前期5連勝締め!強度で勝り難敵を下す

ア式蹴球男子

 関東大学リーグ戦の前期最終節が行われ、早大は東洋大と対戦した。序盤から優位に試合を進めると、16分にMF藤沢和也(商3=東京・早実)の得点で先制。さらに後半にもMF相馬勇紀(スポ4=三菱養和SCユース)が追加点を奪いリードを広げた。終了間際に1点こそ返されたが逃げ切り、下位につけながらも連勝でこの試合を迎えた相手を下し、前期を勝利でしめくくることに成功。9勝1分1敗の首位で、2位と大きな差をつけてリーグ戦を折り返した。

 早大はFW武田太一(スポ3=ガンバ大阪ユース)が1トップに復帰。この日も4-1-4-1の布陣を採用した。前半に風上をとり、「自分たちから仕掛けに行って圧力をかけていこう」(外池大亮監督、平9社卒=東京・早実)と積極的な姿勢で試合に入った早大は、徐々に主導権をつかんでいく。5分にセットプレーからDF大桃海斗(スポ3=新潟・帝京長岡)が頭で合わせてゴールに迫ると、続く8分にはDF工藤泰平(スポ2=神奈川・日大藤沢)の対角のフィードを起点とし、相馬の折り返しに武田が飛び込むが決められない。その後も前線の選手の鋭いチェイシングなどで流れを引き寄せると、やはり先手を取ったのは早大だった。16分、最終ラインの大桃がMF金田拓海(社3=ヴィッセル神戸U18)に縦パスを通し、さらにエリア内へ侵入したDF牧野潤(スポ3=JFAアカデミー福島)にスルーパス。相手の最終ラインを崩して折り返すと、中央で待っていた藤沢が難なく決めた。リードを奪った早大は、やや引いて構え、カウンター狙いの戦いにシフト。しかし、FW坂元達裕(4年)の突破に依存気味だった東洋大も徐々に攻めの形をつくり始める。終了間際にはMF野本幸太(2年)の決定的なシュートをGK小島亨介(スポ4=名古屋グランパスU18)がビッグセーブでしのぎ、なんとかリードを保って前半を終えた。

先制点を決め、アシストの牧野と喜ぶ藤沢

 キックオフの流れから武田がシュートを放つなど、ハーフタイムを境に再びギアを入れ直した早大。暑さの中でも運動量を上げ、前半の守勢ムードを振り払った。後半の早大は攻め込む時間帯が多かったが、ラストパスの精度が伴わず、なかなかシュートを放つことができない。それでも、強度の高い守備に加え、FW松崎快(3年)のボックス手前からのシュートを再び小島がセーブするなど、個々の奮闘で東洋大に得点を許さないまま試合を進めた。すると、79分に岡田のスルーパスに相馬が抜け出して相手GKとの1対1を制し、得意のカウンターからの待望の得点で突き放した。その後は負傷から復帰したDF冨田康平(スポ4=埼玉・市浦和)、アンカーとしてFW直江健太郎(商4=東京・早実)を投入するなど、試合を締めようとしたが、終了間際に失点。右サイドからグラウンダーのボールを入れられると、ゴール前を横切って最後は坂元に詰められ、今季3度目の無失点試合は、その目前でついえた。それでも2-1で試合を終え、連勝を5に伸ばして前期を終えた。

相馬の得点は結果として決勝点となった

 「攻めに出て、それをやり切れなかったことが原因。勝っているからこそ、やり切ることが大事になる」。試合後、岡田はチームメイトに向け、決して悪い試合ではなかったことを前置きし、最後の失点を感情的に捉えないよう訴えた。戦う姿勢を前面に出して、また1つ、堅実に勝利を積み重ねた外池ワセダ。順位表を見ればその強さは圧倒的に見えるが、『新しい挑戦』の初戦で、下位に沈む相手に「これまでとは違う展開」(岡田)に持ち込まれたことや、最後に1失点を喫したことは、謙虚な姿勢を貫く上での助けとなるだろう。そして、一発勝負の早慶戦や、追われる立場としてのトーナメント戦の戦いに向け、指標となる試合になったのではないだろうか。前期リーグ戦の戦績では、早大優位の立場で迎える来週の早慶戦。常に挑戦者として、勝ちながら課題を修正し、成長につなげてきた今季の姿勢を変わらず体現すれば、おのずと7連覇は見えてくる。

スターティングイレブン

 

(記事 守屋郁宏、写真 大山遼佳)


JR東日本カップ2018 第92回関東大学リーグ戦 第11節
早大 1-0
1-1
東洋大
【得点】
(早大)16’藤沢 和也、79’相馬 勇紀
(東洋大)90+4’坂元 達裕
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ◎1 小島 亨介 スポ4 名古屋グランパスU18
DF 12 小笠原 学 社4 青森山田
DF 23 工藤 泰平 スポ2 神奈川・日大藤沢
DF 大桃 海斗 スポ3 新潟・帝京長岡
DF 20 牧野 潤 スポ3 JFAアカデミー福島
→78分 冨田 康平 スポ4 埼玉・市浦和
MF 鍬先 祐弥 スポ2 東福岡
→82分 15 直江 健太郎 商4 東京・早実
MF 14 藤沢 和也 商3 東京・早実
MF 金田 拓海 社3 ヴィッセル神戸U18
→59分 29 岡田 優希 スポ4 川崎フロンターレU18
MF 栗島 健太 社3 千葉・流通経大柏
MF 11 相馬 勇紀 スポ4 三菱養和SCユース
FW 武田 太一 スポ3 ガンバ大阪ユース
◎=ゲームキャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
早大 28 11 26 13 +13
法大 20 11 18 15 +3
専大 19 11 13 17 -4
明大 18 11 20 12 +8
順大 16 11 21 13 +8
駒大 16 11 23 20 +3
流通経大 16 11 18 22 -4
筑波大 15 11 18 16 +2
桐蔭横浜大 13 11 16 18 -2
10 東洋大 12 11 13 18 -5
11 東京国際大 10 11 12 21 -9
12 国士舘大 11 10 23 -13
※前期(第11節)終了時点
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コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――今日の選手たちのプレーにはかなり気持ちが入っていたように感じました。この試合に向けどんなアプローチをしたのですか

テーマは『新しい挑戦』ということでした。7月に入って、前期の最終戦と早慶戦とアミノバイタルというレギュレーションの違う試合が入ってくるという中で、いよいよ追われる立場として、その立ち位置にどう挑戦していくかというのが『新しい挑戦』です。それは背負うとか責任とか負けられないとかいうことではなくて、そういう挑戦ができていること自体が成長だから、今日はそれを楽しもうと。新しい俺らの挑戦をしに7月をやりきるという姿勢がある中で、(今日が)その始めなんだと、そういう意味での気合や気概はみんなに伝えたし、そこが響いたのかなと思います。

――試合を振り返っていただけますか

何よりこの気候(暑さ)ということで、非常に厳しい試合になるだろうなとは思っていました。東洋さんは技術も高いし、特にショートパスをつなぐとか、スペースへ流れるとか、個々の意思疎通が非常にできていて、10番の子(FW坂元達裕、4年)が結果も残しているし、そこが攻撃のポイントであるということでした。でも絶対に受けることなく、自分たちから仕掛けに行って圧力をかけていこうということで、その中で風上を取れました。なんとか前半にゲームを動かそうという話をしていた中で、数少ないチャンスでしたけど、それを生かすことができました。ただ、今日のゲームプランとしては、点をとったら引き込んでカウンターという方が(早大の良さが)生きるかなと思っていたんですけど、向こうがリトリートに慣れてきて、終盤の方は相手のチャンスもあったりしたので、後半はもう一回前から行こうみたいな話をしました。(ハーフタイムで)今日は特にメンバーも変えずに、もう一回前から圧力をかけようと、岡田(FW岡田優希主将、スポ4=川崎フロンターレU18)を入れても同じく戦い方を変えずにやろうという中で、リズムが少しずつ取れてきて、後半の方がイメージ通りの試合というか、自分たちの良さが出たと思います。

――前期リーグを勝利で締めくくり、9勝1分1敗で終えることになりました

すごいですよね(笑)。本当に1試合1試合を積み重ねてきて、今日は岡田が入ったことで、またひとつ真ん中に前半にはなかったポイントができたりしましたし、直江(FW直江健太郎、商4=東京・早実)のように、前節はFWで頑張ったやつがアンカーで球を捌いてるみたいな、不思議な光景もあったと思います。でもみんな自分を変化させるということをいとわずに、攻めというか、自分を変えることを苦にしない。僕からすると一番『学生らしい』というか、学生の良さを存分に彼らが理解、チャレンジをしてくれて、半年前とは違う姿になったということが何よりも僕はうれしいです。それがチームとして、部として目指してきたところですし、今日を皮切りに7月シリーズでさらに変わっていこうということだったので、非常に良い7月の始まりを、7月1日を迎えられたと思いますね。

――来週は早慶戦です。22年ぶり、監督としては初めて臨むことになりますが、いかがですか

どういう感覚になるのか、本当にわからないです。僕も大学サッカーで初めて出たのが早慶戦で、ゼッケンをマジックで書いた28番のユニフォームを着て後半から出たんですけど、やっぱり早慶戦は、早実(という立場)から見ていた人間からすると特別な舞台です。今日もここは(湘南)ベルマーレのホームで、僕にとっては引退したところでしたし、感慨深いのもあるけど、選手がうらやましいなと思う部分が結構ありました。そう思えるような姿にみんながなってきたし、本当にすごい力を持っていると思います。日本をリードしていけるだけの姿になるという上でも、早慶戦というのは本当に多くの学生が関わってやっているので、勝ち負けもあるし、勝ちたいですけど、まずは成功というか、やり切るということが大目標です。その中でしっかり自分たちのサッカーをして、自分たちが思いを込めて呼んで来てもらったお客さんたちに対して、大学サッカーの素晴らしさとかを伝えることができるように、いい状態で向かっていきたいと思います。

FW岡田優希主将(スポ4=川崎フロンターレU18)

――前期を勝ちで締めくくることができました。率直にいかがですか

今日は本当に苦しい試合展開で、ここまでの10試合とは違う展開の中で、勝ち切れたということはすごく良かったと思います。

――どういった点に違いがありましたか

ひとつは環境、暑さということですね。あとは攻めながらも攻め切れない場面が多くて、逆に相手のショートカウンターを食らうという展開はなかなかなかったので、その中で勝ちきれたということが良かったと思います。

――試合の流れを振り返っていただくとどうですか

前半にああいうかたちで1点を取れたということはまず大きかったと思います。ただ前半の最後の方はずっと受けに回って、ピンチになるシーンも多かったので、そこのゲーム運びは、後半もそうですけど、1本を終わらせ切るというところはこれからよりトーナメントの中で求められていくところだと思うんで、そこには課題が残ったと思います。ただ要所要所で点を取るところとか、攻めに行くところ、ボールを奪いに行くところの強度があったからこそこういう結果になったと思います。

――早慶戦までのこの1週間はどのように過ごしますか

選手がやることは特に大きく変わりないですし、これまで1試合1試合やってきたようにしっかり相手を分析して、自分たちもそれに応じた戦い方をするということです。ただ間違いなく違うのは、規模の大きさとか、関わる人数の違いというのはあるので、選手もそうですし、ピッチ外の運営に関わっている人たちも、そういった人たちの思いを背負って、早慶部員両方で早慶戦という舞台をつくりあげるんだという、カウントダウンも動いていますけど、そういった気持ちで動いていきたいと思いますね。

――簡単に早慶戦へ意気込みを

今年のチームを立ち上げた時に、『日本をリードする存在になる』というのを掲げた理由の一つに、この早慶戦というのがあって、大学スポーツ界にとっても日本スポーツ界にとっても大きな可能性を秘めていて、価値があるものと思っています。そこに前期優勝の王者として立ち向かえることとか、自分がキャプテンとして向かえること、みんなが自信を持って取り組めること、プレッシャーを感じつつもそれを楽しんで、自分たちにとっても、見に来てくださる観客の皆さんにとっても、勝ちとか負けとか通り越した良いものを、つくり上げられたらと思います。

DF工藤泰平(スポ2=神奈川・日大藤沢)

――今日の試合を振り返っていかがでしたか

キツかったです(笑)。ずっと勝ってきていて、前期最終節ということでアミノバイタルだったり早慶戦が控えていたのでチームとしては何としてでも勝とうという意識がありました。相手も首位のワセダを倒そうと来ていて、前半では受け身になっている場面もありました。もうちょっとアグレッシブに前からいかなければいけないと思いました。最後の失点も、あれこそ受け身に入ってしまったと思います。逃げ切ろうという気持ちが全員にあったと思うのですが、それが裏目に出てあの時間に失点してしまいました。『前にいる武田(FW武田太一、スポ3=ガンバ大阪ユース)にボールを集めてゲームを終わらせる』というプレーが曖昧になっていたので、もっと戦い方をはっきりして(いればよかった)、交代した選手も含めて最後の戦い方はもうちょっと改善が必要だと感じました。

――逆サイドへの展開が多く見られました

あれは狙っていて、相馬くん(MF相馬勇紀、スポ4=三菱養和SCユース)をターゲットにしていました。最初は相手が前からきてボールを出すところがなくて詰まっていたのですが、逆サイドにスペースがあったので裏へ蹴り込みました。フィードが得意というわけではないのですが、ああいうボールを入れることで中盤の選手が空いて全体的にプレーがしやすくなります。試合の序盤は特に、中盤へ危ないパスを出すよりもダイナミックにつないだ方がリスクが少ないので逆サイドへの展開は多かったです。相馬くんがうちのストロングポイントなので、そこを生かせるようにすることは試合前から考えていました。

――前期リーグでの自身の成長について教えてください

法政戦から数えて5試合目で慣れてきたのですが、ちょっとしたミスだったり防げるものも出てきているのが現実です。コーチングは試合に臨むにあたって気持ちを高ぶらせてくれます。一緒に組んでいる桃くん(DF大桃海斗、スポ3=新潟・帝京長岡)もやりやすいので、自分は伸び伸びとプレーさせてもらっています。その中でコーチングは自然に出てきてます。先輩たちがやりやすい環境にしてくれています。

――前期リーグ全体を振り返っていかがでしたか

前期の最初の頃は全然試合に絡めず、自分がある立場を考えてやっているつもりだったんですけど、試合に出れませんでした。常に自分にベクトルが向いていたのですが、たまたま杉山(DF杉山耕二、スポ2=三菱養和SCユース)がケガをして自分にチャンスが回ってきました。その時にチームのために、誰かのために、という気持ちが芽生えました。(今日は)杉山が復活してベンチに入っていましたが、良きライバルだと自分は思っています。同期にも年下にもいい選手がいるし、桃くんもまだ3年生で、後ろにはいい選手がいっぱいいるので、チャンスが自分に回ってきて本当にラッキーでした。この状況で自分が出せるものを出していかないとあと2年間出れなくなってしまいます。2年生のこのタイミングで試合に出させていただいたことは本当に大きくて、これからにもつながると思います。『1位だから』という慢心がないのは外池さんがしっかり締めてくれているからだと思っています。4年生を中心に謙虚にやろうとしています。相馬くんや、岡田さんが点を取ってくれて試合に勝っているので、いい意味で謙虚にプレーし続けることができています。いざ負けた時とかにどういう心持ちでできるかがこれから夏に向けて大事になってくると思います。負けるつもりはないですが、苦しい状況になった時にどれだけ謙虚にプレーできるかです。

――早慶戦に向けて意気込みをお願いします

昨年はずっと準備をしていました。学生が主体の大きな舞台で、昨年の自分は夢にも思っていなかったようなチャンスがあり、この1週間は今まで以上にいい準備をするとかではなくて、積み上げてきたものがあるので、それを信じて、仲間を信じてワセダの勝利のために自分にできることを精一杯したいです。