決定力に泣き雪辱果たせずも、主将の土壇場弾でドローに

ア式蹴球男子

 関東大学リーグ戦(リーグ戦)の第16節が行われ、2連勝中の早大は、前期の対戦で唯一苦杯をなめさせられた(第5節、●0-2)駒大と対戦した。立ち上がりから試合を優位に進めて何度もゴールに迫ったが、仕留めることができずにいると、77分に先制を許してしまう。それでも、焦れることなく立て直すと、90分にFW岡田優希主将(スポ4=川崎フロンターレU18)の得点でドローに持ち込み、勝ち点1を手にした。

 「同じ相手に2度負けることはありえない」(岡田)とリベンジを期して臨んだ一戦。前期はフィジカルを生かしたロングボール主体の攻撃に苦しんだが、今回はボランチに本職センターバックのDF工藤泰平(スポ2=神奈川・日大藤沢)を起用した。この日も立ち上がりから中盤を省略し、『蹴り合い』を狙う駒大。しかし、早大は前線からのプレスで相手に自由を与えず、アバウトなフィードに対しては競り合いやこぼれ球への意識を高め、相手の土俵には乗らなかった。主導権をとった早大は、相手を押し込むことに成功。14分には、岡田の左から右へのサイドチェンジを起点に、MF相馬勇紀(スポ4=三菱養和SCユース)のクロスからFW武田太一(スポ3=ガンバ大阪ユース)がシュートを放つが、駒大GK角井栄太郎の好セーブに阻まれてしまう。その後も、25分までに武田に1度、トップ下起用のMF金田拓海(社3=ヴィッセル神戸U18)に2度決定機が訪れるが、ゴールを割ることはできなかった。一方の守りでは、MF中原輝を軸とした攻撃で早大の右サイドから深い位置に侵入されるシーンが散見されたが、クロスをDF杉山耕二(スポ2=三菱養和SCユース)がことごとくニアサイドで引っ掛けるなど、比較的安定した守りを見せる。主力選手の累積警告による欠場でスタメン出場のFW川﨑貫太の飛び込みに肝を冷やすシーンもあったが、GK小島亨介(スポ4=名古屋グランパスU18)の落ち着いた処理で、得点を許さなかった。結局、ハイテンポで進んだ前半には互いにゴールを割ることができず、0-0で試合を折り返した。

駒大FW高橋を相手に、お株を奪うように空中戦で優位に立った工藤

 ファーストプレーで武田がシュートを放つなど、後半の立ち上がりも早大が勢いよく試合に入り、ペースを握る展開。しかし、得点を奪えないまま試合は進み、徐々にこう着状態へ。相馬を中心に攻めるも、相手の強力なセンターバックコンビを前に、なかなかシュートを打たせてもらえない状況が続く。逆に70分を過ぎると、早大守備陣が背後のスペースを狙う浮き球に対して裏を取られる場面も見られ始めた。すると、77分。ロングボールに対する処理で連携ミスが起こってボックス内へ抜け出されると、最初のシュートは小島がセーブしたが、こぼれ球をFW坂本和雅に詰められて失点し、前回対戦時と同様に追う展開となってしまう。押し込みながらも得点を奪えず、試合終盤に入って献上してしまった重い1点。一気に敗色濃厚になったが、「あそこでがっかりしないで奮起できるのが今のチームのいいところ」(外池大亮監督、平9社卒=東京・早実)。再び持ち直すと、90分に決定機。相馬が左サイドで敵陣深くに侵入し、ニアサイドにマイナスのパスを送ると、遅れてボックス内に入ってきた岡田が狭い空間の中で右足を振り、GKのニアを抜いて決めた。さらに早大は追加タイムに、カウンターから得点シーンと似たような形で攻め込む。MF藤沢和也(商3=東京・早実)の突破から、再び岡田がシュートを放ったが、ポストに嫌われて逆転はならなかった。それでも、土壇場の一撃で駒大の『シーズンダブル』は阻止し、勝ち点1を得ることとなった。

チームを敗戦から救った岡田主将。後期に入り5戦4発と凄みは増すばかりだ

 リベンジには至らなかったが、「成熟度は上がってきている」(外池監督)。完敗を喫した前回対戦を顧みれば、成長を示した一戦だった。ゴール前での攻撃の精度や、ミス絡みでのピンチの誘発など課題は残ったが、試合運びとしては駒大対策を遂行し、理想に近い試合運びを実現。また、終盤の失点にもすぐに立ち直り、負け試合の展開からドローに持ち込んでみせた。順位表の上では依然として優位な状況が続き、悲願の優勝へ意識も向き始める時期だが、岡田は「(2位以下との)勝ち点の差を考えることはない」ときっぱり。選手たちには首位独走という状況への満足感や驕りはなく、「1週間しっかり準備をすること。その結果が勝ち点がいくつになるかだと思う」(岡田)、「まずは目の前の敵に勝たないといけない」(工藤)と目の前の一戦一戦に向き合うことを強調した。次節は降格危機が迫る最下位の国士舘大と相対する。死に物狂いで来る相手に対してその姿勢を体現し、勝利をつかみ取ることはできるか。

スターティングイレブン

 

(記事、写真 守屋郁宏)


JR東日本カップ2018 第92回関東大学リーグ戦 第16節
早大 0-0
1-1
駒大
【得点】
(早大)90’岡田 優希
(駒大)77’坂本 和雅
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 小島 亨介 スポ4 名古屋グランパスU18
DF 牧野 潤 スポ3 JFAアカデミー福島
DF 杉山 耕二 スポ2 三菱養和SCユース
DF 大桃 海斗 スポ3 新潟・帝京長岡
DF 冨田 康平 スポ4 埼玉・市浦和
MF 17 工藤 泰平 スポ2 神奈川・日大藤沢
MF 栗島 健太 社3 千葉・流通経大柏
→72分 14 藤沢 和也 商3 東京・早実
MF 11 相馬 勇紀 スポ4 三菱養和SCユース
MF 金田 拓海 社3 ヴィッセル神戸U18
→84分 34 田中 雄大 スポ1 神奈川・桐光学園
MF ◎10 岡田 優希 スポ4 川崎フロンターレU18
FW 武田 太一 スポ3 ガンバ大阪ユース
→66分 37 鈴木 郁也 社2 FC東京U18
◎=ゲームキャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
早大 36 16 11 38 25 +13
順大 27 16 30 17 +13
筑波大 27 16 31 21 +10
★明大 25 16 31 18 +13
法大 25 16 23 21 +2
流通経大 23 16 27 32 -5
駒大 22 16 30 29 +1
専大 21 16 20 29 -9
東洋大 20 16 19 23 -4
10 桐蔭横浜大 19 16 24 28 -4
11 東京国際大 14 16 18 30 -12
12 国士舘大 16 12 18 36 -18
※第16節終了時点
※★は第67回全日本大学選手権(インカレ)出場権獲得チーム。第42回総理大臣杯全日本大学トーナメント優勝の明大と、今リーグ戦1~6位のチームが関東地区からインカレに出場する。明大が6位以上の場合は7位のチームがインカレ出場権を獲得
※11、12位のチームは2部リーグに自動降格
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コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――今日のゲームプランはどういったものでしたか

早いタイミングでボールを入れてくるのに対してラインを高く設定して、できるだけ高い位置からプレッシャーをかけて、相手が押し込むような状況をなくすということがゲームプランでした。あとは攻守にわたってセカンドボールをいかに回収できるかというところで、そういった状況で上回っていくことがゲームを作る形になると共通理解していました。

――試合の展開についてどう振り返られますか

工藤が初めてボランチをやったり、岡田をサイドにして金田をトップ下みたいな形にして、というところは機能したなと思っています。前半で言うと3、4回決定的なチャンスがある中で決めきれなかったというのは課題です。こういうゲームもあるとは思うんですけど、チャンスをつくれたというところは評価しつつも、振り返るともったいなかったなと思います。後半も最初はいくつかチャンスがあって決めきれず、当然リズムは向こうに行ってしまうという中で、連携ミスみたいな形で決められたという意味では、決めないとそうなるなという状況でした。ただ、今のうちのチームの一番いいところは、あそこでがっかりしないで奮起できるというところで、それがたくましくなったと感じるところです。今日のテーマは岡田と工藤だったんですけど、岡田も常に前向きな状況をつくれるプレーが目立っていたので、最後にあそこで決めてというのはできすぎかなという風にも思います(笑)。

――序盤から優位に試合を進めました。ほぼ狙い通りに試合は進んだといえますか

蹴ってくる相手にプレッシャーをかけた状態で蹴らせるので、『行ってこい』という展開にはなりつつも、セカンドボールも五分以上に回収できたと思うし、ボールを持ちながら仕掛けたり、相手の裏を突いたりというシーンが随所にあったので、ゲームプランとしてはある程度完成していたかなと思います。

――勝ちには届かなかったですが、前期の対戦時よりも良い内容、結果の試合だったように思います。成長を感じる部分はありましたか

(駒大は)自分たちにとってあまり得意な相手ではないと思うんですよね。サッカー的には、駒澤さんはああいう『行ってこい』をやり抜くというのがスタイルで、自分たちはそういうスタイルを選択していない。言い方は悪いですけど、前期は相手は自分たちにとっての良いサッカーはやっていないと、ある意味否定するようなことが頭にあったから、それで受けてしまったと思います。でもこの試合は、今日のテーマでもあったんですけど、『相手を意識する力を自分たちと向き合うことに向ける』という整理はできていて、工藤とかが体現してくれていました。テーマを純粋にプレーで表現していくということに対してみんなが整理できていたし、それに必要な形をつくり出してゲームを進めていくことができました。普段と違う自分たちの姿になった部分はあったんですけど、させられたのではなくて自分たちからそういう形に持ってきたと思うので、良かったと思います。個々にはうまくいかないシーンはあったんですけど、特に最終ラインとボランチのところで、相手がやってくることへの対処ができていました。明治戦でやることがわかっていながらもやられた中で、今日はやられたなという状況はほとんどなかったと思うんですよね。1個のミスからというのは、それはそれで結果だとは思うんですけど、引き分けることができたので、トータルとして考えると自分たちの成熟度は上がってきているなと感じる試合でした。

――来週の試合に対してどのように向かっていきますか

試合への入り方を間違えないということが全てだと思います。首位と最下位という立場のゲームになるので、そこに対して変な捉え方をすると受け身になってしまうと思います。(必要なことは)自分たちの中で盤石な状況をつくるということだと思うので、今までやってきた1週間の日々の積み重ねをつくっていくプロセスにまた向き合うということかなと思います。

FW岡田優希主将(スポ4=川崎フロンターレU18)

――今日の試合に対しての意気込みはどういったものでしたか

今週チームに言ってきたことの一つで、同じ相手に2度負けることはチームとしてもサッカー選手個人としてもありえないですし、そこにこだわって、サッカー選手やワセダのプライドにかけて戦うということで今週は臨みました。

――今日の攻撃の狙いを教えてください

狙いに関しては、サイド攻撃で積み上げてきたものをより進化させていくということと、対駒澤という意味では相手がマンツーマンでついてくるので、ダイナミックな展開を前半から多用して攻めていこうという意識はありました。

――岡田選手は今日はそのキーになるサイドでの起用でした

求められている結果というのは変わらないですし、守備の部分の強度というのは自分自身が来年ゼルビアに入っていく中でやっていかなければいけないと思うので、まずはその部分で基準を満たすことを考えて、その上で攻撃の良さを出していければと考えていました。

――比較的思い通りに試合を運べたのではないですか

そうですね。前半に関しては点を取るチャンスもありましたけど、それ以前に駒澤に対してがっぷり四つで戦えたということで、前期はその前に勝負が決してしまったので、そこに対してはまずまずだったかなと思います。ただ欲を言えばそこで点を取れればという部分はありました。

――その得点になかなか届かなかった要因は

ゴール前の精度のところで、押し込んでいるけどシュートまで行けないとか、引っかかっているとか、そういう部分は間違いなくあるので、それは前期から通しての課題ですし、逆にひとつ突破できればゴールになるというのは、最後の僕のゴールもそうですけどわかっていることなので、その精度の部分はまた練習でやっていきたいと思いますね。

――先ほどダブルを喫するのはありえないという趣旨の話もありましたが、チームをそこから救う貴重な一発がありました

失点は時間帯として悪かったのは事実でしたけど、後半を通して攻め込めていたし、あと一歩というところまでいけていたので、それを焦れずにやるだけだと思っていました。実際にそういう声掛けをチームにして、焦ることなくやるべきことをやろうという認識でいることができたと思います。

――前期の対戦と比べ、良くなった点とまだまだ届かなかった点を教えてください

良くなっている部分に関しては、守備での対人の練習に弱点として取り組んでいるので、そこで守りきれる部分が増えてきたのかなと思います。それと、攻撃の部分でコンセプトがはっきりしたことで、コンセプト通りではない変なボールの奪われ方をしなくなったことで、チームとしてより攻守一体に動けています。連続失点をくらわなかった要因としてはその2つがあるかなと思います。足りなかったこととしては、駒澤が競ってきたところに関してのミスというのが前期からもありました。(リーグ戦で)もう駒澤とやることはないので、駒澤に対してできなかったことの借りを返すためには、残り6試合の相手に対して借りを返していくしかないと思うので、そこにこだわっていきたいと思います。

――次戦は確実に勝利して追ってくるチームにプレッシャーをかけておきたいところだと思いますが

勝ち点をいくつ取れるかというのは、その週に向けた取り組みをどう出せるかということだと思っています。今日は追いつけたのは良かったですけど、前期と同じような失点の仕方をしたという課題は変わらなかったので、その取り組みが今週は足りなかったということだと思います。勝ち点の差を考えることはないです。今の状況でどう戦うかといったら、まず1週間しっかり準備をすること、その結果として勝ち点がいくつになるかだと思うので、そこをチームに徹底したいと思います。僕自身としては、(ビハインドを負った試合で)同点になってから勝てるチームのイメージを今からつくっていきたいと思っていて、これからより楽しみになってくるんじゃないかと思います。

DF工藤泰平(スポ2=神奈川・日大藤沢)

――大敗を喫した明大戦以来のメンバー入りでした

後期開幕戦の対明治は、多少フォーメーションも変えて挑んだんですけど、総理大臣杯の王者である明治の勢いに屈してしまって、自分自身も全く持ち味を出せずに前半で変えられるという屈辱的に思いをしました。その後メンバーに絡むことができずに、本当に悔しくて気持ちの整理に時間もかかったんですけど、同期の坂本だったり杉山だったり鍬先がチームに貢献している姿を見て、自分もやらなきゃいけないなと、しっかりと準備をやってきました。ボランチで出るなんて思いもしていなかったんですけど、結果として勝てなかったことだったり、ボランチとしてまだまだわからないこともあって、チームに迷惑をかけたと思うんですけど、90分出れたというのは成果として出たのかなと思います。

――守備においてどんな役割を与えられていたのですか

対駒澤ということで、ロングボールを放ってきたので、そのセカンドを拾うということと、守備的ボランチということで攻撃に関しては金田くんや栗島くんに任せるという形で、自分はセカンド回収とディフェンスラインと中盤の間のスペースを埋めるということやカバーリングを求められていたと思います。

――上手くやれているという感覚はありましたか

見え方もセンターバックをやっているときとはぜんぜん違うので、やっている間は無我夢中でやっていました。終わった後に先輩に声をかけていただいたし、初めてにしてはということを言ってくれる人もいたので、プラスに捉えていこうと思っています。

――先制を許しながらも最後に追いついて1-1。この結果をどう捉えていますか

前期0-2で負けましたけど、前期のように連続失点をせずに立ち直って、追いついて逆転できるかというようなシーンをつくれたというのは、夏に悔しい思いもしましたけど、チームとして立ち直ってきているところではあると思います。4年生がチームの先頭に立って引っ張ってくれているというのが、こういう結果や最後の勢いに結びついたのかなと思います。

――チームとともに個人としても上がっていきたいところだと思いますが

なんとしてでも関東リーグ優勝、『タイトル奪還』というのは今年の絶対目標でもあります。2位との勝ち点差がいくつというのはあると思うんですけど、まずは目の前の敵に勝たないといけないと思います。自分自身と向き合って戦っていくことがチームの総和になって最終的な結果を得られると思うので、来週だったら国士舘を倒すために1週間準備して、チーム内の競争も激化していくと思いますけど、個人としても試合に絡めるように、また自分が求められるように頑張っていきたいと思います。