試合終了間際の悪夢 開幕4連勝はならず

ア式蹴球男子
JR東日本カップ2021 第95回関東大学リーグ戦 第4節
早大 0-0
1-1
立正大
【得点】
(早大)71’安斎 颯馬
(立正大)90+5’田中 宏武

 悪夢のような現実が、そこにあった。前節では宿敵・慶大を退け、3戦連続『ウノゼロ』(※1)と絶好調の早大。この日は、関東大学リーグ戦(リーグ戦)第4節、立正大と相まみえた。前半は両チームとも決定機を創出するが、ゴールネットを揺らすことができずスコアレスで終える。後半もチャンスをつくり続けていた早大は71分、この日初めてスタメンに起用されたMF安斎颯馬(社1=青森山田)の鮮烈なデビュー弾でついに先制に成功する。しかし試合終了間際、カウンターから痛恨の同点ゴールを献上。1-1の引き分けに終わり、4連勝とはならなかった。

デビュー戦にして初ゴールをあげた安斎

 前節から中2日ということもあり、早大は前線のメンバーを変更。1トップにFW奥田陽琉(スポ2=柏レイソルU18)、トップ下にMF植村洋斗(スポ2=神奈川・日大藤沢)がそれぞれ入った。そして左サイドには、外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)が「十分状態が良かった」と評価する安斎が、公式戦で初めてスタメンで起用された。早大は序盤にチャンスをつくる。16分、センターサークル付近でボールを受けたMF杉田将宏(スポ4=名古屋グランパスU18)がそのまま中央を突破。ゴール前での奥田とのワンツーからシュートを狙うが、惜しくも奥田がオフサイドをとられてしまう。28分には、早大に前半最大の決定機が訪れる。裏のスペースへ走り出した杉田の動きを見て、MF山下雄大(スポ3=柏レイソルU18)が絶妙な浮き球のスルーパスを供給。このボールを杉田が相手DFより先に触り、ゴール左で待っていた安斎がダイレクトで左足を振り抜くも、ボールはクロスバーの上へ。直後の31分、今度は立正大が決定機を演出する。右サイドでのスローインからボールをキープすると、最後はゴール前に斜めに走り込んできた選手に対してパスを送る。しかしここは自陣深くまで戻っていた安斎が競り勝ちクリア。リーグ戦初出場のルーキーがピンチの芽を摘んだ。早大はそれ以降も自陣でプレーする時間が増え我慢を強いられたが、DF西田翔央(商3=東福岡)を中心に集中した守りを見せてしのぎ切り、無失点で前半を終えた。

中央突破で好機を演出する杉田

 勝負の後半は、お互いがゴールに迫り息もつかせぬ展開に。後半開始と同時に早大は奥田に代えてFW加藤拓己(スポ4=山梨学院)を投入。その加藤が早速見せ場をつくる。49分、左サイドでパスを受けた加藤がファーストタッチで相手DFを置き去りにすると、そのままエリア内に進入。最後はファーへ力強いシュートを放つが、GKにはじかれ得点には至らない。62分には、立正大にスローインから左サイドを崩され、早大はピンチを招く。ゴール前へふわりと浮かせたクロスが供給されたが、ここも安斎がわずかに先に触り、ボールはゴールの左をかすめていった。一進一退の攻防が続いていた71分、早大に待望の瞬間が訪れる。相手のバックパスを安斎がカットし、小倉陽太(スポ2=横浜FCユース)とのワンツーから相手DFの背後へ抜け出す。「キーパーが前に出てきているのが見えていて、ニアが空いていると分かった」と安斎。GKとの一対一の状況から落ち着いてゴール右下へ。高校サッカー界を沸かせた男のデビュー戦ゴールで早大がついにリードを奪った。早大はその後も攻勢を緩めることなく、フレッシュなMF光田脩人(スポ1=名古屋グランパスU18)を中心に『DRIVE』の姿勢を貫いた。そして4戦連続の『ウノゼロ』を飾るかと思われた90+5分、早大に悪夢が待っていた。敵陣でボールを失い、スルーパスで一気に自陣へと攻め込まれる。そしてマイナス方向のグラウンダー性のクロスにダイレクトで合わせたボールは、GK公文翔(スポ4=東農大一)の指先を抜け、早大ゴールへと吸い込まれた。目前に迫っていた勝利が、手からこぼれ落ちた瞬間だった。結果は1―1の引き分けで、立正大と勝ち点1を分け合う形となった。

 「今の自分たちの甘さを突き付けられてしまった」(杉田)。MF田中雄大主将(スポ4=神奈川・桐光学園)、MF田部井悠副将(スポ4=群馬・前橋育英)らを欠く中で、キャプテンマークを巻きプレーを続ける杉田は悔しさをかみしめた。しかしその一方、「今までやってきたことは間違いだとは思っていない」と杉田が言うように、前半だけで9回あった自陣での相手のセットプレーを跳ね返し続けた守備力は事実。今日の結果により早大は3位に沈んだが、勝ち点で離されたわけではない。「しっかり勝ち切ることの大事さみたいなものに対して、もう一個強いスイッチが確実にできた」(外池)。リーグ戦の序盤でこのような経験ができたことをポジティブに捉え、愚直に勝利を追い求める。

(記事 長村光 写真 橋口遼太郎、内海日和)

 

(※1)ウノゼロ…1対0で試合を終えること

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 31 公文 翔 スポ4 東農大一
DF 25 森 璃太 スポ2 川崎フロンターレU18
→HT 大西 翔也 スポ4 浦和レッズユース
DF 24 西田 翔央 商3 東福岡
DF 鈴木 俊也 商3 東京・早実
DF 柴田 徹 スポ3 湘南ベルマーレU18
MF 小倉 陽太 スポ2 横浜FCユース
MF 山下 雄大 スポ3 柏レイソルU18
MF 33 安斎 颯馬 社1 青森山田
→76分 34 光田 脩人 スポ1 名古屋グランパスU18
MF 20 植村 洋斗 スポ2 神奈川・日大藤沢
→58分 28 丹羽 匠 スポ3 ガンバ大阪ユース
MF ◎13 杉田 将宏 スポ4 名古屋グランパスU18
→90+4分 12 倉持 快 人4 神奈川・桐光学園
FW 奥田 陽琉 スポ2 柏レイソルU18
→HT 10 加藤 拓己 スポ4 山梨学院
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
法大 10
明大 10
早大 10
流通経大 11
国士舘大
筑波大
駒大 11 -2
立正大 -1
拓大 -1
10 桐蔭横浜大 11 -4
11 順大 10 -4
12 慶大 -5
※第4節終了時点
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――この試合に向けてどのような準備をしてきましたか

 我々として正念場と位置付けた3連戦でした。この後長いリーグがありますが、序盤戦で3連戦で、かなり大きなターニングポイントとなると考えていました。これをどの様に自分たちで乗り越えていくか、切り抜けていくかということを考えると、真ん中の試合が実は本質的というか、真価が問われると捉えていました。

――今日は安斎選手を起用しました。意図を教えてください

 十分状態はよかったので、その中で相手の分析も含めて彼が右の前に出ることがチームにとって上手くハマるのではないかと思いましたし、3連戦という中で少しターンオーバーをした状況の中でチーム作りをしていくというところでも、上手くそこに彼自身もしっかりと捉えて、向き合ってくれたのではないかと思います。

――安斎選手を置くという事に対する、戦術的な意図を教えてください

 まずひとつは、守備面で相手の最終ラインの3枚に対して早大も前から3枚でハメに行って、相手にロングボールを蹴らせないようにするというのがひとつのポイントでした。もうひとつが相手のサイドハーフ、ウィングバックに特徴があるので、上手く内側にポジションをとってサイドバックとの連携、外外というよりかは内から外であったり、内内で行くとか。逆にいうと自由度のあるトップ下みたいな形で構成できれば、ボールを握れればうちのリズムになるだろうと考えていました。

――安斎選手の今日のプレーの評価を教えてください

 当然今日初出場という中で、試合の向き合い方というか、試合状況に対して自分なりにポジションを変えたりとか、周りとの兼ね合いみたいなところが時間と共に進化していきました。またもともと持っているシュートの力だとか、シュートまで持っていく力、そういったところは実際にゴールも決めましたが、あのシーンだけではなくいくつか見られました。非常に我々としては大きな力が加わったのではないかと、そういった手応えがあります。

――光田選手を含め、1年生の台頭はかなりポイントになりそうですね

 そうですね、今日も光田は途中から出て、彼の良さも先日の慶大戦よりもさらに見られました。また彼にとっての自信も感じました。そういう意味ではかなりゲームプラン通りに行っていて、まさに4試合連続1ー0という状況が作り出せるのかなと思ったところにスキがあったので。非常に大きな教訓になりましたけど、改めて関東1部という舞台が厳しい戦いというか。全チームが本当に必死というか。ガムシャラに戦ってくる、そういったところに対して自分たちが何を作り上げられるか。もったいなかったですけど、逆に意味のある、リーグを戦う上ではとても大きな教訓となったゲームであったのかなと思います。

――今日の試合がもたらした教訓、そして次節にどの様に向かっていくかを教えてください

 当然勝ち点2を失った、みたいな結果かもしれませんが、我々がリーグを戦う上で今日のゲームはとても価値があるというか、すごく本質的なところに気がつけた試合になりました。ゲーム全般を考えると、前半少し風下で相手のパワーであったりセットプレーに苦しめられましたが、そこを耐えられたというのは非常に大きな事でしたし、後半かなり修正をして相手をほぼ圧倒してゲームを作れたという意味では、2点目を取れたなというところはありますが、そういった課題とともにこういうリーグの中でしっかりと勝ち切るということの大事さみたいなものに対してもう一個強いスイッチが確実にできました。次節は流通経大という本当に大きな試合になりますが、そういった意味では我々はチャレンジャーというか。昨年アミノ杯の決勝で負けていますし、そういう意味で楽しみにしたいゲームかなと思います。

FW杉田将宏(スポ4=名古屋グランパスU18)

――今の率直なお気持ちを教えてください

 正直に悔しいですね。これまでの試合でも1ー0というスコアでやってくることができていましたし、苦しい時間の中でも安斎が点を取ってくれてくれました。しかし、チーム全体としてもう1点を決めきれなかった甘さと最後に決められてしまうという甘さが顕著に出た試合でしたね。

――最後のシーンはピッチの外から見守られていましたが、どのようなお気持ちでしたか

 自分としては情けないという気持ちでした。ベンチがどのように動いたのかはわかりませんが、足がつってしまって交代してしまいまったものの、自分としては最後までピッチに立っていたかったです。自分自身のチャンスもあったのですが、そこも決めることができず、交代した後にあのようなかたちで決められてしまったので、自分が情けないと思ったというのが率直な感想です。

――主将や副将が不在の中でキャプテンマークを巻かれていますが、その印にはどのような思いが込められているのでしょうか

 一番苦しいのはキャプテンの雄大(田中雄大主将、スポ4=神奈川・桐光学園)や悠(田部井悠副将、スポ4=群馬・前橋育英)なので、彼らの分まで自分自身やらなきければいけないという気持ちはあります。また、彼らが帰ってきた時に本当に良い状態にチームを持っていきたいということはずっと考えていますね。

――その中で意識して声をかける部分などはあるのでしょうか

 その点はマークを巻いている巻いていないに関わらず、チームが苦しい時に声を出すということは自分の役目です。これは全員がやるべきところではあるので、一人の選手として声を出すということはやっていますね。

――非常にタイトなスケジュールですが、チームの状態はいかがでしょう

 今日も前節からメンバーが何人か変わった状態で入って、その中で結果を残してくれる選手がチームに勢いをもたらしてくれていることは間違いないので、チームとして層が厚いと言いますか、良い雰囲気でできているとは個人的に思います。今日はそのような状況の中で勝つことができたとしたら大きかったのですが、逆に今の自分たちの甘さを突きつけられてしまいました。それを反対に良い刺激として「レベルアップして次に臨むことができる」とポジティブに捉えてやっていきたいです。

――最後に意気込みをお聞かせください

 今までやってきたことは間違いだとは思っていませんし、守備に関しても結果は出ているので、そこは継続していきたいです。また、自分たちはこれまで全ての試合で1点ずつしか取ることができていません。自分も前にいる選手で、本当に申し訳なさも感じていますし、もっとこだわりたいとも思っています。次節は流通経済大学さんというプロ内定者を多く有するチーム相手に、リスペクトを持ちつつ、自分たちらしく泥くさくやることで課題を克服し、勝つことができれば良いと考えています。

安斎颯馬(社1=青森山田)

――光田選手が先にデビューしているのも含めてこの大学サッカーデビューの感想を教えてください

 自分自身早く試合に出たいという思いが強かったですし、光田が先にデビューしたってことは悔しい気持ちもありましたが、それが良い意味での競争だと思います。まず今日スタートが切れたというのは自分にとって大きいと思います。

――青写真としてデビューは早い方ですか

 第2節にベンチ入りさせてもらって、そこではデビューが叶わなくて自分自身本当に早くデビューしたい気持ちが強かったので。正直もっと早くできれば最初(の試合で)にデビューしたかったです。でも第4節という段階でデビューできたのは大きかったです。

――4-2-3-1の右サイドはいかがでしたか

 自分の強みがどこのポジションもできるということなので、やりにくいとかは特になくて。右サイドだと自分の仕掛けるという特徴を出す必要がありますが、自分としてはもっとやれたかなと思います。自分としてはもっとポジティブなところ、仕掛けを増やしていかないといけないと感じました。

――前半は守勢でしたが、守備の面はいかがでしたか

 前半はチームとしても風下に立っていて我慢する時間帯が続いたので、なかなかボールを前に運べませんでした。そういった中で大事なのは無失点で終えることであり、守備にフォーカスを置いてやれたと思います。

――デビュー戦に向けてどのような思いで試合に入りましたか

 自分自身、高校最後の試合で本当に悔しい結果で終わってしまったので、大学で個人として日本一に貢献したいという思いでこのデビュー戦に臨みました。

――デンソーチャレンジカップで関東Aと対戦した経験は生きましたか

 大学生のレベルをあの大会で知れました。練習のレベルが非常に高い早大に来る前にこのレベルを知れたのは、良い心の準備になりました。

――後半、立ち上がりに流れを変える場面がありました。その場面はどのように振り返りますか

 後半、自分が前を向けたら思い切って仕掛けようと思っていて、その仕掛けから結果的にチームに勢いをもたらすことができたので良かったです。

――そこから攻撃のスイッチが入ったと思いますが、具体的にどのようなプレーを意識していましたか

 前半は仕掛ける回数が少なかったので、自分が前を向いたら仕掛けるということ、また、0-0だったのでチームを勝たせるためにもゴールも意識していました。

――ゴールシーンを振り返っていかがですか

 まず、前半で一本外していたので、ゴール前では冷静にということを言われていました。ワンツー気味に抜け出して、自分自身ファーに打とうと思っていたのですが、ラストパスが少し短く入りました。キーパーが前に出て来ているのが見えていて、ニアが空いていると分かったので、ゴール前で冷静に流し込めました。

――本当はファーを狙っていたのですか

 本当は来たパスをトラップしてファーに強いボールを蹴ることをイメージしていました。ただ、パスが短めだったので、トラップも足元に入って。ディフェンスも左右から来ていたのでコンパクトにコースに流し込もうと考えました。

――ここ最近得点を続けて取れていますが

 自分が非常に良い状態で、点は取れているのですが、チームとしてはラストプレーで決められるという悔しい結果になってしまったので。自分自身も(チームを)勝たせられる選手にならないといけないですし、もっともっとできるかなと思います。

――外池監督からは、連戦中のターンオーバーという言葉もありました。スタメン争いなどについてはいかがですか

 前節からスタメンが変わって、自分にもチャンスが巡ってきて。本当のスタメンかどうかは分からないですが、これから自分自身試合に関わっていく上では、今日が大きなターニングポイントだと思います。そういったチャンスをいただいた中で、一つ結果を残せたというのは自分にとってポジティブだったなと思います。

――今シーズンこれからの目標を教えていただけますか

 自分自身が試合に出るということ、点を取るだけでなく、自分がチームを勝利に導く選手になっていくことが目標です。これから、関東リーグで苦しい試合が続くこともあるかと思いますが、優勝、日本一を目指して頑張っていきたいです。

――大学生活も始まりましたが

 これをいうと怒られるかもしれませんが、高校ではあまり勉強をして来なかったので(笑)。大学が始まってサッカーと勉強という充実した毎日を過ごせています。社会科学部の勉強が少し大変なところもあるのですが、苦手なことに挑戦できなかったら、サッカーにおいても挑戦できなくなってしまうので。苦手なことも含めて色々なことに挑戦しながらも、サッカーにフォーカスを置いて大学生らしい充実した生活を送っていきたいと思います。