3年ぶりの優勝を目指すリーグ戦がついに開幕。開始早々の得点を守り切り白星発進

ア式蹴球男子
JR東日本カップ2021 第95回関東大学リーグ戦 第1節
早大 1-0
0-0
拓大
【得点】
(早大)1’杉田 将宏

 早大は苦しみながらもスタートダッシュに成功した。ついに開幕した関東大学リーグ戦。最終節まで明大と争いながらも、勝負所で勝てずにリーグ優勝を逃した昨シーズン。その雪辱を果たすべく、3年ぶりのリーグ優勝を目指す戦いが始まった。時折晴れ間が差し込む西が丘グラウンドで行われた開幕戦の相手は今季から11年ぶりに1部に昇格した拓殖大学。開始早々にMF杉田将宏(スポ4=名古屋グランパスU18)のゴールで先制に成功するも、その後は相手にボールを保持される時間が続く。それでもDF鈴木俊也(商3=東京・早実)、GK公文翔(スポ4=東農大一)を中心にピンチをしのぎ、『ウノゼロ』(※1)での開幕戦勝利を掴んだ。

キャプテンマークを巻いてのプレーで攻守に存在感を示した杉田

 スターティングメンバーに去年から出場機会を得ていた選手たちが並ぶ中、「能力とか技術とかではなくて人間として、今日は託した」と外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)が評価する追加登録されたばかりの公文をゴールマウスに起用した。開幕戦特有の硬い入りになるかと思われた試合はすぐに動いた。1分、セカンドボールを拾ったMF山下雄大(スポ3=柏レイソルU18)が相手の背後に浮き球を送ると、ルーズボールを先に触り、入れ替わった杉田がGKとの1対1を左足で冷静に流し込み先制。ロケットスタートで開幕戦の硬さを吹き飛ばす先制ゴールを奪う。しかし、試合は始まったばかり。外池監督は「愚直に。謙虚に。」と檄(げき)を飛ばす。得点後は、拓大の細かいパスワークに苦戦し、守備に追われる時間が続く。27分、ポストプレーから山中麗央(拓大・4年)にシュートまで持ち込まれるも、公文が左足に当てビッグセーブ。「周りが信頼してくれたので平常心でできた」と本人も語るように、関東リーグ初出場を感じさせないほどの堂々としたプレーだった。その後もピンチが続くが鈴木、DF西田翔央(商3=東福岡)を中心に守り抜く。一方、チャンスが少ない中でFW西堂久俊(スポ3=千葉・市立船橋)が獲得したゴール正面でのFKを、鈴木が低い弾道で狙うも壁に阻まれる。再三のピンチを防ぎ、得点を許さずに1-0で前半を折り返す。

 勝負の後半は一進一退が続く。56分には拓大が左サイドを攻略。ゴール前にクロスを送ると中盤から走り込んできた鏑木瑞生(拓大・3年)のダイレクトシュートは幸運にも左ポスト。一方早大も、59分、鈴木からの縦パスを、トラップと力強いドリブルでFW加藤拓己(スポ4=山梨学院)が相手3人を振り切りGKと1対1の場面を作り出す。しかし、こちらも右ポストに嫌われる。徐々に、早大は中央の山下、MF小倉陽太(スポ2=横浜FCユース)がテンポよくパスを刻むことでリズムを掴み始める。71分、山下のスルーパスに抜け出したFW水野雄太(スポ3=熊本・大津)がシュートまで持ち込むが、ニアサイドのネット。72分には中盤で山下がボールを奪うと、相手GKの位置を確認しハーフライン付近からロングシュートを放つもバーに嫌われる。なかなか追加点を奪えずにいると、終盤には相手に押し込まれる時間が増える。ここで活躍したのは4年生。杉田、途中出場のMF倉持快(人4=神奈川・桐光学園)が前線で身体を張って守備に奮闘すれば、終了間際の最大のピンチは公文がこの日2つ目のスーパーセーブ。最後までゴールに鍵をかけ、試合終了のホイッスルが鳴った。

スタンドからの声援に応える指揮官。優勝を願うファンの声も聞かれた

 内容は素晴らしく良かったとは言い難い。拓大にボールを握られる時間は長く、ピンチも数多くあった。しかし、大事な開幕戦を獲ったこと、天皇杯予選で敗戦し苦しい展開の中で勝ち点3を獲れたことは非常に大きい。キャプテンマークを巻いた杉田も「悩みもがきながら白星を飾れたことは大きい」と語る。シーズンはまだまだスタートしたばかり。勝利を手にしながら、次節に向けての修正が可能であることはポジティブだ。苦しみの末につかみ取った勝利は、早大の貴重な糧(かて)となる。『1を積み上げ』、より強力になったア式の姿を、次週も見せてくれるだろう。

(記事 小林慎治、写真 永田悠人、長村光)

 

(※1)ウノゼロ…1対0で試合を終えること

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 31 公文 翔 スポ4 東農大一
DF 大西 翔也 スポ4 浦和レッズユース
DF 24 西田 翔央 商3 東福岡
DF 鈴木 俊也 商3 東京・早実
MF 柴田 徹 スポ3 湘南ベルマーレU18
MF 小倉 陽太 スポ2 横浜FCユース
MF 山下 雄大 スポ3 柏レイソルU18
MF ◎13 杉田 将宏 スポ4 名古屋グランパスU18
MF 11 西堂 久俊 スポ3 千葉・市立船橋
→75分 28 丹羽 匠 スポ3 ガンバ大阪ユース
FW 10 加藤 拓己 スポ4 山梨学院
→️88分 奥田 陽琉 スポ2 柏レイソルU18
FW 19 水野 雄太 スポ3 熊本・大津
→75分 12 倉持 快 人4 神奈川・桐光学園
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
桐蔭横浜大
法大
国士舘大
明大
筑波大
早大
流通経大 −1
順大 −1
拓大 −2
10 立正大 −2
11 駒大 −2
12 慶大 -2
第1節終了時点
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――初戦を終えられて、率直な感想をお願いします

いよいよ新しいシーズンをこの西が丘でスタートさせてもらうことができたということで高揚感もありましたし、プレシーズン期もなかなか熱く取り組んで来たものの、うまくいかないことが結構多かったので、昨年の4年生たちのすごさを感じながら自分たちの今のチームの至らなさを試行錯誤しながらやってきました。ただこの1週間、非常に良い取り組みができていたので、そこは良いムードで開幕戦を迎えられるなというところはありました。

――今日の試合は立ち上がりに先制しましたが、試合を通してみると苦しい時間も多かったように思います。そのあたりはいかがですか

とても良い入りができたというところは狙い通りでしたし、この試合を迎えるにあたってチームにとってもまだまだ半信半疑なところがある中で、ああいうスタートを切れたのは大きな勇気になったと思います。苦しい展開になるというか、うまくいかない時間帯が多くなるだろうなとは思っていたので、そこはある意味試合中もポジティブにというか、ネガティブになりすぎないというところは注意深くしていたので、本当に今日初めて出たGKの公文とかはチームに安定感をもたらしていたと思いますし、彼はこの4年目にして初めてメンバーにも入ったし、それこそAチームに上がってきたのもついこの間くらいなので、上川(琢、スポ4=湘南ベルマーレユース)が骨折したり、脳震とうで出られなくなる選手がいたり、チームとしてはGKが難しい状況の中で、公文は練習で一番遅くまで残っていろいろなメンバーのシュートを受け続けてきた選手で、一般受験で入ってきて、そういう選手がピッチに出て、かつ4年生がそういうところで姿勢を示せたというのは、チームにとってはとても大きなことだったと思います。

――先発を決めたのは監督ですか

そうですね。今週ゲバなどがあった中で、序列的にそうやって上がってきたんですけど、チーム状況とかいろいろと葛藤している中で、チームに安定感、安心感を作れるのは練習や普段の取り組みからしっかり示せた選手かなというのと、チームがうまくいかない中でも練習からチームを落ち着かせることができていたので、能力とか技術とかではなくて人間として、こいつだったら今日は託せるんじゃないかなと。

――天皇杯予選では敗れましたが、それがチームにもたらしたものはありますか

昨年はチームとしても勝ちというのをかなり積み上げられましたし、難しい状況の中でも安定したチームを作り続けてこられたので、それは本当に昨年の4年生が示してくれたもので、そこに上積みしていこうというのはよくあるのですが、まずそこのベースに到達するのが簡単ではないということにやりながら気づいてきて、青学大戦はそこの不安定さがもろに出てしまって、選抜にいったり、Jクラブに練習参加したり、そういう選手がいるから今なんとかなるんじゃないのという空気があって、そこが露呈してしまったなと思います。そこからそこに向き合ってきたんですけど、なかなか簡単なものではなかったので、非常に難しい状況でしたけどこうやって開幕にそういう状況を作り出せたし、今週本当にそのあたりの整理がみんなできて、しっかりチーム全体のスイッチを作り出して、こういうゲームで、この場所で、権威ある大会の開幕戦でしっかり勝利だけでなく無失点で終えられたというのはチームにとって大きな励みというか、今年になって初めての自信、勢いになっていくんじゃないかなと思います。

――0に抑えたのは大きいですね

本当にとてつもなく大きいかなと思いますね。これまでトレーニングマッチでも一度も無失点のゲームがなかったので、逆にうまくやろうとしてひっかけてカウンターされるとか、セットプレーとか、かなりイージーに失点するケースが多くて、毎年毎年違うチームというか、違うチーム状況からスタートなのですが、なんとなく「昨年できた中に自分たちもいた」という選手が多いので、それができて当たり前というか、できるものだと思ってそこに囚われちゃっていたところはあるので、そこに早く気づいて、今日は加藤も倒れずにゴールに向かってましたし、杉田とか、本当にそういったあたりがやっと4年生としての姿を体現していたなというのはありますので、ようやくここで軸が作られたなと思います。それが開幕戦であって本当に良かったなと思います。

――水野と西堂が左右入れ替わったりしていましたが、そのあたりの狙いやプランというのは

西堂もけが明けでまだ全部行ける状態ではなかったので、行けるところまでっていう中で、相手にとってあそこの推進力は嫌だろうなと思っていたので、できるだけそこに変化というかそういう部分もあって。最初は結構抑えられてましたけど、だんだん彼らの能力というか、一つの良さが後半徐々に見えてきて、その中で後半交代した丹羽とか、倉持とかああいうメンバーもしっかりフィットしてゲームに入っていましたし、今日は監物(拓歩、スポ3=清水エスパルスユース)がまだコンディションが整わなかったので、鈴木俊也とかイレギュラーでCBとして使って、西田(翔央、商3=東福岡)とは初めて組んだと思うのですが、最初はなかなか前に出れませんでしたけど、後半しっかり修正して十分及第点は与えられるんじゃないかなと思います。

――けが人が帰ってくれば上積みが見込めるチームということでしょうか

田中雄大主将(スポ4=神奈川・桐光学園)をはじめ、田部井悠副将(スポ4=群馬・前橋育英)とか、本来出るべき選手がいないですし、監物とか含めて。そういう意味では今日の勝利は変わって出てきた選手というかそういう選手たちがこういう姿を示せたので、チームとしても層が厚くなるし、良い意味でチームの中に厳しさが一個作られるんじゃないかなと思います。やっぱり関東リーグはそういう舞台というか、この舞台があるからチームや個人の成長が生まれるんだなというのを感じました。

杉田将宏(スポ4=名古屋グランパスU-18)

――キャプテンマークを巻いての試合となりましたが 率直に試合を振り返ってください

ユースの時もキャプテンマークを巻いていましたが、やはり重みは違いました。この前の天皇杯予選で付けた時も実感した部分です。その試合ではキャプテンマークを巻いていたのにもかかわらず、情けないプレーをしてしまったので、泥臭くても、チームがつらい状況の時に自分がいかに前を向いて、チームのスローガンであるDRIVEする姿勢というのを体現しないといけないという思いで試合に臨みました。

――先制点について振り返ってください

今のチームは勢いもあっていい時はとてもいいし、悪い時にネガティブな空気になってしまうというのは特徴ではあったので、先制点を取ることができるかどうかは自分の中でもとても大事だと思っていました。チームとして1試合を通しての課題は多いですが、後ろを中心に体を投げ出して守ってくれたのは自分が前から見ていて感動しましたし、自分自身もやらなきゃなと思いました。

――開幕戦を白星で終えられたことに関してはいかがですか

開幕はとても重要だと自分たちでも感じていました。今までトレーニングマッチを重ねてきたのですが、なかなかいい結果は得られなくて、チームで悩みながらもがきながらやってきたので、開幕戦を白星で飾ることができたのは個人としてもチームとしても大きいと思います。

――将来はどのような進路を考えていますか

プロを目指しています。

――Jクラブのキャンプは参加したのですか

参加していないです。

――この1年はかなりアピールする必要がありますね

デンソーチャレンジカップも入れず現実を突きつけられたなというのは正直な感想で、いろいろ考えることもあります。ですがより覚悟ができました。この1年が勝負だし、やるしかないと吹っ切れました。

――今シーズンの個人としての目標は

トップ下、FWをやっているので得点王は目指しています。ただ、得点ばかりにこだわっていては独りよがりなプレーになってしまうと去年結果が出ずに感じました。なので今年はチームのためにということをベースにして、その中でアシストでもいいので結果にこだわりつつ、持ち味であるチームのために継続してやっていきたいです。

――守備で体を張る場面が印象的でしたが、意識されていたのですか

前から戻っての守備は後ろの選手も見てくれていますし、自分が率先してやることで声では伝わらない部分が絶対にあると思っていて、他の選手にも火をつけるようなプレーをしようと思って試合に臨みました。それがかたちとして何回か出たのは自分の中でも良かったと思います。

公文翔(スポ4=東京・東農大一)

――試合を振り返ってください

一般受験で入ってきて、1番下からスタートしてここでやっとチャンスを頂けたので背負うものは大きかったと思います。自然と気合も入りましたし、出るだけで満足するのではなく勝利に貢献することを第一に考えていました。ミスは何個かありましたが、前半1本後半1本自分の中ではいいセーブができた要因だったのかなと思います。

――スタメンを言われたのはいつだったのですか

木曜日に監督から「お前でいくつもりだ」と言われました。

――緊張はありましたか

ピッチに入ってからはあまり緊張しないと言うか、周りのメンバーも信頼してくれていたので、リラックスとまではいかないですが、平常心でやることができたと思います。

――高校までの公式戦と比べてどうでしたか

ここまで大きな舞台を経験したことはなかったので、ピッチ内アップに入った時はかなり感じるものや恐怖的なものも芽生えました。ただ、それが試合になると自分の中での闘志というか前半は後ろに部員がいたのでプレッシャーや恐怖にならずにいい方向に働いたかなと思います。

――同じキーパーの仲間からは何か声をかけられましたか

同期やサブキーパーの思いだとか、みんなLINEとかで一言ずつ声をかけてくれたりしたのでそこは当然背負って出るという感じでした。

――試合終了の瞬間はどのような思いでしたか

言葉では言い表せられないような、これまでやってきてよかったなという思いがありました。そして、安堵感のような感情もあってただ叫んでいました。

――レベルの高いキーパーもいる中で、3年間どのような思いでやってきましたか

当然自分が1番下手だとわかった上で入りましたし、自分みたいな人間が出ることでチームにとってプラスになったり、勇気を与えられるということは先輩たちの背中を見て感じていました。自分の中では相当な努力をしてきたつもりですが、それをやるだけの価値はあると思っています。きょうの勝ちの瞬間のために乗り越えてきました。

――ア式に入ることを目指して早稲田を受験したのですか

受験の段階ではア式は考えていなかったのですが、入学が決まってから考え始めました。

――きょうの試合で課題だと感じたものはありますか

キックをたくさん失敗してしまいました。本当はキックは自分の強みとして生かしたいものなのですが、天然芝が自分自身初めてだったこともあって特に前半はかなり苦労しました。1本引っ掛けて、味方がカードをもらうことになってしまったので反省しています。

――次の試合に向けて

関東リーグに出場して、勝利に貢献することを4年間の目標にしてきたのですが、この試合でいいかたちで達成できました。当然ここで目標を塗り替えてこの1年を通してチームの勝利に貢献し続けて、自分がチームを優勝させるくらいまで持っていけるような選手になりたいと感じました。そのためにやってきたことはぶらさずに、さらにレベルアップできるようやっていきたいと思います。