死闘の末、PK戦で桐蔭横浜大に敗北 2位入賞も涙に沈む

ア式蹴球男子

 ついにたどり着いたアミノバイタルカップ2016(アミノバイタル杯)決勝の舞台、ワセダは桐蔭横浜大と相見えた。互いに前日の試合の疲労を残し、意地のぶつかり合いとなったこの試合。前半、6人が絡む華麗なパス回しからMF今来俊介(商3=神奈川・桐光学園)が先制ゴールを挙げる。しかし、後半は桐蔭横浜大にペースを握られると、アーリークロスからヘディングシュートを沈められ、1-1に。そのまま延長戦にまでもつれ込むと、両チーム好機を生かせず、勝負の行方はPK戦に託される。守護神、GK後藤雅明(スポ4=東京・国学院久我山)の活躍で一度は先行するものの、キッカー陣が枠を外し、自らリードを手放して5-6で敗戦。あと一歩のところで栄冠を逃し、2位という好成績とは裏腹に悔しさの残る結果となった。

死闘の決着はあまりにも残酷だった

 立ち上がり、ワセダはリスクを冒さない堅実なプレーを選択。無理をせず手堅く試合を運ぶと、走力の差から徐々に主導権を握る。二枚目、三枚目が絡む波状攻撃を仕掛け、立て続けにバイタルエリアへ侵入し、圧力を強めた。すると、38分、ワセダが誇るハードワーカーが均衡(きんこう)を破る。中盤で細かくつなぎ、最後はDF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)のクロスを今来がダイレクトで叩き込み、先制に成功。その後もFW中山雄希(スポ4=大宮アルディージャユース)がミドルを放つなど、良い流れで前半を終えた。

 迎えた後半。パスを素早く回す桐蔭横浜大に対し、プレスが機能しなくなり後手に回ると、50分に失点。アーリークロスを頭で合わせられ、スコアをイーブンに戻される。その後もピンチは続き、立て続けにクロスを上げられてしまう厳しい展開に。しかし、DF熊本雄太(スポ3=東福岡)を中心に弾き返して攻撃をいなし、反撃の機会をうかがう。83分、DF木下諒(社3=JFAアカデミー福島)のクロスに途中出場のFW飯泉涼矢(スポ3=三菱養和SCユース)がニアで頭から飛び込む。96分にも今来のパスを受けた新井主将がDFを一人かわし、フリーでシュート。しかし、どちらも枠を捉えることができず、勝負の行方は延長戦へと託された。

大一番で先制点を挙げた今来

 延長戦に入ると、負傷したFW小林大地(スポ4=千葉・流通経大柏)に替わりMF須藤駿介(スポ3=静岡学園)を、今来に代わってMF柳沢拓弥(社3=清水エスパルスユース)を投入。流れを手繰り寄せようと、攻撃の活性化を試みる。100分、CKを獲得。ファーで待ち構えていたDF鈴木準弥(スポ3=清水エスパルスユース)が右足を一閃(いっせん)。しかし、これはDFに当たってしまい、得点には結び付かない。続く105分の好機も生かすことができずにいると、107分には桐蔭横浜大に決定機。グラウンダーのクロスをニアで合わせられ、万事休すかと思われた。しかし、後藤が身体を投げ出し、ファインセーブ。延長戦後半終了間際には、高い位置でボールを奪った柳沢が強引に相手を引きちぎり、右足を振り抜く。だが、枠を捉えることができずに、ここでホイッスル。PK戦で雌雄を決することとなった。

 緊迫した空気が漂う中、迎えたPK戦。後攻のワセダは、1本目の新井主将が落ち着いてゴール右隅に決める。すると後藤が、桐蔭横浜大の第2キッカーのシュートをストップ。しかし、続く鈴木準が止められ、リードをつかむことができない。3本目は互いに決めると、4本目では相手が枠外に飛ばし、ついにワセダは勝利まであと一歩に近づく。だが、5本目でFW武颯(スポ3=横浜F・マリノスユース)がゴール上にふかしてしまい、勝負はサドンデスへ。その後、互いにミスなくキックを沈めていくと、8本目で熊本がポストに嫌われ、この瞬間ワセダの敗北が決定。5―6で桐蔭横浜大に敗れ、選手たちは膝から崩れ落ちた。

 あと一歩、届かなかった。PK戦にまでもつれ込む熱戦の末、敗北。この悔しさは計り知れない。「『1st』をとらなければ意味がない」(新井主将)、「勝てなかったことがすべて」(FW山内寛史副将、商4=東京・国学院久我山)と、選手たちからは厳しい言葉が目立った。しかし、「走り勝つという部分で成長があった」(新井主将)と、今大会は確かな収穫もあった。中2日で早慶サッカー定期戦(早慶サッカー)を迎えるタイトな日程の中でも、この大会をしっかりと次につなげていかなければならない。好成績も涙に濡れたアミノバイタル杯。等々力の大舞台では嬉し涙を流すことができるのか――。エンジイレブンの奮起に期待したい。

(記事 佐藤諒 写真 田中佑茉)

伝統の一戦、すべてを懸けろ

アミノバイタルカップ2016 決勝
早大 1-0
0-1
0-0
0-0
5(PK)6
桐蔭横浜大
【得点者】(早)38今来 (桐)50今関
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 後藤雅明 スポ4 東京・国学院久我山
DF ◎新井純平 スポ4 浦和レッズユース
DF 熊本雄太 スポ3 東福岡
DF 鈴木準弥 スポ3 清水エスパルスユース
DF 12 木下諒 社3 JFAアカデミー福島
MF 平澤俊輔 スポ4 JFAアカデミー福島
FW →66分 飯泉涼矢 スポ3 三菱養和SCユース
MF 14 鈴木裕也 スポ3 埼玉・武南
MF 13 今来俊介 商3 神奈川・桐光学園
MF →100+1分 柳沢拓弥 社3 清水エスパルスユース
MF 秋山陽介 スポ3 千葉・流通経大柏
FW 中山雄希 スポ4 大宮アルディージャユース
FW →52分 山内寛史 商4 東京・国学院久我山
FW →90+2分 武颯 スポ3 横浜F・マリノスユース
FW 11 小林大地 スポ4 千葉・流通経大柏
MF →93分 須藤駿介 スポ3 静岡学園
◎はゲームキャプテン
監督 古賀聡(平4教卒=東京・早実)
コメント

DF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)

――無念の2位に終わりました。今のお気持ちをお聞かせください

『1st』をとらなければ意味がないというところで、この2位という結果は意味がないです。自分たちはまだ『1st』をとれるチームではなかったという現実をしっかり受け止めてやっていかないと、何も成長はないと思います。

――最後はPK戦となりました。どのような思いで味方のキックを見つめていましたか

とにかく自信を持って蹴ってほしいと。PK戦まで来たら、最後は気持ちの部分だと思うので、それぞれが自信を持って蹴ってくれればそれでいいと思っていました。

――新井選手は1本目のキッカーでした。蹴る前、だいぶ間を空けていましたがどのような心境だったのでしょうか

このボールに思いをのせるってことですね。応援しているたくさんの人の思いをこのボールにのせると心を整理して蹴りました。

――熊本選手には最後どのような言葉を掛けましたか

「下を向くな」と、それだけです。熊本のせいではないし、チームとしてまだまだだったので、あいつだけが抱える問題ではないです。あいつは涙を流していましたけど、顔を上げて次の行動に移せと伝えました。

――連戦を通して成長した部分もあったかと思います。大会全体を振り返っていかがでしょうか

真面目にひたむきに戦う部分、走り勝つという部分で成長がありました。連戦の中で、以前に比べて、自分たちの強みを出せたことは一つ成長したポイントなので、そこにさらに磨きを掛けていきたいです。タイトルを獲れなかった部分に関しては、まだまだ自分たちの気持ちの弱さ、サッカー的な弱さがあったと思うので、そこを見つめなおしてこれから高めていきたいです。

――中2日で早慶サッカーとなります。チームとしてどのような試合を見せたいですか

アミノバイタル杯はもう終わって、体がどうこう言っている場合じゃないです。早慶戦はワセダのプライドが懸かった試合なので、感動を与えられるプレーを体現していきたいです。

――主将としてチームにどのような言葉を掛けていきたいですか

みんなもわかっているように、負けは許されないです。もう過去を振り返っても仕方ないですし、早慶戦で勝つための取り組みをあしたからやっていくだけです。

――早慶サッカーへの意気込みをお願い致します

この試合に負けたら歴史に泥を塗るという一戦の重みを一人一人が理解して戦わないといけないと思います。必ず勝てるようにやっていきたいです。

FW山内寛史副将(商4=東京・国学院久我山)

――本日は決勝戦でした

勝てなかったことがすべてで、悔しいです。

――後半同点とされた直後での出場でした

決勝点を取りたかったんですけど、自分のパフォーマンスができませんでした。足の痛みも出てしまって、納得できないまま終わってしまいました。

――すばり、敗因は何だと考えていますか

分からないですね。

――暑さの影響はありましたか

自分たちはメンバーを変えずにフルでやってきた中で、最後のこの試合でも相手よりは走れていたと思うんですけど、勝てなかったってことは他に何か(敗因が)あるのかなって思います。それ以外に原因があるのか、もっと走らなければいけないのかは今は分からないですけど、これから考えていかないといけないなと思います。

――前日の試合の影響はありましたか

身体的にはあったと思いますけど、関係はないかなと思います。

――延長戦とPK戦はどのような思いで観ていましたか

代わって出た選手がやってくれることを願っていましたし、ほとんど4年生が出ていない中で、3年生がチームを背負って戦ってくれているし、自分よりもきょうはやってくれていたと思うので、あとは信じるしかないなと思っていました。

――悔しい敗戦でしたが、その一方で2位という結果を残しています

優勝しかないっていう話はしてきましたし、その中で準優勝ということで何もないと思います。この悔しさを総理大臣杯にぶつけると言ったら簡単ですけど、総理大臣杯や後期に向けてやってくしかないのかなと思いました。

――この大会で得たものや収穫はありましたか

一戦一戦に取り組む姿勢や準備っていうのはリーグ戦でできたかといえばそうではないと思いますし、その部分でチームとしてどうやってやっていくのかっていうのは、ある程度見えたと思います。

――早慶サッカーへ向けて意気込みをお願いします

いろんな理由とか影響はあると思いますけど、勝つしかないし、誰が出ても勝たないといけないと思うので、3日しかないけど良い準備をしていきたいと思います。

GK後藤雅明(スポ4=東京・国学院久我山)

――今の心境を聞かせてください

1位じゃなきゃ意味無いし、結果として残らないので・・・。2位で終わってしまったのは本当に悔しいです。

――PK戦を振り返っていただけますか

1本止めましたけど、自分たちが後攻だったので、もう1本どこかで、サドンデス入った後に止められればチームは勝てたと思うし、そこで自分自身の力がなかったからこういう結果になってしまったと思います。

――PK戦で実際にゴールマウスに立っていて、桐蔭横浜大のキッカーやキックについて何か感じたことはありますか

何本か真ん中のコースに来たのとかあったりして、ギリギリのところで触れるかってのがキーパーに求められていて、やっぱりそこで1本止められたかどうかってところで変わってくると思います。もう1本止めたかったって思うので、とても悔しいです。

――2位という結果を受けて、どのように次につなげていきますか

何も結果として残せていないので、3冠という誓いがあるので、総理大臣杯で優勝目指してこれからやっていきたいと思います。

――次は水曜日の早慶サッカーですが、意気込みを教えてください

定期戦でここ4年間負けなしできていて、5連覇が懸った試合になると思うので、勝ち続けるワセダというのを見せたいと思います。

MF秋山陽介(スポ3=千葉・流通経大柏)

――2位という結果はどのように受け止めていますか

優勝っていうのをずっと目標に掲げてきて、1位を取らなきゃ絶対に意味がないと言っていた中での2位だったので、正直悔しいです。でもまた次の戦いがあるので、切り替えてというか、いまの自分たちの現状っていうのを受け止めて、次につなげていきたいと思います。

――きょうの試合を振り返っていかがですか

全体的に自分たちのプレスがあんまり掛からない中での試合になってしまったので、こういう状況下でも自分たちの強みっていうのをもっと出していかないといけないと思いました。

――ご自身のコンディションはいかがでしたか

連戦ということはありましたけど、その中でも戦わなきゃいけないので、そういう意味ではコンディションがどうというわけではなかったです。

――PK戦はどのような思いで見つめていましたか

キーパーだったり蹴る人だったり、一人一人を信頼していたので、結果は残念でしたけど、しょうがないかなと思います。

――今大会を通しての課題と収穫を教えてください

課題っていうのは、90分を通してプレスを掛け続けられるだけの力が、まだ個人個人足りなかったということです。収穫は、流れの中だったりセットプレーの中だったりで点が取れて、自分たちの強みっていうのが出せるようになってきたということです。

――この大会は秋山選手にとってどのような大会でしたか

個人的にもっとできた大会だったなと思っているので、満足のいく大会ではなかったです。

――この結果を今後にどうつなげていきたいですか

自分たちは優勝とか三冠を目標に掲げているので、この敗戦を次につなげていけるようにやっていきたいです。

――最後に早慶サッカーに向けて意気込みをお願いします

ことしは1勝1敗なので、次の一戦で勝ち越して、後期のリーグ戦にもつなげていけるようにやっていきたいです。

MF今来俊介(商3=神奈川・桐光学園)

――MF相馬勇紀選手(スポ2=三菱養和SCユース)のケガもあって、きのうの準決勝からスタメンでの出場機会が回ってきました。この2試合どのような思いで試合に入りましたか

自分が一番できることはチームのために走り続けることしかないので、相馬の役割は担えないですけど、自分のできることだけを考えて、とにかくチームのためにって思って臨みました。

――ボールを奪い取るという今来選手の良さは出ていたと思います

前後半を通してけっこう相手に回される時間も多かったので、本当はもっとチーム全体でボールを奪いに行けたらよかったんですけど、そこはちょっと反省点ではあります。

――この大切なゲームで公式戦初ゴールを挙げて、スコアに絡むことができました

自分の目標が、試合に臨むにあたって直接的にチームの勝利に貢献するっていうことを一番に考えているので、得点できたことはよかったんですけど、そのあと失点して最終的には負けっていう・・・。点を取っても勝てなければ意味が無いので、総理大臣杯とかでは点をとって、さらに勝ちに結び付けられるようにやっていきたいと思います。

――先制シーンを振り返ってください

中盤でテンポよくボールを回せて、サイドにパスを散らせたので、「あ、絶対自分のところにクロスが転がってくるな」と思ったので、純平くん(新井主将)を信じて入って、いいボールが上がってきたので、ゴールは見てなかったですけど思い切り足振って、それが入ったのでよかったです。

――延長前半で途中交代となりましたが、どのような思いで延長後半、あるいはPK戦を見つめていましたか

ほんとにピッチに立つ選手を信じて見ていたんですけど、結果はついてこなかったんで、この先自分が最後まで出続けてチームの勝利に貢献できたらなと思います。

――アミノバイタル杯は悔しい結果に終わってしまいましたが、今後にどうつなげていきますか

自分たちに求められているのはほんとに優勝しかないので、これからまたチーム全員で高めあって、総理大臣杯優勝に向けてまたやっていきたいと思います。

――次はすぐに早慶サッカーがありますが、それに向けて意気込みをお願いします

ほんとうに伝統の一戦なので、まだ出られるかわからないですけど、そういう多くのお客さんが見てくれる中でまた出られるとしたらそれはうれしいことですし、その中で自分の力で勝利に結び付けられたらなって思います。