まさかまさかの逆転負け 早慶クラシコ黒星は10年ぶり

ア式蹴球男子
第72回早慶サッカー定期戦 兼 JR東日本カップ2021 第95回関東大学リーグ戦 第21節
早大 2-2
0-1
慶大
【得点】
(早大)24’植村洋斗、35’駒沢直哉
(慶大)28’小山内慎一郎、42’飯塚亮貴、90+2’橋本健人

 目を覆いたくなる結果だ。10月24日、雲一つない夜空の下で開催された第72回早慶サッカー定期戦、早慶クラシコ。今夏の東京オリンピックで金メダルを獲得した早稲田大学の須崎優衣によるキックインで試合が始まった。早大は24分にPKから先制するも直後に同点を許す。すると35分、FW駒沢直哉(スポ1=ツエーゲン金沢U18)が華麗な勝ち越し弾を決めた。しかし直後にまた同点に追いつかれてしまい前半が終了した。均衡状態が続いた後半だったが、アディショナルタイムに慶大に勝ち越しゴールを決められ敗戦。早大にとって早慶クラシコでの敗戦は10年ぶりとなった。

追加点を奪った駒沢

 早大が敵陣に攻め込む時間帯が多くなるだろうと予想されていたこの一戦。2分、7分にMF安斎颯馬(社1=青森山田)が立て続けにシュートを放つなど、早大は立ち上がりを優位に進めていた。しかし開始から10分が経過すると予想に反して互角の展開となる。最初のピンチを迎えたのは18分。右サイドで与えたFKから連続してシュートを打たれるも、ここは必至のブロックを見せ守り切った。10分台は終始慶大に押される展開が続いたが、早大も負けじと反撃を見せた。24分、MF山下雄大(スポ3=柏レイソルU18)の鮮やかなロングパスから駒沢がゴール前に抜け出すと、ペナルティーエリア内で相手GKに倒されPKを獲得。これをMF植村洋斗(スポ2=神奈川・日大藤沢)が冷静に左隅に沈め、早大に先制点をもたらした。しかし直後の28分、左サイドを突破されると相手に完璧なシュートを打たれ同点を許す。早大は奪ったリードを僅か4分で手放してしまった。両者譲らない中、またもや試合が動く。35分、先制点を奪った植村のパスを受けた駒沢が反転してシュート。これが左隅に刺さり、勝ち越しに成功した。華麗なターンからのスーパーゴールだ。駒沢は興奮のあまり、クリスティアーノ・ロナウドのゴールパフォーマンスを豪快に決めて見せ、西が丘を盛り上げた。前半はこのままリードして折り返すかと思われた終盤の42分、右サイドで守備が緩まってしまい、またもや同点に追いつかれた。前半は2―2の同点で終了した。

途中投入で前線を活性化させた田中

 ハーフタイムを終えると、早稲田のゴールマウスには4年生で唯一のスタメン出場だったGK公文翔(スポ4=東農大一)からキャプテンマークを受け継いだGK上川琢(スポ4=湘南ベルマーレユース)が立っていた。異例のGK交代だが、外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)は「後半に増えてくるであろう裏の処理に長けている」とその理由を説明した。後半は乱打戦となった前半とは真逆で、チャンスといったチャンスが少ない均衡状態となった。ここで早大は前半大活躍の駒沢に代えてMF田中雄大主将(スポ4=神奈川・桐光学園)を投入。ベンチスタートだった主将は「自分が決めるという強い気持ちをもって入った」と、その言葉通り停滞しつつあった早大攻撃陣に好循環を生み出す。69分、その田中がセカンドボールを拾い安斎に繋げると、キレのあるドリブルでゴール前まで駆け上がりシュート。相手DFにブロックされたが久々の好機だった。その後は77分、78分、86分とMF西堂久俊(スポ3=千葉・市立船橋)が果敢にゴールに襲い掛かる。90+1分には安斎のクロスに西堂が合わせるも、放ったヘディングシュートは惜しくもクロスバーの上を通った。あと一押しといった惜しいプレーが何度も続いた終盤だった。

試合終了の笛を聞きピッチに倒れ込む安斎

 そして試合終了間際、悲劇が起こった。相手の左サイドの選手に一人でサイドを突破されそのまま左足を振り抜かれる。枠内に飛んだ強烈なシュートは上川の手が上がりきる前にゴールネットへ。西が丘はこの劇的な勝ち越し弾で熱気に包まれた。試合終了のホイッスルが鳴り響くとイレブンは倒れこみ、涙を流す選手もいた。試合は2―3での逆転負け。早大にとって10年ぶりの屈辱となった。昨季に引き続き関東大学リーグ戦(リーグ戦)も兼ねていた今年の早慶クラシコ。今節の敗戦を含む3連敗で、優勝確率は0%となりインカレ出場さえも危うくなっている。今はとにかくインカレ出場に向けて前を向くしかない。次戦からは連戦にもなる。精神的にも体力的にも厳しいシーズン終盤となっているが、残り4試合の奮起に期待したい。

(記事 前田篤宏、写真 内海日和、長村光、大幡拓登)

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ◎21 公文 翔 スポ4 東京・東農大一
→HT 31 上川 琢 スポ4 湘南ベルマーレU18
DF 柴田 徹 スポ3 湘南ベルマーレU18
DF 小倉 陽太 スポ2 横浜FCユース
DF 鈴木 俊也 商3 東京・早実
DF 12 森 璃太 スポ2 川崎フロンターレU18
→82分 18 水野 雄太 スポ3 熊本・大津
MF 山下 雄大 スポ3 柏レイソルU18
MF 11 西堂 久俊 スポ3 千葉・市立船橋
MF 17 植村 洋斗 スポ2 神奈川・日大藤沢
MF 19 安斎 颯馬 社1 青森山田
MF 20 光田 脩人 スポ1 名古屋グランパスU18
→70分 大西 翔也 スポ4 浦和レッズユース
FW 28 駒沢 直哉 スポ1 ツエーゲン金沢U18
→62分 10 田中 雄大 スポ4 神奈川・桐光学園
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
明大 39 20 11 33 24
流通経大 32 18 40 25 15
駒大 31 18 39 32
法大 29 20 33 32
筑波大 28 20 10 32 28
国士舘大 26 20 31 33 −2
桐蔭横浜大 26 21 33 39 -6
立正大 25 20 24 26 -2
順大 25 21 26 29 -3
10 早大 24 18 24 28 -4
11 拓大 23 20 11 27 39 -12
12 慶大 21 20 11 26 33 -7
※10月24日終了時点
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――今日の試合を振り返っていかがですか

純粋に慶応大学に負けたという結果は非常に残念なところです。歴史的にもずっとライバル・宿敵としてやってきて、その勝ちたいという思いはとても出た試合でした。ピッチ上だけでなく運営も含めて、本当にチーム一丸となって全身全霊で様々なトライアンド エラーをしながらも戦ってきたので、成果につながらなかったことが残念だと思います。

――スタメンの中に1年生を多く起用した意図は何ですか

我々のチームでエネルギーというか、チームを前に進める力のある選手を評価して、たまたまそれが1年生だったということだと思います。本当にその1年生たちはたくましくプレーしてくれたと思いますね。

――加藤選手をベンチに入れた意図は何でしょうか

主務の羽田(拓矢、人4=東京・駒場)が早慶サッカー定期戦ということでベンチに入ることができなかったので、誰が今そこにふさわしいかというところで4年生が人選をして、加藤が選ばれたといいますか、立候補してベンチに入りました。ただ入るだけでなく、準備やスケジュール管理などの主務としての役割を非常に良くやってくれたと思っています。残りも(ベンチに)入ってもらおうと思っていますね。

――安齋、光田、西堂選手の位置を入れ替えたねらいは何ですか

入りのところは西堂と安齋は推進力があるので、そこで相手のスリーバックの脇を突くところで、ゲームのリズムを作りたいということがありました。ゲームが落ち着いてきたら、後ろのサイドバック、特に森の方をしっかり攻撃に参加させたかったので、そういう意味でいると西堂よりも光田がそこに入る方がためができるため、そのような意味でそこを入れ替えました。ここはゲームプランの中にあり、1点目や2点目に関してはそこの変更が効いていたのかなと思います。

――キーパー交代の意図は何ですか

今日は公文が先発だったのですが、彼はコーチングや連携のところで秀でた部分があります。しかし今日は環境面、実際に失点のシーンや状況において、どうしてもはっきりさせなければいけない場面で少しもったいない失点がありました。また、後半はオープンな展開や長いボールが増えてくるので、そこの裏の処理が長けている上川、そしてシュートストップが得意な上川を入れて、チーム全体としてリフレッシュさせるべきかなと思っていました。上川は途中からだったのにも関わらず非常に安定していて、入りも良かったです。後半ゲーム(の主導権を)握り続けられた要因になったのではないかと思っています。

――得点後、すぐに失点してしまった原因は何だと思われますか

自分たちでリードしている状況を有効に使えなかったというところは、点を取ったあとに大事にいきすぎると言いますか。相手の取り返そうという気持ちがある中で、自分たちがボールを大事にしすぎてしまう。バランス感覚のところで、特に前半のもったいない2失点を自分たちのミスから作ってしまったというところは、本当に大きな反省だと思っています。

――今日の試合で勝ち点が得られなかったことについてはどのように考えていらっしゃいますか

勝ち点3というか勝利のみを目指して、そのために自分たち一人ひとりが全力で自分のプレーをして自分のプレーを全うしようということの整理はできていました。そこで力が及ばなかったというところと、やはり後半あれだけ押し込みながらゴールを奪えなかったということだと思います。

――これから残り少なくなった試合をどのように戦いますか

リーグ戦はあと残り4試合となり、我々は積み上げなければいけません。対戦する相手も今日の慶応以上に必死にくると思うので、自分たちがこのような状況の中で前を向いてしっかりと戦えるだけの気持ちと体のコンディションになるように、自分たちにしっかりとベクトルを向けてやっていくことしかもはやありません。まだ自分たちの手に全てはあります。実際、負けたからあまりこのようなことは言いたくないのですが、(今日は)本当に良い試合だったと思いますし、それはピッチ上だけではなく、大学サッカーにおける一つの熱をそこに関わってくれた方々、来場してくれた方々や応援部など、いろいろな思いを持って集まってくださった方々と力を合わせてすばらしいゲームを作り出せたと思います。勝つことはできませんでしたが、これは自分たちの一つの成果だと思うので、そこの自信を持って、胸を張ってまた水曜日のゲームを迎えたいと思います。

MF田中雄大主将(スポ4=神奈川・桐光学園)

――今日の試合を振り返っていかがですか

本当に悔しいの一言かなと思います。

――敗因は何だと思われますか

どっちに転ぶか分からない試合だったと思うので、今の段階で敗因が何だったかということの断言はできません。しかし、最後のところで決めきるということが慶応さんの方が上回っていただけかなというように思います。

――後半途中から出場されましたが、どのような気持ちでピッチに入られましたか

同点という状況だったので、自分が試合を決めるという強い思いを持って、その期待も持ってピッチには入りました。

――加藤選手ともピッチに入る直前に会話をされていましたが、どのようなことを話されていたのでしょうか

彼自身もケガで試合に出られない状況だったので、彼の分も背負ってピッチで戦おうとずっと話していました。あとは加藤から「決めてこい」と託してもらいました。

――リーグ戦としても勝ち点0という結果になりましたが、この結果をどのように感じていますか

厳しい結果になったことは間違いありませんが、すぐに試合はやってくるので心身ともに切り替えたいです。次の試合に勝つしかないかなと思います。

――次戦への意気込みを教えてください

本当にここからいかに切り替えて試合に臨めるかということがカギになると思います。まだまだ終わっていませんし、ここから自分たちがもう一度踏ん張って這い上がっていけるような準備をしていきたいです。