無尽蔵のスタミナで攻守に渡りチームを支えた鍬先
(写真は12月5日、慶大戦での鍬先 インタビューはオンラインで実施)
MF鍬先祐弥(スポ4=東福岡)
――今シーズンを終えた率直な感想を聞かせてください
今年はコロナがあって、サッカーができる環境は当たり前じゃないって気づけました。いろいろ運営面でも難しい状況もあったのですが、全員で2020シーズンを走り抜けることが出来て良かったなと素直に思っています。でもあと一歩のところで自分たちが目指す目標を達成できなかったというのは少し心残りですが、一番は監督やスタッフさんも含めて全員に感謝の気持ちでいっぱいです。
――アミノ杯、リーグ戦2位、今大会は3位という安定した成績を残されました
昨日の解散式でも石井(昌幸)部長(ア式蹴球部部長)からいい結果を残してくれたという話がありましたが、やっぱりア式は『WASEDA the 1st』という言葉にもあるように、一番でなければいけないと思っているので、今年の結果に関して満足している選手はいないと思います。一番じゃなかったら、なかなか人の記憶には残らないと思うので、来シーズン以降後輩たちにはこだわってほしいと思います。
――集大成となる今大会、準決勝は累積警告で出場できませんでした。歯がゆい思いで見ていたのではないでしょうか
まずはチームに迷惑をかけて申し訳ないなと感じていたのもあるのですが、みんなだったら絶対決勝まで勝ち進んでくれると信じていました。そういった言葉を部員たちから声を掛けてもらっていたので、自分としては準決勝で法政に勝って決勝まで進んでくれるように雰囲気作りだったり、いろんな面でサポートしていこうというのは強く思っていました。試合に関しては、確かに押されてはいたのですが、ゲームプラン的に前半0-0で折り返すというのが大事なテーマの一つでした。それを達成出来た時に期待感というか可能性を感じさせてくれましたし、試合をしてくれた選手には感謝したいと思っています。自分が出れなくて負けたけれど、全員が試合中に闘う姿勢だったり最後まで走り切る姿を見せてくれたので、誇らしいな、このチームで良かったなというのは感じていました。
――試合中はどうされていたのですか
西が丘にいました。最初はチームのサポートをしようと思っていたのですが、区域内に入ってはいけなくて、出入りしないで下さいと言われたので、スタンドでずっと観ていました。
――解散式では、4年生へ監督からどのような言葉があったのでしょうか
1年間コロナ禍で大変な状況ではあったけれど、その中でよく頑張ってくれた、誇りに思うというようなことを言ってくださいました。監督をはじめとするどのスタッフも4年生の力があったからここまで来ることができたということを言ってくださったので、自分たちとしてはすごく嬉しかったですし、今年2020シーズンを自分たち4年生がチームのために頑張ってきたことは報われたのかなと感じました。
――ア式での4年間で何を学びましたか
まずはチームのためという、For The Teamの精神というのが一番ついたかなと思います。大学に来る前や当初は自分のことしか考えていませんでした。そういう時もあっていいと思うのですが、ア式に来てからチームのために頑張るとか、応援してくれている誰かのために頑張るということを学べたと思っています。
――長崎の地で、その学びをどのように生かしていきますか
プロとして個人事業主になりますが、それでもひとつのチームに属すということに変わりはないので、チームのために何が出来るのかということを考えたいです。プロになったら自分のことしか考えなくなりそうなのですが、ア式で学んだことを意識しながらチームのため、誰かのためという気持ちを持って日々取り組んでいけばプロとしてもいい方向に進んでいけるのかなと思っています。
――後輩たちに声掛けするとしたら、どんな言葉を掛けますか
試合の後に全体で集まって4年生から一言言葉を掛ける場面があって、そこでも後輩たちに伝えました。今年いい結果をとれたように思うけれど、やっぱり大一番であと一歩届かなかったところを教訓として、2020シーズンのメンバーが成し遂げられなかったことを必ず達成してほしいということは伝えたので、そのためにもっと個人として、チームの試合が上手くいっていない時でも自分の力で状況を打開できるようになってほしいです。結局最後はサッカーは個の能力だと思うので、それを伸ばして大学で圧倒的な力を持つ選手になれるように頑張ってほしいと思います。そういった資質を持った選手が後輩にはたくさんいると思うので、そこに期待してそういった言葉を届けたいと思います。
――最後に、同期へ愛のメッセージをお願いします
何を話そう(笑)。ありきたりにはなってしまいますが、やっぱり一番は「ありがとう」ですね。この同期だったから自分も人としてもサッカー選手としても、大学に来た当初よりすごく成長できたなと思うし、常に自分のことを気にかけてくれて、後押しだったり、時には説教というか指摘をしてくれるし、そういったところで本気で自分に向き合ってくれた同期には本当にありがとうと伝えたいです。4年間一緒にこの同期でサッカーをすることが出来てすごく幸せだったなと思っています。多分これからも交流は続くと思うので、一時会えなくなるのは寂しいですが、また次会うときはお互い成長した姿で、お酒を飲みながらいろんな話ができるように頑張っていきたいです。
チームに堅守と笑顔をもたらした工藤
(写真は1月6日、IPU・環太平洋大戦での工藤 インタビューはオンラインで実施)
DF工藤泰平(スポ4=神奈川・日大藤沢)
――今シーズンを終えた感想をお聞かせください
結果的にすごく悔しいシーズンになったなと率直に思います。リーグ戦もアミノ杯もあたりまえに杯も、結果を出し切れなかったことに悔しさが残っています。
――逆に言えばあと一歩のところまで行く安定性がありました
一つ要因として、コロナの中での活動だったというのが挙げられます。難しい社会情勢で、サッカーをやってもいいのかという中で今シーズンを送ったからこそ、ア式の選手は主体的な選手が多くてみんなで目標に向かって頑張っていこうという風土があるので、自粛期間もオンラインでトレーニングをしたり、サッカーではないけれど社会に向けてSNSで発信したりというかたちで『日本をリードする存在になる』というビジョンを体現して、『究極の当事者意識を持つ』ことで、サッカーができない中でも一緒にみんなでやってきたので、そういったところで統制が撮れたというか、つながりを維持・向上することができたからこそ、目の前の試合とか迫りくる大会とかにみんなで準備をすることが出来たと思います。必ずしもサッカーの戦術的だけじゃないかなと思います。
――難しい状況の中で迎えた集大成の大会で、主将をはじめとした主力選手を欠いてしまいましたが、どのような覚悟で準決勝に臨みましたか
難しい試合になることは当然分かっていましたし、杉山とは下級生の頃から切磋琢磨してきて、2人で勝利に導こうと誓いをたてていた一歩手前であいつは離脱して、自分のことのように悔しかったし一緒に闘いたかったのですが、みんなのことを思って、自分のできることを精いっぱいやろうという思いでピッチに立ちました。
――予想通り押し込まれた展開でしたが、ピッチ内の雰囲気はどうでしたか
今シーズンは自分たちでボールを握って主導権を持ちながら試合を運ぶスタイルでしたが、法政に勝つためにはそれを封じ込めて、相手にボールを握らせてラインを低めにして、少し保守的になりました。でも、ベスト4までみんなで歩みを進めてきたので、日本一になるための戦術だと共通理解がありました。中の雰囲気は、前半0-0で折り返した時もいい感触でやれているという言葉もありましたし、後半はギアを上げて隙を見て突破を狙っていこうということで、雰囲気は悪くなかったです。
――先制点を奪われて、試合の流れとしては厳しくなりました
PK狙いとまでは言いませんが、試合がフルタイムに近づいていくにつれて自分たちに勝機が訪れるのではないかという想定でゲームに入っていたので、先制点を奪われてしまったところで大きく試合が動いたと思います。失点をせずに耐えていたら試合の経過とともにオープンになっていくので、交代選手などでチャンスはあったのではないかと思います。
――交代選手が投入されてから攻撃のリズムが出てきたと思いますが、後ろから見ていていかがでしたか
離脱したメンバーには、攻撃の主層となるような選手がたくさんいたのですが、田中とか膝が悪いのに途中から出てきてくれて、雄大にしかできないテンポとかドリブルとかが法政の脅威になっていたと思います。杉田、田部井といった来年は早稲田の攻撃をけん引するメンバーが途中から出てきてくれたことによって、すごくアグレッシブな攻撃になって前への推進力が出たと思います。交代の選手起用とか、4年生のためにと思ってくれていたメンバーでもあったので、すごく足が動いていていいプレーをしているなと思いました。
――2失点目をした時の気持ちを教えてください
時間帯も時間帯で、みんな足が止まってきて相手に押し込まれる時間が長かったので、正直引退を覚悟したというか、このまま終わってしまうのかなとリアルな感情を持ってしまいました。でも、ここに立てなかったメンバーもいますし、今自分にできることは何かと考えた時に声を出して、4年生として最後まで早稲田の男を貫くという姿勢だけは保たなきゃいけない、下級生に見せなければいけないと思いました。途中から入ってきた平松とかすごく声がでていたし、生き生きして球際も激しかったし、山下もこれまでにないくらいスライディングして、足元の能力が高い選手なのですが、離脱したメンバーや4年生のためにという気持ちがこもったプレーが随所に出ていてすごく嬉しかったです。2失点目した後でも、下級生のひたむきな泥臭いプレーを見ることができて、自分も励まされるような時間でした。
――後輩たちに声掛けするとしたら、どんな言葉を掛けますか
僕も最初は試合に出れませんでした。2年生の7節あたりからリーグ戦に出れるようになって、出れてからはそれまでの苦しみとか悔しさをはるかに上回る歓喜とか、早稲田を背負って戦う誇りとか自覚が芽生えました。でも、上を目指すからこそ難しかった時代のことを忘れてしまう。杉山みたいにずっと試合に出るという信頼は勝ち得なかったので、僕はムラのある選手でした。特に試合に出れていない後輩に伝えたいのが、試合に出るだけがゴールではなくて、早稲田を勝たせるとかけん引するということを目標にしてしまうと、ただ出ただけで終わってしまうのでチームを勝たせるような選手になってほしいですし、そういう気概を持ってプレーすることでチームの総和も大きくなっていくので、そこを目標に頑張ってもらいたいです。
――ア式の一員として過ごした4年間で何を学びましたか
最初は自分が強くなればそれに比例してチームも強くなると考えていましたが、先輩方はまずはチームの勝利のため、日頃支えてくれる人たちへの感謝を忘れずに全力でプレーすることが大事だという逆の考え方でした。広い視点を持ってから自分を落とし込んでいくという方が、自分がやらなければならないことや、できていないことが見えやすくなると感じたので、チームのためを思って自分には何が出来るかを考えて行動する方が成長するということが一番の学びかなと思います。
――それを社会人になってどう生かしていきますか
大学1年生の頃はみんな自分というエゴを持って早稲田の門を叩くのですが、結局だんだん丸みを帯びていってその中で自分の個性を出すようになるんです。それは社会人も変わらなくて、最初は右も左も分からない中で吸収するものしかないと思うのですが、自分はこういうことをやってきた、こういう経験をしてきたからこう思うとことをこれからに生かすために、主体的に発言したり行動したりしなければいけないと思っています。会社のために、部署のために、お客さんのためにはもちろんですが、自分は何を考えていて何が出来るのか伝える、考える、行動するプロセスは同じなので、生かしていかなければならないと思っています。
――最後に、同期への愛のメッセージをお願いします
本当にいい同期だったなと思います。海外に行くやつもいればプロになるやつもいますし、就職もみんないろいろな業種の会社に行くのでなかなか会えなくなるとは思いますが、良き同期であり仲間であり…これからはライバルになるのかな。誰が一番早く結婚したかとかそういう話をすると思いますし、死ぬまで関係性は続いていく思うので、僕も同期の活躍に負けないように、自分の人生を生きるだけなのですが、心のどこかでは絶対彼らを思っていますし、僕も彼らに刺激を与えて泰平は泰平だねと言ってもらえるように生きていきたいので、本当に大きな感謝を伝えたいと思います。ありがとう。
歓喜の輪には、常に鍬先と工藤の姿があった
(写真 手代木慶、橋口遼太郎)