今季のア式を語る上では、下級生ながらチームの柱となっている選手の存在が欠かせない。今回は、昨秋からレギュラーの座をつかんでいるDF杉山耕二(スポ2=三菱養和SCユース)、そして今季からピッチ上で絶対的存在となったMF鍬先祐弥(スポ2=東福岡)のお二人にお話をうかがった。
※この取材は6月14日に行われたものです。
ワセダの守備を支える2年生コンビ
――まず前期の振り返りをしていただきます。関東大学リーグ戦をチームとして振り返っていかがですか
鍬先 外池監督(外池大亮監督、平9社卒=東京・早実)に変わって、固定されたメンバーだけではなく戦術とか相手によって新しいメンバーを試すことをよくしているので、そこが逆に上手くはまっている感じがあります。自分たちが好調を維持できている要因かなと思います。
杉山 自分は天皇杯予選だとか、プレシーズンの試合を通してア式が関東リーグでここまで通用すると思っていなくて。正直、(1部に)昇格したんですけど、たぶん降格争いか下位に低迷するだろうと予想していました。厳しい戦いになるだろうと考えていた中で、外池さんが新しい監督として来ました。何が一番変わったかと言ったら、自分たちがやるべきことは徹底されているんですけど、相手によって戦い方を変えたりだとか、根底にあるのは相手の分析がしっかりしているところです。相手がこういう戦い方をしているから、じゃあ自分たちはこういう戦い方をしようっていう自分たちの戦略というか拠り所がある中で、相手を見て戦い方を変えられるっていうのはワセダの絶対的な強みです。それに順応して選手が一人一人プレーできるのが強みだと思っていて、それが上手くいっているからこそ、今1部9節が終わった中で1位という立ち位置にいると思っています。
――個人として振り返ると前期はいかがでしたか
鍬先 自分は開幕戦の時にベンチで、出場機会が無かったんですけど、その後の筑波大戦の時にいきなり「右サイドバックで起用してみるから準備しておいて」と監督に言われました。中学生ぶりくらいのサイドバックだったんですけど、自分は去年試合にも出ていないし、失うものは何もないという気持ちで、爪痕を残すではないですけどチームの勝利に貢献しようという気持ちが強かったです。この間、(イエローカードの)累積でチームに迷惑をかけてしまったんですけど、初心を忘れずこれからもやっていきたいと思います。
杉山 自分は去年の後期から公式戦に関わらせてもらっています。去年は1年生だったということもあって遠慮というか、萎縮が自分の中にありました。今年になって主将が岡田主将(FW岡田優希主将、スポ4=川崎フロンターレU18)ということで、やりやすい環境というか雰囲気があります。今年のチームカラーとしても、『全員で戦う』というものがあって、全員で頑張ろうという雰囲気がある中でも、自分を出しやすい雰囲気がチームにあります。チームのやりたいことがある中で自分がどのようにプレーしていくかということに明確な答えがあると思うので、それを自分がやっていけたらなと思ってやっています。なかなか出せない部分もありますけど、去年よりも自分を出せるようになっていると思います。
――お話が重なる部分もありますが、現在好調を維持できている要因は何でしょうか
鍬先 相手によって戦術とか選手を変えた戦い方ができているということと、選手一人一人もしっかりそれに対応して自分に何ができるのかというのを整理してやれているというのが一番の理由だと思います。
杉山 自分も、戦い方を変えるっていうのが一番の理由だと思っています。1試合するのに対して、相手の戦い方を徹底的に分析して、相手がこうやってくるんだったら自分たちはこうやって戦うっていう明確なやり方が1試合ごとにあるからだと思います。試合が始まっても、ほとんどの相手のプレーが予想内というか想定内のプレーなので、臆することなく、自信を持って自分たちのやるべきことをやれるというのがこの結果につながっていると感じています。
――事前のアンケートで、杉山選手はチームの特徴を「変幻自在」と書いていらっしゃいました
杉山 変幻自在っていうのは、相手によって戦い方を変えるっていう意味で書かせてもらいました。それがワセダの強みだと思っているので。
――鍬先選手は「団結力」と書いてくださいました
鍬先 試合中とか、苦しい時間帯とかが絶対に来るんですけど、チームのためにという部分がすごく大きくて。個人プレーに走る選手は本当にいなくて、チームの勝利という一つの目標に向かって、ハードワークをしているからそのような意味で書きました。
――前期で一番印象に残っている試合はありますか
鍬先 自分は東京国際大戦です。後半始まって立ち上がりでミスが2つ続いて失点して悪い流れだったんですけど、そこから途中交代の選手を含めて流れを取り戻して、ロスタイムに2点追いついて勝ち点1を取れたというのは、粘り強さというか本当のワセダの強さが出た試合だったかなと思います。
杉山 無いです(笑)。どの試合も本気で戦ってきました。強いて言うなら全試合という感じです。
「ア式という組織に誇りを持っている」(鍬先)
前期リーグ戦は飛躍のシーズンとなった鍬先
――ここからは事前アンケートついての質問になります。お互いのプレーの印象を教えてください
鍬先 杉山は常に冷静でとにかく足元の技術が素晴らしくてボールをつなげられて、ヘディングも強いし戦えて、後ろにいて頼りになる選手だなと思います。
杉山 めっちゃべた褒めするじゃん(笑)。
鍬先 いつも感じてることだから(笑)。
杉山 西野監督(西野朗氏、昭53教卒=現日本代表監督)の言葉を借りるんですけど、鍬先はポリバレントな選手で、ボランチもできてサイドバックもできる選手ってなかなかいないと思うんです。でも二つのポジションをしっかりとやる中で、どっちも高いレベルでこなすのがすごいと率直に感じています。それに加えてアンカーで、4-1-4-1の1として出ることもあるんですけど、守備範囲の広さがえげつないです。リトリートして守ることが多いんですけど、自分たちが縦パスを狙いに行く間もなく鍬先が全て縦パスに入ってくれて、スライドの多さとか守備に対しての運動量やメンタリティが高いし、質の高い攻撃もできるっていう万能ボランチです(笑)。基礎基本もできるし、展開力もある天才MFです!
――自分自身のプレーの印象はいかがですか
鍬先 自分の中ではもっとやらなきゃいけないなと強く思っています。この間は累積で出れなくて、イエローカードが多いのは課題ですね。
杉山 何試合で何枚もらった?(笑)。
鍬先 7試合で4枚(笑)。
鍬先 ファウルが多いっていうのも現状としてあるので、まずはファウルをしないで止めきるっているのを目指したいです。あと攻撃でも存在感を出せたらなと思います。
杉山 自分自身では強みがビルドアップかなと思うんですけど、なかなか今季後ろからつないできれいなかたちで前に運ぶっていう場面を作れていなくてもっとチャレンジしていかなきゃいけないと思います。自分は強みがヘディングだと思っていたんですけど、駒大戦では相手FWに競り負けまくって自分がほぼ2失点に絡んで、悔しい思いをしました。ヘディングっていう強みとして持っているものをもっと絶対的な強みにして、誰にも負けない武器にしていかないといけないなと思ってます。
――座右の銘の説明をお願いします
鍬先 『意志あるところに道は開ける』です。読んだ通りです(笑)。
杉山 『凡事徹底』って書きました。自分は華があるプレイヤーじゃないので、自分ができることをいつも出し切るというか、当たり前にできるプレーをたくさん、しっかりやりたいと思ってこれにしました。自分のポジション的にも大切なので掲げた部分もあります。たぶんクワは自分の言葉の意味分かってないですよ(笑)。
鍬先 いや、分かってますよ(笑)。高校(東福岡高)の時の怖い総監督の言葉で、その通りだなって思ってます(笑)。
――一推しの選手について教えてください
杉山 自分は梁くん(FW梁賢柱、スポ2=東京朝鮮高)を取り上げました。理由は髪型って書いたんですけど、髪型が特徴でそこがまず一推し。梁くんはここ最近途中出場で出る機会が多くて、かつ結果も残していて早慶戦では必ずキープレイヤーになるのかなと思っているので彼のドリブルと強烈なシュートで試合を決めてくれるんじゃないかと思ってイチオシの選手として出させていただきました。
――鍬先選手は相馬選手(MF相馬勇紀、スポ4=三菱養和SCユース)を挙げていましたが
鍬先 相馬くんは突破力がすごいので、早慶戦でも相手をぶち抜いてくれるんじゃないかと。プロ(内定)ですし、そういう意味でも相馬くんを書きました。
――岡田主将の印象はいかがですか
杉山 ゼウスですね(笑)。全知全能ですね。岡ちゃんは去年まではチームのためとか考えてなかったと思うんですけど、今年に入って、主将になってから監督変わったりだとか2年生の出来が悪かったりだとか、いろんなことに取り組んでいる中で全部のことをうまくやってくれていて率直にすごいなと。ピッチ内で言えば背中で引っ張るじゃないですけど、勝負どころで決めてくれるし、途中出場したら絶対点を決めてくれる存在です。本当にかっこいいです。
鍬先 みんなのことを見ていないようで見ていて、常に向上心があるように思います。サッカーも含めて自分の知らないことは気が済むまで調べるところとか自分にないところなので尊敬しています。あとプレーはやっぱすごいですね。本当すごいんですよね(笑)。全部のレベルが高くてサッカーIQとかすごいと思います。よくアドバイスをくれるんですけど、それも的確ですごいしか言えないです(笑)。
杉山 一つのプレーを取ってもピッチ外の時みたいに探求しつづけて理論づけて考えていますね。
――ア式の良いところを教えてください
杉山 やって良いこととやっちゃダメなとこの区別がしっかりしていて、ふざけたり明るいところもあるけど締めるところは締めるメリハリがしっかりしているところですかね。
鍬先 人間性とか、私生活も重んじていて、自分は他の大学と違う部分があると思っていて、サッカーだけじゃなくて一人の人間として成熟した人間が集まっている組織で、自分はア式蹴球部という組織に誇りを持ってます。
――監督が変わって広報に力を入れてますが、チームにとってプラスに働いていると思いますか
杉山 今のところは全部プラスに働いているのかなと思います。注目度を高めるっていう部分では全然違うなと思います。取り組んでいること自体が多いし、その取り組み大きなもので、大学サッカー全体の注目度を高めるという点ではワセダが大学サッカーを引っ張っているという部分で本当に優れた部分かなと思います。
――学生主体になってプレーでも変わった部分はありますか
鍬先 前よりは試合中とか上手くいかない時にお互いが理解するまで話し合ってコミュニケーションは増えたかなと思います。
「できることを100%やって貢献する」(杉山)
杉山は昨年の早慶戦でベンチ入りも出場はなかった。今季こそ出場なるか
――アンケート書いていただいた早慶戦に対する思いについて教えてください
鍬先 憧れの舞台って書きましたよね。自分は去年チケットもぎりをやってたんですけど、早慶戦は観客もすごい入っていて、盛り上がりがすごいというイメージなので、来年は絶対立ちたいなという気持ちになりました。憧れの舞台です。
杉山 僕は祭りって書きました(笑)。祭りっていうのは、(今まで)2万人近く入る会場で試合をする機会がなくて、クワみたいに全国大会の決勝とかで出てればもっと人数がいるんだろうけど、自分はクラブユースでずっとやってきてそういう舞台に立ったことがないんです。去年ベンチで見ていたんですけど、出たいなと思いましたし、盛り上がりが半端ないと思ったので、自分も出たいし、憧れの舞台というか早慶戦という一種の祭りなのかなと思います。
――早慶戦で出たらどんなプレーがしたいですか
杉山 どこで出るかわからないですけど、与えられた役割を全うしたいです。勝ったら7連覇なので、自分が出てこの記録が途切れないように絶対勝ちたいなと思います。
鍬先 勝利に貢献したいです。
――7連覇はプレッシャーになったりはしていないですか
鍬先 今のところはそこまで感じていないですね。
杉山 でも昨年は結構重圧感じてたよね。もっとピリピリしていたというか。1週間前ぐらいから毎日紅白戦とかしてたよね。でもやっぱり勝ちたいです。
鍬先 今年はあんまりピリピリはしないよね。
――最後に意気込みをお願いします
鍬先 まずはケガしないで、早慶戦に出させていただいたら、7連覇がかかっているので、自分の役割を全うしてチームの勝利に貢献したいです。
杉山 どういう立場で早慶戦に関われるかわからないんですけど、自分ができることを100パーセントでやってア式の7連覇に貢献したいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 大山遼佳、下長根沙羅、写真 萩原大勝)
◆鍬先祐弥(くわさき・ゆうや)(※写真左)
1998年(平10)5月15日生まれ。175センチ、72キロ。東福岡高出身。スポーツ科学部2年。MF。今季はリーグ戦第2節から不動のスタメンとしてチームの勝利に貢献している鍬先選手。早慶戦でも体を張った粘り強い守備でワセダを7連覇に導いてくれるでしょう!
◆杉山耕二(すぎやま・こうじ)(※写真右)
1998年(平10)4月19日生まれ。180センチ、73キロ。東京・中大杉並高出身。前所属・三菱養和SCユース。スポーツ科学部2年。鍬先選手が太鼓判を押すほどおしゃれだという杉山選手。オフの日は洋服屋さんをよく見に行ってリフレッシュするそうです。一つ一つの質問に丁寧に答えてくださったその姿からは、誠実な人柄が伝わってきました!