意地と意地とがぶつかり合う伝統の早慶戦となったアミノバイタルカップ2016(アミノバイタル杯)2回戦。前半にDF熊本雄太(スポ3=東福岡)が渾身(こんしん)のヘッドで2点をスコアボードに刻むと、後半は追いすがる宿敵の攻めをGK後藤雅明(スポ4=東京・国学院久我山)が中心となり跳ね返し続ける。そして試合は2-0で終了。慶大を下した早大が3回戦へと勝ち進み、見事3年ぶりの総理大臣杯出場を決めた。
「前期リーグ戦でやられた悔しさを思い出そう」(DF新井純平主将、スポ4=浦和レッズユース)。ライバルを倒すため、そして総理大臣杯への切符をつかむため、エンジイレブンは並々ならぬ覚悟を胸に決戦に挑んだ。立ち上がり、勝利への情熱はプレーを見るからに明らかだった。全員で球際に激しく寄せ、相手に自由を与えない。ボールを失えども、連動した守備ですぐに奪い返す。次々と味方を追い越し攻撃に転じる早大を前に、慶大は防戦一方。16分、MF相馬勇紀(スポ2=三菱養和SCユース)がCKを蹴り込むと、ファーに待ち受けていた熊本が打点の高いヘディングシュートを突き刺し、大きな先制点をもたらす。26分にはFW中山雄希(スポ4=大宮アルディージャユース)からのパスを受けたFW小林大地(スポ4=千葉・流通経大柏)が巧みな反転からループシュート。ここは相手GKに防がれたものの、流れを渡さぬまま慶大を圧倒していく。迎えた38分、またしても熊本が大仕事をやってのけた。相馬のCKに対し、今度はニアでダイビングヘッド。「自分がゴールを決めてやる」と気合を込めたシュートはそのままネットを揺らし、その差は2点に。最高のかたちで早大は前半を終えることに成功した。
殊勲の活躍を見せた熊本
後半は追いすがる慶大が猛攻を繰り返す展開に。56分、慶大はサイドチェンジから右サイドを攻めると、DF溝渕雄志のクロスをFW田中健太がニアで合わせる。強烈なシュートが枠を襲ったが、ここは早大の守護神、後藤が右手一本で弾き出す。試合を決定づける3点目が欲しい早大は73分、果敢なオーバーラップから新井主将がPA内にクロスを供給すると、途中出場のFW山内寛史副将(商4=東京・国学院久我山)がシュート。しかし、ここはクロスバーに嫌われてしまい、追加点を奪うことができない。総理大臣杯出場に向け慶大も必死の反撃を見せるが、後藤を中心とした早大守備陣が幾度となく猛攻を跳ね返していく。そして、試合は終盤へ。90分、慶大は人数を掛けた攻めからPA内に侵入し決定機を迎える。しかし、ここも後藤が懸命の飛び出しを見せ、窮地をシャットアウト。熊本の2ゴールを最後まで守り切った早大が見事宿敵を粉砕し、念願の総理大臣杯出場をつかみ取った。
セットプレーで2アシストの相馬
この日エンジイレブンが見せた熱い闘志はすべてにおいて慶大を上回っていた。最後の最後まで走り切り、チームの勝利のために全てを捧げる。それこそが追い求めてきた『ワセダらしさ』なのだ。次戦は中1日で迎える3回戦・順大戦。「一瞬一瞬、次の戦いに勝つための行動をしていくだけ」。勝利に気を緩めることなく、新井主将は真剣な眼差しで次を見据えた。本来の姿を取り戻しつつあるワセダの挑戦はまだ終わらない。
(記事 桝田大暉 写真 進藤翔太)
スターティングイレブン
アミノバイタルカップ2016 2回戦 | ||||
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早大 | 2 | 2-0 0-0 |
0 | 慶大 |
【得点者】(早)16,38熊本 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 後藤雅明 | スポ4 | 東京・国学院久我山 |
DF | 2 | ◎新井純平 | スポ4 | 浦和レッズユース |
DF | 3 | 熊本雄太 | スポ3 | 東福岡 |
DF | 5 | 鈴木準弥 | スポ3 | 清水エスパルスユース |
DF | 12 | 木下諒 | 社3 | JFAアカデミー福島 |
DF | →81分 | 松岡拓郁 | 商3 | 大阪・履正社 |
MF | 6 | 平澤俊輔 | スポ4 | JFAアカデミー福島 |
FW | →52分 | 山内寛史 | 商4 | 東京・国学院久我山 |
FW | →90+3分 | 野田紘暉 | スポ3 | 東京・早実 |
MF | 14 | 鈴木裕也 | スポ3 | 埼玉・武南 |
MF | 7 | 相馬勇紀 | スポ2 | 三菱養和SCユース |
MF | 8 | 秋山陽介 | スポ3 | 千葉・流通経大柏 |
FW | 9 | 中山雄希 | スポ4 | 大宮アルディージャユース |
FW | →63分 | 飯泉涼矢 | スポ3 | 三菱養和SCユース |
FW | 11 | 小林大地 | スポ4 | 千葉・流通経大柏 |
◎はゲームキャプテン 監督 古賀聡(平4教卒=東京・早実) |
コメント
DF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)
――3年ぶりの総理大臣杯出場を決めました。今のお気持ちをお聞かせください
自分もここまでの2年間で総理大臣杯に出れず、本当に悔しい思いをしてきた中で、まずはその切符を手に入れたことが素直にうれしいです。
――この一戦に特別な思いがあったかと思います。試合前のチームの雰囲気はいかがでしたか
早慶戦という素晴らしいシチュエーションで試合ができると思っていました。総理大臣杯の切符を手にできるかわからない中で、一瞬一瞬を大事に過ごしていくということの共有はできました。
――主将として、どのようなことを話しましたか
前期リーグ戦でやられた悔しさを思い出そうということと、ケイオーの総理大臣杯への思いよりもワセダの今季三冠への思いの方が強いから自信を持って戦おうと言ってきょうの試合に入りました。
――立ち上がりの攻守の入り方が非常に良かった印象があります
リーグ戦では前半に失点して、後半には手遅れだったというのが教訓だったので、それをこの試合に絶対に生かさないといけないと思っていました。最初の入りで全てが決まると全体で意識して臨んだので、良い入り方ができてよかったです。
――後半のケイオーの猛攻を0で守り切ることができたのは今後に向け大きな収穫だったのではないでしょうか
そうですね。でもまだ自分たちが疲れた時に押し込まれる時間が長くなってしまったのは足りない部分です。この試合でもまだ課題はあるなと感じたので、短い時間でも修正していかないと次のステップには進めないと思います。
――3回戦の順大戦に向け、意気込みをお願いします
自分たちが掲げている誓いはアミノバイタル杯優勝、そして総理大臣杯優勝なので、そこをぶらさずに、一瞬一瞬次の戦いに勝つための行動をしていくだけです。
DF熊本雄太(スポ3=東福岡)
――ご自身で2得点を挙げての勝利でした。今の気持ちを聞かせてください
率直に、めっちゃ嬉しいです。その一言に尽きますね。
――それぞれのゴールを振り返ってみてください
1点目に関しては、相馬と蹴る位置を話し合っていました。それ通りのところにボールが来たので、僕はそれを合わせるだけでしたね。2点目は、少しボールがずれて低いボールになっていたんですけど、自分がゴールを決めてやるという強い気持ちでなんとか反応することができたと思います。
――蹴る位置はいつ決めているのでしょうか
蹴る直前に、ゴール前で集まって決めています。
――早慶戦となりましたが、どんな思いで試合には臨みましたか
前期のリーグ戦でああいったかたちで負けていた(第9節、●1-2)ので、やられたらやり返すという思いで臨みました。ケイオーには絶対に負けない、これからも負けてはいけないという気持ちでした。
――中1日での試合でしたが、体力面で影響はありましたか
いや、体力面で影響はありませんでした。練習のほうがきついことをしているので大丈夫です(笑)。
――明後日は東京に戻って順大との試合となります。どのようなプレーをしていきたいですか
まず、しっかり先制点を取って試合をリードしていきたいですね。あと、チームの目標として、総理大臣杯優勝とアミノバイタル杯の優勝のどちらも挙げています。それに向けて次節からも勝てるように、中1日ではあるんですけど、チーム一丸となってやっていきたいと思います。