【連載】早慶サッカー定期戦 第5回上形洋介×園田慎一郎

ア式蹴球男子
 

エンジが誇るストライカーであるFW上形洋介(スポ4=東京・早実)と、つぶし屋としてチームに貢献しているMF園田慎一郎(社4=東京・早実)。2人の出会いは小学校時代にまでさかのぼる。そして東京・早実高で3年間共にプレーし、共にア式蹴球部の門をたたいた。ケガに苦しんだり、レギュラー争いの波にのまれたり、これまで日々は決して楽なものではなかった。そんな2人が一緒に出場できる最初で最後の早慶サッカー定期戦(早慶サッカー)に懸ける思いとは――。

 

※この取材は6月19日に行われたものです。

「危機感を感じた」(上形)

前期の自身のプレーを振り返る上形

――関東大学リーグ戦(リーグ戦)を振り返っていかがですか

園田 個人的には初めて出たリーグ戦だったので、最初は緊張と期待がありました。この前の(専大との)首位決戦は負けて3位という結果で終わってしまったのですが、まだまだ後期で挽回して優勝する機会があると思うので、それに向けてやっていきたいなと思います。

上形 だいたいみんな同じになっちゃうんだよね。

園田 だってここはまだまだ(笑)。

上形 最後首位になれるチャンスがあった中で勝ち切れなくて。勝負弱さというのがチームにあると思いますね。

――上形選手は3年後期のケガから復帰されましたね

上形 最初の方は自分の中で試合勘はありませんでした。試合を積んでいく中で自分の持ち味を出せるようになってきて、得点もできるようになってきました。最初の5節くらいは点が取れない状態が続いて少しブランクの影響もあったのかなと思いますが、いまは自分のプレーができていると思うのでやっぱり点が欲しいですね。

――園田選手は今季からAチームということですが、どの部分が評価されたのだと思いますか

園田 一番評価されたのは守備の部分であったり、泥くさいプレーであったりだと思っています。その部分も全ての人ができるものではないので、誇りと責任を持ってやっています。

――開幕戦のスタメンを告げられた時はどのようなお気持ちでしたか

園田 すごく緊張しました。前日の夜はあまり緊張しなかったんですけれども、当日の電車とかではすごく緊張して。でも同じ学年のみんなや後輩たちと会って、声を掛けてもらって。そこで1回緊張がほぐれて、やってやろうという気持ちになりました。

上形 開幕戦のミーティングで泣いていました。

園田 試合前にね(笑)。熱くなっちゃいました。

――試合前にミーティングがあるのですか

上形 試合直前にミーティングがあって、一人一人話すんです。

園田 そうなんです。熱いものを持っているということで(笑)。

――お2人とも以前のアンケートで、印象に残っている試合にリーグ戦第7節の早慶戦を挙げています

園田 早慶戦というのはワセダにいる自分たちにとって特別なものとなってきます。前節で負けていていろいろな意味で大事な一戦になりました。自分自身も前期で一番良い試合ができたと思いますし、チームとしても良い内容だったと思うので、その試合を挙げました。

上形 チームとして90分間通してワセダのサッカーができていなかった中で、早慶戦では90分を通してワセダのサッカーができたと思います。リーグ戦にもかかわらずたくさんの人が応援に来てくれて、それが力に変わったというのもあります。

――ここまでのご自身のプレーを振り返ってみていかがですか

園田 少しずつリーグ戦の雰囲気やスピードに慣れてきて、ボールを奪える回数も増えていったりもしています。でももっともっと自分がボール奪わなければいけないと思っていますし、攻撃の面でももっともっと自分がアシストしたりゴールを決めたりしてチームに貢献したいと思います。

上形 自分はまだ点が少ないなと思います。

――いまは自身のプレーについて振り返っていただきましたが、お互いのプレーについてはどのように思っていますか

園田 実際に一緒にやっていると、前にいてくれて頼もしいなと思います。大事な試合で点を取ってくれるところは高校の時から変わらずで。背中で引っ張るというか。エースストライカーなのかなと思います。うん(笑)。

上形 常に内に秘めているものがありますし、それをピッチ上で一番示してくれているのはソノかなと思います。相手の芽をつぶすことに関してはこのチームで秀でていると思うので、頼もしい限りですね。

――首位決戦となった専大戦を振り返っていかがですか

園田 僕はその試合サブという立場になってしまって、非常に悔しい思いで外から見ることになりました。洋史(MF近藤洋史主将、スポ4=名古屋グランパスU―18)であったり他の4年生であったり、後輩たちが戦う姿を見て勝ってほしいというのが正直な気持ちだったんですけれども。自分がいない悔しさ、自分が試合に出てチームを勝利に導きたいという気持ちもあって、個人としてもチームとしても悔しい試合となりました。

上形 自分はリーグ戦で専大と対戦するのは初めてだったんですけれども、実際にやってみてそれほど大きな差というのは感じませんでした。でも0-3という結果になってしまって。自分たちもチャンスは多かったんですけれども、守り切る力であったり、チャンスを決め切る力であったり、根本的なところで大きな差があったなと思いました。自分たちはもっと詰めていかなくてはいけないと危機感を感じました。

――専大のMF前澤甲気選手にはどのような印象を持っていましたか

上形 周りにいる選手がうまくて、連携であったり息の合ったプレーであったりそういうのをしっかりと生かして、ゴールに結びつけています。自分たちとの試合でも点を取っていましたし、得点ランキングも1位でやはり意識していますね。これから追い上げる立場ですし。

――いまワセダの中でポジション争いが激しいと思うのですが、その点についてはどのように考えていますか

園田 試合に出られる選手というのはチームを勝利に導いたり常に高いパフォーマンスをし続けられたりする選手であると思います。気持ちの部分で強くなければいけないし、自分の強みを常に体現し続けられる人がレギュラー争いに勝っていくと思います。同じポジションでプレーする選手とは強みとか特徴とかが違うので、自分の特徴を前面に押し出して、それプラス、強い気持ちを持ってプレーしていればスタメン争いも勝ち残っていけるのかなと思います。

上形 FWはことしだけではなくて毎年上にも下にも良い選手がいて、一回一回の練習で少しでも気を抜いたら抜かれると思っていますし、それが一日一日の成長度を上げてくれていると思います。2年生の時はポジション争いで負けて試合に出られず、3年生の時はケガでチームを離脱してしまって、ことしこそは失わないという思いがありますね。

――宮本選手(FW宮本拓弥、スポ3=千葉・流通経大柏)との2トップはいかがですか

上形 きょねんは自分が競り合って、もう1人の方が拾う人という2トップでした。いまは自分が拾うこともあって、いままでとは違いますけれど、宮本はボールを収められて前を向いた時にはチャンスをつくれますし、やりやすさはあります。まだでもお互い同じ動きをしてしまうなど詰められるところはあるので、試合を積みながら直していきたいですね。

――アミノバイタルカップ2014と天皇杯東京都予選では予想外の結果となりました

園田 それは完全に自分たちの力不足というか、技術面とメンタル面の弱さが出てしまったのかなと思います。その責任を負わなければならないのは僕たち4年生だと思いますし、4年生がもっとしっかりとしなければチームは強くなっていかないと思うので、リーグ戦後期開幕までもう一度しっかりとやっていきたいと思います。

上形 トーナメントということで負けたら終わりの大会でした。いままでリーグ戦をやっていて負けても次があるという状況の中で、トーナメントが始まってプレッシャーがかかった時に自分たちが力を出し切れないことを再確認できました。サッカーの基本的なところを磨いていかなければいけないですし、勝ち切る力も自分たちにはまだ足りないと思います。

――チームの具体的な課題は何でしょうか

園田 もっと一人一人が独り立ちするというか、その試合に対して圧倒的な存在感を持って臨むことが必要です。どんな状況になってもそれを耐えてはねのける力というのをまだ持っていないので、試合の流れにのまれてそのまま負けてしまうことが多いです。自分たちの立ち位置が分かったと思うので、そこから目をそらさずにやっていくことですね。一人一人が自覚と責任を持ってやっていくことで、もう一度勝利を得ることにつながるのかなと思います。

上形 自分はやっぱり得点力のなさですね。一人一人がもっとゴールに向かって動き出さなければいけないですし、FWでは自分が点を取れていないということが、チームが勝ててない現状につながっていると思います。自分が点を取った試合は全部勝っているので責任を感じています。

2人の素顔

今季からスタメンの座を勝ち取った園田

――2人はいつごろ知り合ったのですか

園田 小学校の5年生くらいですかね。4か5?5年生くらいです。

――出会ったきっかけを教えてください

園田 チームは違ったんですけれども同じ新宿区でやっていて、大会で見たことあるなあって。うまい人いるなあって思っていました(笑)。

上形 選考会にいたんだよね。3区くらいが集まるんですけど、新宿区から行く人も数少ない中で、ソノがいたんです。ちょっと話したよね?

園田 ちょっとね。「おお…」みたいな(笑)。

上形 それが初めてです。

――話した時のお互いの印象はいかがでしたか

上形 俺は話し掛けた時、老けているなと思っていました。

園田 小学校のころから!?(笑)それはないだろ!それはまだだろ!

一同 (笑)。

上形 小5なのに老けているなあって。

園田 まじか。

上形 けっこうそうだったよ。

園田 小5から?

――いままでそのような話はされていなかったのですか

園田 いや、小5というのはびっくりしました。高校時代に再会して老けているなと思ったというのは聞いていたんですけど、小5の時からというのは衝撃を隠せないです(笑)。いや小学校のころは結構若かったよ、かわいかったよ。写真見てみ?

上形 変わらないです。本当にこんな感じでした。

園田 いまは歳相応になってきたかな。やっと歳が追いついてきました。

――園田選手の上形選手の印象はいかがでしたか

園田 やっぱすごいなあ、オーラ持っているなって思いました。大きくて、足長くて、新宿区の大会でもブイブイ言わせていたので。

――お互いだけが知る意外な一面はありますか

園田 何にしようかな。ある?

上形 整理している。意外な一面ですよね?

園田 意外な一面なあ。

上形 女性から人気です。

園田 ははっ(笑)。そうなんですよ。俺は意外と女性から人気なんです。

上形 でも、本当にこれは絶対なんですけれども、一線は超えないんです(笑)。お父さんにしたいんだよね。

園田 良いパパランキングは常に1位です。

上形 パパにしたいランキングは1位なんですけど、彼氏にしたいランキングになるとランク入ってこないという。

園田 謎なんだよね、そこは。

――思い当たる原因は何かありますか

一同 (笑)。

園田 数々あるんですけれども、圧倒的に挙げられるのは良い人止まり、こちらの押しが弱い、その2点です。ことしは克服しようと思っているんですけれどね(笑)。

上形 意外じゃないですか?

園田 彼女いそうとは言われるんですが、いないんです(笑)。

上形 ブイブイ来るよ(笑)。

園田 上形の意外な一面は…。良い方と悪い方とどっちがいい?

上形 いや、良い方。これ全部出ちゃうから。頼む。

園田 先に悪い方を言うと…。足がくさい。

一同 (笑)。

園田 いやこいつ、くさいんですよ。

上形 違うんだって。違う違う。

園田 こんなかっこいいのに足がくさい。

上形 じゃあ「一時期」入れよ。スパイクの通気性が悪かったから。

園田 一時期、足がくさかったです。言わされたわー(笑)。良い面は本当に家族思いです。家族の仲が良いというか。

――何か家族思いなエピソードはありますか

園田 家に遊びに行った時に、初回から家族全員が「そのく~ん!!」みたいな感じできてくれて、「え、何この家族」ってなりました。洋介も、「ゆっくりしていけよ」って。そういうことです。なんか人の良いところを見つけてくれるらしいです。

――チームの中ではお互いどのような存在ですか

園田 いまはどんな存在なのかな?めちゃくちゃ仲が良いんですけれども、いかんせん遊びに誘ってくれないです。

上形 違う。それを言い訳にして、こいつは俺を遊びに誘ってくれないんです。

園田 全然遊んでくれないんですよね。でも合宿とかのバスとかでは隣の確率が高いです。

上形 俺は一人でイヤホンをつけてYouTubeとか見たいんですけど、こいつが二人で聞きたがるんですよ。

園田 ちょっと待って。逆だろ(笑)。

一同 (笑)。

上形 俺は1人で聞きたいんですよ。

園田 逆でしょ。「最近良い曲ないの?」から入って、一緒にハモネプまで発展していくっていうのがいつものあれでしょ?歌いたがるよね。これから合宿つらいなって思った時に隣を見たら上形くんがいて、音楽でも共有しようかなって。帰りも頑張ったなあと思ったら上形くんが横にいて、この思い出を共有しようかなと。いつもつながっているんですよね。

上形 だいたいソノのチョイスで流していくんですよ。俺はあまり乗らなくていやいやな感じで聞いているんですけど、俺が選んだ時は、「え、違くね?」って変えちゃうんです(笑)。

園田 違うよ、結構ヒットするじゃん(笑)。

上形 するけど。

園田 「え、何で分かっているの?」っていう時あるよね。

上形 あれもうそ。

一同 (笑)。

園田 違ったの?なんかごめんね(笑)。

――どんな曲をかけるのですか

園田 行きはやっぱりノリノリ系だよね。帰りはバラードで浸りにいきます。

上形 でも俺のテンションがハイのときも、まだしっとりした曲流すんだよね。セリーヌディオンとか。

園田 ああセリーヌディオンね。

上形 「全然違うじゃん」って思いながら。

園田 セリーヌディオンはすごいよね、一回落ち着けてくれるから。

――早実での思い出はありますか

園田 クラスは一緒になったことないよね。

上形 あるだろ。3年の時。

園田 ああ、ある!(笑)あれはでも選択で分かれるから仕組んだよね。1、2年生は違ったんですけど、まあ部活の思い出の方が強いです。

上形 部活では結構一緒にいましたね。

園田 帰り道も一緒だったので。

上形 俺が一応キャプテンで、ソノが副キャプテンだったんですけど、おれは淡々とプレーするという感じで、ソノがげきを飛ばす感じでした。

園田 鬼軍曹だったよね。

上形 頼もしかったです。そこに感謝。

園田 それはお互い様だよ。頼もしかったよ。

上形 私生活でいうと、高1の時は、あまり出てこなかったよね。高校でちょっと名前が挙がってくるような人いると思うんですけど、全くそうではない。

一同 (笑)。

園田 そうだったっけ?まじで?それはクラスの問題だわ。隔離されていたんですよね。それはしょうがない。

上形 クラスのイケイケなやつに園田って名前出しても、「え?」みたいな。

園田 たしかに疎外感はあったかな。オフとか遊びに行ったりしたっけ?

上形 俺が覚えているのは、高1の一番最初に買い物に行ったこと。覚えている?俺の私服だけ超ダサくて。

園田 覚えているわけない(笑)。覚えているの?

一同 (笑)。

上形 自覚はしていたんですけれど俺の服がすごくダサくて。それでちょっとおしゃれな店のマネキンを見て、真顔で、「洋介これ買えばいいじゃん」って。

園田 あれはだって自分がいけないでしょ。あの時は面白かったね。

――試合での思い出はありますか

上形 高2のオフシーズン、開幕前に練習試合がずっと土のグラウンドで続いたんですけれど、ソノは土のグラウンドだと最強なんです。みんながぬかるんでいるところで足腰に苦しんでいる中、ソノは足の太さで全部踏み込めるんです。超越していたね。

園田 足の強さはね。

上形 高校の監督やコーチが合わせて4人くらいいたんですけれど、一人ずつ話す時に「きょうの園田がみんなが目指すべきところだ」って言ったら、他の人も「きょうの園田は…」って全員が園田を褒めちぎって。園田の日みたいなのが3日くらい続きました。

園田 あの時は覚醒していたね。洋介の思い出は、高3のリーグ戦の開幕戦で、前半早々に1枚イエローカードをもらって、後半はもう勝ちが決定的な状況だったんですけど、なぜか笛が鳴ったのに、ぼーんって蹴って。イエローカード2枚目をもらったんですよ。退場じゃないですか。監督にまさかの英語で、「ファッキンユー!」って言われてガチギレされたんです。

一同 (笑)。

園田 でも頭が弱すぎて試合後みんなに、「ファッキンユーって何?」って聞いていました。そんな感じでした。

上形 言われた時は何を言われたか分かりませんでした。

園田 あまりプレーに関係ないね(笑)。プレーだと帝京戦かな。

――帝京戦では園田さんが点を決めたんですよね

上形・園田 あ、そうそう。

園田 帝京戦で負けていたんですけれど、上形が同点弾を決めてすごく盛り上がっていて。上形がこの試合を持っていったって思っていたら、ロスタイムに俺が頭で決めちゃいました。ヒーロー持っていきました。あの試合が良かったよね。ベストゲームですね、たぶん。

――同期はとても仲が良いと聞きました

園田 すごく仲が良いです。年に数回は集まるかな。

――ア式だとやはり早実の後輩と仲が良いのですか

上形 瞬(MF大丸瞬、教3=東京・早実)はかなり仲良いですね。小学校の時から一緒だったので。

園田 俺は特にないです。みんなと仲が良いです。

上形 あまり上下関係ないですし、仲良いと思います。

園田 最近のキーワードは『早実魂』だしね。『早実魂』の下、早実サッカー部出身の人は活動しています。

上形 『魂会』というのがあります。まだ開催されてないですけど、LINEのグループはあります(笑)。

園田 きょねんからあるんですけどね。

――ア式蹴球部に入ろうと決めていたのはいつですか

上形 僕はア式に入りたくて早実に来たので。

園田 僕もア式に入りたくて早実に来ました。でも若干留学したいという気持ちとぶれたところもありました。国教に入ろうとしていたんですよ。だけど最後4年間を本気でやり切ろうと思ってア式にしました。

――留学はどこに行こうとしていたのですか

園田 どこに行こうとかは決めていなかったんですけど、いままでサッカーしかしてこなかったのでとりあえず英語話せるようになりたいという感じで留学したかったです。いろいろな国の人と話したいので、それなら英語だと思って勉強したかったです。

上形 海外旅行は行っていたよね。

園田 留学に行けないから悔し過ぎて。1月に1カ月オフなんですけれど、1年生の1月は1人でロンドンに行きました。その1人っていうのは誘ったのに、みんなに「俺無理」って断られて誰も来てくれなかったんです。

上形 急なんだよ。1週間前にロンドン行こうってさすがに(笑)。

園田 でもすごく楽しくてその自慢話をしていたら、あとむ(DF永井あとむ、スポ4=FC東京U-18)がらいねんは連れていってくれと言ってきました。

上形 俺も言ったよな?

園田 らいねんは連れていってくれと洋介とあとむから言われたんですけど、いざ本気になってくれたのはあとむだけでした。

上形 違うんですよ(笑)。申し込み当日の朝に「パリ行くでしょ?」って言われてその日中に決めなきゃいけなくて。

園田 それで自分の決断で行かないって言って、家に帰ってお母さんに報告したら怒られたんだよね(笑)。「何で行かないの!?」って。

――現地でサッカーを見たりはしましたか

園田 ロンドンの時は見てサッカーいいなと思いました。でもパリでは見なかったです。「ボンジュール」を言いまくっていました。はい、以上です。でも日に日に英語とかフランス語がうまくなってはいきました。

――永井選手は英語を話せるのですか

園田 いや、2人とも全然話せないです。気持ちで行きました。

――何か面白いエピソードはありますか

園田 エッフェル塔の上が寒過ぎて凍えました。あとはエッフェル塔で撮った写真が秀逸過ぎてラインで出回ったとかです。

上形 頭の上から電波塔が出ていてピクミンみたいで、凍えた顔していてシュールでした(笑)。

――話は変わりますが、園田選手はワセダクラブのForza’02に入っていたとお聞きしました

園田 はい、中学生のころからこの東伏見のグラウンドでやっていました。ちょうど僕が中学生の時に大学生には兵藤慎剛選手(平19スポ卒=現・横浜F・マリノス)や徳永悠平選手(平17人卒=現・FC東京)がいたすごい時代だったので、自分も入れたらいいなと思っていました。いまの中学生もそう思ってくれていたらいいんですけどね。

――実際にア式に入部してセレクション組との差を感じたことはありましたか

園田 最初のころは毎日コンプレックスの連続というか自分の下手さを知ったというか、毎日が結構大変でした。でも優しい先輩たちに一からいろいろ教えてもらってサッカーのプレーの面でも人としても成長させてもらったので、あの日々があって良かったなと思います。

上形 僕は技術的な面ではそんなに差は感じなかったんですけれど、大学サッカーのフィジカルや速さが全然違ったのでそういう面の差は最初のころは相当感じました。

――古賀聡監督(平4教卒=東京・早実)についてはどう思われていますか

上形 監督は厳しいです。

園田 あと監督も意外と涙もろいです。

――その涙はうれし涙ですか

園田 歓喜の涙の方が多いと思います。支えてくださっている人たちの話をしている時に感極まって泣いたりとかもあります。それを見てこっちもやってやろうと思いますし、人間性の面で尊敬しています。

――以前、上形選手は古賀監督に直接電話したこともあるとお聞きしましたが

上形 はい、しました。きょねんのインカレ(全日本大学選手権)に無理すれば間に合う感じだったんですけれど、医者からはまだ3年生だし焦る必要はないと言われていました。でも俺自身はインカレに出たかったんです。メンバー登録は30人だったんですけどそこに自分は入っていなくて、その後に電話して「予備登録の3人に入れてくれ、まだ可能性を残してください」と言いました。それで監督からは「いまの自分の最善を尽くせ」と言われて、その次の日に担当医と長い時間話し合って骨がまだ完全にくっついていないし将来もあるので、今回は止めておこうということになりました。そしてまた監督に会いに行って「ケガの治療に専念します」と言いました。その時は自分の心が折れたというか今シーズン終わりかと思っていたんですけど、監督がそれでも「1日1日を無駄にするなよ」とそれだけを残して去って行って。その言葉が自分の中に残って、その1日で何ができるだろうと考えて筋トレなりできることをしようと思いました。

――園田さんは監督とのエピソードはありますか

園田 リーグ戦の早慶戦の試合が終わって僕泣いていたんですけど、監督が握手を求めてきてその時に多分監督も泣いていました。その姿を見た時にこの人についていこうと思いました。いい人です。でも早実には厳しいです(笑)。

上形 期待の裏返しもあるんだろうけど。

園田 いろいろ言われて心をへし折られるんですけれど、また頑張ろうっていう気持ちにさせてくれます。

――サッカー以外の趣味はありますか

園田 最近は英語の勉強をしています。金曜ロードショーを字幕で見ることから始め、洋楽を聞いて。全ては場を盛り上げるためです。

上形 僕はワンピースが好きです。毎週月曜日のジャンプが楽しみ過ぎて、その日のために頑張っているくらいの勢いです。でもいま2週連続で休載しているんですよ。

――オフの日は何をして過ごされていますか

上形 オフはないです。

園田 いや、そういうことじゃないでしょ(笑)。サッカーの練習が前提にあって、自主練とあと何をしているかの部分でしょ。僕はとりあえずオフの前日は誰かとご飯を食べに行って、オフは独り身の時間を優雅に過ごしております。こなれたものです。

――先日誕生会を開いたとお聞きしましたが

園田 そうなんですよ(笑)。自分で企画した誕生会でまさかの30人くらい集まってくれて。人望の厚さがこんなにもあるのかと思いました。

――招待状も作ったのですよね

園田 あれは八角さん(DF八角大智、社3=千葉・流通経大柏)に特別に。彼はちゃんと招待しないといけないなと思って。胴上げもしてもらって楽しかったです。

――同期が中心になって来てくれたのですか

園田 いや、ドタキャンの嵐で同期は一番少なかったです。貴司(MF近藤貴司、教4=三菱養和SCユース)はドタキャンしかしない本当に悪いやつです(笑)。

――上形選手も行かれたのですか

園田 ちゃんと来てくれましたよ。ね?

上形 はい、プレゼントはあげなかったですけど。

園田 後輩たちは用意してくれたのに、洋介はプレゼントをくれませんでした。

上形 そういう湿っぽいのは嫌なんですよ。

園田 そうだよね。ここまで来るとね。

――後輩たちからは何をもらったのですか

園田 時計をもらいました。

上形 ちょっと潤んでたよね。

園田 おじさんだから最近ちょっと涙もろくて(笑)。後輩たちをご飯に連れていってあげようかなと思っているところです。

――早慶サッカーが終わったらバーベキューに行くとお聞きしましたが

園田 はい、バーベキューの幹事も僕なんですよ。そこはだいたい永井あとむ(スポ4=FC東京U―18)と僕がきょねんから引き続いて責任を持ってやろうと思っています。で、オフは?

上形 僕はソノと違って彼女がいるので(笑)。

園田 彼女がいるって言っていいの?(笑)

上形 うん、まあ(笑)。でも最近はお互いちょっと忙しくてオフの日遊んだりできていないです。なので整骨院に行ったりとかしています。

「約束を果たすために」(園田)

早実出身ゆえに思いは人一倍だ

――早慶サッカーについてお聞きします。園田選手は初めての出場となりますが、お気持ちを教えてください

園田 この早慶サッカーは自分が出られる最後の機会となってしまいますし、中学生の時に憧れた舞台ということもあってワセダに対する思いは誰よりも強いと思っています。必ずとは言い切れないですけれど、試合に出ていままでの自分の人生や、支えてくれる人がいたからこそという自分の生き様をその1試合で表現できたらいいなと思っています。

――早慶サッカーの運営には関わっていますか

園田 運営には特に携わることはないのですが、集客には関わっています。主務の山下くん(MF山下翔平、商4=ヴィッセル神戸ユース)が一番中心になって、慶大の主務と長い時間かけてやってくれたことを僕たちが助けるというか、回ってきた仕事であったりより良くするためのアイデアを出したりしています。あとは当日メンバーに入れなかったら自分の仕事をするということぐらいです。

――上形さんはことしで3回目の早慶定期戦となりますが

上形 3回目になりますけれど、早慶戦に対する思いは全く変わっていないですし、むしろ強まっていく一方です。小さいころに試合を見てすごいなと思ったんですけど実際に試合に出た時の方がすごいという思いが強くて、より早慶戦に対する思いが強くなった感じはあります。

――お父さんと約束したという話を聞きました

上形 はい、照れくさくて言えないですけど。お互い分かり合っているというか口に出さなくても大丈夫な感じです。点を決めた時にお父さんが泣いていたといううわさがあるんですけど、そんなこと聞けないですね。お父さんの思いは自分のより強いんじゃないかと思ったりもします。ことしは最後なので、お父さんのためにも頑張りたいです。

――以前答えていただいたアンケートで、園田選手はキーマンに上形選手を挙げていましたが

上形 えっ。

園田 そんなこと書いたっけなあ(笑)。

上形 お前(笑)。

園田 やっぱり上形が点を取れば勝てるのでキーマンにしとこうかなと思いました。でも得点者には書いていないです(笑)。

――得点者には近藤洋史選手と近藤貴司選手を挙げています

園田 洋介を足しといてください(笑)。3―0でダメ押しの3点目くらい決めるかもしれないので。洋介はMVPを奪還するらしいのでよろしくお願いします。

――ではお2人が予想するMVPは、やはり上形選手ですか

園田 お2人が予想するMVPは上形です。

上形 俺はまさかまさかの園田慎一郎で(笑)。

園田 いやいや、2人で予想しないと。僕ら2人の予想は上形でしょ(笑)。

――当日は早実の方々もたくさん応援に来られるのですか

園田 多分来てくれると思います。

――チケットの売れ行きはいかがですか

園田 結構みんな協力してくれているので、まあ普通です。

上形 同期だと10人くらい来てくれるんですけど、それを江口(GK江口徹、スポ4=東京・早実)と3人で分けるので実質1人3枚くらいです。

――1人50枚がノルマなんですよね

園田 そうです。結構きついです。

上形 毎年全然売れないです。俺は課題とかもぎりぎりに出すタイプなので、声を掛けるのも結構遅いので「もう買ったよ」って言われてしまうんです。

――同期の中では誰が一番売るのですか

上形 俺らの中では堂本(FW堂本大輝、スポ4=兵庫・三田学園)とかです。

園田 堂本と中谷(FW中谷幸葉、スポ4=千葉・八千代)くらいです。中谷は意外と対外的に強いんです。

上形 あと秋岡(FW秋岡活哉、政経4=FC東京U―18)とか。あいつはぐいぐい行けるんですよ。

――売れ残った分は自腹で買い取るのですか

園田 一応4万5千円分は自腹です。いや、すごくリアルな話になっちゃうじゃないですか(笑)。やめてくださいよー(笑)。

一同(笑)。

園田 いや、お金なんていいので見に来てください。900円以上の価値はあると思うので。

上形 あるある。

――観客の方にここを見てほしいという自分のアピールポイントを教えてください

園田 ひげ。俺きょうちゃんと剃ってきましたよ。

上形 それは駄目だろ(笑)。俺は点を取るところを見てほしいです。あとはワセダの勝利のために走り回る姿を見てほしいです。

園田 僕はユニホームが一番汚れていると思うのでそこと、勝った時の笑顔を見てほしいです。

――もう慶大の分析はされているのですか

上形 いや、まだです。

園田 ことしはなぜか慶大とはよく当たっています。霧島(大学サッカーフェスティバルin霧島)、Jrリーグ(大学対抗Jr.リーグ戦)、リーグ戦前期、僕はもう3回やっています。気持ちが入るので早慶戦たくさんできればいいと思います。

――慶大にはどのような印象をお持ちですか

上形 (守備が)堅いです。

園田 端山くん(FW端山豪)を止めたいです。うまいんですよ。霧島ではやられてしまって、この前のリーグ戦は出ていなかったので借りを返したいと思います。

――応援してくださる方へ一言お願いします

上形 いつも見に来てくれる家族とかはもちろんですけど、小学校の時にお世話になった恩師や中学校の時の先生とか普段見に来られない方が見に来てくださいます。そういう方たちはその日の早慶戦しか見られないので、その日に自分の最高のプレーができなければ恩返しはできないですし、自分にプレッシャーをかけてやるので、普段見に来られない方のためにも頑張りたいと思います。

園田 見に来てくださる方への恩返し。全てはそこです。

――最後に意気込みをお願いします

上形 自分は2年前にMVPを取って、きょねんはチームは勝ったんですけれど自分は何もできなくて。ことしは点を取ってMVPも取りたいです。自分は早慶サッカーで夢をもらった立場で今度は夢を与えられる立場だと思うので、1人でも多くの子供たちにこのピッチに立ちたいと思えるようなプレーをしたいと思います。応援よろしくお願いします!

園田 今回こうやって洋介と対談する機会を設けてもらって、大学に入ってから洋介とずっと言い続けていることがあります。それはいつか僕のアシストから洋介が点を決めて最高の瞬間を一緒に迎えようという約束です。それを果たす機会が7月2日水曜日19時からあるので、その洋介との約束を果たすためにまず試合に出て、出られたら一生懸命戦って、洋介にピンポイントのアシストをして、洋介に決めてもらって慶大に勝ちたいと思います!

――ありがとうございました!

(取材・編集 伊藤なつ実、栗田麻里奈、松下優)

早実魂を体で表現してもらいました

◆上形洋介(かみがた・ようすけ)

1992年(平4)9月25日生まれ。180センチ、76キロ。東京・早実高出身。スポーツ科学部4年。園田選手の最後のコメントに対し、「なんか、ありがとう(笑)」と照れくさそうにしていた上形選手。そんな夢のような1シーン、ぜひこの大舞台でつくり出してください!一気に会場が沸くこと間違いなしです!

◆園田慎一郎(そのだ・しんいちろう)

1992年(平4)5月19日生まれ。169センチ、68キロ。東京・早実高出身。社会科学部4年。座右の銘である「慎始敬終」は「ものごとを始めから終わりまで手を抜かずにやり切ること」という意味だそう。自身の名前が入ったこの言葉はまさに園田選手を表していますね!憧れの一戦では上形選手との約束を果たすために『早実魂』を見せてください!