救世主岡田!劇的弾で引き分けに持ち込む

ア式蹴球男子

 関東大学リーグ戦(リーグ戦)は第17節を迎え、中2日という厳しい日程の中、前回1-0と僅差で勝利を収めた拓大と対戦した。勝ち点3を目指し主導権を握りたいエンジイレブンであったが、前半開始早々に最終ラインでのパスミスをきっかけにいきなり失点を許す。13分にFW石川大貴(スポ4=名古屋グランパスU-18)のヘディングシュートで追い付いたものの35分にも失点し、リードされて前半を終える。65分にもゴールを奪われ窮地に立たされるが途中出場のFW岡田優希(スポ3=川崎フロンターレU-18)が83分、90+3分にゴールを決め、3-3で試合終了。土壇場で何とか引き分けに持ち込んだ。

 試合はキックオフ直後から動く。DF鈴木準弥主将(スポ4=清水エスパルスユース)のパスがカットされるとそのまま左サイドを崩され、こぼれ球を確実に相手FWに決められた。「完全に自分のミス。あれくらいのプレッシャーはいなさないといけない」と鈴木準。いきなり劣勢での試合運びを強いられる。さらに11分にはFKを与えヘディングシュートを打たれるも、GK笠原駿之介(法2=埼玉・早大本庄)が冷静に処理しピンチを脱した。するとなかなか波に乗ることができない早大に好機が訪れる。ボールを持ったMF鈴木裕也副将(スポ4=埼玉・武南)が右サイドを駆け上がると左へ大きく展開。小刻みにパスをつなぎ最後はMF相馬勇紀(スポ3=三菱養和SCユース)が右足でクロスを供給する。これを石川が頭で完璧に合わせ、試合を振り出しに戻した。このゴールでリズムをつかむと24分、相馬のロブパスをうまくトラップしたFW武颯(スポ4=横浜F・マリノスユース)が相手GKをかわしてシュートを放つ。ボールは無人のゴールへと向っていったが、ギリギリのところで相手DFにかき出され惜しくも得点とはならない。攻撃の時間が続いていたが35分に再び失点を許してしまう。右サイドから崩され低いクロスを上げられると、おとり役にDF陣が引きつけられフリーでシュートを打たせてしまった。その後はいいかたちをつくれず前半を1-2で折り返す。

右サイドで攻撃の起点となった鈴木裕

 これ以上の失点は避けたい早大であったが、後半もいきなり立て続けに2本のシュートを許す。52分にはカウンターからパスをつながれシュートを打たれるものの、笠原がファインセーブをみせた。しかし66分、相手MFに個人技でゴール前まで攻め込まれシュートを許す。一度は笠原が弾いたが、こぼれ球を詰められた。まさかの3失点目を喫し誰もが敗戦を覚悟した。しかし、途中出場の岡田がこの苦しい状況からチームを救う。MF秋山陽介(スポ4=千葉・流通経大柏)のスルーパスを受け、ゴール右に冷静に蹴り込み1点差とした。そしてアディショナルタイムにCKをもぎ取ると、セカンドボールを拾った秋山からのパスを受けた岡田が相手DFをかわし思い切りクロスを上げる。右足から放たれたボールは弾丸ライナーでそのままゴールネットへと突き刺さった。これが起死回生の同点弾となり、3-3で勝ち点1を獲得した。

岡田の2発がチームを救った

 「自分たちの守備の緩さが目立った」(鈴木準)、「試合の戦い方、考え方が甘い」(岡田)と選手たちが語ったように、優勝を目指す早大にとって決して満足できる内容ではなかった。自分たちのプレーができない時間も続いたはずである。しかしきょうの3点目はセカンドボールを拾うという早大が意識してきたことから生まれたゴールであり、最後の最後で自分たちのかたちをつくることができた。3位の中大が勝ったため、勝ち点の差はわずかに1。優勝どころか1部昇格も危ぶまれる現状で厳しい戦いが続く。自分たちが積み上げてきたことを信じ、早大らしいサッカーを繰り広げてほしい。

スターティングイレブン

 

(記事=永池隼人 写真=栗村智弘)

 

 

関東大学リーグ戦
早大 1-2
2-1
拓大
【早大得点者】13石川/83,90+3岡田
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 笠原駿之介 法2 埼玉・早大本庄
RB 安田壱成 スポ4 ベガルタ仙台ユース
CB ◎鈴木準弥 スポ4 清水エスパルスユース
CB 20 杉山耕二 スポ1 三菱養和SCユース
LB 17 冨田康平 スポ3 埼玉・市浦和
CMF 32 栗島健太 社2 千葉・流通経大柏
CMF 10 秋山陽介 スポ4 千葉・流通経大柏
RMF 14 鈴木裕也 スポ4 埼玉・武南
LMF 相馬勇紀 スポ3 三菱養和SCユース
CF 石川大貴 スポ4 名古屋グランパスU-18
FW →74分 武田太一 スポ2 ガンバ大阪ユース
CF 15 武颯 スポ4 横浜F・マリノスユース
FW →65分 岡田優希 スポ3 川崎フロンターレU−18
◎=キャプテン
監督:古賀聡(平4教卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦2部リーグ順位表
順位 校名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
国士舘大 42 17 13 38 15 +23
早大 34 17 10 49 23 +26
中大 33 17 10 37 28 +9
拓大 25 17 29 18 +11
東農大 24 17 25 21 +4
青学大 22 17 32 33 −1
東京学芸大 21 17 26 25 +1
神奈川大 19 17 29 32 −3
立正大 18 17 21 36 -15
10 東海大 17 17 20 35 -15
11 日大 15 17 15 25 -10
12 朝鮮大学校 17 13 14 43 -29
※第17節終了時点 ※上位2チームが自動昇格
コメント

古賀聡監督(平4教卒=東京・早実)

――きょうの試合はいかがでしたか

完全な負け試合であり、自滅だったと思います。

――内容に関してはいかがですか

ピッチの状況も含めて、スペースをもっとうまく使って勝負するべきだったと思います。ですが、それをやり切れなかったところで、いくつかミスが出てしまいました。

――3失点は全て流れの中から奪われたものでした

率直に言ってことしの守備は未だ甘さが目立つ状態で、それはすぐに克服できることではないということは、チーム内でも認識できています。攻守の切り替えや球際競り合い、1対1の粘り、コーチングで声を張り上げ伝え合うといった基本的な部分を徹底して、体を張って守らないと、やはり0に抑えることはできません。そのことは、前節の前に共有したことではありますけど、きょうも中盤での球際の勝負や、1対1において簡単に相手にボールを持っていかれてしまいました。これからも守備の意識をチーム全体で高め続けていかないと、点は取れても勝負には勝てないと思います。得点に関しても、最後の最後に岡田(FW優希、スポ3=川崎フロンターレU-18)が個の力を見せてくれましたけど、他に取れるチャンスが少なからずあった中で、決め切れる個の力はありませんでした。

――その岡田選手はここ2試合で4得点です

岡田は本当に調子がいいというか、このチャンスを絶対ものにするという気持ちが、トレーニングからも出ています。試合に対しての準備も、ものすごく高い集中力でできていますし、ここから中心になってやってくれるだろうという期待をしています。

――3位の中大との勝ち点差を1に縮められてしまいました。ここからが昇格に向けた正念場といえると思いますが、選手たちにはどういった取り組みを期待しますか

どのシーズンでもいえることとして、それは昨年の残留争いにしても、一昨年の優勝争いにしてもそうですけど、最後の5試合に含まれる直接対決に勝てるかどうかが、シーズンの結果を左右します。プレッシャーがかかるのは当たり前で、その中で4年生が力を出し切れるかどうかが特に重要ですし、それは常に伝え続けてきたことでもあります。きょうの試合に関しては、MF鈴木裕也(スポ4=埼玉・武南)は何度も自分で仕掛けて突破して、絶対に勝つんだという気持ちを見せてくれていましたけど、主軸の4年生が闘い切れなかった、出し尽くせなかったという印象で、そこはさらに厳しく要求していきたいです。逆にきょうは、武田(FW太一、スポ2=ガンバ大阪ユース)、杉山(DF耕二、スポ1=三菱養和SCユース)、栗島(MF健太、社2=千葉・流通経大柏)といった下級生が上級生の穴を埋める頑張りを見せてくれました。しかし、本当にそれで勝てるのかということを最上級生である4年生には、チームの勝利のためにも、彼らの成長のためにも、突き付けなければいけないと思っています。

 

DF鈴木準弥主将(スポ4=清水エスパルスユース)

――きょうの試合全体を振り返ってください

自分たちの守備の緩さが目立った試合だったと思います。3失点とも相手に完全に崩されたとかではなくて、自分たちの一対一の守備の緩さからシュートを打たれて、こぼれ球を詰められたりしたものだったので、セカンドボールのところなど、自分たちが今まで大事にしていたところが緩んでしまったことで、失点してしまったと思います。

――試合開始直後にいきなり先制点を与えてしまいました

あの場面は完全に僕のミスですし、その後の対応も自分の軽さが出てしまいました。入りの時間帯で相手が前に来ていた中で、あれくらいのプレッシャーはいなさなければいけませんでした。

――1点ビハインドで試合を折り返すにあたりどのような修正をして後半に入ろうとしましたか

古賀聡監督(平4教卒=東京・早実)から根本的な守備のところはもちろんですが、「ことしのチームの強みである攻撃力に自信をもってやっていかなければいけない。自分たちが掲げてる1部昇格、2部優勝を果たすためにはこのくらいの点差をひっくり返せないようでは、もともとそんな目標掲げない方がいいし、今からでも諦めた方がいい」という話をされて、もう一度自分たちの強みは何なのかを見つめ直し、それを出していこうということをチームで共有しました。

――しかし後半に入ってもなかなか攻撃がかみ合いませんでした

自分たちのミスが多かったのもありますけど、相手にセカンドボールを拾われ過ぎました。セカンドボールを前向きに拾われ、相手が出て来る勢いにのまれてしまったと思います。

――劣勢の中、終了間際の得点で何とか勝ち点1を積み上げることができました

この勝ち点1は本当に大きいものだと思います。もちろん勝ち点3を目指してはいますが、これから上位対決が続くので本当に大事な勝ち点1が取れたとは思います。しかし、間違いなくこの試合は勝てましたし、そこを考えると勝ち点「2」を落としたとも取れる結果なので、きょう出た課題をしっかり修正していきたいです。

――今後への意気込みをお願いします

当然全部勝つ気持ちでいきますし、自分たちの手で上位チームを倒し勝ち点3をもぎ取る意識でやっていきます。

FW岡田優希(スポ3=川崎フロンターレU-18)

――きょうの試合を振り返って

開始直後の失点はいらないですし、追い付いた後も隙を見せてしまったので優勝できないんじゃないかと思いましたし、せいぜい2部に上がる力しかないというのを示してしまった試合だと思います。

――開始直後の失点はベンチからどのようにみえましたか

ピッチが悪いグラウンドの中で、最初からつなぎでミスが出てしまって。単純に技術もそうですけど、試合の戦い方、考え方が甘いのかなと。勝負に徹するという気持ちで、色々な場面に対応していかなければならないと思います。

――中2日での試合でしたが、チームのコンディションはいかがでしたか

コンディション的には落ちていなかったと思います。前日練習も激しくなかったので。前泊もさせていただいたので、自分としては、体力面ではストレスなく試合に入れました。

――1点目を振り返って

陽さん(MF秋山陽介、スポ4=千葉・流通経大柏)からあのようなパスが来ることはわかっていました。ゴールに向かっていくシーンは小学校から身につけてきたことが出たと思います。

――2点目は劇的な同点ゴールでした

あのシーンはクロスを狙っていて、中に強いボールを入れようと思っていたので自分でもびっくりしました。狙うとキーパーにばれると思っていたので、クロスを思い切りあげたのが良かったと思います。

――後半劣勢の中でも点を取りにいく姿勢がみられました。チームの雰囲気はいかがでしたか

気持ちがバラバラになりかけた時もありましたけど、点を取ることによってつながったので良かったです。失点のピンチがありながら守ってくれた守備陣には感謝したいですが、チームの強さを考えた時に、隙を見せてはだめだなと思いました。チームの状況や雰囲気もそうですけど、自分が出て点を決めれば勝てるんだなと再認識できたので、これからも自分の仕事をしっかりしたいと思います。

――ご自身の好調をどう捉えていますか

ワセダに入学してきてから色々あったんですけど、それがようやくクリアになって、自分がプレイヤーとして大きくなれたことが結果につながっているのかなと思います。自分の仕事に集中しきれていないこともありましたけど、できることとできないことをしっかり整理して、ゴール前でシュートを決めるという自分の一番の強みを発揮できるように、メンタルとフィジカルを持っていっているので、それが結果につながっていると思います。

――今後も負けられない試合が続きます。意気込みをお願いします

これから相手が強くなっていく中で、絶対勝たないといけないというこもありますけど、そんなに甘いものではないですし、プレッシャーがかかってくると思います。それを楽しみながらやるという前向きなエネルギーを持って、これからの試合に挑みたいと思います。