11日、全国高校サッカー選手権決勝が行われ、山梨学院高校が青森山田高校を下し11年ぶりに優勝を果たした。ア式蹴球部に所属する平松柚佑(社1=山梨学院)は昨年、加藤拓己(スポ3=山梨学院)は3年前に、山梨学院高校のキャプテンを務めた。そんな2人に、後輩たちへの思いから、高校での思い出までを語っていただいた。
※この取材は1月13日に行われたものです。(オンラインで実施)
「様々な面から全てにおいて日本一を」(平松)
今シーズン、関東大学リーグ初出場を果たした平松
――はじめに、後輩たちの優勝という結果をお二人はどのように感じていらっしゃいますか
平松 自分は嬉しい8割、悔しい2割って感じです。
――悔しいのですね
平松 はい。やはり自分の代ではできなかったというか、全国大会に立つ権利すら与えられない状況で負けてしまいました。今もサッカーを続けてはいますが、やはり悔しいという思いが多少はありました。でもそれ以上に小学校から知っている選手とかもいたので嬉しかったですし、すごいなと思いました。
――今悔しいというお言葉がありましたが、試合後の会見で長谷川監督(長谷川大氏、山梨学院高校サッカー部監督)が、平松選手の代がプリンスリーグに昇格してくれたから、という言葉もあったということですが
平松 ツイッターで、川端さん(川端暁彦氏)というライターの方が教えてくださいました。そういってもらえると、昨年自分たちが残すことができてよかったなという部分でもありますし、今年のチームの優勝に少しでも貢献できたのであればよかったかなと思います。
――加藤さんはいかがでしたか
加藤 俺からしたら率直にうれしいという気持ちしかなかったです。かぶっている代ではないですが、自分の1つ下がインターハイで優勝して。日本一になって盛り上がって。その次に全国に出られない代があって(笑)。そして今年、コロナとかですごく大変だったと思うし、自分も実際に山梨に行って激励をしましたが、本当に大変だったと思いますがそれでもしっかりと優勝をし切ったというところ。これまでの98回の大会に比べて、今回の大会、99回大会はすごく特別だったと思います。無観客というところや、埼玉スタジアムで選手たちの声が聞こえてしまうような。そういった大会なので、そういった大会で勝てたのはすごいと思うし、先輩として誇らしいなと思います。
――今年の優勝チームはお2人から見てどの辺りがすごかったですか
平松 全部の試合を見られたわけではないのですが、世間が言っているようにやはり最後の部分の粘りであったり、魂の部分であったり。そういった部分が非常に見られたなと思いました。最後の一歩走るとか、最後に身体を投げ出すとか。今ア式でも晃士君(山田晃士、社4=浦和レッズユース)であったり、スギ君(杉山耕二主将、スポ4=三菱養和SCユース)が言っているようなことを、まさに体現しているようなチームだったのかなと思います。
加藤 俺が見た感じだと、今平松も言っていましたが最後に体を投げ出せるとか。 あとプレーの一つ一つに迷いがなかったなとすごく感じました。例えばしっかりとクリアをするのか、それとも繋ぐのかとか、統一されていたと思うんです。ゾーン1だったらクリアしきるとか、そういった部分がはっきりしていたのではないかと思います。あとは…横森先生(横森巧氏、現山梨学院高校サッカー部総監督)がでかいのではないかと思います。あの人の経験がこういった大会では一番生きるので。上の大会に行けば行くほど、山梨学院(山学)が勝ち残るのは選手の実力や能力ももちろんありますが、やはりあの大先生がいるおかげというのはあると思います。
――長谷川監督はどのような監督でいらっしゃいますか
平松 結構熱い人ですね。自分は1年しか関わっていないですがキャプテンとして結構話すことがありました。自分たちの一つ下の代も同じだと思うんですが、「真の日本一を取ろう」という話がありました。それはサッカー面だけではなく、学校生活であったりチームワークであったり。様々な面から全てにおいて日本一を取ろうという。しっかりと規律を重んじながらもサッカーに対しては熱いものを持っていて、その熱いものが今年のチームにも体現されているのではと思います。
――横森先生はどのような存在ですか
加藤 山学の象徴ですよね。最後はグランドで死ぬような人です(笑)。今78才とかですけど、すごく熱血だし、あの年齢でも高校生に対して思いっきりぶつかってきます。それがすごいなと思うし、テレビの中継でも言っていましたが高校生を本気で応援してくれているなと感じます。
平松 凄い力を持っているなと感じます。変なパワーと言うか。試合中に急に「あいつを出せ」と指示を出すんです。そしてその選手を出場させると、その選手が結果を残すとか。のほほんとしているおじさんに見えるのですが、なんかすごい人です。
加藤 相当ですよ。勝ち方を分かっています。多分。高校サッカーがどのようなものなのかというのを理解しているし、大会前に激励に行った際に一緒に食事をしたのですが、その時にも今年のチームは○○だ、とか。こうすれば勝てるとか。そういうことを言うんです。そういうのをすごく分かっているし、毎年選手たちを見て、このチームはどういうものなのかとか、こいつとこいつが組めば、みたいなものが、長谷川監督でさえ分からないような何かすら見えるんですよ。そういった謎の力があります。平松が言っていたようにこいつを出せと言って出場させたら活躍するし。噂によると、家の外にある花を見て、明日は大雪が降るぞと言ったら、次の日に歴史的な大寒波が襲うっていう。あったじゃないですか一回、山梨でめっちゃ大雪が降った時。あれを言い当てたらしいです。そういうところ、宿っているんですよねあの人には。何かが。あの人にかなう人はいないなと思います。小嶺監督(元国見高校監督)などは名将と言われていますが、たぶん別タイプだと思います。神様なので(笑)。
「『何回挨拶するんだよお前』ってキレられました(笑)」(加藤)
早大においても絶対的エースとして君臨する加藤
――加藤さんは大会前に、高校に顔を出されたんですね
加藤 行きました。最終節が終わった後です。横森先生から激励に来てくれと言われたので、行って喋ってきました。
――加藤さんは山梨学院において伝説的なキャプテンらしいと伺いました
平松 (笑いながら顔を横に振る)
加藤 (笑)。
平松 伝説の意味がちょっと違うと思います。凄いというよりも、やばいという感じだと思います。
一同 (笑)。
加藤 キャプテンらしいキャプテンではなかったですからね。
――熊倉匠主将はPKストップなど、大活躍でした。平松選手から見てどんな選手でしたか
平松 小学校の時から同じなのですが、真面目で誰にでも優しいです。だからキャプテンになった時には、自分的にはあまりキャプテンっぽくはないなと思っていました。ただ、LINEとかもしていて結構大変という話も聞いていました。その中でも強く言うべきところでは強く言っていたり、自分の殻にはこもらずに、キャプテンという意思を持って真面目に愚直に自分の役割を理解してやるタイプの人間かと思います。
――シーズン中には後輩と連絡を取ったりはしましたか
平松 クマ(熊倉)とか、板倉(健太)というセンターバックとか、笹沼(航紀)とか中根(悠衣)だったりとはちょくちょく連絡を取っていました。みんな活躍していたので嬉しかったです。
――平松選手は関東リーグに今シーズン出場なさいました。高校サッカーと大学サッカーとの違い、適合などを教えてください
平松 今年はAチームにいったりBチームにいったりで、結構自分的にはしんどい時期が続きました。高校でやってきたこととはかなり違ったサッカーでした。高校の頃は前線に大きく蹴って、セカンドボールを回収してというサッカーでした。大学ではポゼッションをしようよという形で、最初はかなり戸惑いましたし、どこから練習すればいいのかすらわかりませんでした。ただ高校でも大学でも変わらないことは、やはり努力しなければならないことかなと思います。拓己は才能でやっているタイプですが、自分にはそういうのがないので、ただひたすらにやるというところは高校から変わらないところかなと思います。
加藤 本人の前では言いづらいですが、すごく伸びたと思います。高校の時に一緒にプレーしていますし中高でのプレーを知っていますが、高校の時は気合いだけでしたから(笑)。小倉(陽太、スポ1=横浜FCユース)とか植村(洋斗、スポ1=神奈川・日大藤沢)とかから、いい刺激をもらいながら伸びているのではないかなと思います。同期の存在はとても大事だと思うので。
――お二人は山梨学院のサッカー部で主将を務めました。山梨学院サッカー部の色や特色はありますか
平松 ピッチ外から個性溢れるチームだと思います。拓己を筆頭にですけど(笑)。
加藤 キャプテンとしてそれを制御するのが大変でしたね(笑)。しかも自分もそういうタイプだったので一緒になってはっちゃけちゃうみたいな(笑)。寮が監獄なので。楽しかったですけどね。そこで学ぶことは多かったし。あそこでキャプテンをやっていて今大学に来て、あの時にこうしておけばよかったなと思うことはたくさんあります。スギとかのチーム作りを見て、俺もこういうことをやっておけば良かったなと感じる部分は多いです。
――寮が監獄たる所以は何ですか
加藤 時間ですね。1秒でも遅れたらアウトだもんね(笑)。
平松 裸で点呼に来た選手もいたよね(笑)。
加藤 そうだね。間に合いそうになくてダッシュできたよね(笑)。でも後は掃除とかは全員でやるとか。今考えれば人間として当たり前のことを問われていたけど、あの思春期に高校生があの環境にいれば監獄と感じます。
平松 挨拶とかあんな大きい声でやる必要なかったもんね(笑)。
加藤 絶対ない(笑)。俺山学の感覚で大学に来た時に、岡ちゃん(岡田優希、平31スポ卒=現FC町田ゼルビア)に1回キレられました(笑)。視界から消えるたびに挨拶をし直していたら、その日5回ぐらい挨拶したんです。そしたら「何回するんだよお前」ってキレられました(笑)。
平松 俺も晃士くんに言われた(笑)。
加藤 あれは習慣づけだったんだと思うね。
平松 反射的に出ちゃうもんね。
――何か特別な思い出はありますか
加藤 全部が全部思い出ですけどね。みんなで集まって話してみれば、そんなこともあったなぁみたいな。きつかったですけど、今思い返せば笑い話ですね。平松とか思い出あるの?
平松 1年生の頃にコーチに怒られて、山に行って来いと言われて。ただ山に近道があるんです。山に登らなくていい。そこを学年全員で歩きながらコーチの愚痴を言ったり。
加藤 かわいいなお前(笑)。
――でもいいですね、そういったエピソードも
平松 今思えばあれが青春ですよね。僕たちの。100キロ走ったこととか。
加藤 100キロ行ったんだお前ら(笑)。俺なんか山行けっていわれた時、山の入り口で軽トラをヒッチハイクしたからね。
一同 (爆笑)。
加藤 軽トラに先輩と2人で座って乗りました。
――これ書いて大丈夫ですか?(笑)
加藤 ギリセーフです(笑)。もう時効かな。でも結構色々ありましたね、そういうのもありましたし。コーチと取っ組み合いしたこともありましたし。そういった個人的な思い出は多いですね。
――最後に、早大も日本一まであと2勝のところまで来ました。改めて意気込みを聞かせてください
平松 試合に出られる出られない別にして、とにかくチームのためにできることを何かしたいです。それがピッチの中でも外でも。何でもいいので、今の自分のサッカーの実力で何をすればチームが勝てるか、チームに貢献できるかということを考えて、準決勝まで残りの時間は少ないですが過ごしたいと考えています。
加藤 俺はもうシンプルに、4年生に笑ってユニフォームを脱いで欲しいです。それは早スポの皆さんも関わってきたからわかると思うんですが、これまで4年生が積み上げてきたものは、誰もが見れば分かるものです。今までアミノバイタルカップやリーグ戦で結果が現れなくてなかなか評価をされなかったですが、それを最後に正解にするのは俺たちでしかないし、それを正解にしたのが山学のサッカー部だったので。やはり自分たちも同じように、下級生が最後に4年生を笑わせられるように。日本一を狙っているので、そこに対して俺たちが100%、120%のアシストができるようにしたいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材、編集 橋口遼太郎 写真 朝岡里奈、初見香菜子)
◆加藤拓己(かとう・たくみ)
1999(平11)年7月16日生まれ。180センチ。山梨学院出身。スポーツ科学部3年。
◆平松柚佑(ひらまつ・ゆう)
2001(平13)年9月16日生まれ。171センチ。山梨学院出身。社会科学部1年。