【連載】早慶サッカー直前特集『Challenge to the 1ST』第2回 小島亨介×笠原駿之介 

ア式蹴球男子

 日の丸を背負いU−20W杯を経験したGK小島亨介(スポ3=名古屋グランパスU−18)と中学時代からア式に憧れを抱き続けたGK笠原駿之介(法2=埼玉・早大本庄)。第2回では、今季エンジのゴールマウスに君臨する二人の守護神が早慶サッカーに向けた意気込みを語る。

 

※この取材は6月28日に行われたものです。

「一番大事なのは無失点に抑えること」(小島)

日本代表として世界を舞台に戦う小島

 

――まずは関東大学リーグ戦(リーグ戦)前期の振り返りから入りたいと思います。笠原選手にとって前期リーグはいかがでしたか

笠原 開幕して数試合は、自分たちがやってきたことを出し切れれば勝てる相手が続いたと思います。ただ特に負けた東農との試合がそうでしたけど、段々研究もされるようになってきて思うようにできない試合もありましたし、それでもやれなければいけないんですけど、そこで力を出せなかったというのがまだまだだなと思いました。

――リーグ戦で本格的に出場するのはことしが初めての経験となりましたが、それについてはいかがですか

笠原 準備はしてきたつもりですし、やってやろうという気持ちだけでしたね。結構味方に助けられた部分もあって、いいか悪いかで言うとやはり良くはなくて、特に中大戦とかは自分が止めていれば勝てた試合だと思います。ただ、いい試合がなかったわけでもないので、それはポジティブに捉えたいです。

――緊張はしましたか

笠原 そうですね。でも、試合に入ってしまえば平気でした。

――小島選手から見て前期の笠原選手のプレーはいかがでしたか

小島 頼もしかったですし、自分としてもすごく信頼して見ていられたというのがあります。カサと自分でここまで積み上げてきたものがあって、そういう中で成長しているのをすごく感じられましたし、カサの力が関東リーグでどれだけ通用するのかというのを楽しみに見ていました。

――どういったところに笠原選手の特徴があると思いますか

小島 基本的なところを大事にするというか、僕もそういうところを大事にしているというのがあるんですけど、単にボールをキャッチするだけのようなプレーでも精度は非常に高いですし、それプラス一対一が強みでもあると思うので、そういう強みをもっと伸ばしてあげたいという気持ちもあります。

――小島選手はけがや代表もあり前期リーグは終盤3試合のみの出場となりましたが、振り返っていかがですか

 

小島 自分が出た試合は1勝1分1敗で、あまり終盤のところで結果が出なかったですし、さっきカサも言ったように、序盤戦はオフシーズンで自分たちが積み上げてきたことをうまく出せましたし、いいイメージを持って戦えていたと思うんですけど、研究されたりしてちょっとうまくいかなかったときに、自分たちで試合の中で改善できなかったというのが一番大きな問題だと思います。その改善できなかった試合というのが、最後の3試合だったと思いますし、まだまだ自分たちが悪い雰囲気になったときに流れを変えるようなチームとしての戦術だったり、個としての力を高めていかないといけないと感じました。

――特にうまくいかなかったと感じた試合はありますか

小島 自分は出ていなかったんですけど、外から見ていて東農との試合が一番研究されているなと感じました。そういう中で自分たちがどう改善していけるかが大事になってくると思いますし、そこの力がまだまだ足りないと思います。

――リーグ期間中にはU−20W杯も経験されました。全試合でゴールマウスを守りましたが、この大会を振り返っていかがですか

小島 単純に(自分が出場したリーグ戦3試合の)失点数が多いので、チームに帰ってきてからこの大会の経験をまだ生かすことができていないと、結果としてはそう映ると思うんですけど、自分の中では世界で経験したプレースピードだとか、そういう部分は大学リーグとのギャップもあって、逆に対応するのが難しい場面もありました。ただ、一番大事なのは無失点に抑えるということで、そこだけをもっと考える必要があったと思いますし、他のことを考えすぎていた部分もあったと思います。

――U−20W杯の中で小島選手にとって一番大きな経験になったと思うのはどういったことですか

小島 やっぱりシュートへの対応というのは、まちがいなく日本ではあまり経験できない場面が多かったと思っていて、海外の選手は狭いエリアでも振り切る力があって、その振りのスピードも速いのでW杯では、タイミングを外されてしまうことが多かったですね。そこは、これから向上していきたいことです。

――笠原選手にとって世界を経験した小島選手がチームメイトにいるというのはいかがですか

笠原 もちろん大きいです。いろんな経験を還元してくれますし、自分たちの成長のためにいろいろ考えてやってくれるので、本当にありがたいです。

――やはり色々話を聞いたりしますか

笠原 そうですね。単に海外と日本の違いと言っても、やはり局面によって違いはありますし、一つひとつの細かい技術にしても、それに対する捉え方とかが違っていて、そういったことを教えてもらっています。

――GKグラマネとしてGK陣をまとめる小島選手はどういった存在でしょうか

笠原 4年生にはGKがいなくて、やっぱりGKは一つのグループだと思うんですけど、それをまとめるだけ人間的な器の大きさとか、その辺りがすごいと思います。

――最終節の国士舘大戦は首位攻防戦ということもありかなり白熱した試合となりました。振り返っていかがですか

小島 スコアは1−2でしたけど、内容からすると90分通して相手に圧倒されていたと思います。どういったところで圧倒されていたかを考えたときに、やっぱり球際だったり、一対一の個の力は試合が始まったところから最後まで負けていたと思うので、一番自分たちが力を入れてきた部分で相手を下回る結果になってしまった、そこはチームとしてもう一回意識してやっていかなければと思います。

笠原 立ち上がりから相手にボール持たれて、ピンチも多かったので、あの段階で一回ひっくり返せるような、自分たちが攻め込む時間帯というのがあれば、もっと余裕はつくれたと思います。

「中3のときインカレ優勝を見て…」(笠原)

リーグ戦8試合に先発出場した笠原

 

――事前アンケートでは前期リーグのMVPについてお二人とも武颯選手(スポ4=横浜F・マリノスユース)を挙げられています。GKのお二人から見て武選手はどういったところに特徴があるFWだと思いますか。

小島 やっぱりシュートの上手さは練習の中でわかりますね。練習後のシュート練習でも颯君のシュートは結構受けるんですけど、結構やれているイメージが多いですし、それが試合につながっているなと感じます。

――具体的にどういったところにうまさがあると感じますか

小島 GKからすると嫌な位置や嫌な高さっていうのをすごく知っているなという印象があって、僕も練習の中で「GKはどの辺に蹴られると取りづらいのか」とか結構質問されたりしていますし、そういうシュートだけじゃなくて、GKとの駆け引きのところも含めて技術が高いと思います。

笠原 自分はそれに加えて、シュートに持ち込むのがうまいと感じていて、ドリブルで抜き切ってはいないんだけど、一回シュートコースを見てGKを動かしてから目の前のDFを剥がしてシュートという感じで、あとはアフターのトレーニングでもGKをしっかり見て流し込まれるというようなかたちも数多く決められてきたので、その辺りがうまいと思います。

――今季のチームの特徴はどういったところにあると思いますか

笠原 きょねんまでは縦に速いイメージがあったんですけど、ことしは後ろで組み立てて3人目、4人目の動き出しでチャンスを多くつくっているという印象があって、そうすると、止める蹴るっていう単純な技術も問われますし、そういうところを普段の練習から意識してみんなやっています。加えて、4年生が『自立』というのを掲げていて、試合に出ている出ていないというのは関係なく、出てないのであればチームに勝つために何をしなければいけないのかを考えるというのは、きょねん以上に意識している部分だと思います。

小島 今カサが言った通り、後ろで組み立てながら速さを出すというところがことしの特徴ですけど、戦術理解度というか、相手がどういうポジションを取っているかを見て自分も動くということだったりだとか、どういうボールを要求、あるいは配給するかだとか、チーム全体としてそこがまだ浸透していないと思います。そこをもっと上げていかないと日本一にはなれないと思うので、そこは自分も含めてもっと言っていかなければと思います。

――新しい戦い方に取り組む中でGKとして意識していることはありますか

小島 一つひとつのボールを大事にしていくというのもそうですけど、チャンスがあればGKからロングボールを入れて、高い位置で起点をつくるというのも大事なので、相手をしっかり見て状況判断ができれば、やることに関してはきょねんとそんなに変わらないと思います。

――チームのGK陣が大事にしていることはありますか

小島 キャッチングや弾くといった基本技術を一番重要視しています。それができなければ、試合の難しい局面で応用をきかせるというのも無理だと思いますし、自分としてはそこを一番意識しています。

笠原 あとはやっぱり点を取られなければ負けることはないので、最終局面で必ず守り切るということも意識していますね。

――笠原選手は今後伸ばしていきた部分にフィードをあげています

笠原 これまであまりやってこなかったというのもありますし、一本でチャンスになればそれに越したことはないなと感じるので、すぐにできるようにはならないと思いますけど、これからそこを意識していきたいと思っています。

――一方小島選手は守備範囲をあげています

小島 W杯を経験して、自分が止めて勝つという試合をつくれなかったと実感していますし、ああいった試合で難しいボールを止め切ることができればチームの勝利に貢献できるというのもあるので、守備範囲というのはDFの背後のカバーだったり、クロスに飛び出す範囲だったりになりますけど、あらゆることで守備範囲を上げていかないと、もっと上のステージで戦っていけないと感じました。

 

――DF鈴木準弥主将(スポ4=清水エスパルスユース)の印象として、小島選手は「声を出す」、笠原選手は「威厳がある」とそれぞれお答えいただきました

小島 ディフェンスラインはもちろんですけど、FWに対しても声を掛けているという印象です。ああいう声があるのは大きいですし…ほんとキャプテンの存在は大きいです(笑)。

笠原 自分はもともと怖いイメージがあって…(笑)。なんていうか、従わざるを得ないっていう感じもあって(笑)。でもそれは、それだけチームを引っ張るだけの統率力があるということだと思っています。

――ア式のここがいいと思う部分はどういったところですか

笠原 やっぱりメリハリの部分ですね。練習や試合に入ったらしっかりやる、そういうところでみんなサッカーが好きなんだなと感じますし、そういう環境があるのはありがたいなと思います。

――笠原選手は早大本庄出身ですが、やはり入部前からア式を見たりすることも多かったのでしょうか

笠原 そうですね。自分たちの場合は、高2のときにア式と練習試合をしたりということがあったんですけど、そこでア式のCチームに対して自分たちのAチームがボコボコにやられて(笑)。そのときは強さを肌で感じました。あとは自分が中3のときにア式がインカレで優勝したのをたまたまテレビで観ていて、そのことを高校の志望動機に書いたりもしたんですけど、それ以降は少なからず入りたいっていうのを意識していたと思います。

――法学部の勉強とア式との両立は大変なのではないですか

 

笠原 いや、(みんなと)同じくらいだと思います…。

小島 (笠原選手を見て)スポ科っす(笑)。

笠原 自分は単位も落としてしまっているので(笑)。

小島 だめじゃん。

笠原 テスト期間しかやらないので…(笑)。頑張ります(笑)。

――小島選手が思うア式のいいところはいかがですか

小島 ひたむきさとか成長したいとみんなが思っていて、そういう環境があると感じています。それは個人としても自分の力を高めたいというのをそうですけど、客観的な意見をみんなが言ってくれるので、自分を見直すことができて、そこがア式においてすごくいい部分だなと思います。

 

――大切にしている言葉についてもお答えいただきました。小島選手は『神は細部に宿る』です

小島 芸術家の人が残した言葉なんですけど、いい絵とかって細かいところが丁寧で、それがあるからいい作品と言えるわけで。サッカーに置き換えたときに、やっぱりサッカーもそういう細かいプレーが丁寧にできているというのが大事だと思いますし、GKで言えばキャッチングや弾く技術といった基本的なことをしっかりやっていくのが、いい選手になる条件だと思っています。あとは今A代表でGKコーチをされている方が前に自分の年代の代表コーチをやっていて、その人が常にこの言葉を言っていたので覚えているというのもありますね。

 

――笠原選手は『大胆不敵』をあげています

笠原 自分は特徴という特徴もないですし、なかなか大胆になれない部分があるので意識していこうという意味でそれをあげました。大雑把にやるとかではなくて、いい意味で大胆になれるようにしたいです。

「普段味わえない経験ができる試合」(小島)

早慶サッカーに向け意気込みを語る二人

 

――早慶サッカーについてお伺いしていきます。キーマンにはお二人ともMF秋山陽介選手(スポ4=千葉・流通経大柏)をあげていますが、理由はどういったところにありますか

小島 Jリーグ内定ですね(笑)。それを楽しみに見に来る人も多いと思うので。

笠原 なんて言うんだろう、ほんと普通にうまいです(笑)。予測とか判断とかもそうですし、パスにしろドリブルにしろ敵の動きが見えてるのがすごいなと思います。

小島 味方を生かすのがうまいです。周りのレベルが高いほど自分の良さも表現できるタイプの選手だと思います。実際名古屋の練習に参加したときもすごく良かったというのを聞きましたし、個人としての上手さももちろんですけど、グループにおける戦術理解度っていうのが高いなと感じますね。そこ周りの選手がどう関わっていけるかが大事になると思います。

――早慶サッカーに対する印象を教えてください

笠原 学生の試合とは思えないぐらいたくさんの方々が観に来てくれますし、それに答えるだけのプレーができなければいけないっていうのも魅力の一つかなと思います。きょねんは駐車場警備で試合が見れなくて、でも得点シーンだけはたまたま見ることができたんですけど、あのときの鳥肌というか、本当に忘れられない興奮があったので、それをピッチでできればという思いがあります。

小島 普段味わうことのできない経験ができる試合の一つだと思いますし、観客の人数としては僕が経験したW杯とかよりも多いと思うので、お世話になった方々も見に来てくださる中で、一緒に勝利を分かち合うことができればいいなと思います。あとはいい意味での緊張を楽しめればとも思いますね。

 

――6連覇が懸かった試合になりますが、それについてはいかがですか

小島 もちろん負けられないですね。ただ、あんまり6連覇とかは気にせずプレーしたいと思います。本当にその一試合に勝つということだけに集中したいです。

――最後に早慶サッカーに向けた意気込みをお願いします

笠原 入部したときから出たいと思ってきましたし、ピッチに立てればこの上なくうれしいですけど、立てないにしてもチームが勝つための働きができればと思います。

小島 自分が試合に出たら絶対に無失点で勝利に貢献します。それだけです。

――ありがとうございました!

 

 

 

(取材・編集=栗村智弘 写真=大山遼佳)

 

 

チームを救う好セーブに期待しましょう!

◆小島亨介(こじま・りょうすけ)(※写真右)

 

1997(平9)年1月30日生まれ。183センチ/80キロ。愛知・東海学園高出身。前所属・名古屋グランパスU−18。スポーツ科学部3年。憧れのサッカー選手にイタリア代表のブッフォンをあげた小島選手。さらなる向上を誓った『鉄壁』の守護神の活躍に期待がかかります!

◆笠原駿之介(かさはら・しゅんのすけ)(※写真左)

 

1997(平9)年8月15日生まれ。177センチ/68キロ。埼玉・早大本庄高出身。法学部2年。得意なプレーに一対一をあげた笠原選手。憧れ続けたア式のユニフォームを身にまとい、『大胆不敵』なセービングで会場を沸かせてくれること間違いなしです!