鮮烈な活躍であった。2021年3月、2年生ながら関東大学選抜Aに選出されたその男は、デンソーチャレンジカップ準決勝に先発出場する。40分、得意のドリブルで持ち上がると、豪快な左足の一振りで先制点を奪う。さらには69分、またもドリブルで右サイドを突破すると、カットインからミドルシュートをゴールに突き刺す。関東大学選抜B・北信越選抜を相手に、単騎で2点をもぎ取るその姿はまさに『レフティーモンスター』だ。
MF西堂久俊(スポ3=千葉・市船橋)。これまでの歩みと、これからの歩みに迫った。
左サイドから強引に突破を試みる西堂
自身の武器を「推進力と突破力」と語る西堂。こうした個性は幼い頃に育まれたと分析する。 「小さい頃ってみんなボール触りたいじゃないですか。その思いの延長でずっとボールを持っていたんだと思います。それで点も取っちゃうしという感じで。それが小中学校と来て、定着していったのかなと思います」。
そんな西堂に、自身のドリブル論を尋ねてみる。「良い様に言えば『ひらめき』で、悪い様にいえば『適当』です。さらに良い様に言うと『感覚』とかです」。爆発的な推進力と突破力は、努力に加え、天性のものにも支えられているのだろう。
右サイドから迫力のある突破をみせる西堂
名門・市立船橋高校を経て早大に入学し、関東大学リーグでも一年時より出場機会をつかんだ。この大学サッカーの舞台での学びは、西堂にとってかけがえのないものだ。「部員とか支えてくれている人のために、という強い気持ちから、ピッチ内での振る舞いが正された」。出場機会を得られず苦しむ部員や、チームを支えるマネジャー・学生トレーナーの姿に日々触れる中で、「思いを背負っているんだな」と感じ、ピッチに立つようになる。こうした中で、「精神面の波による、プレーの波」が減少していった。「誰かのために行動する思考」を常にピッチ内で体現するのは、ほかでもないチームメイトの存在がある。
よりプレーに直結する、精神面でのアドバイスをもたらしたチームメイトもいた。今季よりFC今治に加入したMF梁賢柱(令3スポ卒=現FC今治)の存在だ。「もっと自信を持って(仕掛けて)いけ、とか。考え方の部分のアプローチがあった。僕自身の自信にもつながっていたし、精神面の支えになった」。同じサイドハーフのポジションで切磋琢磨をした上級生の言葉は、今でも西堂の胸に強く刻まれている。
今季2点目は華麗な抜け出しから生まれた
1日、FC東京への2023シーズン加入内定が発表となった。特別指定選手としての承認も発表となり、「チャンスあれば、どんどんいきたいです」と西堂。「大学サッカー界で突き抜ける存在に」とさらなる向上を誓う。目下の目標はパリ五輪の出場だ。「出られる資格があるので、一番の目標として掲げています。そこに向けて取り組みをしていきたい」。
ア式の『レフティーモンスター』の、日本をリードする存在への道のりは、まだまだ始まったばかりだ。
(記事 橋口遼太郎、写真 初見香菜子氏、永田悠人、橋口遼太郎)
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◆西堂久俊(にしどう・ひさとし)
2001年(平13年)3月27日生まれ。180センチ、72キロ。市立船橋高校出身。スポーツ科学部3年。利き足は左。関東大学リーグで、1部通算29試合出場、5ゴール、3アシスト(10月1日現在)。
筋トレが好きだという西堂選手。「本当にピッチ内でいきているのでみんなにおすすめしたい」と、筋トレを信奉します。「相手の水準が上がったなかでも、多少強引に突破出来ているのは、筋トレの部分があるから。筋トレしていて良かった」。やはり筋肉は裏切らないようです!