初戦は本当にどちらがくるかわかりませんが、もちろん関学よりも強い(チームの)可能性もあります。一発勝負が得意なチームもあるわけなので。そこを考えたときにシンプルに気が抜けないとは感じますね。シードという立場で出場させてもらいますが、今シーズンを見れば、そんなに簡単にとれたシードでもないので、よく言うことですが、チャレンジャー精神を持って、全てのチームを食ってやろうという勢いで目の前の試合に向き合っていければ良いと思います。

小倉 平松も言っていた通り、本当に気が抜けません。初戦をものにできれば、今のチームの色的に勢いに乗っていけると思います。1試合ずつこなす上で、チームとして成長していかなければいけないということは感じますね。初戦の難しさというのはもちろんありますが、チームのレベルを向上させられるような良いゲームをしていきたいです。

――日本一への意気込みを教えてください

平松 試合に出て、勝ちたいですね。ベンチに入りたいという思いももちろんあります。ただ、試合に出て勝つということと、ベンチから見て勝つということと、ベンチ外から見て勝つということは、それぞれ全く違うと思います。試合に出て、チームに貢献して優勝したいと思います。

小倉 自分も試合に出て、勝って優勝して終わりたいという思いが一番大きいです。それに加えて、自分の選手としての価値を高めていって、自分がチームを勝たせたと言えるような試合にしていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 内海日和、前田篤宏、安岡隼人 写真 内海日和、長村光、橋口遼太郎、水島梨花)

全国大会への意気込みを書いていただきました!

◆小倉陽太(おぐら・ひなた)(※写真右)

2001(平13)年5月3日生まれ。183センチ。横浜FCユース出身。スポーツ科学部2年。スマブラやマリオカートを始めとしてゲームをやることが多いという小倉選手。最近発売されたポケモンを、スイッチでやりこんでいるそうです!しかし、自分のスイッチで違う選手がポケモンをやっていることも日常茶飯事なのだとか。

◆平松柚佑(ひらまつ・ゆう)

2001(平13)年9月16日生まれ。171センチ。山梨学院高出身。社会科学部2年。グロテスクな絵が苦手だという平松選手は、『鬼滅の刃』のアニメはあまり見ないそう。そんな平松選手が、「まじでおもしろい」と語るアニメは『弱キャラ友崎くん』と『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』だそうです!

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