【連載】インカレ直前特集『CLIMAX』 第1回 MF大丸瞬×MF田中太郎×MF平澤俊輔

ア式蹴球男子

全日本大学選手権(インカレ)まで1日となった。第1回はMF田中太郎(商4=静岡・藤枝東)、MF大丸瞬(教4=東京・早実)、MF平澤俊輔(スポ3=JFAアカデミー福島)にスポットライトを当てる。これまでチームを引っ張ってきた4年生2人と、固いディフェンスで関東大学リーグ戦優勝に貢献した3年生。彼らはインカレを前に何を思うのか、ざっくばらんに語っていただいた。

※この取材は12月2日に行われたものです。

「優勝できるなと確信できました」(大丸)

優勝が決まった瞬間について語る大丸

――19年ぶりの関東大学リーグ戦(リーグ戦)優勝おめでとうございます。今季を振り返ってみていかがですか

平澤 前期は本当に苦しい戦いになったのですが、その中で4年生の先輩方がチームを引っ張ってくれて勝つことができたので、本当に4年生に感謝ですね。個人としては、スタメンで出ていた11人の中で、自分が一番成長できなかったなというのが正直な感想で、優勝が決まった時も、自分の力で勝ち取ったという実感はなかったですし、そういった意味では悔しいシーズンでもあったなと思います。

田中 自分たち4年生からすると、後輩たちが3年生を中心として、本当に自分たちのことを助けてくれましたし、後輩に勝たせてもらったという部分が大きいと思っています。個人的には、シーズンを通して怪我をしないという目標を達成できたことはうれしいですし、怪我をしない体づくりをしっかりすることができたと思います。プレーに関しては、なかなかうまくいかない時期もあって、まだ納得はできていないので、インカレ(全日本大学選手権)で活躍できるように頑張りたいです。

大丸 リーグ戦を通して、特に最後の6試合は、試合に出ているメンバーや、ベンチメンバー、スタンドで見ているメンバーも含めて、全員で戦うことができたなと思っています。点を決めた後のみんなの喜ぶ様子であったり、勝利した後のみんなのうれしそうな顔を見ていて、このチームで優勝できるなと確信できました。個人としては、自分の役割があまり定まらなかったこともあって、難しい時期もあったのですが、自分なりに落ち着いてプレーできたと思います。インカレでは、チームを勝利に導けるような働きを、しっかりとしていきたいと思います。

――優勝できた要因は何だと思いますか

平澤 拓真くん(DF金澤主将、スポ4=横浜F・マリノスユース)のキャプテンシーだと思っています。あれだけ強いリーダーシップで自分たちを引っ張っていってくれましたし、常に前向きな言葉もかけてくれたり、本当に一人一人に対して気を配ってくれていたので、拓真くんなしでチームを立て直すことはできなかったと思います。

田中 僕はチームとしての一体感が本当に強かったと思っていて、出ている選手たちとしてもそれが本当に心強くて、力になりました。11人以外のベンチメンバーや、スタンドで応援してくれているメンバー、ULTRAS WASEDAの方々も含めて、全員が僕たちの背中を押してくれて、自分たちはそれにすごく心を動かされました。

大丸 自分は後藤(GK雅明、スポ3=東京・国学院久我山)かなと思っています。試合に出るようになったのが今年ということもあって、難しい部分もあったと思うのですが、その中で彼の成長というのは、僕だけではなくて、みんなが感じていることだと思いますし、彼の練習に対する姿勢や、それ以外の場面での努力する姿を見ていて、本当に素晴らしいなと思っています。今季は彼のシュートストップが何度もチームを救ってくれました。

――今季はリーグ最少失点を達成しましたが、この堅守を生み出すことができたことに関してはいかがですか

田中 ことしが特別ということではなくて、監督(古賀聡、平4教卒=東京・早実)が目指しているサッカーを体現しようとすれば、自然とそうなると思います。

大丸 失点を少なくするということが体に染みついているというか、そういうメンタリティーが植えつけられていて、それがこういう結果につながっているのだと思います。

――チームの攻撃面に関しては

平澤 前期は点が取れないことが課題の一つでしたし、夏の合宿ではそこを改善していこうということで、カウンターやクロス、セットプレーを中心にしっかり練習しました。それらを自分たちの強みにしていけたことで、後期は勝ち切る試合を増やすことができたと思います。

――古賀監督に対してはどういった印象をお持ちですか

田中 真面目で堅いというのが古賀さんの特徴だと思うのですが、今季になってからは、これまでよりスキンシップとか、積極的なコミュニケーションを図ろうという部分が見えましたね。そういったことが得意なタイプではないと思うので、監督のほうから選手たちに近づいていこうという意志は感じ取れました。

――今季一番印象に残っている試合を教えてください

田中 今季は印象に残る試合が多かったからね(笑)。

大丸 劇的な試合がね(笑)。

平澤 僕は(後期の)国士舘戦(◯2-1)ですね。

大丸 俺もそれだわ(笑)。

平澤 勝ち方も劇的でしたし、前の試合で引き分けてしまったことで後がない状態で、立ち上がりからいくぞという雰囲気でしたね。その中で太郎くんも決めてくれたし(笑)。

田中 (笑)。

平澤 あの試合で勝てたことが、本当に重要だったなと思います。

大丸 あの試合で引き分けてたら、明大に抜かれてたんだよね?

田中 そうだね。

大丸 やばいなって思ってた中での、あの2点目のシーンは忘れられないですね。

田中 僕も後期の中では国士舘戦ですね。前期は早慶戦(◯1-0)ですね。それまで7試合勝てていなかったのですが、あの試合で勝てたことがその後の連勝にもつながりましたし、ターニングポイントになったと思います。精神的にもすごく追い詰められた状況で臨んだ試合だったので、今までにないくらいのハードワークや献身性が求められましたし、死に物狂いでしたね。個人的にも人生で一番きつい90分間だったので、すごく印象に残っています。

ピッチの外では

平澤は先輩2人にいじられつつの対談となった

――お互いの印象をお伺いします。まずは大丸さんの印象は

田中 外見はかっこいいですが、内面は子供です(笑)。心が少年で、ピュアなんです。人を騙すとかいう感覚にならないと思う。その反面、ちょっと馬鹿な面も(笑)。でも本当に、人との距離を縮めるのがとてもうまいです。初対面の人でも絶対に瞬とは仲良くなるし、嫌いっていう人もいないと思う。先輩も後輩も、めちゃくちゃ仲良くなれる。

平澤 優しい人です。

田中 何もないじゃん(笑)。

一同 (笑)。

平澤 自分も地味であまり面白くないけどいじってくれるし、絡んでくれたり誘ってくれたりします。それに3年のおちゃらけ組にも対応してくれますし(笑)。

――それでは田中さんの印象は

平澤 最初はあまり近づけなかったんですけど、すごく優しくしてくれるので、頼りにしてしまう先輩です。試合中も太郎君が一番ナイスって声かけてくれるので、自分はそれがすごく嬉しくて、それを言われるために頑張っているという感じです(笑)。

田中 僕は仲良くやりたいんですよ(笑)。

大丸 太郎は自分に対してのプライドが相当強い。サッカーにおいても、私生活においても、軸がすごくしっかりしている。照れくさいね(笑)。部室でも隣で、相当絡みやすいし。太郎が俺に言ってくれたのと同じで、太郎も人の懐に入るのが上手い。だから愛されているキャラ、だと思います。

――では平澤さんの印象は

大丸 まあ真面目だよね、俊輔は。3年は変なやつが多いですけど(笑)、俊輔は真面目だし、ザ・良いやつ。どこに行っても順応できるだろうな。ふざけている人たちの中にも入っていけるし、場面場面で適応する能力は高い。

田中 めっちゃ可愛がられてますね。こいつも先輩はめっちゃ好きなので。先輩に可愛く付いていくことが多いので、可愛い後輩です。

――特に仲の良い選手はどなたですか

平澤 4年生は皆仲が良いですけど、一緒にいる時間が多いのが、政くん(DF奥山政幸副将、スポ4=名古屋グランパスU-18)です。部屋が近いので、朝自分が寝ていると布団をはがして起こしに来てくれるし、一番近いですね。

大丸 僕は八角(DF大智、社4=千葉・流通経大柏)です。旅行にも行ったし、外で会ったり飲みに行くのも八角かな。

田中 日高(DF7裕介、スポ4=横河武蔵野FC)です。日高と僕だけバイクの免許を持っていて、この前ツーリングに行きました。予定は、奥多摩に紅葉を見に行こうと言っていたんですけど、途中で色々あって気づいたら2時間バイクに乗っていたのに、入間で温泉に入っていました(笑)。ちゃんと時間調べたら30分で行けたじゃん(笑)。インカレ後も行こうって計画立てています。

――オフの日はどのようなことをなさっているのですか

田中 ツーリングは一回しかやっていませんが、その時にインカムを買って、乗りながら喋れるんですよ。それが本当に楽しくて、しょうもないことを喋ってます(笑)。歌いながら走ったりとか、隣をトラックが走ってたら、ヤバい俺はもう駄目だから後は頼んだ、とか(笑)。本当に適当な、何でもないことを2時間くらいずっと喋っていると最高に楽しいです。

大丸 最近は寒くなってあまりしていませんが、散歩がすごく好きです。色々なところに行っています。

田中 本当に行ってるの?(笑)

大丸 基本的には自分の駅の周辺を歩いています。

田中 一人で?

大丸 一人で。

田中 楽しい?(笑)

平澤 俺もこの前新宿から日本橋まで散歩しましたよ。6時間くらいかかりました。

大丸 それは馬鹿だけど(笑)。散歩をしていると、定食屋とか見つけられるんですよ。こういうところあるんだ、みたいな。基本的に一人が結構好きなので、今度行ってみようと思います。

——平澤さんは、練習で疲れていらっしゃるところにオフで6時間も歩かれたのですか

平澤 その日はふらっと外に出て、新宿で買い物をしようと思ったんですけど何もなくて、近くに靖国神社があったから行こうと思ったら、

田中 近くなくね?(笑)。

一同 (笑)。

平澤 靖国神社に行こうして、電車を調べたら意外と歩けるじゃんと思って、そうしたらランナーズハイじゃなくてウォーカーズハイみたいになって(笑)。それで日本橋まで行きました。

大丸 6時間は無理だけど、分かる。散歩は面白いよね。

田中 俺、ふらっと外に出たことないもん。オフは一人で映画を観たりします。最近は、「ピエロがお前をあざ笑う」っていうドイツの映画が、最後にどんでん返しで面白かったです。

——マイブームなどはありますか

大丸 人狼ゲームは結構やりますね。基本的に10人くらいで、グループがあります。

田中 マジで時間の無駄ですよ(笑)。

大丸 集まって、ファミレスに電話して12、3人分の席をとって、この前は6時から深夜の1時くらいまでやっていました(笑)。ゲームの後に振り返りもあります。

田中 クラッシュオブクランです。僕はことしの2月くらいに始めて、そこからどんどん増えていって、今はア式だけで10人くらいのチームを組んで対戦できるくらいになりました。今回も10人対戦をやるんですけど、10人中6人はア式のメンバーで、でもゲームの中では他人のふりをしているんですよ(笑)。敬語で喋ったりして、でも裏ではお前行けよとかつながっています(笑)。

平澤 僕も最近ゲームをやっていることが多いです。今やっているのはピクミンです。政くんとピクミンやっています(笑)。改めて面白さを実感するというか、セーブして一日一日進めていくのが楽しいです。

「何物にも変えられない喜び」(田中)

インカレへの意気込みを語る田中

――日本一というタイトルは、皆さんにとってどういった意味を持つものになるのでしょうか

大丸 前回優勝した時(2012年)は、僕はスタンドで決勝を見守っていて、その時の雰囲気や、勝った瞬間のことは今でも忘れられないですし、あの時の喜びがあったからこそ、そのあと自分たちも頑張ってこれたと思います。そういう意味では、自分たちがいい戦いをすることが、後輩たちの今後に大きな影響を与えると思いますし、ア式を常勝チームにしていくということを考えれば、インカレ優勝は絶対に必要だと思うので、後輩にしっかりバトンを渡したいと思います。

田中 1年生の時にインカレで優勝するまで、サッカーで日本一になったという経験をしたことがなくて、それを経験できたことは自分の中で自信になりましたし、誇りというか、俺は日本一になったんだぞ、みたいな自負が生まれましたね。それを後輩たちにも経験させてあげたいですし、やっぱり優勝するということは、サッカーをやっている人にとっては何物にも変えられない喜びだと思うので、このチームでその喜びを味わうためにも、優勝したい大会です。

平澤 自分自身はまだ日本一を経験したことがないので、日本一になりたいという思いは強いです。リーグ戦は4年生に勝たせてもらったと思っているのですが、その4年生の集大成になる大会でもあるので、チーム一丸となって日本一のタイトルを目指したいと思います。

――タイトル獲得のためには何が必要になってくると思いますか

大丸 いつも通りやるということに尽きると思います。それに自分たちが積み重ねてきたものの精度をさらに高めていくことも、重要になってくると思います。

田中 リーグ戦ではなくトーナメント戦になるので、一戦一戦にかける思いが強いほうが勝つことになると思います。あとは日程も過密になってくるので、チーム全体の集中力であったり、雰囲気を持続させて、上にどんどん持っていくということを意識したいと思います。

平澤 個人的にはチャレンジする姿勢を貫きたいと思っていて、大会期間中も成長できると思いますし、自分が勝利に導くつもりで、一戦一戦臨んでいきたいと思います。

――リーグ戦とインカレどちらも制覇することになれば、1972年以来、実に43年ぶりの快挙達成ということになりますが、そのことに関しては

田中 監督が、歴史を塗り変えるためには関東リーグで勝って、そのあとインカレでも優勝しなければ意味がない、ということを言っていますし、確かにそうだと思います。ただ選手一人一人は、関東リーグで優勝できたからインカレでも優勝できるとは全く思っていないですし、一つ一つの試合に向けて全力でやってきた結果が、関東リーグ優勝だと思うので、それを続けることがインカレ制覇にもつながると思います。

――インカレでの個人としての目標はありますか

平澤 自分のプレースタイルからしても、そこまで目立った活躍はできないかもしれないですが、自分はチームのために泥臭くやるだけだと思うので、一番走って、一番ボールを取って、一番攻撃のサポートもする、ということができるように、頑張りたいと思います。

田中 僕は点を取ります。一試合一試合点を取ることに集中していきたいです。

大丸 僕はあまり派手なプレイヤーではないので・・・(笑)。こういうプレーをしてやるぞとかはあまりないのですが、試合前のアップであったり、試合に入る時の集中力や声がけのところで、100%自分にできるだけのことをしたいと思います。

――では最後に改めてインカレへの意気込みをお願いします

平澤 本当に一戦一戦勝つだけだと思うので、まずは目の前の試合で勝てるように、残された時間全員で高め合っていきたいと思います。

大丸  小学生の頃からサッカーを続けてきて、本気でサッカーをするのはインカレが最後になると思いますし、自分の全てをかけて、同級生や後輩たちと何が何でも優勝したいです。一瞬一瞬を大切に戦っていきたいと思います。

田中 最後に笑って終わりたいというのが一番の思いです。ワセダに入ってチームで勝つことの楽しさを知りましたし、自分のことよりも、みんなで勝って喜ぶことが、自分にとっては一番のモチベーションになっているので、そういう喜びをメンバーや応援してくださっている方々と分かち合うために、一戦一戦臨んでいきたいです。

——ありがとうございました!

ア式蹴球部きっての『温厚組』です!

(取材・編集 栗村智弘、丸山美帆)

◆田中太郎(たなか・たろう)(※写真左)

1993(平5)年8月28日生まれ。171センチ、68キロ。静岡・藤枝東高出身。商学部4年。ア式蹴球部でも数少ないバイクの免許を持っている田中選手。ツーリングが好きで、インカレ後も出かける計画中だそうです!

◆大丸瞬(だいまる・しゅん)(※写真中央)

1993年(平5)12月20日生まれ。181センチ、74キロ。東京・早実高出身。教育学部4年。部内で人狼にはまっているという大丸選手。遅くまでゲームをした次の日はやはり辛いようです!

◆平澤俊輔(ひらさわ・しゅんすけ)(※写真右)

1994年(平6)4月11日生まれ。176センチ、69キロ。福島・富岡高出身。前所属・JFAアカデミー福島。スポーツ科学部3年。6時間の散歩にチャレンジしたという平澤選手。またウォーカーズハイに到達できるのか楽しみですね!