確かな成長見せ中京大撃破!劣勢耐え抜き3回戦進出

ア式蹴球男子

 総理大臣杯全日本大学トーナメント(総理大臣杯)1回戦を薄氷の勝利(仙台大戦○1-0)で突破した早大の2回戦の相手は中京大。前回出場した3年前にも同じ2回戦で顔を合わせ、日本一の夢を断たれた因縁の相手だ。試合は前半と後半でまったく違う展開となる。前半の立ち上がりと終了間際にゴールを奪い2点を先行した早大だったが、後半は終始劣勢。ミスから1点差に詰め寄られると、ボールを支配され続けたがセンターバックコンビを中心に跳ね返し続けた。決定的なチャンスを何度も作られたものの辛うじてリードを守り切り、3回戦に駒を進めた。

 ファーストシュートから試合は動いた。先手を取ったのは立ち上がりから積極的な攻めの姿勢を見せた早大。「入りから攻撃的に行こうということは話していた」(MF鈴木裕也、スポ3=埼玉・武南)。5分、相手のクリアミスによるこぼれ球をバイタルエリアで拾った鈴木裕がシュートを放つ。ドライブ回転のかかったボールはバーを叩いたが、そのままネットを揺らし、幸先良く先制に成功した。その後は両チームともにワンタッチを交えたボール回しを見せるものの、なかなかフィニッシュまで持ち込めないルーズな展開。それでも2日前の反省を生かした守備陣の奮闘もあり、徐々に早大が主導権を握る。41分にMF相馬勇紀(スポ2=三菱養和SCユース)のFKからファーのDF熊本雄太(スポ3=東福岡)がヘディングシュートを放つと、これは枠を外れるが、続くアディショナルタイムにも相手のクリアミスで得た右CKから決定機。相馬のニアへのボールに合わせたのはまたも熊本だった。今度は打点の高いヘディングシュートでしっかりと決め、追加点を記録。相手のミス絡みのチャンスをしっかりと生かした早大が、2点リードで前半を折り返した。

先制点を決めた鈴木裕

 ところが中京大ボールで始まった後半は流れが一変する。46分と47分に立て続けにシュートを浴びると、ミスも絡んで徐々にリズムを失っていく。ボールを奪ってもつなぐことができない苦しい展開の中で、60分にはバックパスを受けたGK後藤雅明(スポ4=東京・国学院久我山)が、寄せてきた相手選手にキックを当ててしまいゴールを献上する。失った流れを取り戻すことができず、その後も後手に回り続けてしまった早大だったが、FW飯泉涼矢(スポ3=三菱養和SCユース)の投入やMF今来俊介(商3=神奈川・桐光学園)のポジション変更などの采配が奏功。サイドから組み立てる中京大に対して、ゴール前を固めた早大は、あと一歩のところで踏ん張り続けて2点目を与えなかった。

中盤の守備で奮闘したMF須藤駿介(スポ3=静岡学園)

 1回戦と同様に難しい試合展開の中での勝利だったが、収穫は大きい。一発勝負のトーナメント戦において最も重要な勝利がついてきていること。そして、前半の試合運びから、中1日の過密日程の中でも課題の修正がされていることがうかがえた。前半の入りからアグレッシブな姿勢を見せ、守備では連動して前へのチャレンジを効果的に遂行。最終ラインは良い距離間を保ち続けて相手の縦パスを通させなかった。後半こそ失速したが、「らしさ」を取り戻すきっかけはつかんでいる。次戦の相手は日体大。「関東リーグ連覇を掲げているなら絶対に負けちゃいけない」(DF新井純平主将、スポ4=浦和レッズユース)。手の内を知る相手との対戦で、存分に良さを発揮できれば、目標の総理大臣杯優勝も近づいてくるはずだ。

(記事 守屋郁宏 写真 菖蒲貴司)

スターティングイレブン

第40回総理大臣杯全日本大学トーナメント 2回戦
早大 2-0
0-1
中京大
【得点者】(早)5鈴木裕,45+1熊本
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 後藤雅明 スポ4 東京・国学院久我山
DF ◎新井純平 スポ4 浦和レッズユース
DF 熊本雄太 スポ3 東福岡
DF 鈴木準弥 スポ3 清水エスパルスユース
DF 12 木下諒 社3 JFAアカデミー福島
MF 19 須藤駿介 スポ3 静岡学園
FW →78分 柳沢拓弥 社3 清水エスパルスユース
MF 14 鈴木裕也 スポ3 埼玉・武南
MF 相馬勇紀 スポ2 三菱養和SCユース
MF 秋山陽介 スポ3 千葉・流通経大柏
FW 中山雄希 スポ4 大宮アルディージャユース
FW →66分 飯泉涼矢 スポ3 三菱養和SCユース
FW 13 今来俊介 商3 神奈川・桐光学園
◎はゲームキャプテン
監督 古賀聡(平4教卒=東京・早実)
コメント

DF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)

――後半からは厳しい試合になってしまいました。試合を振り返っていかがでしょうか

結果として勝てたことは良かったと思いますけど、隙が多かったので、相手の質が高ければやられていたシーンは多かったと思います。1回戦(仙台大戦◯1-0)に続き、能力でもワセダらしさでも上回って勝てたわけではないということを突き付けないといけないとすごく感じます。

――前半は1回戦の守備の課題が修正されていた内容でした

1回戦でああいった試合をしてしまって、きのうのトレーニングで意識しましたし、きょう(試合に)入る上でも入りの部分の重要性を再認識させました。完璧というわけではないですが、少し改善できたと思います。

――その入りの部分で大事な先制点を奪うことができました

先制点が大事だと意識していましたし、裕也(鈴木)の思い切った決断があのゴールを生んだので、時間帯も含めすごく大きな1点でした。

――後半の劣勢時、中盤に多くのスペースができてしまいました。ディフェンスラインから見て、どのような異変がありましたか

相手に(ボールを)動かされた時に、守備のつながりに緩みが出て後手に回り、結果的に相手に広いスペースを与えることにつながったと思います。そういった部分で課題がありました。

――「らしさ」を出せない中でも勝ち切れているのは大きな進歩ですね

そうですね。全国大会は厳しく、全ての試合で自分たちのやりたいサッカーができるわけではないです。そういった中でも勝ち切ることが重要ですし、トーナメントならではの勝ったチームが上にいけるということが全てだと思うので、どんな状況になっても一人一人がじれずに戦い続けることが重要だとこの試合で感じました。きょうも課題が多くあったのでそれを修正していきたいです。

――次は互いに手の内を知っている日体大との試合です。どのように戦っていきますか

後期関東リーグでも絶対に勝たないといけない相手ですし、関東リーグ連覇を掲げているなら絶対に関東のチームに負けちゃいけないです。勝ち続けるために最高の準備をして、勝てるようにやっていきたいです。

MF鈴木裕也(スポ3=埼玉・武南)

――2回戦も勝ちました。今のお気持ちをお願いします

優勝を目指している中で、きょうも勝たないといけない試合だったので勝ててホッとしています。

――5分にはチームのファーストシュートでゴールを挙げましたが、振り返ってみていかがでしょうか

前回の入りが悪かったということもあって、入りから攻撃的にいこうということは話していました。その中で開始5分に自分のゴールで点が取れたというのはとても良かったと思います。また、個人的にもそろそろ点を決めないといけないなと感じていたので、それも合わせてよかったです。

――あの場面は自分でいこうと思っていましたか

そうですね。あの場所にボールがこぼれてくると予測していて、ちょうどそこにこぼれてきて相手GKが前に来ているのが見えたので、GKを越えるようなシュートを狙っていきました。

――前回の試合の反省から、試合前にはチームメイトとどのようなことを話していましたか

やはり前回の試合では、相手の陣地でボールを奪って攻撃につなげるという自分たちの持ち味を出せなかったということが反省として挙がりました。きょうの試合では、もっと積極的に前からボールを奪いにいこうという話はしていました。

――きょうの試合ではいかがでしたか

前半の最初の部分ではできていたと思いますが、やはり疲れてくると(積極性が)出せなかったので、体力面も考えながらうまくやっていかないといけないかなと思います。

――きょうは初戦では見られなかったような攻撃参加もありましたが

後半は押し込まれる時間が続いた中で、やはり自分が前に持ち出していくことは意識していました。相手に後ろを向かせて相手陣地で攻撃をしようというふうには考えていたのですが、それができた時間帯もありましたがまだまだできていない部分もあったので、そのあたりのことを改善していこうと思っています。

――後半は相手に押し込まれた印象ですが

試合が続いていく中で、やはり後半の半ばあたりで疲労が見えてきて自分たちのいつものサッカーができなかったと思います。入りから100パーセントでいくことも大事なのですが、疲れないように90分間を戦うことも重要ですし、うまくやっていかないといけないなと感じました。

――では、1回戦と同様にきょうの試合にも納得はしていないと

そうですね。メンバーが変わったことでポジションの近い選手間でのコミュニケーションが足りていないから普段のサッカーができていないことにつながっているように思うので、ピッチの中でも外でもコミュニケーションを取って連携を深めていかないといけないなと思います。

――1回戦の試合後には「ただ勝てただけ」とおっしゃられていましたが、きょうはいかがでしたでしょうか

うーん、きょうもそんな感じですね。結果が伴っているからまだいいですが、内容の部分を見たらまだまだ全然ダメだと思います。

――次は3回戦で相手は日体大です。リーグ戦では勝っている相手ですが

お互いを知り尽くしていて試合を重ねている相手なので、難しい試合になると思います。

――意気込みをお願いします

そういった中でも映像を見てスカウティングしたことを研究して、勝てるようにやっていこうと思います。

MF須藤駿介(スポ3=静岡学園)

――試合の振り返りをお願いします

勝つことができたということが良かったと思います。とりあえずそれだけです。

――前半は前に行く守備がチーム全体としてできていたと思いますが

前半は前からという意識がチーム全体として持てていた中で、その意識を共有して全体でゴールを目指していこうということは話していました。そういったことをやり続けていけた点では良かったと思います。

――後半はスペースが空いてしまって相手にボールを持たれる時間が長くなってしまったと思いますが

後半に関しては、チームというよりかは個人的に集中力や運動量の部分で相手に勝ることができなかったという面でチームに迷惑をかけてしまったという責任を感じているので、短期決戦ではありますがその部分を早めに修正していかないといけないなと強く感じています。

――きょうの収穫と課題について

自分の弱みというかやり切れなかった部分が多く露呈してしまったので、そこをマイナスに捉えるのではなくポジティブに捉えて、修正することでもっとチームが良くなっていくと思います。自分自身が改善していくことでチームに活力を与えていけると思うので、自分の反省点を整理した上で少しずつどんな形であれ出場したらチームの勝利に貢献できるような活躍であったりプレーであったりを出していきたいです。

――次の試合の相手はよく知っている日体大です

日体大は関東で何度も戦っている相手なのですが、この大会で戦った相手と比べるとレベルも質も高いと思います。そういった相手に食らい付いていくのはもちろんですが、そこに自分らしさを出していけたらいいと思います。自分自身この大会では本来スタメンである平澤俊輔(スポ4=JFAアカデミー福島)くんがケガをしている関係で試合に出させてもらっているのですが、まだまだそれに匹敵するような働きはできていないので、もっと自分の強みを出していくというところを意識して次に向かっていこうと思います。

――その『自分らしさ』とはどのような部分でしょうか

身体能力や守備の力はそこまでないので、守備を最大限した上でもう少し高い位置でボールを受けてのチャンスメイクであったりパスやドリブルで相手を動かしたりと、攻撃的なプレーをすることだと思っています。そういうところを出していかないと個人としてもチームとしても勝てないと思うので、自分自身のらしさを出してやっていかないといけないと思っています。