【連載】第66回早慶サッカー定期戦特集 【第4回】宮本拓弥×中山雄希

ア式蹴球男子

 壮絶な戦いとなった関東大学リーグ戦(リーグ戦)前期。そのピッチの最前線で果敢に攻撃を仕掛け続ける2人がいた。屈強なフィジカルと高度なテクニックを誇る大黒柱・FW宮本拓弥(スポ4=千葉・流通経大柏)と強烈な左足持つスーパーサブ・FW中山雄希(スポ3=大宮アルディージャユース)だ。勝利に導く一発を生み出すべく走り続けた戦士たちに、リーグ戦の振り返りと早慶サッカー定期戦(早慶サッカー)への熱い思いを伺った。

※この取材は6月21日に行われたものです。

「ゴールを決められるように自分自身を高めていきたい」(中山)

笑顔で質問に答える中山

――前期のリーグ戦を振り返ってみていかがですか

宮本 最下位を経験してチームとしてどん底の状況を味わいましたが、最終的には4位というかたちで終わることができました。自分たちで話し合って強みの原点に立ち返ったことで少しずつ良くなっていったと思います。前期開幕戦(国士舘大戦、○1-0)に勝ってその後6戦連続で勝ちなしだったのですが、そこがあったからこそいまの自分たちがあるのではないかなと、ネガティブな要因ではなくポジティブな要因として自分たちでとらえていくべきかなと思います。

中山 みやくん(宮本)も言っていましたが、前期最下位を経験して最下位になったことで自分たちの強みや弱みを見直すことができたのかなと思います。いま、4位という立場ですが、自分たちは優勝を目指しているのでこの結果はワセダとしては許されない結果だと感じています。自分自身、途中交代が多い中で決めきれないシーンや外す場面も多くあったので、前期はそういったことが自分の課題かなと感じています。

――お二人の考えるワセダの強みとは具体的に何ですか

宮本 まずは走力が一つです。あとは、一戦に懸ける思いの強さというところですね。自分のためだけではなく、チームのために勝ちたいという思いを前面に出していけるのが、ワセダの強みです。サッカーの面で言うとすれば、攻守の切り換えの速さや球際の強さというのも強みです。でも、リーグ戦の振り返ってみて、対人能力という部分もこの夏に向けて上げていかないと思います。後期も回りがレベルアップしていますし、それができないとトップレベルの試合も出られないので、自分たちの中でその能力をいかに引き上げていけるかが大事だと考えています。

中山 みやくんが言ったことが本当に全てだと思うのですが、それに加えてことしは特にチームへの献身性が高いチームだなと感じています。勝つために走ることや味方のために走ることなどの献身性が新たな強みだと思います。

――アミノバイタルカップ2015(アミノバイタル杯)では2回戦敗退と満足のいかない結果だったと思いますが、いかがですか

宮本 アミノバイタル杯2回戦敗退に関して言えば、許していけない結果だと思います。それくらいも進めないということで、自分たちがまだそこまでのレベルなんだということをミーティングで話しました。試合を見てまた自分たちが本当に変わらなくてはいけないという思いが芽生えて、そこからチームの練習しているときの顔つきが変わりました。みんなが良い雰囲気でやれていると思います。また、筑波大(●1-2)の敗戦からアミノバイタル杯準決勝、決勝の試合を見て、改めて自分たちはまだあそこに立てる実力ではないと改めて思わされたので、そこは真摯(しんし)に受け止めていかなければいけないなと感じます。

中山 2回戦で負けて、自分たちはまだ勝つためにふさわしいチームではないのかなと自分も思いました。自分はラストの5分に出場したのでベンチから見ていることが多かったのですが、筑波大という2部の相手にワセダとして負けてはいけなかったですし、ああいう相手にどうやって勝っていくかもこれから大事になる部分だと感じています。残すはリーグ戦、インカレ(全日本大学選手権)でこれから早慶サッカーなどはありますが、そういったタイトルがあるので、周りの支えてくださった方々のためにも、タイトルを取れるように今後やっていきたいと思います。

――アミノバイタル杯の後のリーグ戦前期最終節では勝利することができましたが、筑波大戦から変わって勝利できた要因は何だったと感じていますか

宮本 順大戦(○2-1)で勝って終われたのは良かったですし、それで首位との勝ち点差が2へと迫りましたし、結果としては良かったと思います。しかし、内容を見てみると2-0から後半は防戦一方のゲーム展開。そういうところで、自分たちはまだまだ勝つべくして勝てるチームではないと思います。強いチームというのはああいった状況でも次の追加点の3点目を狙えるだろうし、守備においても相手に主導権を握らせない守備もできると思うし、自分たちにはまだまだ甘さがあるなと感じます。良い結果だけではなくて、自分たちの強みというのをもう一回気づかされた試合だったのではないかなと感じます。

中山 試合で2-0で勝っている中でああいう失点をしてしまって、相手の勢いをはね返すだけの力が僕たちにはまだないのかなという風に感じました。そこで防戦一方の状況が続いていくチームだとリーグ戦を優勝するチームになるというのは難しいと思うので、メンタルの部分やフィジカルの面で相手をはね返す力がもっと必要なのかなと感じました。

――得点のお話も出ましたが、ワセダは現在得点ランクで下から2位という状況です。決定力不足の点についてどのようにお考えですか

宮本 FWとしてはシュート数で言えばできていると思うのですが、それを決めきるだけの力というのが自分たちには足りないと思います。あと、FWとして自分の得意な位置や、この位置に欲しいというのを伝えて呼び込む力というのがまだまだ足りないのかなと感じます。僕たちFWの力も付けていかなければならないと思うのですが、やっぱり味方への要求も必要だと感じています。もうちょっと僕たちが厳しい要求をすればパスミスも少なくなると思います。また、チャンスのときにパスをもらえるだけの僕たちの信頼もまだないのではないかなと思います。信頼感を高めていかないと、得点が下から2位という現状を変えられないと思いますし、得点を取っているチームというのはそこがしっかりしていると思います。僕自身もシュートを打ってもゴールに入らないのはシュートの質というのもありますが、ラストパスの質やそれを呼び込むだけの全てがまだ不足しているのだと思います。無理シュートを打ってもリーグ戦はそんなに簡単にはいかないと思うので、やっぱりそこをもう少し突き詰めてやっていかないといけないと感じています。

中山 自分自身も途中交代ながら決定的なシーンで決めきれないということが多々ありました。決定力不足はサブでも決めないと解消しませんし、練習中のときからもっとこだわらなければいけないのかなと感じました。みやくんも言っていましたが、僕たちFWの味方へのパスの要求も大事ですし、そういうための信頼関係も必要になってくると思います。

――その信頼というのは試合だけでなく練習も通して高めていくということですか

宮本 そうですね。やっぱり、味方にこいつならここに出せば決めてくれるというような信頼関係をつくれば、試合でも一瞬見えたときにパスが回ってくるだろうと思います。

――攻撃面といえば、リーグ戦開幕当初、攻撃のバリエーションの少なさが課題となっていましたが、それに関してはいかがですか

宮本 僕たちが勝てない時期にミーティングしてもうちょっと速さを出すことも大事ですが、つなげるところをつなげていこうと話しました。ミーティングしたことを練習でやって、それが徐々に出せるようになったのは慶大戦だったかなと感じているので、実力としてはまだまだですが、攻撃の意識付けは良くなっていているのではないかなと感じています。それが勝ちにつながっていることが自分たちの自信にもつながると思います。

中山 バリエーションの少なさはあるかと思いますが、前期を振り返るとみやくんやヒロ(FW山内寛史、商3=東京・国学院久我山)、サイドハーフの堀田君(MF堀田稜、商4=浦和レッズユース)やこの前ゴールを決めた俊輔(MF平澤俊輔、スポ3=JFAアカデミー福島)などバリエーションが少ないながらも決める人は幅広いと感じています。拓真君(DF金澤拓真主将、スポ4=横浜F・マリノスユース)がCKから決めたり、リスタートの面だったりFWだけでない選手も決めきる力がついてきたのは、本当に良いことです。バリエーションを増やすのも大切ですが、ワセダの理想として強みの部分から得点を奪うのが大事かなと自分も思います。/p>

――リーグ戦の慶大戦を機に4連勝を上げることができましたが、やはりこの一戦はターニングポイントになったのですか

宮本 あの試合で勝てたから、明大戦(○2-1)も勝てましたし、そこからチームも勝っていこうという気持ちになったと思います。慶大戦での「ここで負けたら優勝はない」という危機感のもと力が出せたのがリーグ戦4連勝できた要因なのではないかなと感じています。

中山 あの試合で勝つことの本当の難しさを知りました。試合が終わったあと、倒れる位みんなきつそうな感じでしたし、あそこから最後の最後まで全力を出し切るということができるようになったと感じています。そのくらいしないとリーグ戦では勝てないと早慶戦で思い知らされたので、そこはターニングポイントになったと言えると思います。

――ここから宮本選手にお聞きいたします。ことしリーグ開幕直前に「チームの完成度は低いが個のベクトルは出せている」と仰っていましたが、チームのいまの完成度はいかがですか

宮本 それはリーグ戦の試合を重ねていく中でまだ完ぺきではないのですが、徐々に高まってきていると感じています。Aサブの選手も自分の強みを出して頑張っていて、下の底上げもできているので、個のベクトルも強くなっているのかなと感じています。いまのこの感じならAサブの選手がスタメンで出てもやれると思うので、あとはやっぱりいまのスタメンの選手がどれだけもっと成長できるか。Aサブの選手も成長している中で、順大戦もそうですが、ああいったところで自分たちのサッカーをもっと引き出せるようにしていかないと、他の選手にも示しがつかないだろうし、俺が出た方が勝てるのではないかという気持ちも持ってしまうと思うので、そこはやっぱりしっかりしていかなければならないと感じています。

――FWの最終学年ということで、攻撃面に関して引っ張っていくぞという思いは強いのですか

宮本 自分がしっかり仕事をすればチーム自体も勢いがつくだろうし、逆に自分が勝負どころで結果を残せなければチームの士気も上がらないというのは常に思っているので、そこは意識しています。

――ではここからは中山選手に質問です。今季は途中交代で出場することも多いですが、何か出場する際に意識していることはありますか

中山 出場時間は短いですが、勝っている時間だったら、献身的な守備をすることを心掛けてやっています。その中でチャンスがあったら点を決めたいという意識も入っていますが、チームのために勝つために何をするのかというのを考えながら常に守備の面も力を入れています。

――途中起用でチームから求められていることは何だと思いますか

中山 自分の強みとして、裏へのアクションや一瞬の速さを武器にしているものがあるので、自分が後半の相手が疲れている時間にどんどんアクションをすることによってチームも勢いづきますし、自分の強みが後半に出せればチームも良い方向に進んでくるのではないかなと思っています。

――いまだ0ゴールという成績に関してはいかがですか

中山 自分の力のなさですし、もっと成長しなければいけないと思います。リーグ戦でゴールを決めるのは並大抵のことではないと思うので、必ずゴールを決められるように自分自身を高めていきたいなと思っています。

――ことし卒業した同じFWの上形洋介(平27スポ卒=現J2・V・ファーレン長崎)選手はプロに行っていますが、その活躍を意識したりすることはありますか

中山 やはり刺激を受けます。かみくん(上形選手)から学んだことはたくさんありました。動き出しの面や守備の献身性など、そういった面ではかみくんにはお世話になったというか、そういった面でかみくんがJ2の試合で活躍していると思うと、刺激になります。

最前線で戦う男たち

対談は和やかな雰囲気の中行われた

――お互いの印象はいかがですか

宮本 雄希は最初会ったとき、無口な感じでした。でも最近は俺がちゃちゃ入れるんです(笑)。すごい先輩を思ってくれて反応してくれますね。プレーでは一瞬のスピードがすごいと思いますし、何といっても左足のシュートですね。本当にこのチームで一番だと思っているので。

中山 みやくんもすごいよ(笑)。

宮本 俺は左足じゃないから(笑)。でも本当に、一瞬のスピードから、少し交わしてドンッというようなシュートはすごいと思います。俺がGKだったら怖いと思う。あれは本当にどこに行っても一生使える武器だと思うので、そこはすごいと思います。

――中山選手はいかがですか

中山 みやくんは高校サッカーの時代からテレビで見ることもあって、こんな人がいるのか、すごい選手だなと思っていました。だから、みやくんと同じ大学に入って、一緒にサッカーしてるのはすごいことだな思っていました。でもその中でみやくんのおちゃめなところが多数あって、自分にも構ってくれるので、とても良い先輩だなと強く思いますね。プレー面は足元の技術や体の強さはうらやましいものを持っていますし、ことしも大事な場面でゴールするなどで頼もしい先輩だなと感じています。

――現在チーム内ではやっていることはありますか

中山 キングダムですかね。

宮本 そうだね。僕は、漫画は全部読み終わりました。

――漫画はどなたかの所有物なのですか

宮本 2年のDF鈴木準弥(スポ2=清水エスパルスユース)っていう選手のものです。アメトーークでキングダム芸人をやってから全部そろえたみたいです。それをみんな借りて回し読みしています。

――中山選手は読みましたか

中山 僕は読んでいません(笑)。僕はあまり漫画とか読まないので。見ようかなと思ってもどこかでやっぱり断念するので、興味があって機会があったら読んでみたいと思います。

――中山選手のはまっているものは筋トレだそうですが

中山 最近はもっと体を強くしなければと思って、体幹などをしています。

――宮本選手も筋トレはされるのですか

宮本 僕は大学に入ってから筋トレを始めました。いままでは全然やっていなくて、ことしから継続的に筋トレしています。

――試合前のルーティーンはありますか

宮本 ことしは試合前にアグエロのプレー集をずっと見ています。

中山 え!そうなんですか(笑)。

――以前はモーツァルトを聴くと仰っていましたが

宮本 『モーツァルト+アグエロ』という感じです。

――新しくアグエロが入ったということですね

宮本 はい。すごいですよね、彼のプレー(笑)。いまの自分に足りない、腕の使い方などが上手いです。アグエロっていう選手はそんなに身長が大きくないのですが、だからこそ海外のトップレベルでやっている選手は体の使い方がすごいと思います。だから真剣に見ています。

――中山選手は何かありますか

中山 自分は特になくて。強いて言うならいつも同じものを食べます。

――何を召し上がるのですか

中山 試合会場に行く前はりんごジュースとカステラとおにぎり2つとエネルギーゼリーみたいな感じです。それは今季全部変わってないかもしれません。

――カステラはどこのお店のものとか決まっているのですか

中山 カステラはセブンイレブンのです。一時期いつも買っている東伏見のセブンイレブンで品切れになっているときがあって、本当に困りました(笑)。

――そのときはどうされたのですか

中山 ファミリーマートまで行って調達しました。

「ただ勝つだけではなくて圧勝したい」(宮本)

宮本のゴールでチームを勝利に導けるか

――早慶サッカーについての質問をしていきたいと思います。まず、初めて見た早慶戦はいつですか

宮本 入学してからの前期ですかね。リーグ戦の早慶戦です。

――見たときの印象はいかがでしたか

宮本 そうですね。慶大に対してはコーチ陣も先輩も雰囲気が違いました。それがすごく伝わってきて、そこで初めて慶大ってそういう立ち位置なんだろうなと感じました。

――中山選手はいかがですか

中山 自分は父がア式蹴球部のOBということもあって鮮明には覚えていないのですが、中学生か小学校高学年のときに国立競技場に見にいった記憶があります。それで、校歌を歌うときの手の振りなど何してるんだろうと幼いながらに思っていました(笑)。

――独特な雰囲気の中でことしピッチに立つことになると思いますが、どのようなプレーをしたいですか

宮本 自分の強みを出していきたいと思います。そしてやっぱりゴールを決めたいですね。

中山 自分も出たらどんな形であれゴールを決めたいという形が強いです。

――強みというお話も出ましたが、ご自身のストロングポイントとは

宮本 僕はキックじゃないですかね。

中山 自分はさっきも言った通り、裏への飛び出しや一瞬のアクションからの左足のシュートで、そういった自分の強みを存分に出していきたいなと思います。

――MVP予想などはありますか

宮本 それは僕も狙っていますよ。

中山 自分も引き分けの状態などで途中出場するとしたら、狙いにいきたいですね。

――早慶サッカーへの意気込みをお願します

宮本 あれだけの観客の前で試合をできるのはめったにないことだと思います。しかも相手は慶大で、あれだけ盛り上がるナイターゲームです。ナイターゲームってすごく動きやすいよね?

中山 すごく分かります。何か分からないですけど自分がすごく速く感じます(笑)。

宮本 そうそう。それで自然と体も動ける感じがするんだよね。あと、早慶戦ですが、やっぱり相手に勝ちたいです。ただ勝つだけではなくて圧勝したいという気持ちがあります。それぐらいの勢いで臨みたいと思っています。

中山 自分は1年生のときツイッター速報をやっていて、2年生ではグッズ販売をしていました。だから、ことしこそは早慶サッカーに出たいという気持ちが本当に誰よりも強いと思っています。そして、この早慶サッカーという場で活躍したいです。自分自身のサッカー人生のなかであんなに多くの観客の前でプレーするのは今までなかったので、本当に楽しみたいと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 松本理沙)

得点に対してこだわりを持つFW同士、熱い対談となりました!

◆宮本拓弥(みやもと・たくや)(※写真左)

1993年(平5)5月21日生まれ。183センチ、85キロ。千葉・流通経大柏高出身。スポーツ科学部4年。強靭(きょうじん)なフィジカルを持つ宮本選手は、ことしから継続的な筋トレを始めたそうです。さらに磨きのかかった肉体で敵をはねのける姿は必見ですね!卓越した足元の技術でもワセダを勝利に導いてくれると思います。

◆中山雄希(なかやま・ゆうき)(※写真右)

1994年(平6)10月16日生まれ。174センチ、73キロ。埼玉・武南高出身。前所属・大宮アルディージャユース。スポーツ科学部3年。少年時代にア式のOBである父親と共に早慶戦を見に行ったことがあるという中山選手。ことしは自身がそのピッチでプレーする立場に。生粋のエンジ魂を胸に伝統の一戦で今季初ゴールをマークできるか。期待が懸かります!