アミノバイタルカップ2016(アミノバイタル杯)3回戦で、延長戦の末に順大を退けた(◯2−1)エンジイレブン。この日は決勝進出を懸けて、大学サッカー界屈指のタレント集団・明大と矛を交えた。前半は両者共に得点なく終える。後半に入り徐々にチャンスをつくりだすと、65分にシュートのこぼれ球をFW小林大地(スポ4=千葉・流通経大柏)が体ごと押し込み、ついに均衡(きんこう)を破った。しかし、77分に同点ゴールを許すと、試合はそのままアディショナルタイムへ。このまま延長戦かと思われた90+1分、途中出場のFW山内寛史副将(商4=東京・国学院久我山)が2試合連続となる決勝ゴール。4年ぶりのアミノバイタル杯戴冠へ、ついにあと一勝のところまで登り詰めた。
背番号『10』、まさにエース
前回大会覇者・明大との準決勝。早大は立ち上がりから高い集中力を維持し、攻守において気迫十分のプレーを見せる。8分、こぼれ球にこの日スタメン出場となったMF今来俊介(商3=神奈川・桐光学園)がボックス内で素早く反応。だが、シュートは相手GKの右腕にはじかれ、先制とはならない。その後は自陣に押し込まれる時間帯が続いたものの、DF熊本雄太(スポ3=東福岡)とDF鈴木準弥(スポ3=清水エスパルスユース)の両センターバックを中心に得点を許さず、前半をスコアレスで折り返した。
FWとして、攻撃陣を引っ張る小林
後半は立ち上がりから決定機をつくられるなど、厳しい展開を強いられてしまう。この状況を打破すべく、56分にはエース山内副将を投入。その6分後、相手のクリアが甘くなったところに小林がフリーで走りこみ、左足を一閃(いっせん)。しかし、強烈なシュートは不運にもクロスバーにはじかれてしまう。先制のチャンスを逸したエンジイレブン。だが65分、その小林が今度はチャンスをものにした。今来が高い位置でボールを奪い取ると、そこからつなぎ、最後は山内副将がシュート。そのこぼれ球を小林が身を投げ出して押し込み、待望の先制点をもたらした。このままリードを守り抜きたい早大だったが、77分に痛恨の失点。右サイドからのクロスがファーにまで流れ、豪快なシュートを決められてしまった。なんとか90分で決着をつけたい早大だったが、30℃を超える気温と高い湿度に体力を奪われ、決定的なシーンを生み出すことができない。延長戦も覚悟した90+1分、またしてもこの男がチームを救った。味方のロングボールに反応した山内副将が裏に抜け出し、右サイドをドリブルで駆け上がる。相手DFを力強く振り切ると、最後は右足で冷静に流し込んだ。最終スコアは2−1。エースの2戦連続となる決勝ゴールで紫紺の雄を撃破し、決勝戦への切符をつかみ取った。
格の違いを見せつけた山内副将
関東大学リーグ戦では苦戦を強いられた。それだけに、明大相手に挙げたこの一勝がチームにもたらすものは言うまでもなく大きい。しかし、選手たちは決して満足していない。『優勝』という青写真を描くエンジイレブンにとって、決勝進出はあくまで通過点に過ぎないのだ。DF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)はこう話し、チームの手綱を引き締める。「優勝しなければ意味がないし、あした負けたら初戦敗退と同じ」。全員が一枚岩となって勝利を収め、記念すべき今季最初のトロフィーを掲げたい。
(記事 栗村智弘 写真 難波亮誠)
アミノバイタルカップ2016 準決勝 | ||||
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早大 | 2 | 0-0 2-1 |
1 | 明大 |
【得点者】(早)65熊本,90+1山内 (明)77岩武 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 後藤雅明 | スポ4 | 東京・国学院久我山 |
DF | 2 | ◎新井純平 | スポ4 | 浦和レッズユース |
DF | 3 | 熊本雄太 | スポ3 | 東福岡 |
DF | 5 | 鈴木準弥 | スポ3 | 清水エスパルスユース |
DF | 12 | 木下諒 | 社3 | JFAアカデミー福島 |
MF | 6 | 平澤俊輔 | スポ4 | JFAアカデミー福島 |
FW | →86分 | 飯泉涼矢 | スポ3 | 三菱養和SCユース |
MF | 14 | 鈴木裕也 | スポ3 | 埼玉・武南 |
MF | 13 | 今来俊介 | 商3 | 神奈川・桐光学園 |
MF | 8 | 秋山陽介 | スポ3 | 千葉・流通経大柏 |
FW | 9 | 中山雄希 | スポ4 | 大宮アルディージャユース |
FW | →56分 | 山内寛史 | 商4 | 東京・国学院久我山 |
FW | 11 | 小林大地 | スポ4 | 千葉・流通経大柏 |
◎はゲームキャプテン 監督 古賀聡(平4教卒=東京・早実) |
コメント
DF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)
――決勝進出を決めた今のお気持ちをお聞かせください
すべてはあしただなという感じです。この試合はきょうで終わったので、あしたに向けてこれから備えるだけです。
――明大相手の勝利に喜びもひとしおではないでしょうか
メイジに勝たないと優勝はないという意識がありました。それは今までの歴史が物語っていますし、勝ち切れたのは大きいことだと思っています。
――FW木戸皓貴選手を中心とする明大の攻めに対して、守備陣はどのようなことを意識しましたか
前線に良い選手がいるので、ポジショニングを含めて、一対一の部分を意識していました。
――前半は守備の時間が長くなってしまいました
確かに長くなってはしまいましたが、それは想定内でした。うまいメイジとやるなら当たり前というか、そこに自分たちががむしゃらに戦えるかが問われていたと思います。前半を0で抑えられたのは良かったと思います。
――メイジは中盤を起点にゲームを組み立ててきました
中盤に人数を掛けてきて、そこで奪えないシーンが多くありました。ですが、最後を締めれば大丈夫だという共通認識があったので、何度崩されようが問題はないのかなと思います。
――後半の攻めている時間帯でしっかり先制点を取ることができましたね
取るところでしっかり取り切ることができました。チャンスが少ない厳しい展開の中でも取ることができたのは、良かった部分、変化が表れた部分だと感じています。
――失点場面を振り返っていかがでしょうか
(パスを)回されている時にもう少し(守備を)押し出すことができたんじゃないかと終わってから思います。ファースト(ディフェンス)が定まらなかったからクロスを上げられたと思います。そこの部分は修正してやっていきたいと思います。
――また山内副将が決めてくれましたね
そうですね、ヒロ(山内)に助けられているというのが正直なところなので、他の4年生も試合を決定付けるような働きをしなければと思います。もっと4年が勝たせるプレーを意識していきたいと思います。
――連戦に加え、暑さという厳しいコンディションでしたが、走り勝つという『ワセダらしさ』が出た試合でした
そうですね。うまいメイジには自分たちがひたむきに、がむしゃらに走ることが勝つカギだと思っていたので、全体として、一人一人が走り勝ったことがこの結果につながったと思います。
――決勝に向け、意気込みをお願いします
あした優勝しなければ意味はないですし、負けたら初戦で負けたのと一緒なので、あしたの勝利に向け良い準備をしていきたいと思います。
FW山内寛史副将(商4=東京・国学院久我山)
――ナイスゴールでした。振り返っていかがでしょうか
自分が入る前から、相手のサイドバックの裏が空いているって言われてましたし、自分も見ていて感じました。狙ったかたちで決めることができたので良かったです。
――途中出場で、監督からどんな指示がありましたか
限られた時間の中で試合を決めるということ。守備はみんなが必死にしてくれているので、自分は点を取ることが仕事だと思ってますし意識して入りました。
――ケガの具合はいかがでしょうか
ケガ自体は治ってるんですけど、それに付随した周りの筋肉とかはまだ完全ではないです。徐々に上がってはきているので限られた時間で自分の力を凝縮して出せているのかと思います。
――同点にされた時焦りなどはありましたか
前節もそうでしたが、このまま終わるわけにはいかないという話もしていましたし。前節もそこからひっくり返して勝っていたので、そこに関してはうまくできたと思います。
――明大の守備の印象は
裏に弱点を持っていて。個々だったり、裏に抜け出したルーズボールだったりとかはワセダのFW陣でも勝てるのでそこは共有して対応できました。
――決勝への意気込みをお願いします
優勝しか目指してないですし、この大会を通じてチームとして成長できてきているので、限られた時間で良いプレーをして勝てるようにしていきます。
FW小林大地(スポ4=千葉・流通経大柏)
――今の率直なお気持ちをお聞かせください
関東大学リーグ戦(リーグ戦)で首位に立つ明大に勝てたことは良かったですし、ほっとしています。ただ自分たちの目標はタイトルを取ることであって、決勝にいっただけでは何の意味もないので、次の試合に勝つことだけを考えたいです。
――立ち上がりを振り返っていかがですか
自分と雄希(FW中山雄希、スポ4=大宮アルディージャユース)のところが(ディフェンスの)スイッチになるようにということは意識していて、しっかりと相手のバックラインにプレッシャーをかけることを心掛けました。
――前半はシュート2本でしたが、振り返っていかがですか
明大との対戦ということで、シュートが少なくなったり、圧倒的にボールを保持されたりといったことは、みんな予測できていたことではあります。少ないチャンスをいかにものにできるかという試合で、その中で継続的に守備をオーガナイズして、ワンチャンスで仕留ようということは、ハーフタイムにも話し合いましたね。
――後半の先制ゴールの場面を振り返っていかがですか
ボールがどの辺りにこぼれてくるかは予測できていて、そこで最後までボールを追うことができたのが、結果的にゴールに結び付いたのかなと思います。その前の決定機でバーに当てて外してしまっていたので、俺が決めなきゃと思っていました。
――きょうの得点も含めて、このところ小林選手の得点シーンが増えてきています
自分は仲間からのパスやクロスに合わせて得点を決めたり、こぼれ球をワンタッチで決めたり、そういうプレーが得意であり持ち味だと思うので、そこをこれからも生かしていきたいと思います。
――アミノバイタル杯からFWでの起用が続いていますが、それに関してはいかがですか
自分がFWで出ている意味というのは、やはりファーストディフェンダーとしてプレッシャーをかけ続けることでこそ発揮できると思いますし、裏へのアクションとか背負って受けることとかも含めて、今のところ自分のやるべきことを遂行できているのではないかと思います。
――そしてまたも山内副将がチームを救いましたね
彼がいなければ去年のリーグ戦優勝も不可能でしたし、今回も前の試合(3回戦 順大戦○2-1)に続いて助けられて、本当にすごいの一言ですね(笑)。
――高い気温の中での試合となりましたが、走り勝つサッカーを展開するア式にとってこの暑さはかなり厄介だったのでは
確かに暑かったですね(笑)。正直結構ばてましたけど、給水タイムもありましたし、そこで自分としてはリセットできるので、乗り切ることができました。チームとしても、こういう暑さで自分たちの良さがなくならないようにトレーニングしてきていますし、だからこそ走り切ることができたと思います。
――最後にあすの決勝戦に向けての意気込みをお願いします
自分たちのやるサッカーは変わらないですし、そこを貫くためのトレーニングは積んできているので、そこは自信を持って、最後まで全力で戦い抜きたいと思います。