【連載】リーグ開幕前特集 『restart』 第2回宮本拓弥

ア式蹴球男子

 今回お話を伺ったのは、フィジカルを生かした力強いプレーで得点に絡み続けるFW宮本拓弥(スポ4=千葉・流通経大柏)。「ア式として結果を残すことはもちろん、一人のFWとしても結果を残したい」。最終学年を迎えたワセダの『怪物』に、今季に懸ける思いを語っていただいた。

※この取材は3月31日に行われたものです。

オフシーズンの戦い

真剣な表情で質問に答える宮本

――現在のチーム状況はいかがですか

サッカー面においてはまだ仕上がっていないというか。古賀聡監督(平4教卒= 東京・早実)にも言われたんですけど、昨年とか一昨年に比べて完成度というのは低いけど個々のベクトルや色を出せているのはことしが一番だと。僕個人としてもそう思っています。

――どういった点で仕上がっていないと感じますか

チームの完成度というところで、やるべきサッカーを全員が意識してやっていくというところ、もちろんいまもやっているんですけどそこに関して言えば昨年のチームの方が素直と言うか、従順にやっていたかなと。ことしも素直なんですけどね。

――このオフシーズンはどのような練習を取り組んできましたか

自分たちの強みである攻守の切り替えは、通年練習していますしそこをオフシーズンでもやってきました。単純に一対一に負けない球際の強さも積み重ねましたし、攻撃に関して言えば、奪ってからカウンターですぐに厚みを出すといったこともやりました。

――波崎合宿がことしも行われましたが、振り返っていかがですか

昨年よりは素走りが少なくなったので強度的には落ちたかもしれませんが、練習の質っていう部分ではすごい高まったんじゃないかなと思います。僕自身はすごく良い合宿になったと思っています。

――オフシーズンでは多くのトレーニングマッチもこなして、それを戦い抜いてなにか得られたことはありますか

専大と2回練習試合をしたんですけど、こういったレベルの高いチーム、ポゼッションして自分たちのサッカーをしてくるチームに対して、なかなか勝てませんけど関東大学リーグ戦(リーグ戦)開幕前に積極的にチャレンジできるというのは良いことだと思います。開幕してからなにもできないっていうのでは話にならないので、この時期からそういった相手と戦えたのは良かったです。

――先日の早関定期戦(●2-3)では逆転負けを喫しましたが、具体的な敗因や課題というのはどういった点だと考えますか

前線からのプレスでボールを奪い、さらには攻守の切り替えから厚みを出してゴールを奪いにいくという自分たちの色は出せたんですけど、結局は後半セットプレーで2本やられてしいました。セットプレーというのは個人の問題だと思いますし、自分たちは(セットプレーは)守備だけでなく攻撃でもうまく機能していないというのがきょねんからあります。なのでそこは意識を変えて強みにできるくらいにしないとこの先リーグ戦でも勝てる試合を落としてしまうかもしれないので、セットプレーの弱さっていうのは修正していく必要があるのかなと思います。

――早関定期戦において、自身のプレーを振り返っていかがですか

得点は常に狙っていますし得点を挙げることが評価されるポイントだと思っているので、得点できなかったことは悔しいです。それでも2点目はアシストというかたちで貢献することはできたので、リーグ戦でも自分が点を取れなくても得点につなげるプレーっていうのができたらそれはそれで良いと思います。

――自分たちの代は真面目だとお話がありましたが、同期で話し合いをしたりすることはありましたか

僕たちが最終学年になったときに4年生でミーティングを重ねて、方向性や自分たちはどういった感じでこの組織と関わっていくのかなどを真剣に話し合ってきました。

――方向性というのを具体的に教えてください

とりあえずサッカーで結果を出すということ。そのために自分たちがやるべきことを考えて何が必要なのかを個人が互いに踏み込んで周りを促して、良い方向に持っていこうということですね。

――周りを促すということで、下級生へのアプローチというのはいかがですか

まだ下級生に対して指導し切れていないということは感じているので、そういったところをしっかりと受け止めないといけないなと思います。

――新1年生も練習に参加していると聞きましたが、印象はいかがですか

いまAチームに参加している1年生もみんな真面目で、このア式に必要な人材だと思っています。現役部員より真面目な選手もいたりして、いいんじゃないかなと(笑)。

「悪い流れを断ち切れる選手に」

宮本はどんなときでもゴールを狙う姿勢を崩さない

――ここからは昨季のお話に移りたいと思います。まず、昨シーズンの総評をお願いします

昨シーズンはリーグ戦4位、総理大臣杯も進めず全日本大学選手権(インカレ)もベスト8と何もタイトルが取れませんでした。リーグ戦も上位ですけど4位ですし、本当に何も取れなかった年だなと。僕も出場させてもらったんですけど、チームの勝利に貢献できない屈辱的な年だったと思います。

――いまも少しありましたが、昨年の自身の出来というのはいかがですか

きょねんはなかなか得点を挙げることができなくて、結果は4点しか取れませんでした。FWとして自分はシュートを売りにしているので、その売りを出せなかったっていうのが一番悔しかったですし、自分に点数を付けるなら30点くらいだと思います。

――逆にここは成長できたなと思う点はありますか

単純に守備の意識もそうですし、奪ってから起点になること、競り合いやキープですね。ゴール前でそういったところで体を張ること、ボールへの貪欲さっていうのはより磨きを掛けられたんじゃないかなと思います。

――昨年、宮本選手は「格上には勝てず、格下には勝てた当たり前の一年」だったとお話されていましたが、勝てない強豪校との決定的な差と言うのを挙げるとしたらどういったところでしょうか

どのチームも勝利を目指す姿勢は同じですが、やっているサッカーは違いますし一概には言えないんですけど、まずは一回のチャンスを決め切ったり、悪い流れを断ち切るプレーができたりっていうところですかね。自分たちは悪い流れになるとずるずると続いてしまうので、そういう悪い流れを断ち切れる選手が自分も含め足りなかったんじゃないかなと思います。

――では、そういったプレーができる選手をワセダで挙げるとしたらどなたかいらっしゃいますか

自分も目指していますし、このチームを引っ張っていかなければいけないと思っていますが、後ろの選手だったらDF奧山政幸副将(スポ4=名古屋グランパスUー18)とかもそうですね。彼は危険な場面で防いでくれる選手ですし、中盤だったら僕の後輩のMF小林大地(スポ3=千葉・流通経大柏)がボランチで出ると思うんですけど、ボールをさばけるしテクニックもあるので、きょねんにはなかったボランチからのアクセントというのが出せるんじゃないんかと思っています。得点も狙える選手なので、流れを変えるんじゃないかと。あとは相方のFW山内寛史(商3=東京・国学院久我山)も攻撃へのベクトルはすごいものがあるので、僕も含めてさらに磨きを掛けていけたらいいのかなと思います。

――他の選手の話がありましたが、いまはリーグ戦に向けてメンバーは固まってきましたか

メンバーは固定されがちですけど、この選手が絶対(リーグ戦に)出るっていうのはまだないので、誰でもチャンスがある状態です。自分たちの中でもそういう良い雰囲気はつくれていると思うので、ポジションについての余裕はみんな無いと思います。

「本当にタイトルを獲得したい」

――ここからは開幕を目前に控えたリーグ戦のお話をお伺いしたいと思います。いまのチームの雰囲気はいかがですか

ピッチ内においては自分の色を出そうと、自分の能力を上げようとみんな頑張っていると思うんですけど、少しおとなしいというか。みんなうまくいかないときに思っていることがあると思うんですけど、それを思い切り相手に伝えられないとか、それを黙って心に留めてしまう選手がちょっと多いようにも感じます。

――今季のFW陣はいかがですか

きょねんもリーグ戦後期からインカレで出ていたFW中山雄希(スポ3=大宮アルディージャユース)がことしも出ていたり、新1年生のFWも動き出しや守備の意識も良くて良いFWだなと思います。

――リーグ戦初戦の相手は国士舘大ですが、印象はいかがですか

国士舘大はリーグ戦では勝っているんですけど、アミノバイタルカップ2014の国士舘大戦(●0―2)で完敗した試合が印象に強いです。あの試合が僕の脳裏に焼き付いていて、あれがあったから国士舘大戦は勝っても余裕がないなというか、自分たちが余裕見せた瞬間にやられるなというイメージしかないので、高さもありますし自分たちの苦手とするセットプレーを強みにしていくチームなので、一発やられたらそのまま持ってかれると思うのでそこを注意して。ただ、自分たちも積み重ねてきたものがあるので、それを出せれば絶対に勝てると思います。

――注目している大学はありますか

明大と流通経大ですかね。

――どういった点で注目していますか

明大は和泉竜司選手とか全日本大学選抜にも多くの選手が選ばれているので、明大が首位候補になるんじゃないかと自分たちも話しています。誰が見てもことしの明大は強いので、あそこに負けたら自分たちの優勝は無いなと。流通経大もきょねんはインカレ優勝していますしなんだかんだリーグ戦で勝てていないので、個人としても高校時代一緒に練習していたメンバーが多くて、僕としては一番熱くなる試合だと思っています。

――今季はラストシーズンですが、特別な思いはありますか

ことしは本当にタイトルを獲得したいですし、僕個人として優勝だけでなくFWとしても結果が欲しいので、得点を取るための準備、努力を怠らず頑張っていこうと思います。

――きょねんと比べて、ことしなにか変わった点というのはありますか

より自分たちの強みを出していくというか。きょねんだったら守備から攻撃、そこから早さを出してっていう感じが、ことしはより具体的にゴールにつなげるために人数を増やすとか。そういうのはきょねんより強く意識して、実際に練習でもみんな後ろから前は僕が感じなかったことが感じられますね。

――では最後に、リーグ戦に向けての意気込みをお願いします

僕たちはリーグ戦で優勝を狙っているので、専大と明大のこの2チームには絶対に負けられません。もちろん他のチームにも負けられませんけど、自分たちが何もできなかった試合がないように、自分たちの強みを出せるようにしっかりと準備をして臨みたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 近藤廉一郎、佐藤凌輔)

◆宮本拓弥(みやもと・たくや)

1993(平5)年5月21日生まれ。身長182センチ、体重85キロ。千葉・流通経大柏高出身、スポーツ科学部4年。宮本選手がことし目標とする具体的な数字は「一試合一得点」。「それを可能にするか不可能にするかは自分次第だと思っている」と気合十分でした。必ずやこれを体現してチームを勝利に導いてくれるでしょう!