ついに待望の勝利をつかんだ! 関東大学リーグ戦(リーグ戦)の第14節が行われ、早大と同様、後期開幕から2戦勝ちなしの7位・専大と対戦した。公式戦3試合ぶりに先制点を挙げた早大だったが、前半のうちに同点とされ、我慢が続く展開となる。しかし後半、MF相馬勇紀(スポ4=三菱養和SCユース)の2得点でリードを奪い、その後の専大の反撃をGK小島亨介(スポ4=名古屋グランパスU18)のビッグセーブなどで1失点にとどめて勝利。台風が迫る中で行われた激闘を制し、後期初の勝ち点3を獲得した。
前節の『荒療治』を経て、今季主戦を務めてきたDF牧野潤(スポ3=JFAアカデミー福島)、DF杉山耕二(スポ2=三菱養和SCユース)を先発に復帰させて臨んだ一戦。立ち上がりから互いに好機をつくり合う中、先制点を手にしたのは早大だった。9分、相馬がファーサイドにボールを蹴り込むと、DF大桃海斗(スポ3=新潟・帝京長岡)がシュート。これはGKに阻まれたが、こぼれ球をゴール前で杉山が押し込み早々にリードを奪った。最終ラインを高い位置に設定し、コンパクトな陣形を保って戦ったこの日の早大は、ボール奪取の回数も多く、裏抜けを狙われた場面でもことごとくオフサイドを奪った。しかし、優位に試合を進める中で、「崩していこうという時にやりきれなかった部分があった」(相馬)と攻撃に転じた際にミスが目立ち、25分を過ぎると徐々に専大が攻撃に出るシーンが増え始める。守備陣のカバーリングなどで防いでいたが、迎えた42分。専大のボール回しが続き、守備の重心を押し下げられると、DF小林岩魚の高精度のクロスからFW鈴木厚太に頭で決められ失点。リードを守り切れずに前半を終えた。
リーグ戦初得点を決め喜ぶ杉山(右)と祝福する選手たち
後半、主導権を握ったのは同点弾で勢いづく専大。48分にクロスを鈴木に合わせられ肝を冷やすと、それ以降もサイドチェンジのボールを狙われるなど、幾度となく攻め込まれる。それでも、DFの粘り強い守備もあり、耐え続けた。59分、守勢を振り払いたい早大は、DF冨田康平(スポ4=埼玉・市浦和)とMF藤沢和也(商3=東京・早実)を同時に投入。再びゴールへ向かう姿勢を取り戻すと、65分に藤沢が武田の決定機を演出。72分には冨田とのパス交換からFW岡田優希主将(スポ4=川崎フロンターレU18)がボックス内に侵入し、交代選手が絡んだ攻撃で得点への機運を高めていく。するとその直後、右サイドでスローインを受けた武田のクロスに、ゴール前に飛び込んできた相馬が頭で合わせ、ついに勝ち越しに成功。76分にも畳み掛ける。岡田の突破によってボックス内にこぼれたボールを、フリーの相馬が冷静にゴールに蹴り込み、点差を2点に広げた。しかしその後、84分に専大が立て続けにミドルシュート2本を放つと、いずれも小島の好セーブでしのいだが、これをきっかけに再び守勢に回ることとなる。90分に右サイドの深い位置に侵入を許し、最後はMF中山克広に決められ、点差は1点に。専大がさらに勢いを増してアディショナルタイムに入ると、ラストプレーでFW下田悠哉に中央への突破を許してしまう。今日も勝利を手にすることはできないのか――そう思われたが、決定的なシュートは小島が渾身のセービング。直後に試合終了を告げる笛が鳴ると、謙虚な守護神が珍しく大きなガッツポーズを見せるなど、早大の選手たちは喜びをあらわにした。
2得点を挙げ、この日の殊勲者となった相馬
前期の快進撃から一転、ショックの残る2度の敗戦を喫し、『底』からのスタートとなってしまった後期の戦い。しかし、前節の引き分けを足がかりに、ついにこの日、苦しみながらも白星を手にしてトンネルを脱した。試合後、涙を流す主力選手が複数いたことからも、この勝利の重みがうかがえる。「ただ結果を追うんじゃなくて、結果のためのプロセスを踏める集団になってきた」(外池大亮監督、平9社卒=東京・早実)。一つのショッキングな敗戦を機に、結果への焦燥感から負のスパイラルに入り、大型連敗を喫して屈辱の2部降格となった2年前。しかし、同じ轍は踏まなかった。連敗することなく、「しっかり分析して、倒れるくらいまで戦い続けることの両方をやって勝利になる。大変さを再認識できた」(相馬)と勝利の味を思い出し、手繰り寄せた上昇気流。「『優勝を目指す』と胸を張って言えるチームになってきた」(外池監督)。強いワセダの復活、そしてタイトル奪還へ。一つの関門を突破するとともに、自信を取り戻す大きな1勝となった。
スターティングイレブン
(記事、写真 守屋郁宏)
JR東日本カップ2018 第92回関東大学リーグ戦 第14節 | ||||
---|---|---|---|---|
早大 | 3 | 1-1 2-1 |
2 | 専大 |
【得点】 (早大)09’杉山 耕二、73’,76’相馬 勇紀 (専大)42’鈴木 厚太、90’中山 克広 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 小島 亨介 | スポ4 | 名古屋グランパスU18 |
DF | 12 | 小笠原 学 | 社4 | 青森山田 |
→59分 | 6 | 冨田 康平 | スポ4 | 埼玉・市浦和 |
DF | 5 | 杉山 耕二 | スポ2 | 三菱養和SCユース |
DF | 3 | 大桃 海斗 | スポ3 | 新潟・帝京長岡 |
DF | 2 | 牧野 潤 | スポ3 | JFAアカデミー福島 |
MF | 4 | 鍬先 祐弥 | スポ2 | 東福岡 |
MF | 7 | 金田 拓海 | 社3 | ヴィッセル神戸U18 |
→88分 | 34 | 田中 雄大 | スポ1 | 神奈川・桐光学園 |
MF | 35 | 秋葉 遼太 | 文4 | 東京・駒場 |
→59分 | 14 | 藤沢 和也 | 商3 | 東京・早実 |
MF | ◎10 | 岡田 優希 | スポ4 | 川崎フロンターレU18 |
MF | 11 | 相馬 勇紀 | スポ4 | 三菱養和SCユース |
FW | 9 | 武田 太一 | スポ3 | ガンバ大阪ユース |
◎=ゲームキャプテン 監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実) |
関東大学リーグ戦1部 順位表 | |||||||||
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順位 | 大学名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失差 |
1 | 早大 | 32 | 14 | 10 | 2 | 2 | 33 | 24 | +9 |
2 | 明大 | 25 | 14 | 7 | 4 | 3 | 29 | 13 | +16 |
3 | 順大 | 23 | 14 | 7 | 2 | 5 | 26 | 16 | +10 |
4 | 法大 | 22 | 14 | 6 | 4 | 4 | 20 | 18 | +2 |
5 | 筑波大 | 21 | 14 | 6 | 3 | 5 | 25 | 21 | +4 |
6 | 流通経大 | 20 | 14 | 6 | 2 | 6 | 23 | 27 | -4 |
7 | 専大 | 20 | 14 | 6 | 2 | 6 | 16 | 23 | -7 |
8 | 駒大 | 18 | 14 | 5 | 3 | 6 | 27 | 27 | 0 |
9 | 桐蔭横浜大 | 16 | 14 | 4 | 4 | 6 | 20 | 22 | -2 |
10 | 東洋大 | 16 | 14 | 4 | 4 | 6 | 17 | 23 | -6 |
11 | 東京国際大 | 14 | 14 | 3 | 5 | 6 | 16 | 24 | -8 |
12 | 国士舘大 | 7 | 14 | 2 | 1 | 11 | 15 | 29 | -14 |
※第14節終了時点 |
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コメント
外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)
――この試合のテーマとしていたことを教えてください
テーマは『圧倒する』ということでした。自分たちの弱さや課題を、総理杯(鹿屋体大戦、●3-4、延長)や(リーグ戦の)明治戦(●1-6)、そして追い付かれた桐蔭横浜戦(△3-3)と突きつけられてきた中で、特に前回のゲームで言えば試合の入り方や追い付かれるに至った脆さ、対人の弱さを乗り越えていくために、敵を圧倒することもそうだし、自分たちを圧倒していくことが必要だと思いました。それは今までやってきたことややっていることをとにかく徹底するということです。今回は特に守備のセットプレーで絶対にやられないようにという練習をずっとやってきたし、攻撃のセットプレーに関しても意識してやってきていました。相手どうこうよりも自分たちが今週1週間で突き詰めてきたことや、今までやってきたことを徹底して出し切るということが、自分たちに結果を導くことになると言っていました。(監督に就任してから)初めてなんですけど、「今日は絶対勝とう」と。個人的に「絶対勝つぞ」みたいな言葉は軽く聞こえる気がして嫌いな言葉なんですけど、今週は、蓮川だったり、GKなら小島、フィールド(プレーヤー)で言えば相馬とかを中心に、学生たちが今の課題に本当に向き合っていて、この間のドローで見えてきた兆しを本物にすべく、みんなが自分たちの力を発揮して過ごしてきていました。この1週間を見てきて、このタイミングで彼らを勝たせて、学生たちに1つの成果をもたらしてあげたいと思っていて、僕がそこに対してできるのは『やってきたことは間違っていない』と評価して動機づけをすることだし、自信と責任を持ってピッチに送り出すということだし、一緒に戦うことでした。実も伴っていたし、学生たちもスタッフも一枚岩となっていこうということも共有できていたので、こういうふうに形になって純粋にうれしいし、こういうひとつのプロセスを踏めたことがサッカーで成長するという実感だなと改めて感じています。
――チームの流れとしてこの一戦をそれだけ重要と捉えていたのですね
そうですね。とにかくプロセスを大事にしようとずっと言い続けてきて、その本質、スタッフでも監督でもなく自分たちがそれを組み立てていくということにみんなが気付いたので、その気付きに対して成果があれば絶対に成長するなと思っていました。それを乗り越えたので、今後厳しい時もまた来ると思うんですけど、優勝するにふさわしいチームにようやくなってきたなと思いますし、「優勝を目指す」と胸を張って言えるチームになってきたと思います。
――その強さは今日の試合ではどういった部分に見られたと考えますか
今日は自分たちでうまく締めてやってきていましたけど、前半の終わりにスーパーなクロスから追い付かれて、後半はリズムを失って、相馬を起点に逆にカウンターを食らっているような状況になりました。ああいう苦しい時間で後ろが耐えられたということ、特に今日はラインをいかにコンパクトにして、いかに押し上げるかということを徹底してやっていて、ああいう状況になっても今こそ耐えどきだということを感じて、変化させていったということだと思います。それを相馬だったり途中から入った冨田だったり、そういう選手がしっかり形にしていったというのは、意味があったなと思います。
――ようやく初勝利を挙げ、ここからまた勢いに乗っていきたいですね
リーグは残り8試合、皮算用できるようなリーグの状況ではないですけど、ある意味自分たちの軸はこの試合で生まれたと言えると思います。立ち返るべき場所だったり、自分たちの立ち位置について理解が深まった1週間だったので、ただ結果を追うんじゃなくて、結果のためのプロセスを踏める集団になってきたと思うし、そこには大きな手応えを感じています。試合をやってみて気付くというようなことはもうないんじゃないかなと思うので、そういう手応えをそれぞれの成長と置き換えていいんじゃないかなと思います。
MF相馬勇紀(スポ4=三菱養和SCユース)
――今日の試合について、どのような準備をしてきましたか
相手は11番の選手(MF中山克広)とクロスに特徴がありました。クロスを上げさせないようにというところと、11番のところの一発に気をつけようという感じで、こちらとしてはしっかりハイラインを保ちながら、前から(プレスを)かけることをやろうという感じです。
――前半は立ち上がりに主導権を握りましたが、中盤以降は難しい時間帯が続きました。どう振り返られますか
最初は今までの反省を生かして奥にボールを入れて押し込むことができていたのが良かったんですけど、崩していこうという時に技量が足りなかったり、動きの質が低かったので、やりきれなかった部分があってああいう流れになってしまったのかなと思います。
――2得点で勝利を手繰り寄せました。以前から「得点は足りない部分」と言っておられましたが、振り返っていかがですか
自分に今までない形が1点目でした。2点目に関しては名古屋でサガン(鳥栖)戦(明治安田生命J1リーグ第23節、87分)に外してしまった、(MFガブリエル・)シャビエルからもらってシュートをふかしてしまったシュートと似ていて、あれが終わってから毎日シュート練習をしてきた結果が点につながったと思います。
――久々の勝ち点3です。結果に関して率直にいかがですか
もう素直にうれしいということですね。あとは、勝ち点3を取るのはこれだけ大変なんだなと再認識できたので、次の試合もしっかり相手を分析して、自分たちが最後に倒れるくらいまで戦い続けること、その両方をやって勝利になると思うので、そこを意識してやっていきたいと思います。
DF杉山耕二(スポ2=三菱養和SCユース)
――今日の試合に対して、どういう気持ちを持って臨みましたか
チームとしても夏の総理大臣杯、明治戦、桐蔭横浜戦と勝ちがなかったですし、個人的にも明治戦に出たけど6失点、次の試合はベンチからスタートということで、今回スタメンで使ってもらって、なんとしても期待に応えたいと思っていました。チームの『勝ちたい』という流れに自分も乗っかりたかったので、絶対にチームを勝たせるという気持ちで試合に臨みました。
――試合の展開について、ピッチ内ではどう感じていましたか
主導権争いという部分ですごくうまく試合に入ることができて、良い時間帯に先制点を取れたと思います。試合を落ち着かせて前半を(失点)ゼロで終えたかったんですけど、失点をしてしまって、それも自分たちが課題にしているクロスからの失点ということで、少し終わり方が悪かったかなというのはありました。後半は劣勢が続いたんですけど、我慢強く後ろを中心に守って、我慢、我慢と続けていた中で2得点して、最後に粘って勝利という感じでした。もちろんディフェンスラインとしてはゼロで抑えたいというのが一番なんですけど、勝利できたことをまずはプラスに捉えたいと思います。
――特に後半はギリギリでしのぐシーンもありました。専大の攻撃はどういう部分が脅威になっていましたか
単純に取ってからが速かったですし、サイドに速い選手がいて、そこが脅威になることは懸念としてありました。そこを使われてという感じだったのは、自分たちの改善すべきポイントなのかなと思います。
――久々の勝利について、率直にいかがですか
もう、単純に最高ですね。
――次戦に向けて一言お願いします
ここから上昇していくだけだと思うので、またチーム一丸となって今週また積み上げて、来週の試合に臨みたいと思います。