【連載】第67回早慶サッカー定期戦直前特集 『エンジの意地』 第6回岸浪卓志副将×後藤雅明

ア式蹴球男子

 好セーブを披露すれば一気に会場を沸かすことができる。一方、小さなミスが失点につながるのがGKというポジションだ。しかし、フィールドでプレーできるGKはたった1人。正GKと控えGKでは見えている世界がどう異なるのか。大舞台・早慶サッカーを前に、切磋琢磨(せっさたくま)し、高め合ってきたGK後藤雅明(スポ4=東京・国学院久我山)、GK岸浪卓志副将(社4=東京・早実)にそれぞれの思いを伺った。

※この取材は6月23日に行われたものです。

「リーダーシップを発揮する」(後藤)

岸浪との出会いを語る後藤

――お互いのことを知ったのはいつでしょうか

岸浪 小学5年の選考会で知り合いました。埼玉で二人一緒にやっていました。その時は僕の方が圧倒的に上手かったんですけど(笑)。身長も俺の方が大きかったんですよ。

――プレーの印象は

岸浪 話をしたり一緒にプレーしたというよりも、なんとなくお互いのことを認知しているという感じでした。

後藤 お前は覚えてた。

岸浪 小手指の坊主キーパーで覚えてました。それが初めてですかね。それからは会ってなくて、中3の国学院久我山高のセレクションでばったり会いました。

――早実高に入学されたのは

岸浪 大宮アルディージャで上に上がれないということになって、大学にどうしても行きたくて附属校を考えていました。コーチングスタッフのご縁もあって早実高に決めました。

――初めて会った頃の印象と比べて

後藤 あんまないです(笑)。小学校とかあんまり覚えてないからね。見た目しか覚えてないから。うるさかったイメージはある。高校は試合とかでのイメージがあるので、大学入ってびっくりすることはなかったです。

岸浪 性格がこんな感じでのほほんとしていて、でっかいやつという印象だったんですけど。大学入って一緒にやってみると、こいつうまくねって思いました。あれ、俺の方がうまかったのになって(笑)。

――お互いのいいところを挙げてください

岸浪 いいじゃん!そういうの(笑)。

後藤 自分にないものを持ってる。リーダーシップをとったり、色々なところが見えたり、努力する姿勢だったり。常に刺激を受けています。

岸浪 サッカー的なことを言えば、自分のないところを持っていると思います。シュートストップだったり、身体能力だったりというところはいいところですね。性格的には優しい。とにかく人に優しい(笑)。ライバルでもありパートナーでもあります。自主練の相手だったりとか、サッカーの話ができるのは良かったと思います。

――逆に直して欲しいところは

後藤 睡眠時間を削ってくるところ。

岸浪 電気のつけっぱなし、かな。寮で同じ部屋住んでるんですよ。

――寮の部屋割は毎年変わるのですか

岸浪 自分は大学一年から東京ステイという寮に住んでて、田中太郎(平28商卒=静岡・藤枝東)君と同じ部屋だったんですけど引退して空きができて、後藤を連れ込んだ感じです。一番良いですよ、東京ステイが。みんなぜひ入ってください。ダイドーのアイススケート場のすぐ近くにあります。

――後藤選手は寮に入るまでは

後藤 実家暮らしでした。小手指に住んでいたので不便もなかったです。

――チームでのご自身の役割は

後藤 キーパーとして、チームが良くない状況でリーダーシップを発揮していかなくてはならないです。去年試合に出ていた分、その経験を生かさなくてはいけないですし、勝利へ導いてチームを前に進めなくてはいけないとも思っています。キーパーの役職もついているので、練習メニューを組んだり、セットプレーに対して促したりとかですね。

岸浪 隠れ副キャプテンなんで。みんな他のチームの人も知らないと思うんですけど。主将を支える副将としての役割が一番だと思っています。勝たせることや一人一人への要求だったり厳しさというのは自分が基準を持ってやらなければいけません。今は後藤が試合に出ていて、最近は小島(亨介、スポ2=名古屋グランパスU18)が出ていますが、自分は一人のサッカー選手としたら何もできていないと思います。自分の努力だったり姿勢で試合に出ることが最もなんですけど。副将として支えていくことと、試合に出て貢献することが今の役割です。

――盛り上げ役でもあると思います

岸浪 そうですね。俺が回してますよ、このチームは(笑)。

後藤 イメージ通りだと思います。

岸浪 最近後輩が生意気なんでね。ヤジばっか飛んできます。とくにDF鈴木準弥(スポ3=清水エスパルスユース)とか。

――お気に入りの後輩とかいますか

岸浪 お気に入りの後輩(笑)。難しいなあ。野田(紘暉、スポ3=東京・早実)と曽我(巧、社3=東京・早実)は面白いですよ。最高ですね。次世代を担うチームの回し屋になるんではないかと。私生活の熱というか、圧倒的に違う強さを見せているので、是非サッカーの方も二人には頑張って欲しいです。

――今頑張っていることは

後藤 自分が試合に出たときの失点は、リーダーシップだったり課題に取り組む姿勢が足らなかったところにあると思うので、試合中の要求やリーダーシップに関しては力強く取り組んでいます。

岸浪 失点が増えてしまったことはチームの課題でもあるので。キーパーがリーダーシップをとって指示を出すこと、全体としてプレッシャーやストレスのかかった練習が大切になってくると思うのでそこを頑張っています。

「タイプが異なるからうまくいっている」(岸浪)

素直な思いを語る岸浪

――ワセダが目指すサッカーとは

後藤 単純に、ボールを奪ってゴールを奪う。プラス、相手チームに走り勝つというのも大切だと感じています。

岸浪 泥くさくというか。見ている人が手に汗握る、でもワセダが勝つという、相手に走り勝つゲームは大切ですね。見に来て下さる人に元気を与えるサッカー。粘り強さが今欠けているので、そこを早慶サッカーでは見せられるようにしたいです。

――小島選手がリーグ戦に出たことに関して

岸浪 完全にやられましたね。

後藤 もともと日本代表にも選ばれているし色々な経験も積んでいるのでプレーも上手いです。一緒に練習していて自分たちにないものを持っていて刺激にもなります。彼が試合に出ていて、色々と気づかされたこともあるので。キーパー同士の競争環境ができたと言えますし。

岸浪 三人で高いレベルで争うことをもっとしていかなくてはいけないですね。最終的には4年として小島を出させるわけにはいかないので、最後は俺が出て、後藤がベンチで小島がチーム付きというかたちになればいいなと思います(笑)。

――理想のキーパー像は

岸浪 出た。苦手だよな(笑)。

後藤 理想を言ってしまえば、全部シュートを止める、チームに安定感を与える。こういう者でありたいというのはあまり自分にはないです。

岸浪 言葉で言うなら、後ろに岸浪がいるなら安心できる、頑張れる。そういう信頼されたキーパーですね。

後藤 存在感があるっていう感じかな。

――後藤選手が考える練習メニューはどうですか

岸浪 去年まで二人で交互にやっていたんですけど、GKグラウンドマネージャーという役職を作って、基本的には任せている現状ですね。ことしになってキーパーの練習量を増やそうといことで。今までにはなかったキーパーとしてのチーム感、一体感が生まれたので効果的だと思います。

――この練習はきつかったというのは

後藤 木曜日はきついですね。一時間前に集まってパワー系のトレーニングですね。

岸浪 内田さん(内田謙一郎GKコーチ)にトレーニング任せちゃうときついです(笑)。でもそれも大事だとは思いますね。

――サブのキーパーの心情は

岸浪 それに関してはプロなんで(笑)。答えますよ。正直、3年の最初はメンタル保つのが難しかったです。嫉妬だったりとか、自分が使われなかったいら立ちも出てしまったこともありました。でも、そこに矢印向けても何もならないです。結局悪いのは自分なんで。チームのために、自分のために、そこのメンタルの出し入れが大事ですね。試合が始まったらチームのために後藤のサポートをする。でも練習になったら対後藤になります。絶対食ってやるというか、そういう気持ちの出し入れが大変ですね。試合でも自分が出ていたら止められたというのは、思ったり思わなかったり。悔しさを忘れてしまったら、サッカー選手としてのメンタルがぶれてしまうので、素直な感情は大切にしています。

――お互いに切磋琢磨(せっさたくま)していると感じますか

岸浪 後藤は俺の事どう思ってるかわからないですけどね。俺はめちゃめちゃ意識してます。そういうタイプなので。後藤、小島この野郎と思ってしまうタイプです。

後藤 自分自身、表に出さないタイプなので。自分に集中する感じですね。

岸浪 色々タイプが異なるからうまくいってるんではないかなと思います。

――後藤さんはプレッシャーをあまり感じないですか

後藤 試合中とかはあまり。

岸浪 うまいですよ、後藤は。

後藤 高校時代の糧というか。高校時代の色々な経験もありますし。苦しい時期もあって、うまくそれを刷り込んで自分のパフォーマンスをする、気持ちを持っていくというのは自然と身についています。

――高校時代に学んだことは

後藤 高校から基礎技術の積み重ねは大事にしています。

岸浪 ことしでワセダ7年目という印象が強いので。ワセダを背負う責任のようなものはあります。練習に対する重みや、見方に対しての関わり合いはぶれずにやってきたという感じです。自分はザ・早実みたいなタイプなんで(笑)。常に全力を出すというのは続けているところです。

二人の守護神

早慶サッカーを通じて成長してきた後藤と岸浪副将

――早慶戦PVが公開されましたね

後藤 PVのおかげでチケット売れたというのは聞きました。

岸浪 毎年、広報の人が試合の映像を撮り溜めたりしていて。でもことしは、PVのための撮影が入ったりしていたので。撮影してる感は強かったですね。

――ことしは加藤ミリヤさんがゲストでいらっしゃると聞きました

岸浪 来ていただけることはとてもありがたいです。多くの方に少しでも早慶サッカーに興味を持っていただけるきっかけになればいいと思います。学生スポーツに加藤ミリヤさん来ちゃうってすごくないですか。

――一年間で最低3回ケイオーと戦うことについて

後藤 実際、ケイオー戦は普段とは別の試合という感じですね。リーグ戦でも定期戦でも、特別な試合です。負けたら最悪、勝てば最高ですね。その1試合で勝つか負けるかは大きいです。

岸浪 ケイオーには負けられないという文化がありますね。前回リーグ戦で負けてしまったので、今回借りを返すという感じです。

――ケイオーの印象は

後藤 金持ち(笑)。

岸浪 泥くささを嫌うというか。なんか舐められている感じがあるんですよね(笑)。ケイオーボーイだぜ的な。でも個人的にはいいやつもいて(笑)。やっぱ勝ってやろうという気持ちが強いです。

――早慶戦の思い出は

後藤 初めて出たのは2年生のときのアミノバイタルカップだったんですけど、そこでPK2本止めたのがうれしかったです。去年出た初めての定期戦で勝利したのも印象に残ってます。

岸浪 2年の時、ベンチにも入れない第3キーパーだったんですけど、後藤がケガして初めての公式戦ベンチ入りが早慶サッカーでした。初めての公式戦ベンチ入りが早慶サッカーで、その空気感というのも思い入れがあります。さっきあったアミノも自分がベンチにいて目の前で後藤に2本PK止められて悔しかったです。1年の早慶サッカーはスタンドから見ていて、出ている選手との距離感を感じていました。あと一歩で試合に出られないもどかしさも。ベンチにいても悔しさなどが露骨に伝わる試合なので。自分の原点を感じる試合でもあります。

――最後に早慶戦の意気込みを色紙にお書きください

岸浪 出た。初めてだ(笑)。この感じ取材感あっていいですね(笑)。

後藤 何がいいかなあ(笑)。

――ありがとうございました!

(取材・編集 難波亮誠)

仲の良さが伝わる2ショットですね!

◆後藤雅明(ごとう・まさあき)(※写真上)

1994年(平6)5月24日生まれ。身長190センチ、体重84キロ。東京・国学院久我山高出身。スポーツ科学部4年。忙しい中、早慶サッカー前に2回も取材を引き受けて下さいました。岸浪副将が話してくださったように優しいです!当日は高いリーダーシップで勝利へ導いてください!

◆岸浪卓志(きしなみ・たかし)(※写真下)

1994(平6)年5月17日生まれ。179センチ、74キロ。東京・早実高出身。社会科学部4年。今住んでいる「東京STAY」という寮がとてもよく、体育会のみんなにもオススメだそうです!