見せつけた決定力 逆転勝利で積み上げ体現

ア式蹴球男子
JR東日本カップ2021 第95回関東大学リーグ戦 第5節
早大 2-1
0-0
流通経大
【得点】
(早大)26’加藤 拓己、45’丹羽 匠
(流通経大)1’佐藤 響

 前節、試合終了間際に劇的な同点弾を献上し、関東大学サッカーリーグ戦(リーグ戦)開幕4連勝を逃した早大。仕切り直しの第5節に流通経大を迎えた。昨年のアミノバイタルカップ決勝で敗れた因縁の相手との一戦は、前半1分に先制点を与える苦しい展開。その後も押し込まれる時間が続いたが、26分にFW加藤拓己(スポ4=山梨学院)のゴールで同点に追いつく。さらには45分、MF丹羽匠(スポ3=ガンバ大阪ユース)の逆転ゴールで勝ち越しに成功。試合はそのまま終了し、前節の嫌な流れを断ち切る勝ち点3をあげた。

正確な右足のキックで同点弾を演出した柴田

 試合は開始早々に動いた。1分、流通経大のスルーパスが長くなったことを見てゴールキックへと逃れようと早大DFが体を入れるも、サンフレッチェ広島への加入が内定しているFW満田誠(4年)がうまく入れ替わりボールを奪取。最後はMF佐藤響(4年)がゴールに流し込み、早大は難敵を相手に先制点を与えてしまう。その後も試合は流通経大ペース。9分にはまたしても満田の個人技で早大左サイドを突破されシュートまで持ち込まれる。しかしGK公文翔(スポ4=東農大一)が体を張ってゴールマウスを死守。23分にもロングボールから決定機を許すも、シュートは枠外に逸れ、追加点は与えない。

 一方の早大は、高い位置から統率の取れた規制を行う流通経大の守備に対し、組み立てに苦戦。なかなか流通経大陣内へとボールを運ぶことができない。それでも25分、DF鈴木俊也(商3=東京・早実)からのサイドチェンジを受けたMF安斎颯馬(社1=青森山田)がカットインからこの日のファーストシュートを放ち攻撃の口火を切ると、続く26分。左サイド低い位置のスローインから、広大なスペースのある右サイドのDF柴田徹(スポ3=湘南ベルマーレU18)へとボールを届ける。フリーで放たれた名手・柴田の正確なクロスボールに反応したのはエース・加藤。思い切りのいいダイビングヘッドでニアサイドに飛び込み、ゴールネットを揺らす。薄く当てられた技ありのヘッドで、試合は振り出しに。

逆転ゴールを奪った丹羽

 その後は一進一退の攻防が続いた。32分に、流通経大にポスト直撃のシュートを許すと、40分にはゴール真正面からのFKを献上。しかしこちらもクロスバーに助けられる。すると45分、低い位置でのMF杉田将宏(スポ4=名古屋グランパスU18)の懸命な守備でボールを奪うと、「少ない人数でもシュートで終わるとか、攻撃しきるというのを狙っていた」と丹羽が加藤に正確なスルーパスを供給。加藤が敵陣深くまで持ち運びゴール前にパスを送り込むと、複数選手の足元でピンボールのようにボールが撥ね(はね)、最後は詰めていた丹羽の元へ。落ち着いてゴールへと蹴り込み、勝ち越しに成功する。

 後半も両チームが流れを奪い合う展開となった。途中投入されたMF光田脩人(スポ1=名古屋グランパスU18)が76分、81分と単騎でチャンスを演出するなど、好機こそあったのの、連戦の疲れからか局面での力強さは生み出せず。流通経大に攻め込まれるシーンも見られたが、DF西田翔央(商3=東福岡)ら守備陣がピンチの芽をことごとく摘み取る。前節の反省を生かし時計の針を落ち着いて進め、流通経大の攻撃をシャットアウト。今季初の逆転勝利を収めるとともに、前節の学びを生かした堅実な試合運びを体現し、『1の積み上げ』をみせた。

 「チームとしてとても意味がある、成長できた3連戦だった」と外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)。宿敵・慶大への白星、試合終了間際に失点を喫した立正大戦、そして今季初の逆転勝利、全ての試合が今季の早大の糧となる試合であったことに疑いの余地はない。慶大戦では光田が、前節・今節は安斎がスタメン起用となるなど、新入生の融合も進んだ。ここで順位表に目を移すと、早くも明大、法大、早大が勝ち点13で並び、リーグ戦をけん引している。近年の大学サッカーをリードしている3校が抜け出しつつある関東大学リーグ。この戦い、目が離せない。

(記事 橋口遼太郎 写真 手代木慶、内海日和)

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 31 公文 翔 スポ4 東農大一
DF 柴田 徹 スポ3 湘南ベルマーレU18
DF 鈴木 俊也 商3 東京・早実
DF 大西 翔也 スポ4 浦和レッズユース
DF 24 西田 翔央 商3 東福岡
MF 小倉 陽太 スポ2 横浜FCユース
→70分 20 植村 洋斗 スポ2 神奈川・日大藤沢
MF 山下 雄大 スポ3 柏レイソルU18
MF 28 丹羽 匠 スポ3 ガンバ大阪ユース
MF 33 安斎 颯馬 社1 青森山田
→70分 34 光田 脩人 スポ1 名古屋グランパスU18
MF ◎13 杉田 将宏 スポ4 名古屋グランパスU18
FW 10 加藤 拓己 スポ4 山梨学院
→89分 奥田 陽琉 スポ2 柏レイソルU18
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
法大 13
明大 13 11
早大 13
駒大 13 11
筑波大
流通経大 12 10
国士舘大
順大 12 -3
立正大 -5
10 拓大 -2
11 桐蔭横浜大 13 -6
12 慶大 -6
※第5節終了時点
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――試合を振り返っていかがですか

まず最初入りが悪くてというか、悪いというよりは相手のクオリティ、球際だとかっていうところが試合通じて高かったとは思うのですが、そういったところで我々としては悪い取られ方をしてそれがそのまま失点になってしまいました。開始1分とかそれくらいだったと思うのですが、自分たちがそういう時間に点を入れることはあっても入れられることはなかったので、目が覚めるというかショッキングな1点だったんじゃないかなというのはピッチの中で感じました。なのでこのゲームは難しくなるんじゃないのかなというのは印象としてありました。ただ前半途中から杉田と丹羽のポジションを変えてから、相手の真ん中3枚に対して少しバランスを整えられたので、すごく役割がはっきりして、少し押し込める時間が増えてきたなと思った時に加藤のゴールが生まれたので、あれでかなりみんな勇気をもらったというか、そして前半のラストでああいう形で逆転できたので、我々としては前半の中で大きな変化というか、難しい状況の中でも自分たちで勇気を持ってゲームに向き合えたかなと思います。ただ後半、当然ボールを持たれるだろうなという印象はあったのですが、そういったところに対してハーフタイムで守備のケアのところを徹底したので、そこに対しては愚直に、謙虚にバイタルのところをしっかり締めてというところで対応できていたので、それをやり続けるというところがかなり難しいというか、負担が大きかったとは思うのですが、前節の経験があって、しっかり耐えるということに対しての意識がついていたので、それで45分間そういう形で、逆にこっちがカウンターをうかがうっていう状況をやり切れたという意味では、本当に前節の引き分けから、それを教訓に一つ大きく確実に積み上げたものがあるなと、流経大さんが相手っていうところも含めてですけど、それを感じた試合でした。

――失点への意識はあったと思うのですが、最初の失点の要因は

少し固く入ったというか、これまでの相手よりワンランク上だよというそういう空気感もあったと思いますし、その中でちょっとしたミスではあったと思うのですが、自分たちの守備のリズムというか、自分たちのペースで進もうというところが強すぎて、逆に球際で入れ替わられたりして、安易にシュート打たれたりとか、逆に固くなりすぎていたことで生まれてしまったのかなという風には思います。

――1年生の働きについてはいかがですか

非常にチームの中にも新しい空気というか、中の新しいパワーを生み出してくれていますし、ゴールに向かう姿勢とか、我々は『DRIVE』というスローガンを掲げていますけど、そういうのを体現できる2人でもありますし、性格は全く違うのですが、なかなか面白い2人がチームに加わってきているというのも今の我々のチーム状態の良さというか、本当にそれこそ4年生が1年生を部員として、1人のア式の選手として戦えるような状況に持ってきている成果かなと思います。

――杉田選手と丹羽選手のポジションを変えた判断はどういうところにあったのでしょうか

だいぶ序盤押されていたので、どうしても相手は中盤に人数をかけて真ん中から攻めてきて、サイドでボールを保持しながらも中に入ってくる場面が多かったので、そこに対して杉田だとそこからのプレーっていう選手じゃないというのがあって、本当はできれば4-4-2というイメージでやろうとしていたのですが、ただそこで取られたことで相手側の圧力が上回ってきたので、少し自分たちがボールを持つ時間を作らなければいけないなと思って、丹羽を真ん中に入れたことで3人のバランスが整ってというか、ダブルボランチも杉田から丹羽に変わったというところでボールを握ることへの意識が全体として高まりましたし、杉田だとどうしてもFWに近い距離にいることになってしまうので、それよりもボランチとトップ下を行き来できる丹羽がいることで、ダブルボランチはとても助かった変更だったんじゃないかなと思います。

――安斎選手と光田選手の性格はどういった違いがあるのでしょうか

安斎は本当に正統派というか、素直で周りとのコミュニケーションが上手くて、ある意味そこはしたたかにやっている感じはするのですが、そこをバランスとれる選手です。光田の場合はザ・サッカー少年みたいな、ある意味天才肌というか、感覚でプレーをしていて、ただ一つ一つの判断だったりワンプレーがチームにとって助かるというか、頼もしく感じるようなことを感じ取ってできる部分があるので、一言で言うと安斎は礼儀正しいタイプで、光田は感受性が強いタイプというか、熱量はどっちもあるのですが、バランスでいくと安斎は正統派で、光田はコアなところで違いを作れるというところで、かつそれがチームの中に信頼を作れるレベルまで来ているので、お互いのそういったところが上手くリンクしているなというのは周りの同級生の彼らへの関わりを見ていてもすごく感じます。さらに言うと神橋良汰(スポ1=川崎フロンターレU18)もベンチに入って、そういう1年生たちの新たな風というのは不可欠になってくると思いますし、そういうバランスがあることにはすごく手応えを感じています。

――中3日ということでしたがどのような準備をされてきましたか

この間の試合は勝ち点3から勝ち点2を失ってしまったようなドローになってしまったのですが、そこを我々としての勝ち切る捉え方だったり、前節1点取った後にもう1点取ろうっていう意識がとても出ていた試合だったので、そういうプラスアルファとその1つの教訓でいくと、マイナス2ではなくて実は大きな1を手に入れたんじゃないかという話をして、今日2点取れたというのは我々にとって本当に大きかったなと思いますし、そういうことに対してチームの意識が3日間で整理できたことで、ゴールへの意欲が1失点した中でも持ち続けることができて、2点奪ってから試合をどう終わらせていくかとか、ゲームマネジメントへの意識もかなり高まりました。トータル3連戦を我々としては正念場と捉えていたので、2勝1分というかたちで、チームとしてとても意味がある、成長できた3連戦だったのではないかなと思います。

――流経経大への対策というのは

J1内定選手が何人もいて、本当に個々の能力が高いものの、攻撃には特徴やパワーがあるのですが、守備には隙があるんじゃないかというのはあったので、なんとかボールを持たれる時間はありながらも、相手陣地への入り方が上手く入れれば、逆にチャンスはこれまで以上に大きくあると感じていました。

――次節は2週間先になりますが、どのような積み上げをしていきますか

GWなので一旦ちゃんと休みたいかなと思います(笑)。我々が戦っている社会人リーグの方も1敗1分から3連勝して、本当にトップチームだけではなくチーム全体として良い循環が生まれているので、こういう空気感をさらに上積みできるように、勝った中でもしっかり課題を見つけられるような、そういうチーム作りをしていきたいなと思います。

丹羽匠(スポ3=ガンバ大阪U18)

――今日の試合を振り返っていかがですか

前半、早い時間に失点して苦しい試合になったのですが、前半のうちにゴリくんと自分が点とって逆転できたので、守備陣がしっかり守ってくれたというのもあって、苦しい試合でしたけど勝ててよかったなと思います。

――2点目はご自身が加藤選手に展開したことによって生まれたと思うのですが、振り返っていかがですか

押し込まれる時間が長くて、カウンターでしか攻撃できないなというのがあったので、少ない人数でもシュートで終わるとか、攻撃しきるというのを狙っていたので、良い形で点取れたかなと思います。粘ったボールを前の枚数が少なかったので、まずゴリくんに当てて抜け出そうと思ったのが一つで、ゴリくんが、自分のパスが前にずれたのですが良い感じで前に運んでくれたので、そのままもらってシュートというのを狙っていたのですが、多分安斎に出したパスで速くて、止めきれなかったのですが自分のところにこぼれてきて、押し込んで取れたので良かったなと思います。

――前半開始早々の失点はどう感じましたか

入りを大事にしていた分、あの失点で結構落ちるかなと思って、苦しい試合になったかなと思います。

――今年は失点しないチームで、ビハインドを背負うのは初めてだったと思うのですが

スカウティングの段階から流通経大さんは上手い選手が多くて、プロ内定してる選手が多いというのがあって押し込まれるというのは想定していたので、苦しい試合になるのは分かっていたのですが、早い時間の失点で余計に苦しくなったかなというのはあって、チームとして1点は取れるけど2点目は取れないというのがあったので、今日はその2点目が取れて勝てたので、そのへんは良かったかなと思います。

――ゴールを取れたことで気持ちの部分はいかがですか

チーム内でもそんなにずっとレギュラーで出れていたわけではなくて、点取って結果を残そうというのはあったので、ゴール取れて良かったです。

――改めて早大はどんなチームですか

選手自身が考えてやっているというのと、いろいろなことに挑戦しているというのがあって、ガンバユースとは違っていろいろな発見があって面白いなと思います。

――具体的には

ピッチ外での活動というか、それこそ社会貢献だったりマスコットのアルフだったり、今までサッカーばかりしてきた自分としては、そういうところに目を向けている選手が同じチームにいるっていうのが発見かなと思います。

――また少し間空きますが、次節に向けての意気込みは

次節は駒大さんで、フィジカルが高くて、押し込まれる時間が長くなると思うのですが、今日押し込まれて少しできなかったポジションの部分だったり崩しの部分をもっと出せるように、1週間空くのでフィードバックしっかりして次に繋げたいなと思います。

光田脩人(スポ1=名古屋グランパスU18)

――交代で入る時にはどういった指示があったのですか

自分の武器はドリブルなので、それを最大限出してこいというのは常に途中から入る時は言われていて、そういう部分では自分のドリブルは随所で出せたかなとは思うのですが、まだただ決めきる部分は課題かなと思います。

――前節、同じ1年生の安斎選手がゴールを決めて、そういったところの意識は

安斎とは練習の中でも切磋琢磨していて、あいつが頑張っているから自分も頑張ろうと思える存在ですし、本当に良いライバルだと思っています。

――大学サッカーはどのように感じていますか

高校のレベルとは違って、スピード感が一番違うなというのは感じているのですが、自分のドリブルとかボールタッチとかはまだ通用する部分があるので、そこからそれをどんどん伸ばして自分が関東リーグを引っ張っていけるようにやっていきたいなと思います。

――光田選手は世界も知っていますが、そのあたりは

ワールドカップで一番刺激を受けたのは、17、18の年代でももうトップレベルでやっているという部分で、まだ18歳ですが、海外に行ったらこの年齢でもプロでやっているので、そういうのは意識しながら常に高みを意識してやっていきたいなと思います。

――グランパスの先輩たちが昨年関東リーグで活躍してきましたが、そういったところで影響を受けている部分はありますか

昨年の高校3年生の時に大学1年生の先輩方が活躍していて、自分もその頃はトップ昇格を目指してやっていたのですが、けがもあってトップ昇格できなくて、関東リーグで1年からやってやろうという気持ちはすごく強かったです。

――グランパスで三冠に近いような成績を残した経験は自分の中では大きいですか

二冠とって最後青森山田に負けて、自分はフル出場して自分にもチャンスはあったので、最後勝ちたかったなと思います。サッカー人生の中でも一番悔しかったなと思えるくらいの試合だったので、そこで安斎にやられて、またこの大学の舞台で一緒にやれているというのは何かの縁だと思いますし、本当にこれから先良いライバルだと思います。

――どういった選手になっていきたいですか

自分の武器のドリブルを常に発揮して、得点はまだ取れていないのでそういった部分にこだわって、チームを勝たせられる選手になりたいと思います。

――具体的な目標はありますか

今年は関東リーグで5得点5アシストしたいと思います。