【連載】Jリーガー特集!J2愛媛FC・近藤貴司

ア式蹴球男子

 1年時からワセダの勝利に大きく貢献してきた男がいる。MF近藤貴司(教4=三菱養和SCユース)。プロサッカー選手になるという幼いころからの夢をかなえ、J2・愛媛FCへ入団。活躍の場をJリーグへと移したエンジのスピードスターに、間もなく開幕するリーグ戦への意気込みなどを語ってもらった。

※この取材は2月26日に行われたものです。

プロでの生活

愛媛の魅力を語る近藤貴

――いまは寮で暮らしているのですか

いや、寮がないので一人暮らしをしています。

――家はきょうの練習場である、北条スポーツセンター陸上競技場の近くなのですか

松山寄りの方ですね。一番栄えているところに割と近いところですね。

――こちらでの生活には慣れましたか

生活自体は慣れたんですけど、自炊ができていないので少し太り始めちゃいました(笑)。

――入団が決まるまでに愛媛を訪れたことはありましたか

練習参加したときが初めてですね。

――愛媛の良いところはどんなところですか

自然に囲まれているところですね(笑)。あと、人もみんな優しくて温かいです。

――愛媛に来て驚いたことはありますか

セブンイレブンがいままで無くて、きょねんやっとできたっていう話を聞いて驚きました(笑)。

――オフの日はなにをされることが多いですか

いままでは引越しの手続きとかをやっていたんですけど、いまは特になにをしているわけじゃないですね。ごろごろして時間をつぶしています(笑)。

――よく一緒に行動したりする選手はいらっしゃいますか

仲が良いのはMF近藤貫太ですね。慶大出身なのでもともと知っていて、こっち来てから仲良くしています。昼飯とかよく行ったりしています。

――大学とプロで一番違いを実感したのはどういったところでしょうか

1つ1つの練習の質が高いというのは一番の違いかなと感じています。

――意識的な部分での違いは感じますか

人それぞれが練習前にちょっとした体幹トレーニングをしたりとか、ここではサッカーが全てなのでみんなそれを意識して生活しているなとは日々感じています。

――質が高いということで、練習メニューにも大学との違いはありますか

頭をつかう練習が多いなと。あとはボールタッチ制限があるトレーニングだとか、常に考えながらやらないといけない練習が多いです。

――愛媛FCは今シーズンの必勝祈願を願って厳島神社へお参りに行ったと聞きましたが近藤選手も行かれたのですか

はい。この間、選手とスタッフ全員で行ってきました。

――ファンの方も来られたりはするのですか

そうですね。そのお祈りが終わったあと、ファンの方が写真を撮りに来られたりしていました。

「4年目は苦しい思いしかしてこなかった」

持ち前のスピードで右サイドから数々の好機を演出した

――大学時代の話に移ります。ア式蹴球部を卒業して数ヶ月経ちましたが、今のお気持ちは

こっちでの生活も一ヶ月弱経って、最初はプロとしての意識も薄かったんですけど、周りの人から応援してるよと声を掛けてもらったり、サポーターの方からも応援してもらって、改めてプロサッカー選手になったんだなという気持ちが強くなっています。

――サポーターの方とお話しする機会はこれまでありましたか

練習を見に来てくれた方と話す機会はありました。みなさん温かく迎えてくれました。

――ア式蹴球部に入部することを決めたのはいつごろですか

付属校出身なので、そのころから(ア式に)入るんだろうなとは思っていました。

――早大学院出身ですが当時は三菱養和SCユースに所属していたということで、学校が終わってから練習に参加されていたのですか

そうですね、夜6時30分とかそれくらいから参加していました。

――大学4年間で全日本大学選手権(インカレ)優勝も経験されていますが、これは自分にとって良い経験になったと感じていますか

優勝したときはうれしかったんですけど、その時の自分は直前でケガをしていて決勝の何分かしか出場していないので、悔しい気持ちの方が大きかったです。それと、当時の4年生の力が大きかったなという印象です。

――そこから2年間は勝てない時期が続きましたが、振り返っていかがですか

特に4年目は苦しい思いしかしてこなかったですし、自分自身の力もまだまだ足りないなと日々感じながらトレーニングに励んでいました。そういった経験を今後生かせるかどうかは自分次第だと思っているので、これからが大事だと思っています。

――では、4年間で一番辛かった時期はやはり4年目でしょうかか

そうですね、最後の年が一番辛かったです。

――そんな4年目を振り返っていかがですか

3年目の終わりから少なからずチームを引っ張らなくてはいけないという自覚が芽生えて、そんな中4年目に入って自分が結果を出したいという思いと、結果が出ないもどかしさというのを感じながらやっていました。結局チームとしても個人としてもが一番手応えのないシーズンだったのかなと思います。

――技術的な面で、4年間で成長を実感する点はありますか

1年目にリーグ戦に出ることができたのは大きかったなというふうには感じています。高校から大学に進む際に、スピードだったり技術面だったりあらゆる面において1年目で伸びたのかなと思います。

――その1年目を振り返っていかがですか

自分が試合に出ている中でも、自分が出るレベルなのかなと思いながら最初は出ていた部分もあるので、全ての部分を補うためにも練習から必死になってやっていました。

――注目している後輩は

同じ三菱養和SCユースだったDF飯泉涼矢(スポ1=三菱養和SCユース)ですね、期待しています。

――らいねんのチームはどういったチームになると思いますか

次の4年生がまじめなので下級生もみんなついてくると思いますし、チームとしてやるべきことというのは徹底されていると思います。なので、その中で一人一人の個人の力や個性を出していければ、関東大学リーグ戦(リーグ戦)も勝っていけるんじゃないかなと思っています。

――後輩の話がありましたが、では自分たちの代の印象はいかがですか

みんな仲良いなっていうのはありました。ただ、ピッチ内でもっとはつらつにやれたんじゃないかなと思います。

――いま振り返れば、そういったところが足りなかったと感じているということですか

かもしれないですね。古賀さん(古賀聡監督、平4教卒=東京・早実)からは、ぶつかり合いが足りなかったと言われたんですけど、そこを引き出し切れなかったのは自分たちの代のせいなのかなとは思っています。

――古賀監督から4年生に向けての話はありましたか

チームとして結果は残せなかったけれど、MF堂本(大輝、スポ4=兵庫・三田学園)を中心に地域貢献を自主的に行って、社会に貢献するっていう土壌は築き上げられたと言ってくれました。

――ア式蹴球部での4年間は、いまの自分にどう生きていると感じていますか

大学生になってア式蹴球部自体ものすごく自主性を重視しているというか、全部が自分次第で練習すれば試合に出られると思うので、そういったことを日々考えながら生活するっていうのは身についたのかなとは思います。

「一日一日を大切に」

体幹トレーニングでフィジカルを鍛える近藤貴

――ここからは開幕を控えたJリーグの話に移りたいと思います。開幕戦を目前に控え、いまのチームの状態はいかがですか

練習試合も連勝していてトレーニングの雰囲気も良いと思うので、この状態を保ちながら今週末に控えている練習試合を勝って良いかたちで終えられれば、良い状態で開幕戦を迎えられると思います。

――では、チームの仕上がりは良いということですか

はい。トレーニングマッチの結果にも出ているように、仕上がりも良いと思います。

――スタメンの入れ替わりという点ではいかがですか

あまり入れ替わりが激しいっていうわけではなくて、だいぶ固まってきていると思います。

――開幕を目前にして、自身のお気持ちはいかがですか

選手全員が試合に出たい気持ちがあると思います。その中でもトレーニングの中から必死にアピールしていくことでしか出場チャンスはつかめないと思うので、一日一日を大切にやっていきたいです。

――やはり開幕スタメンは意識していますか

そうですね、意識しています。

――同じJ2であるV・ファーレン長崎への入団が決まったFW上形洋介選手(スポ4=東京・早実)と連絡をとることはありますか

ちょくちょく連絡とっていますね(笑)。

――これからは相手チームとして戦うことになるかもしれませんが、それについてはいかがですか

絶対負けたくないですし、自分が点を取って勝てたら一番良いですね(笑)。

――ほかにも、三竿雄斗選手(平25スポ卒=現J2・湘南ベルマーレ)や片山瑛一選手(平25スポ卒=現J2・ファジアーノ岡山)など、ア式蹴球部のOBがJの舞台で活躍されていますが、これについてはいかがですか

 率直にすごいなと感じますし、一緒にプレーしていた先輩方なので刺激にもなって、自分もやってやろうという気持ちになります。

――愛媛FCのサッカーはどういったスタイルでしょうか

ボールを大事にしながらも積極的にゴールに向かっていって、主導権を握り続けるサッカーだと思います。

――そこでは自身の武器であり特徴であるスピードというのは生かせそうですか

生かせると思いますしそれを生かさなければ試合にも出られないと思うので、そこはしっかりと意識しています。

――今季から木山隆之監督が新たに就任されましたが、これからのチームのヴィジョンなどをお話される機会はありましたか

過去の成績を上回ろうという話がありました。14勝14敗14分以上は出そうと。過去これを越したことがないそうなので、勝ち越すことを意識すればプレーオフやJ1昇格が見えてくると思います。監督もいままでのトレーニングやトレーニングマッチを経て、絶対やれるっていうのを常に選手に向けて言ってくれているので、それを信じて自分たちはやっていくだけです。

――戦術的な面での変更というのはありましたか

去年はボールポゼッションを高めながらゴールを狙っていたんですけど、ことしはその中でプラスしてゴールに早く迫れる時は迫ったりと、自分たちで試合をコントロールすることを意識しろとは言われています。

――では、練習メニューも変わった点があるのでしょうか

ボールを動かしながらこういう時はこう動くとか、戦術的な練習が多いですね。

――開幕戦の相手は徳島ヴォルティスということで、四国ダービーとなりましたが

言われた通り四国ダービーなので、サポーターの方たちもそうですし自分たちのテンションやモチベーションも高まると思うので、開幕戦でそういう機会があるのは選手としてもありがたいです。

――今シーズンの自身の目標を教えてください

とにかく多くの試合に出て自分自身もゴールやアシストっていうかたちで結果を出し続けることが、チームとしても個人としても上のステージに行くことにつながると思うので、さっきも言ったんですけど一日一日を必死にやっていきたいと思います。

――最後に、今シーズンに向けての意気込みを聞かせてください

1年目とか関係ないと思うので、自分のストロングポイントであるスピードを武器に試合に絡み続けて、結果を出し続けられるように頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 佐藤凌輔)

色紙には力強く『全力前進』と書いていただきました

◆近藤貴司(こんどう・たかし)

1992年(平4)4月10日生まれ。167センチ。63キロ。三菱養和SCユース出身。教育学部4年。色紙に書いた『全力前進』という言葉。これは、愛媛FCが今シーズン掲げているスローガンだそうです。持ち味の推進力や突破力を生かして『全力前進』する近藤貴選手から、この先も目が離せません!