【連載】『逆襲のホイッスル』 第7回 近藤洋史主将×松澤香輝副将

ア式蹴球男子

 本連載のラストを飾るのはもちろんこの二人。主将として90周年の重みを背負い戦ってきたMF近藤洋史主将(スポ4=名古屋グランパスU-18)、『背中で示す副将』としてゴールマウスを守ってきたGK松澤香輝副将(スポ4=千葉・流通経大柏)だ。2年次から最前線で戦い、今季はチームを引っ張っていく立場を担ったからこそ結果への悔しさ、そして逆襲への思いは人一倍強い。来る全日本大学選手権(インカレ)に向け、その胸の内を語っていただいた。

※この取材は12月6日に行われたものです。

「一人一人が力を出し切れてない」(近藤洋)

今季主将としてア式蹴球部を引っ張る近藤洋

――まずは関東大学リーグ戦(リーグ戦)後期の振り返りの方からいきたいと思います。4位という結果でしたが、率直に振り返って

近藤洋 4位というかたちで終わって1位と勝ち点が12も離されてしまい、残り5試合で優勝の可能性があった状態から自分たちが勝ち切れなくて優勝できなかったのは、率直に自分たちの力不足を痛感しました。また最終節の慶大戦(●0-1)で負けたっていうのが一番自分の中では強く残ってて、悔しい気持ちしかないですね。

松澤 リーグ全試合を振り返った中でも、残り5試合で厳しい相手とやる中で1勝もすることができなかったということでものすごく悔しかったですし、洋史(近藤洋史)も言ったように最後の早慶戦で勝つことができず、慶大との連勝記録も自分たちの代で途絶えさせてしまったということで(対慶大には公式戦9連勝)、ものすごく責任を感じています。そういったことも含めて悔しさの残るリーグ戦だったと思います。

――二人のお話にも出ていましたが最後の5試合の結果が優勝に大きく関わってきました。その5試合を振り返って勝てなかった要因はどこにあったと考えてますか

近藤洋 まず得点が奪えなかったということですね。チームとして点を取れない状況が続いてしまったのが一つの要因だと思っていて、守備の面でも攻撃の面でもまだまだ足りなかったというか、自分たちの強みであるボールを奪うところであったりだとか、ゴールに速く迫る、一人一人が関係性をつくるという部分が全然出せなかったと。それが一番の要因かなと思います。

松澤 もちろん得点力の無さであったり、専大や明大相手に前後期含めて10失点していることを考えたら、自分たちがそういった力のある相手に対して通用しなかったのかなと思います。技術的な部分もそうですが残り5試合、プレッシャーのかかった中で厳しい試合を勝ち切るメンタリティーも足りなかったし、プレッシャーがかかればかかるほど力を発揮することができなくなってしまうチームであり、個人だったんじゃないかなと思います。

――優勝争いを演じた専大、明大、順大に比べて個の力で差を感じましたか

近藤洋 圧倒的に個の力が劣っていたとは思わなかったですけど、試合の中でどれだけ自分たちの個の力を発揮できていたかと言えば、その3チームに比べて自分たちが発揮できた割合の方が全然少なかったんじゃないかなと思います。

松澤 元々力のある選手はワセダにはいると思いますが、プレッシャーがかかった試合の中でその力を発揮する精神的、技術的な個の力が足りなかったと思います。逆に専大や明大はそういったプレッシャーのかかった試合の中で試合を決められる選手がいたと思うので、そういった部分の差なんじゃないかなとは思います。

――リーグ戦後期を振り返って一番印象に残ってる試合は

近藤洋 やっぱり最後の早慶戦ですね。やはり慶大に負けたということもそうですし、あれだけ人が入ってくれてパワーをもらった中でも勝てなかったということが何より印象に残ってます。

松澤 慶大戦ももちろんですけど、僕個人としては後期の明大戦(●1-2)ですね。自分自身のパフォーマンスの調子とか関係なくそこに勝てば優勝の可能性が残っていた中で、明大に敗れて自分たちの目標達成の可能性がついえてしまったのですごく悔しかったです。今季チームが始動してから一番目標としていた目標でしたし、関東リーグ(リーグ戦)優勝の可能性を明大に目の前で潰されてしまったので、内容どうこうというよりは負けたことに関して悔しさが残ります。

――マッチアップした中で一番印象に残ってる選手は

近藤洋 誰だろうな…。

松澤 こいつだけは止められないとかはなかったですね。前とかはあったんですけど。ただ印象に残ってるのは明大の和泉(FW和泉竜司)ですかね。後期もうちとやった試合の中で2得点してて、個の力で2得点を奪うというか、ああいった場面で決められるのはすごいなと思いました。自分のところに(ボールが)こぼれてくるじゃないですけど、そういった力を持ってるなと思いますね。ただ正直試合していて、「この選手すごいな」というのはあんまりいなかったですね。

近藤洋 対戦して嫌だった選手は、車屋(MF車屋紳太郎、筑波大)と和泉と専大の北出(MF北出雄星)ですね。車屋とかはボール持って上がってくるのが速くて、もちろんうまいんですけどそういったドリブルのスピードも速いなと。和泉は前線とか1、5列目でタメだとかキープができて得点力もすごいありますし、北出は2列目からボールに関わったり一気に前線に上がってくるので、(マークに)付いていくのが嫌というか難しい選手でした。

――何か後期に入るにあたって戦い方の中で変更した部分とかはありますか

近藤洋 あんまり変わってはないですかね。メンバーは多少変わりましたけど。アミノバイタル(アミノバイタルカップ)とか天皇杯(天皇杯東京都予選)とか、早慶サッカー(第65回早慶サッカー定期戦)や合宿などを乗り越えて変えたって部分はそんなにないですけど、ただアミノバイタルや天皇杯で負けてプレッシャーのかかった場面で力を出せないって部分を見つめなおして、気持ちの部分を強くするっていうのは新たに意識しました。

――後期に入り『良いボール状況をつくってから攻撃を組み立てる』ということを何度か聞きましたが、その点に関しては前期から継続していたことなのでしょうか

近藤洋 いや、前期というよりは後期からですね。まず守備のベースの部分でボールを奪うということにフォーカスしてやってましたね。

――後期も出だしは順調で一時首位と勝ち点差を『3』まで詰めましたが例年に比べてその頃のチーム状況はいかがでしたか

近藤洋 後に上位対決があるのは分かっていたのでそこまで勝ち点を落とせないっていう緊張感の中で、中大戦(○2-0)や桐蔭横浜大(○3-1)だったりとか、そういった相手に対してプレッシャーは多少ありましたけど、絶対に勝とうといういい雰囲気の中で臨めてました。桐蔭横浜大なんかはこれまでも勝ててない相手でしたので、そういった相手に対しても一人一人が強い気持ちで戦えてたのは良かったかなと思います。

松澤 流通経大までの6試合を振り返ってみても、合宿で求めてきた『試合の最後まで走り勝つ精神力』っていうのを発揮できる選手がいましたし、苦しい状況や押し込まれた状況の中でも自分ったいで悪くならず、ピッチの中で鼓舞する声が飛んでいたのは前期と違うというか、後期良くなった点だと思います。苦しい状況の中で戦い抜く意識だったり、失点しようが押し込まれようがそこから悪くならず取り返していく意識が、前期に比べてチームに付いていったんじゃないかなと思います。

――その後のリーグ戦で勝ち点を奪えず苦しい状況のときに、主将として何か働きかけたことはありますか

近藤洋 自分は1試合1試合に対して修正してというか、どこがいけなかったのかなとか考えてチームの1週間のトレーニングの中で伝えて、良い方向に変えていこうとは思ってました。ボール状況とかそういうのもそのうちの一つですし、そういったところは意識しましたね。何で勝てないのかなとか考えました。

――手ごたえは悪くなかったけど勝てなかった、ということですか

近藤洋 いや、やっぱりやってて決して自分たちがやり切った感じではなかったですし、本当に出し切って負けたという負け方ではなかったので、何か一人一人が力を出し切れてないような感じの雰囲気はありました。そこを本当に一人一人が自分の持ってる力を最大限出すためにどういう風にやったらいいのかなとか、もっとこうしたらやりやすいんじゃないのかなとか考えてました。

――松澤選手は副将として行動したことはありましたか

松澤 前期は試合の中で何かを強く伝えたりとか要求しすぎてしまうことが多く、それが選手へプレッシャーになったりストレスになってしまってたのかなと僕自身感じてました。なので後期に入ってまず自分自身が最後シュートを止めることを意識して、周りの選手には指示を出しすぎないっていうのを意識してました。実際後期に入ってシュートを止めるシーンを前期に比べて増やせたというのは良かったと思いますけど、そこを変えたことによって最後5試合はプレッシャーのかかった中で厳しい言葉を出せなかったり、力を出し切れない選手が多かったのかなと思います。最初の6試合は(変えたことが)良い方向につながりましたけど、最後の5試合では逆にマイナスになってしまったのかなと思うので、僕自身やってきたことは間違ってないとは思いますけど、チームを変える中でバランスをうまく調整できなかったんじゃないかなと思います。

――後期からシュート練習を多くやるようになったそうですが

松澤 そうですね。得点を奪えなかった試合の後に、選手を呼んで厳しく言ったというか、「もっとシュート練習しないと試合で点を決められないよ」ということを話しました。それに対し自分が積極的にシュート練習の中に入っていくこともやってました。

――お二人にとって後期のリーグ戦で一番成長した選手は誰ですか

近藤洋 たくさんというか、みんな結構伸びたよね。

松澤 俺は山内(FW山内寛史、商2=東京・国学院久我山)ですね。僕が特に夏休みというか、オフシーズンの時の試合でヒロ(山内)に対して厳しく促すような声掛けをしていて、あいつ自身それをしっかり受け止めて、それを跳ね返すために取り組んでました。それが後期の開幕戦(○1-0東京国際大)でのゴールだったり、(後期通算)6得点ということにつながったと思うので、後期に入って一番成長したのは山内だと思います。

近藤洋 トップチームで結果として成長したのは山内だと思います。ただ下のチームでも裕也(MF鈴木裕也、スポ1=埼玉・武南)とか、出てはないですけど秋山(MF秋山陽介、スポ1=千葉・流通経大柏)もトレーニングの中から成長した姿を見せたりしてます。それぞれがいろんな時期を通して、いろんな選手が成長したなとは感じました。金沢(ユニオンドリームチャレンジカップ)とかは自分がケガしてて外から見てたんですけど、あの大会もトップチームとして勝たなくてはいけないですし、優勝しなくちゃいけないというプレッシャーのかかった中で、1本目に出る選手は普段リーグ戦に出ない選手が出ることが多かったんですけど、その中で一人一人がそういったプレッシャーを背負って戦ったことが成長につながったんじゃないかなと思います。

――今季一年間と通してプレーだけでなく、主将・副将としてもお互いを評価し合ってください

近藤洋 お互いすか(笑)。

松澤 洋史、ノーゴール。いやー2点くらいですかね。まあでも正直言って、洋史いなかったらこのチームは機能しなかったんじゃないかなというくらいのパフォーマンスを見せてましたし、夏の金沢での大会では洋史がいない中で、いままで出てなかった選手がアピールの気持ちで補い、上回っていくっていう気持ちでやってました。けど洋史は下級生のころから試合に出ていたってこともあって、公式戦でのパフォーマンスはチームの中で圧倒的だったと思いますし、プレッシャーかかった試合の中でもどうやったら力を発揮できるかっていうのを一番分かってると思うので、そういった意味では洋史自身ゴールは奪えてないですけど、見えないかたちでチームに与えていた影響は大きかったと思います。

近藤洋 マツすか(笑)。今季はマツにとって苦しい状況が多くあったんじゃないかなと感じてますね。その中でチームが苦しい状況であったとしても、副将としてってわけではないですけどチームを引っ張る立場として常に要求し続けたりとか、本当に勝つために必要なことをチームに発信し続けていて、それは自分にとっても頼もしいと感じてました。マツ自身も苦しんでいる中でチームに対して発信するのは、それ以上に苦しいことだと思うんですけど、自分が責任を背負って発信し続けられたことは自分にとっては大きな助けになりました。それに加えて自分自身のプレーに向き合い続けて、自分のプレーを高めようとかする姿勢がチームに刺激を与えていると思ってますし、実際そういった面では自分自身で修正してプレーするようになったというのが今季一番表れたと思います。

――チームが苦しい状況のときとかは主将と副将で話し合いとかはしますか

近藤洋 いや、特別話したりとかはしないですね。「こうしていこう」ってのは練習前に話したりはしますけど。そんな感じかな。

松澤 特別意識してたわけではないですけど、僕と洋史は練習前のミーティングに出ているので、練習の1時間前にはグラウンドに出てますね。その後すぐにボールを蹴って、誰よりも早く動いて誰よりも多くボールを蹴ったりとかはしてます。ただ主将・副将だから早くボールを蹴ってるわけではなくて、単純にもっとキックやシュートがうまくなりたいと思ってたからやったり、練習後に洋史がセットプレーの練習をして僕がキーパー入ったりとか、やっぱチームの一番上に立ち引っ張る立場の選手がそういった取り組みをし続ける必要はあると思います。それは他の選手に影響を与えることにもつながると思うんで。

――意見がぶつかり合ったこととかはありますか

近藤洋 ぶつかったことか…。

松澤 まあありますけど、洋史は基本的に理論的というか、しっかりとゲームを分析した中で自分に対して「もっとこうした方が良いよ」とか言うんですけど、僕は結構感情的になって気持ちの部分を押し付ける傾向があって、その中でお互いぶつかり合うことは無かったですね。

――今季のア式はプレー以外も含めてどんな集団でしたか

近藤洋 まとまってる。一人一人の関係性は良い、けど主張する人はあんまりいないしぶっ飛んでるやつもいない(笑)。まあまとまってるのが良いところであり悪いところであり、主張する強いやつがあまりいないからこそ、プレッシャーがあったときに静かになってしまう、という感じですね。

松澤 良いところというよりは悪いところの方が多いですね。自分を持ってる選手が少ないってのが良いところであり悪いところかな。ただ学年関係なく意見を言えてはいたのかなと。上級生だけでなく下級生も意見を言うやつもいましたし、言われてそれを悔しさにしてやってるやつもいたのかなと思います。

――昨年に比べれば個性というよりはまとまりがあるっていう感じですか

近藤洋 まあそれが個性なんじゃないですかね(笑)。

「直してほしいところが直った」(松澤)

お互いの印象について語る松澤

――初めて会った時のお互いの印象はいかがでしたか

松澤 かっこいいやついるなと思って。顔がこうだからサッカーうまいだろうなと思っていたら、案の定サッカーがうまくて。ランテスト入ってなかったので、そういうやつだなと思いましたけど。緩い雰囲気でサッカーだけうまい選手だろうなと思いました。

近藤洋 マツは高校のときに代表に入っていたので、入る前にスポーツ推薦で流通経大柏のU-17代表にいたやつがワセダにくると知っていたので、すごいGKがくるのだろうな、どんなやつかなというのが第一印象です。

――4年ほど経ってみて今の印象はいかがですか

松澤 だいぶ変わりましたね。1年生のときは、ユースのグランパス(名古屋グランパスU-18)でキャプテンをやっていて、自分の高校サッカー出身のキャプテンと比べても、明らかに違うというか。リーダーシップというよりは戦術的に理解度が高くてゲームでキャプテンをやることにだけ長けているイメージでした。実際にピッチ外の取り組みも、緩いなとか思うこともあって、掃除中とかに結構洋史に対して怒ることが何度もあったし、こいつこのまま学年のキャプテンをやって大丈夫かとか先輩に相談していて。でも、3年のある出来事をきっかけに急に変わりだして。

近藤洋 3年かかったか。

松澤 3年かかったよ、実際。だけど、正直いまはこんなに変わるのかというほど、頼もしくなったというか、ピッチ内外誰もが信頼している選手になったと思います。

近藤洋 下級生のときは人に要求とか言わなかったよね。

松澤 いや、結構バチっていたよ。ミサくん(三竿雄斗、平26スポ卒=現J2・湘南ベルマーレ)とか。でも、洋史はおれ以上にバチってます

近藤洋 俺の方がバチってますね

松澤 僕とミサくんはぶつかり合いというか、本当にちゃんと気持ちがこもった感じなのですが、洋史はケンカっぽかったです。こいつもふてくされるので、ミサくんも普通言い合うというよりは、態度に対してキレることが多かったので、洋史とミサくんはケンカですね。でも、ミサくんは入った時からですね。バチバチしていたのは。

近藤洋 仲はめちゃくちゃいいです。

松澤 仲はいいです。ピッチ入ったら関係ないので、もちろん言い合いますけど。

――主将副将としての相性はいかがですか

近藤洋 いいんじゃないですか。

松澤 いいと思います。僕は気持ちのタイプなので、練習の雰囲気とかを感じ取ったりしていますが、細かく具体的に言える頭がいい選手ではないので、気持ちの部分とかサッカーのこだわりの部分とかをみんなに伝えています。洋史は戦術的な部分で細かく指摘していて、サッカー分かっているなという気持ちがあるのでそこは任せて、戦う姿勢とか気持ちの部分を指摘していて、バランスは取れていると思います。

――お互いに直してほしいところはありますか

松澤 ここにきてないですね。直してほしいところが直った(笑)。

近藤洋 3年で。

松澤 3年で直してほしいところが直った。これだけ不安だなと思っていたことが不安じゃなくなって、そんなに変わるというくらい変わったので、直してほしいところはないです。

近藤洋 マツは同じことを繰り返し言って話が長くなることです。

松澤 それはしつこくくどいと言われるまでやらないと。そこがおれの良さかもしれないじゃん。

近藤洋 言い回しとかは変わっても、言っていることは同じじゃないみたいな感じがあるかもしれない。

松澤 それは頭が悪いからしょうがない。でも、自分で悪いところは分かっているから。何も関係なしに怒るというか理不尽に怒ることが多いですね。

近藤洋 マツそこで怒るみたいな。それはちょっとどうなのかなと言うのはありますね。

松澤 1回ヒロに対してシュート練のときにキレたことは、おれの中でああこれ違ったわと結構思いました。

近藤洋 ヒロがチームとして点取れていない時期の紅白戦に出て、松澤がシュート練習しようとチームに言っていて、その合間に共有グラウンドにいったときのフリートレーニングで、俺はシュートを打っていたんですが、ヒロはパスをしていたら、マツが「シュートしろよ」って怒って。おれは個人の自由だしなと思っていたのですが、練習終わった後におれのところにヒロが来て、「おれはあそこじゃなくて練習終わった後にシュートをトレーニングしようと思っていたんですけど」って言ってきたので、マツを呼んで納得させました。

松澤 完全にひねり倒されたんです。そのフリートレーニングの後に、ランのトレーニングがあったので、それに備えてという意味でもやっていたと思うのですが、半強制的にやれというように怒ったので、あのときは何も考えずに点が取れない状況にイライラして、言ってしまったという反省はあります。実際そのくらいじゃない、おれ。あれは本当にやっちゃったというくらいでしょ。

近藤洋 ごくたまにあったけどね。それでそんなに怒るかみたいなことはあったけど。全部感情を常に出して言い続けてくれて、たとえ間違ったとしてもいいです。

――お2人とも同じ学部に所属されていますが、勉強の方はいかがですか

松澤 完全に単位に表れちゃっていますね。洋史はフル単でぼくは何単位も落としているので、洋史は要領がいいです。でも、おれの方が頑張っていると思うんです。板書とかすぐに書いたりとかしているのに、結局板書したルーズリーフをテストの前に忘れたり、書いたことを全く覚えていないとか。洋史は最後の最後にみんなに見せてもらったりして、ちゃんとうまくやります。ぼくは1か月前とかにやり始めるのにできないので、しょうがないと思いました。

近藤洋 残念だね。

松澤 残念なやつです。要領が悪い、要領がいい、以上です。

――4年生ということで、卒論の進み具合はいかがですか

松澤 だめです。

近藤洋 ぼくは、かたちはできたので。

松澤 ほら、こういう感じじゃないですか。全然できないです。

――テーマは何ですか

近藤洋 大学サッカーのブランドイメージ?についてです。あとは、大学サッカーの選手と学連、観戦者にアンケートをとってと言う感じですね。

松澤 ぼくは心理的競技能力というのが・・・

近藤洋 いい、そういうの。

松澤 いいの、そういうの。ちょっと頭良く見えるでしょ。心理的競技能力テストというのがあるのですが、もともとそういったアンケートがあるので、それを竹谷昂祐コーチ(平26スポ卒=ガンバ大阪ユース)に卒論のテーマ決めを相談したときに、そういうアンケートがあるよと言われたので、アンケートをだれにとるかをきめるときに、自分がいたベルディ(東京ヴェルディJr.ユース)と流通経大柏で2つともいい成績を残しているので、そのクラブチームと高校サッカーという違う環境の中でやっている選手の心理的競技能力の違いをアンケートでとって差がでるのかという比較についてやっています。ただ、全然進んでいないです。やばいです。

――4年生あるあるはありますか

松澤 何かを開催するときに、学年で共有しないで1部の間だけで共有して、あとからそうなの、っていうパターンが結構多いですね。

近藤洋 マツは多いです。

松澤 基本そういう場に積極的に参加しないので、ノリが悪いから1年生のときから誘っても来ないという。

近藤洋 松澤と小川(DF小川弘志、教4=広島なぎさ)はノリが悪い。

松澤 ノリが悪いですね。だから情報が全然入らない。

近藤洋 貴司(MF近藤貴司、教4=三菱養和SCユース)は気分屋過ぎて自分が強くて、きょう面倒くさいからいいやとか、きょう疲れたからいいやとか。

松澤 あいつすごく偉そうで、すごく決定権があるんですよ。みんなが行こうって言っているのに、やだとか、しょうがないなと。あいつわがままなので

近藤洋 ぼっちゃん。

松澤 ぼっちゃん。ただの温室育ち。

――一番ノリがいいのは誰ですか

松澤 ノリがいいのはFW上形洋介(スポ4=東京・早実)とか。

近藤洋 あと、園田(MF園田慎一郎、社4=東京・早実)は幹事好きです。いろいろ開催とか企画してみんなを集めるのが好きです。

松澤 秋岡(FW秋岡活哉、政経4=FC東京U-18)も

近藤洋やろうとか言うけど、結局やらないじゃん。

松澤それだ。口だけ。ノリは抜群だけど口だけ。やろうぜとか言い始めるノリとかはいいけど、力がない。やる力が。

近藤洋園田はやりきる。

松澤秋岡と園田の決定的な違いはそこじゃないですかね。

――最近会った面白い出来事はありますか

 ア女(ア式蹴球部女子)が、勝手にア式にあだ名をつけていたことですかね。清水(DF清水大志、創理4=東京・早大学院)が『マルフォイ』でした。

一同 (笑)。

松澤 海野(MF海野洋介、社4=東京・早実)とか恩ちゃん(DF恩田雄基、スポ3=埼玉・西武台)も面白いあだ名をつけられていました(笑)。ア女は4年じゃなくて、3年が勝手に4年生に言っているらしいんですよ。「あ、○○来た」とか。それはどうかと思いますけど、勝手にあの人かっこいいとか、似ているねとか。そういうのがありましたね。

――近藤洋選手と松澤選手には何かあだ名をつけられていましたか

松澤 絶対あると思ったら、おれはなかった。たぶん興味ないし、関わりがない。洋史はなかったっけ。

近藤洋 俺、『プリンスくん』。

松澤 出たプリンスくん。なんじゃそれ。おれ吉田麻也とかそういう感じかと思ったら、何もなかったです。面白い話はア女がア式に勝手にひどいあだ名をつけているということですね。

チームを日本一に導く

インカレへの強い気持ちを語る二人

――インカレが近づいてきた中で、いまのチームの雰囲気はいかがですか

近藤洋 いまはトレーニングから競争ということを意識していて、まだまだ競争の意識が薄いというところがあったので、監督(古賀聡監督、平4教卒=東京・早実)からの刺激もありましたし、その中でも週末にいい相手と練習試合が組んであって、それに向けて自分たちのサッカーを高めようという意識はすごく強くあると思います。

松澤 僕はチームを2週間離れていて、オフシーズンはリーグ戦終わってからのトレーニングをまだ試合を含めて3回しかいなかったので、チームの状況とかも詳しくは分からないです。でもきょうの練習試合(対湘南ベルマーレ)を見た感じでも、メンバーがリーグ戦のときのスタメンと大きく変わっていて下級生が多く出ている状況なので、そういう下の選手のアピールや、自分が試合に出るという気持ちを持ってプレーしているのかなとは思います。ただその状況は決して良いとは思わなくて、いままで出ていた選手がそれを取り返すためにやらなきゃいけないと思いますし、特にインカレ前の最後の1週間のトレーニングではものすごい競争意識でみんなが取り組むと思います。

――古賀監督からの刺激とは、具体的にどのようことでしょうか

近藤洋 競争がないということです。練習のときから抜かしてやろうとかそういった気持ちが表には出ていなかったので。

――主将、副将としては何か刺激を与えていたことはありますか

近藤洋 僕は一つ一つのトレーニングで要求することや、どうしていくのかということをチームに伝えることですかね

松澤 自分自身の力で練習環境をつくって、練習の質を自分の力で高めていくという意識を持ってトレーニングをしています。それはすごく難しいことだと思いますが、自分自身がアピールも含めて、練習のところからシュート練習など、そういったところで自分をアピールすること。そこで自分がシュートを止めることができれば、自然と練習の質は高まっていくと思いますし、攻撃陣にとってもそれを打開するためにいろんなことを考えるようになり、自分がそういったいいプレーを出すことによってすべての質が高まると思うので、自分にすべて責任があるという意識で取り組んでいます。

――4年生ということで、引退の時期が近づいてきたことについて思うことはありますか

近藤洋 ありますよ。終わりが近づいている意識というか、気持ちは入りますし。自分はサッカーが終わってしまうので、そこに関しては自分のプレーをこの環境でやれるのもあと少ししかないので、そういった意味では本当に親を含めて、いままで自分のことを応援してくれた人や試合を観に来てくれる人に対して、最後に最高のプレーを見せたいというモチベーションはすごくありますね。

松澤 僕は次のステージでもサッカーを続けるつもりですが、このチームでのタイトルや自分自身の存在の大きさを残したいなと思っていて、自分が抜けた後も理想のGKであり続けたいというか、そうなれれば後輩たちも追いつくためにそういう気持ちで取り組んでくれると思いますし、また自分自身最後の大会でチームを勝利に導いて優勝させることが自分自身にとっても次のステージに向けても、ものすごく大事なことになると思うので、とにかくチームのためにチームを優勝するために、ピッチ内外で行動していきたいなと思います。

――古賀監督とサッカーをするのもインカレで最後になりますが、共に歩んできた4年間はいかがでしたか

近藤洋 成長させてもらったというか、先ほどもマツが言いましたけど入ったころは高卒な感じだったので、そこからいままでにかけていろんな刺激やカベを自分自身につくってくれて、それによってこんなに自分が成長できたと思います。そのため結果としてタイトルを獲りたいと強く思います。

松澤 僕自身は古賀さんと出会えたことによって、自分自身変化したと思います。ここに来て本当に良かったなと思いますし、古賀さんにも4年間指導してもらった中でプレーヤーというよりは人としてのあり方というか、人間性をものすごく磨かれたというように感じています。人としてどうあるべきか考えることによって、プレーヤーとしても大きく成長できるということをものすごく実感できた4年間でした。監督にものすごく感謝していますし、それを恩返しするには最後のインカレを優勝して監督を胴上げして、そこで初めて監督に恩返しができると思います。

――インカレで注目している選手、チームはありますか

近藤洋 明大に勝ちたいですね。専大もそうですけど、明大に勝ちたいというのは強くあります。選手なら…あえて言うなら10番の小幡(MF小幡元輝、関西学院大)ですかね。関西リーグ(関西大学リーグ戦)で優秀選手とかにも入ってて、きょねんもアシスト王と活躍しているので。関西学院大とやりたいってのいうもあるので、まあ明大か関西学院大のどっちかとやりたいですね。まあ明大に勝ちたいな。

松澤 勝ち上がっていくとどことやってもリベンジマッチになるのかなと思っていて。初戦の相手は分からないですけど(岩教大に決定)、準々決勝から阪南大や慶大だったりで、2年前に総理大臣杯の準決勝で負けた相手が阪南大で、最終節負けたのが慶大っていうのもありますし、自分たちが悔しい思いを味わされたされた相手が勝ち上がってくると思うので、どことやっても勝ちたいなとは思います。注目選手は、関西リーグで得点王になったFWの呉屋大翔(関西学院大)ですね。昨年のインカレ1回戦も大翔にやられて負けましたし、高校時代に一緒にプレーしてきた仲間というか後輩ということで彼の成長は刺激になりますし、大学屈指のストライカーなので注目してます。

――専大にはここ4年間で一度も勝てていないということで決勝でリベンジしたい気持ちはありますか

近藤洋 そうですね、やりたいです。

松澤 僕も借りを返したいです。

――チーム内でも専大に勝ちたいっていう話は出ますか

近藤洋 うーんまあ…専大には勝ちたいですけど、それって勝つことが前提じゃないですか。でも自分の中では初戦が一番怖いです。もちろん明大や専大に勝ちたいっていうのがすごくあるんですけど、初戦が一番怖いっていうイメージがあります。愛知学院大か岩教大のどっちかですけど、そこに対してすごく危機感は持ってます。

松澤 僕ももちろん専大、明大に勝ちたいっていう思いはありますけど、自分たちはそれを言える立場ではないというか、自分たちの力を考えれば先を見据えるチームではないと思うので、相手がどこでもインカレは最後というところでどこもすごくエネルギーを出してくると思いますし、どのチームでも間違いなく厳しい試合になると思うので、初戦しっかり勝つために準備したいなと考えてますね。

――インカレで期待しているワセダの選手は誰ですか

近藤洋 マツです。マツが全部止めて、PKも止めれば優勝できます。

松澤 俺ですね、懸かっているの。インカレで優勝したチームのGKがベストGKになっていますし、チームを勝たせられるGKというのがチームを優勝させていると思うので、GKの力は大きいと思います。僕に懸かっていると思います。きょう湘南と練習試合をしたときもPK戦をやってもらいましたし。

近藤洋 止めれないからね(笑)。

松澤 止めてないんですよね。だから俺2本目出たのかな。俺そんな気がして。

近藤洋 いやいや序列だよ。

松澤 やっぱ序列か。まあでも逆にPKになっても勝てる力は必ず付けます。あと期待する選手でしたけど、期待する選手は、貴司(近藤貴司)です。彼はリーグ戦でなかなか結果を残せずに悔しい思いをした選手なので、今シーズン味わった悔しさを取り返してチームを勝利に導いてほしいと思います

――ここまでインカレ前対談をしてきて近藤洋選手に期待してる方はかなり多かったです

近藤洋 まず、僕点を取ってないんですよね。なので本当にチームを勝利に導いてないんですよね。自分の中では、俺が活躍しなきゃ勝てないって思ってます。

――ノーゴールはやはり意識してましたか

近藤洋 いやそれはもちろんします。すごいしましたよ。

――インカレでは得点の意欲も強いですか

近藤洋 そうですね、めっちゃ点取りたいですし取ります。いまシュート練習だけでなく、前線に顔出す動きも練習中です。1試合で1点取る練習とイメージはしてます。

――それでは最後にインカレに向けての意気込みの方をお願いします

近藤洋 最後の最後ですし、いろんな思いがあります。その中でも一番強いのは感謝の気持ちで、いままで自分がサッカー続けてきてそれを支えてくれた親だったりとか、大学に入って自分を成長させてくれた監督だったりとか、仲間に対してだったりとか、いろんな方に対して感謝の思いがあります。その中でさっきあったように多くの人が期待してくれて、自分が活躍しなければ勝てないというよりかは、自分が活躍してチームを優勝させるという意識を強く持ってるので、主将として自分自身にプレッシャーをかけて自分がチームを日本一に導きます。

松澤 4年間の集大成として臨むインカレになりますけど、僕自身この4年間でうれしかったことよりも悔しかった経験の方が多かったですし、特にことし1年間は副将としてチームにタイトルをもたらすことができなかったという責任を感じてます。そこまでに味わった悔しさというのをインカレのタイトルで取り返したいという気持ちでいますし、支えてくださる方のためもそうですが、僕は特に古賀さんのために何としてもインカレで優勝したいと思ってるので、自分がチームを勝利に導き日本一になります。

――ありがとうございました!

(取材・編集 栗田麻里奈、増山祐史)

最後の大一番に向け意気込みを色紙に書いていただきました

◆近藤洋史(こんどう・ひろし)(※写真右)

1992年(平4)10月12日生まれ。身長174センチ、体重66キロ。愛知・安白東高出身。前所属・名古屋グランパスU-18。スポーツ科学部4年。『感謝』の文字を色紙を書く際、マジックペンの太い部分での上手な書き方を松澤選手に教えてもらってた近藤洋選手。違いを実感したのか、かなりうれしそうに何度も練習していました(笑)。飽くなき探求心はピッチ外でも表れているのですね!

◆松澤香輝(まつざわ・こうき)(※写真左)

1992(平4)年4月3日生まれ。182センチ、80キロ。千葉・流通経大柏高出身。スポーツ科学部4年。2年時から活躍してきたワセダでのサッカー生活も残りわずか。卒業論文締め切り間近の中迎えた今対談中、ほぼ完成した近藤洋選手に対し、焦りをみせていた松澤選手。正反対の2人ですが、主将副将としての相性は抜群だそうです!