前節の早慶戦(〇2-1)から1週間。激闘を制し勢いに乗るワセダはこの日、順大と対戦した。前半は互いにチャンスこそ演出するも、得点に結び付けることができない苦しい時間が続いた。後半に入ると相手の素早い攻撃からDFラインを下げてしまう。そしてついには先制点を許し、厳しい展開に。しかしここで引き下がることなく食らい付きPKを獲得すると、FW宮本拓弥(スポ4=千葉・流通経大柏)が落ち着いてゴール。結果は1-1と、価値ある勝ち点1で優勝へと首の皮一枚つながった。
攻守で活躍したMF小林大地(スポ3=千葉・流通経大柏)
「前半の立ち上がりで決めていたら、違う展開になっていた」とDF金澤拓真主将(スポ4=横浜F・マリノスユース)の言葉通り、序盤の流れはワセダに傾いていた。11分、MF秋山陽介(スポ2=千葉・流通経大柏)からのクロスをフリーで受けたFW山内寛史(商3=東京・国学院久我山)が一蹴。これは相手GKの正面と得点とはならなかった。17分には再び山内がCKを頭で捉えるも、枠の外へ。一方の順大もワセダの勢いに食い下がることなく、素早い攻撃でゴールに迫ってくる。前半終了間際のCKでは、弾いたボールを混戦の中押し込まれそうになるもGK後藤雅明(スポ3=東京・国学院久我山)が死守。両校ともに、チャンスをものにできずスコアレスドローで前半を折り返す。
後半、先にリードを奪ったのは順大だ。53分、サイドからの攻撃突破を許すと、これまでカバーリングで窮地をしのいでいた鉄壁DFが崩れ始める。左サイドを攻め込まれクロスを上げられPA内で構える選手へボールが渡ると、これを抑えることができず失点。「ここで負けるのが例年のワセダ」(宮本)であったが、ピッチに下を向いているものはいなかった。そしてチャンスが訪れたのは82分、DF八角大智(社4=千葉・流通経大柏)がゴール目前まで攻め上がりPKを獲得。これを宮本が堂々と決め、試合を振り出しに戻した。ここで流れを取り返したいワセダであったが、追加点は奪えず引き分けで終えた。
途中出場ながら活躍したMF鈴木裕也(スポ2=埼玉・武南)
劣勢からなんとかドローに持ち込む粘りを見せたワセダ。「決して内容の悪い試合ではなかった」と宮本が語るように、DFラインの攻撃参加はもちろん、全員のハードワークで首位の座を堅持した。次節に対峙(たいじ)する国士舘大は、リーグ戦で圧倒的な得点数を誇るチームである。そして、自力優勝を達成するにはもう負けは許されない。そんな状況を目前にしても金澤主将は「後先考えず、勝つことだけに集中できる」と決して臆することは無かった。19年振り、悲願の優勝をつかむべく――。あとはもう、やるしかない。
(記事 中澤奈々、写真 佐藤凌輔)
スターティングメンバー
関東大学リーグ戦第20節 | ||||
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早大 | 1 | 0-0 1-1 |
1 | 順大 |
【得点者】(早)83宮本 (順)53佐野 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 後藤雅明 | スポ3 | 東京・国学院久我山 |
DF | 2 | 新井純平 | スポ3 | 浦和レッズユース |
DF | 3 | 奥山政幸 | スポ4 | 名古屋グランパスU-18 |
DF | ◎4 | 金澤拓真 | スポ4 | 横浜F・マリノスユース |
DF | 12 | 八角大智 | 社4 | 千葉・流通経大柏 |
MF | 6 | 平澤俊輔 | スポ3 | JFAアカデミー福島 |
MF | 14 | 小林大地 | スポ3 | 千葉・流通経大柏 | MF | 7 | 田中太郎 | 商4 | 静岡・藤枝東 |
MF | →81分 | 大丸瞬 | 教4 | 東京・早実 |
MF | 15 | 秋山陽介 | スポ2 | 千葉・流通経大柏 |
MF | →70分 | 鈴木裕也 | スポ2 | 埼玉・武南 |
FW | 9 | 宮本拓弥 | スポ4 | 千葉・流通経大柏 |
FW | 10 | 山内寛史 | 商3 | 東京・国学院久我山 |
◎はゲームキャプテン 監督は古賀聡(平4教卒=東京・早実) |
関東大学リーグ戦1部リーグ順位表 | |||||||||
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順位 | 校名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失差 |
1 | 早大 | 38 | 20 | 11 | 5 | 4 | 23 | 17 | 6 |
2 | 慶大 | 37 | 20 | 10 | 7 | 3 | 37 | 20 | 17 |
3 | 明大 | 37 | 20 | 11 | 4 | 5 | 34 | 22 | 12 |
4 | 国士舘大 | 33 | 20 | 10 | 3 | 7 | 44 | 26 | 18 |
5 | 流通経大 | 30 | 20 | 8 | 6 | 6 | 25 | 20 | 5 |
6 | 法大 | 29 | 20 | 9 | 2 | 9 | 27 | 27 | 0 |
7 | 順大 | 27 | 20 | 7 | 6 | 7 | 28 | 30 | -2 |
8 | 専大 | 25 | 19 | 6 | 7 | 6 | 24 | 19 | 5 |
9 | 駒大 | 23 | 19 | 7 | 2 | 10 | 23 | 31 | -8 |
10 | 桐蔭横浜大 | 19 | 19 | 5 | 4 | 10 | 25 | 43 | -18 |
11 | 神奈川大 | 16 | 19 | 2 | 10 | 7 | 13 | 24 | -11 |
12 | 中大 | 11 | 20 | 3 | 2 | 15 | 26 | 50 | -24 |
※20節終了時点 ※上位5校は全日本大学選手権の出場権獲得 ※6位は北信越大学リーグ2位のチームとプレーオフ ※下位2校は関東大学リーグ戦2部に自動降格 |
コメント
DF金澤拓真主将(スポ4=横浜F・マリノスユース)
――きょうのこの結果についていかがですか
勝ちたかったですし勝ち点3を積み重ねたかったですけど、0-1の状況から引き分けに持ち込んだ、勝ち点0から1に持っていったことは意味のあることだと思います。この試合0-1で終わってたか1-1で終わってたかだと、今後大きな差が出てくると思うので、そういった意味でリードされているところから追い付けたということは前向きに捉えてもいいのではないかなと思います。
――この引き分けで優勝へ首の皮一枚つながりましたが、その点についていかがですか
引き分けたことで残り2戦で2勝すれば自力優勝ができるので、本当に最後あの時間帯に追い付けたのは大きかったです。
――お話しされていたように、残り2戦で2勝しなくてはならなくなったということで、逆にやるべきことが分かりやすくなった部分もあるのではないでしょうか
そうですね。後先考えず勝つことだけに集中できると思うので、そういった後が無い状況のほうが割り切って戦えると思います。一勝一勝目指して戦っていきたいです。
――順大も堅い試合をしてきて、苦手とする展開だったのではないでしょうか
そうですね、その中でも決め切るところ、特に前半の立ち上がりの時間で決め切れれば違った展開になったと思います。また失点シーンを振り返っても、慶大戦で出た早いタイミングでのクロスの対応がしっかりと抑えられていればまた結果も違ったので、そういったいままで出た課題を克服するためにまた1週間練習していきたいです。
――セカンドボールの攻防でかなり順大に押されていた印象もありますが
順大もいとわずセカンドボールで戦ってきましたし、ボランチの6番の青木翼選手も空中戦で戦ってきました。神奈川大戦(●1-2)もそうでしたけど、ルーズボールでどれだけ自分たちが体を張ってマイボールにできるかっていうのがキーになると思うので、特に後半は向かい風になってロングボールも飛ばないような状況でセカンドを回収し切れず押し込まれる時間が長かった中で、どうやって一つゾーンを越えていくのかは課題だと思うのでまた全員で共有してやっていきたいと思います。
――次節の対戦相手である国士舘大はかなり得点力のあるチームですが、ポイントになるのはどういったところでしょうか
国士舘大の強みは、シンプルにアクションで深さや広がりを取ってそこからクロスで勝負してくるところ、またセットプレーだと思うので、自分たちのウィークポイントと相手の強みが重なっていると思います。なのでそこをしっかりと捉えてやっていかないと、国士舘大の良さがどんどん出てしまって失点、敗戦につながっていくと思うので、もう一度そういったところを認識して自分たちの足元を見つめてやっていかなければいけないと思います。
――では最後に残り2節への意気込みをお願いします
優勝するためにあとは勝つだけだと思うので、一戦一戦、一日一日を大切にしてやっていきたいと思います。
DF奥山政幸副将(スポ4=名古屋グランパスU-18)
――なんとか勝ち点1を守ったという印象でしたが、振り返って
先制されて厳しい状況でしたけど、あそこでなんとか引き分けに追いつき勝ち点1を取れたことは良かったと思います。自力優勝の可能性を残したということで、今後意味ある勝ち点1にしていきたいです。
――MF堀田稜(商4=浦和レッズユース)選手がケガで抜けた影響はありましたか
そうですね、やっぱりスピードというのはチームとしての武器でしたし、守備への貢献度も非常に高い選手です。一方で代わりに出たMF秋山陽介(スポ2=千葉・流通経大柏)も足元の技術がありますし、ハードワークする姿勢というのは、堀田とまた違った良さがある選手だと思います。違うかたちにはなりますが、誰が出ても戦えるのかなというのはきょうの試合で感じたところです。
――前線2人に対するマークの数も多く、完全に抑え込まれている印象でしたが
ワセダの強みでもある2トップがマークをされましたが、前半開始からいくつか決定機を作ることはできました。結果得点にはいたっていないので、そこの2人にはもっと得点に対してのこだわりというのを持ってもらいたいですし、チームとしてもあの2人にどうやって点を取らせるかということも考えていかなければならないと思いました。
――一方の相手の攻撃はロングボールから前線に入れ、ワセダのDFラインを下げてくるようでしたが
ボールを持とうとする攻撃というのは対応できたと思うのですが、ロングボールや早い攻撃に対して深さを取られてしまったというのは自分たちDFラインの責任だと思います。その後の対応といったところでも後手に回ってしまったからこそあの失点も生まれてしまったと思うので、しっかりと見直していきたいと思います。
――失点シーンを振り返って
サイドのところで仕掛けられ、そこで純平(新井、スポ3=浦和レッズユース)が対応していたのですが、そこが完全に1対1になってしまいました。そこに対するヘルプの意識も少なかったですし、逆に中の選手への準備というところで枚数は足りていたと思うのですが、前節同様クロスの質であったり、入りの質といったところで自分たちが対応しきれなかったというところが失点の要因でした。もう1回、自分たちが得意としてる速さのある攻撃というのを裏返しでやられてしまっているのでもう一度チーム内での競争で改善していければいいかなと思っています。
――今節引き分けで終え、後は勝つしかありません。逆の意味でやることが明確になったと思いますが
確実に、明大は残り2試合を勝ってくると思いますし、慶大との対戦が残っています。どっちかは必ず2勝してくると思うので、自分たちとしては2勝すれば自力の優勝の可能性があります。ある意味はっきりしたということで、それをいい意味でプレッシャーと捉えて自分たちらしくそういったプレッシャーに押しつぶされずに残り1試合、1試合を勝つことだけに集中して取り組みたいと思います。
――次節は国士大戦、得点も多く取るチームだと思いますが意気込みをお願いします。
本当に優勝を懸けた直接対決だと思うので、そういう相手に対してまずは勝ち切るということですね。チーム全員の目標でもある優勝を達するためにも、次の一戦で勝てるように全員で準備していきたいと思います。
FW 宮本拓弥(スポ4=千葉・流通経大柏)
――惜しくもドローという結果になりましたが
前半の立ち上がりは良かったと思うので、その時点で山内(寛史、商3=東京・国学院久我山)も一回チャンスあって、あそこで決めたりできたらもう少し優位に試合を進めることができたのではないかと思っています。試合内容自体は前半は良かったと思います。ただ、後半の失点する前辺りから自分たちのサッカーができなかったので、そこに関してはだから失点したと言ってもおかしくなかったです。しかし、この状況でいつもだったら負けてしまうのが例年のワセダでしたが、勝負どころで引き分けに持ってこれたのは成長できたところではないかと思います。
――前半、序盤は相手陣内でボールをうまくコントロールできていた中で得点を決めきれなかったですが
そうですね。これは課題なんですが、チームの中のFWで僕がシュート数が一番多くて山内も3番目くらいで、山内も自分の得意とするところでもらえてなくて、無理やり打っているところがあると思います。そのチャンスがあった時に決めているかといったらそうではないと思いますし僕自身もそうですが、チャンスで決めることができるようになればおのずと結果がついてくると思うので、決め切れる力をもっとつけていかないと思います。
――前半の終盤辺りからは宮本選手も山内選手も相手からマークが厳しくなり思うようなプレーができなかったのではないでしょうか
相手は自分たちをつぶしにきていると分かっていたのでそこに関しては強さはありましたが、僕も山内もはがせる自信はあったと思うので、自分たちの強みである裏への動き出しというのを良く連携できるようになればいいかたちにできたのではないかと思います。
――後半では順大の10番の長谷川竜也選手や11番の米田隼也選手にいいようにやられてしまい、失点につながったクロスを上げられたシーンでも、中がフリーの状態になってしまっていましが
相手のクロスの質も良かったですし、9番の佐野翼選手の位置取りも良かったので、それが失点につながったと思います。しかし、その点に関してはいいクロスを上げさせないであったり、クロスが上がっても強いシュートを打たれないようにしっかりとマークするなどの細かいポジショニングをしていかなければいけないと思いましたし、それ以前に僕たちFWの元気がなく押し込まれてしまう場面を打開することができなかったので、その点に関しては守備に迷惑をかけたと思っています。
――後半終了間際のPKのシーンはどのような気持ちでしたか
PKに関してはリーグ戦全部蹴って決めていますし、あのような緊張したシーンでも決める自信があるので、しっかりと蹴れたことが得点につながったと思います。
――この試合を引き分けに持ち込めたということはプラスですが今後に向けてはどういった改善を
一回のチャンスを決め切るということ、前半の立ち上がりは良かったので、その立ち上がりの良さを持続して相手に勢いに乗られないような雰囲気をつくることを次節でもやっていかないと、相手もセットプレーを強みにしてやってきますし、やられてしまったら意味がないのでそこを意識してやっていきたいと思います。
――最後に次節の国士館大戦に向けて意気込みをお願いします
国士館大には前期勝っていますが、前期の国士館大とは違うと思いますし、一瞬でも隙をつくればやられてしまう攻撃力を持っている思うので、守備からしっかり入り、自分たちの強みである『堅守速攻』というのを見せ付けたいと思います。