【連載】王座直前特集『この一球』 第3回 宮地真知香主将×岸真梨子主務×辻恵子

庭球男子

 連載最終回は宮地真知香主将(社4=福岡・折尾愛真)、岸真梨子主務(社4=東京・早実)、辻恵子(教3=東京・早実)の3人を迎える。部の中心としてチームをまとめ支えてきた4年生も全日本大学対抗王座決定試合(王座)で引退――。上級生たちはいま、何を思うのか。関東大学リーグ(リーグ戦)を終えた胸中、意外な素顔、そして王座への思いを伺った。

※この取材は10月4日に行われたものです。

「また一からスタートできる」(辻恵)

主務としてチームを支える岸(右)と、プレーで貢献する辻恵

――宮地選手、辻選手は今季これまでのご自身のプレーはいかがでしたか

宮地 リーグで優勝できなかったということで、王座までまだまだできることはあると思いますし、やらなきゃいけないことがたくさんあるのでしっかりとやってきたいと思います。自分のプレーとしてもあまり納得のいくプレーができていないので、最後の最後までしっかりと自分の納得のいくテニスができるように練習していきたいです。

辻恵 ケガ明けからのスタートだったのですが、インカレ(全日本学生選手権)ではしっかりと自分のテニスまで戻すことができました。ただ試合が続いた分、少し崩れてしまった部分もあったので、その点はきちんとと調整していきたいです。

――岸選手は主務として迎えた一年でしたが、ここまでを振り返っていかがですか

 監督(土橋登志久、平元教卒=福岡・柳川)が不在になるということでスタートした当初は不安な面が多かったのですが、その分学生同士で話し合う時間は増えたかなと思っています。春の早慶戦(早慶対抗試合)もかなり厳しい戦いでしたし、リーグ(関東大学リーグ)でもこのような結果だったということで反省しなければいけない面もあります。けれども全体を通して見れば、みんな、特に選手が一生懸命頑張っている姿を見てこられましたし、後輩たちもしっかりと4年生についてこようとしてきてくれたことにすごく感謝しています。その勢いのまま王座でも戦えたらいいなと思います。

――やはり土橋監督の不在による影響は大きいのでしょうか

辻恵 そうですね。昨年までは土橋さんに常に練習を見ていただいていたのですが、いまは隼さん(渡辺コーチ、平19スポ卒=静岡・庵原)が男女の練習を見てくださっていて。でも、やはり限られた時間の中でしかコミュニケーションを取る機会がないです。真梨子さんもおっしゃっていたのですが、その分学生内でコミュニケーションを取る機会がすごく増えて、同期だけではなくて学年が違う人とも話をする機会は増えたかなと思います。

――岸選手から見てお二人の戦いぶりは

 二人ともひたむきに頑張るタイプで、その姿を見て他の選手も鼓舞されていたり意識が高まっていたりすると思うので、二人にはそういった面で期待しています。特に春の早慶戦では辻が勝ってくれたところからチームの状態もよくなりました。逆に言えば、この二人がどれだけ熱をもって試合に集中した姿を見せてくれるかどうかがチームにとって重要かなと思っています。

――リーグ戦から約一か月経ちましたが、いま改めて振り返っていかがでしょうか

辻恵 やはり3年目にして初めてリーグ戦で負けてしまったというのがすごく残念なのですが、また一からスタートできるという面ではプラスに捉えてもいいのかなという考えもあります。個人としては、自分はシングルスの下位で確実に勝ちを取ってくるというポジションなのですが、亜大戦で負けてしまったりと納得のいくプレーができないことがありました。今後の試合ではもっとコートと応援がひとつになれるような試合をしたいです。

宮地 個人的には自分の調子があまり上がらない中ではしっかりとやれたのですが、最後の山学大戦でかなりころっと負けてしまったりして。まだ少し自分の中ではムラがあるので、そういった部分はキャプテンとしてなくしていかなければならないなと思います。チームとしては、負けて落ち込むというよりはみんなで王座を頑張ろうという感じで後輩も練習してくれているので、いまのチームの雰囲気はいい感じかなと思います。ただ、もっともっとみんなやれると思うし、私自身ももっとやれると思うので、時間を無駄にしないようにしたいです。

――岸選手から見てリーグ戦はいかがでしたか

 今回のリーグ戦は長期間ということもありましたし、やはり試合の中で苦しい時間帯というのがたくさんきました。その度に選手の厳しい表情や姿を見てきたので、そういう状況でも支えきれたかというと難しかったところもあると思っています。そうした環境づくりという点では、もっと試合しやすい雰囲気をつくってあげられたらよかったなという反省もあります。でも、選手も必死にやってきた結果だとは思うので、今回の負けはきちんと受け止めて、王座に向けてこのまましっかり頑張っていいきたいです。現状に満足することなく、もっともっとやっていこうというふうに気持ちを切り替えていきたいです。

――やはり王座でも慶大戦がカギになると思いますが、今季の慶大のチームとしての印象はいかがですか

辻恵 春の早慶戦はなんとか勝つことができたのですが、やはり夏の大会で特に1、2年生が力をつけてきたなという印象があります。リーグ戦でも下級生が中心となって一生懸命戦っていましたし、強いチームだと思います。今回のリーグは小林(夏実、慶大)が出ていなかったのですが、穴をしっかりと埋めてきていて、王座は誰が出場してもすごく厳しい戦いになると思います。

 勢いがあるチームだなとは毎回思います。何度対戦してもワセダに勝ってやろうという気持ちで全員で向かってくるチームなので、毎回油断はできないし怖いなという思いを抱えながら試合をしています。その分こちらも覚悟を持って、相手を跳ね返すくらいの気持ちで慶大とは戦っていかなければなりません。辻が言ったように若い選手も伸びてきているチームですが、ワセダの下級生もしっかりと自覚を持ってやってくれている子たちが多いと思うので、まずは目の前の王座ですけれども今後ずっと慶大との戦いは続いていくので、この王座でしっかりと力を見せつけて次へつなげていってほしいです。

宮地 技術的にも伸びているなと思いますし、精神的にもすごく落ち着いて堂々とプレーしてくるなと思っていて、そこが1番怖いです。そういった相手が来た時でもしっかりと対応できるように、しっかりと練習したいなと思います。

「主務でいられるのもまわりがいてこそ」(岸)

穏やかな雰囲気で取材は進んだ

――宮地選手は今季主将となってみていかがですか

宮地 あまりいいものじゃないなと思います(笑)。個性はいろいろあるのでその中でチームをまとめるのはすごく大変です。試合の時にみんながみんないい状態で臨めるわけではなくて、でもそういう中でも勝たないといけないだとか、自分も選手なので自分も勝たないといけない。けれど、チームのこともあるというふうに、いろいろなことを考えていくのが大変です。

――お二人から見て宮地選手はどのような主将でしょうか

 もともと口数が少ないタイプではあるんですけれども、しっかりと姿で見せてくれるというか、こう見えてしっかりと考えていろいろなことを気にするタイプです。あまり周りはそれに気づいていないかもしれないんですけれど、実はよく考えています。それをみんなで理解して支えて、宮地は宮地らしく、このまま主将として王座まで突き抜けてくれればいいかなと思っています。

辻恵  練習中に誰よりも真面目で、少し全体の雰囲気が落ちてしまった時でも真知香さんはすごく一生懸命で。あまりしゃべるタイプではないと思うのですが、円陣とか締めるべきところはびしっとされていて、すごくいい主将だなと思います。

 自分のことに集中しているタイプに見えるんですけれど、部の雰囲気とか練習の雰囲気とかをすごく気にしていて、チームのことをよく見ているなと話していていつも思います。

――とのことですが、いかがですか

宮地 本当にそう思っているのかな(笑)いいふうに言ってくれているなと思います(笑)。

 宮地のことをもっと分かってほしいと思って(笑)。

――岸選手は主務という立場ですね

 テニスで活動していきたいという思いもあったのですが、主務というのは自分からやりたいと言わせていただきました。選手として携わる機会が少なくなった時に、自分が部員として貢献できるようになるにはどうしたらいいかなと考えて。その時に主務をやりたいと思って、選んでいただけたのでそれはとてもありがたかったです。主務としての仕事はまず副務をするところから始まるんですけれど、1年を通していろいろと勉強させてもらって。いまこの立場にいさせてもらっていることにすごく感謝しています。でも私が主務でいられるのも周りがいてこそで、周囲の助けもあって主務にしてもらっていると思うので、みんなには感謝しかないです。

――主務をしていてやりがいを感じる点は

 部のことをよくも悪くも一番知れる立場だと思っています。OBの人や外部の人との関わりを通して、庭球部がどういうふうに見られているかとかどういうふうに動いているのかというのを知れるのはあまりない機会なのかなと思っていて。その点ではすごくやりがいを感じています。

――辻選手から見てどのような存在ですか

辻恵 高校の時からの先輩なのですが、高校の時からしっかりされていて、チームのためにという意識が誰よりも強くて。すごく尊敬できる先輩です。

――宮地選手と岸選手は主将と主務ということで、部について話し合うことも多いのでしょうか

宮地 しょっちゅうです。毎日しゃべっています。

 堅い話の時もありますし、普通にご飯食べながらとか、ずっと一緒にいるよね(笑)。

宮地 この1年、主将と主務になってからずっと一緒にいることになってしまって。(笑)

 えー、嫌なの?(笑)。大きな目標などはみんなで話すので、部員のこととかチームのこととか、あしたのこととか…。あしたのことが多いね。部活に関するいろんなことを話します。話題は尽きないですね。

――宮地選手と岸選手は同級生ですが、1年生の頃から現在に至るまででお互いの印象に変化はありますか

宮地 真面目そうだなと思っていたら、その通り真面目でした(笑)。ひとことで言うと真面目です。でも意外と女の子っぽいところもあります。後輩はあまり知らないと思うんですけど、結構女の子っぽくて、次はどういう髪型にしようかなとか言っています(笑)。

 なになに、そういうこと言っていいの(笑)。

宮地 写真見てこれが似合うと思うんだよねとか言って私に見せてきたりして。いいんじゃないの、みたいな(笑)。そういうところを気にしているので、意外と女の子っぽいところもあるんだなという印象です。

 部室ではいつもこんな感じなのにね(笑)。

宮地 学校にいる時と全然顔が違う。学校ではばっちり決まってるもん(笑)。

――皆さん本キャンですよね

 そうなんですよ。宮地とは学部も一緒で。でも最初は仲良くなれるとは思っていなかったです。3人社学がいて、もう一人は西(沙綾、社4=宮崎商)っていう九州出身の子がいるんですけれど、二人とも九州なのでもともと仲が良くて、そっちでくっついてしまうのかなと思っていました。授業を決めるときも全然仲間に入れなくて、1年生のときは結構一人で授業を受けてました(笑)。でもいざ話すようになってからは2人ともさっぱりした性格なので、余計なことを考えることもなく、私的にはちょうどいい関係みたいな(笑)。宮地は1年生の頃に比べてすごくきれいになりました。まあずっと一緒にいるので分からないですし、いまさら言うのも恥ずかしいなという感じですけどね(笑)。

――では辻選手と岸選手は高校の頃から先輩後輩の関係だと思いますが、印象に変化などはありますか

 変化は特にないですね。私は体育会に入るか少し迷った時期もあったんですけど、インターハイのときに辻のテニスを見て、テニスっていいな、楽しいなと思って。もうちょっとやりたいなと思い体育会に入りました。やっぱりテニスは大学でもどういうふうにやっていくかって悩む時期もあって。でも辻の試合はインターハイのときも一番近くで見たんですけど、かっこよくて私ももっとやりたいなと思いました。そこで吹っ切れたので、ここにいるのは辻のおかげというのもあります。これ、一回言ったっけ?(笑)

辻恵 えー、初めて聞きました。

 いつもひたむきなプレーで頑張ってくれています。こんなこと言ってますが、実はプライベートではあまり話すことはないですね。

宮地 怖いもんね(笑)。

 怖くないよ(笑)。

辻恵 高校の時からいつも一生懸命で、厳しいイメージが今でもあるんですけど、それが真梨子さんの良さだと思います。

「しっかり最後まで相手と戦いたい」(宮地主将)

今季、チームを引っ張ってきた宮地主将

――王座が近づいてきましたが、現在の心境はいかがですか

宮地 やるしかないと思っています。

 チームの勝利のために、一人一人が行動することが大切だと思います。

辻恵 あとはもうやるだけです。

――チームの雰囲気はいかがでしょうか

宮地 練習はしっかりできているので、まずまずだと思います。

 練習量ももちろん増えましたし、授業が始まって難しいところもあるのですが、主将の宮地を中心にみんなで王座に向けて一丸となって練習ができているかなと思います。

辻恵 リーグで負けてしまって、王座は本当にやり切らないと勝てないということをみんなが感じたと思います。練習量も多くなっていますが、とてもよい雰囲気でできています。

――4年生のお二人にとっては最後の王座になりますが、王座という大会はどのような存在でしょうか

宮地 王座で4年生はいなくなるのでチームとしては最後ですし、昨年までは4年生に笑顔で引退してもらいたいなと思う大会でした。ことしは自分たちが引退する立場なので、優勝して自分たちがしっかり笑顔で引退できればいいんですけど、3年生以降はまだ来年もずっとあるので、後輩に何か残せるような大会にしたいと思います。

 いつも始まってしまうとあっという間の大会なんですけれど、永遠に感じるぐらい長い瞬間もある、すごく特別な大会です。4年生の集大成として四年間の全てを出し切る大会かなと思います。

辻恵 4年生は一番長く一緒にいる先輩方なので、あと3週間後にはもう部室にいないという状況が想像できないです。王座は試合に勝ちたいというよりもチームで勝ちたいという思いがリーグや他の試合よりも強いです。一人一人がみんなのためにどれだけ力を出せるかだと思います。絶対に優勝して4年生に笑っていただきたいので、できることは全てやりたいと思います。

――王座でのご自分の役割はどのようにお考えですか

宮地 キャプテンとしても最後なので、自分が試合をしている時もしていない時も、一日一日しっかり最後まで相手と戦いたいと思います。

 頑張っている全体の中の一人に過ぎないという認識ではあるんですが、主務という立場もあるので選手が戦いやすい環境をつくっていきたいです。

辻恵 3年生ということで上級生になるので、苦しい場面なども多くあると思うのですが、率先して元気を出したりとか、自分のできることをやるだけだと思います。

――シングルスの本数がリーグ戦に比べて少なくなると思いますが、その点に関してはいかがですか

宮地 その分一本がすごく大きいので、出る選手はもちろんそこを自覚しなければいけないと思います。自分が絶対にとるつもりでやらないと、あっという間に相手に持っていかれてしまうので。

――4年生のお二人は、チームのメンバーに伝えていきたい思いは何かありますか

宮地 そうですね…。いまはまだ最後の大会が終わっていないので、王座を頑張ろうという思いしかないです。

 一生懸命頑張るということが一番大切ですし、それは王座といういまの状況にも当てはまることだと思うので、そういう気持ちをこれからも持ち続けてほしいと思います。

――では、最後に王座への意気込みをお願いします

辻恵 王座を迎えるのは3年目なんですけれど、毎年一番緊張する大会なので、どんな時でも気を抜かずチーム一丸となって一生懸命戦っていきたいと思います。

 全員の力をぶつけるだけだと思うので、思いをしっかりぶつけて悔いの残らない大会になればいいなと思います。

宮地 やり切ります!

――ありがとうございました!

(取材・編集 吉原もとこ、田中佑茉)

3人で一つの言葉を書いていただきました!

◆宮地真知香(みやじ・まちか)(※写真左)

1993(平5)年6月19日生まれ。身長161センチ。福岡・折尾愛真高出身。社会科学部4年。今季の主な実績は、関東学生トーナメント女子シングルス2位、女子ダブルスベスト4、全日本学生選手権女子ダブルスベスト8。全日本学生ランキング女子シングルス8位、女子ダブルス19位(2015年10月20日現在)。4年間の変化を伺うと、「きれいになったかどうかは分からないけど、垢抜けた」とおっしゃっていた宮地主将。口数は多くないとのことですが、対談を通してその人望の厚さがうかがえました。最後の王座では、ひたむきなプレーでチームを勝利に導きます!

◆岸真梨子(きし・まりこ)(※写真右)

1993(平5)年9月3日生まれ。154センチ。東京・早実高出身。社会科学部4年。しっかり者の頼れる主務、岸選手。しかし意外にも、電車で90駅ほど寝過ごしてしまった経験があるとのこと。女子部の活躍の裏側には、岸主務をはじめとする部員たちの力強い支えがあることを忘れてはいけませんね。

◆辻恵子(つじ・けいこ)(※写真中央)

1994(平6)年9月6日生まれ。165センチ。東京・早実高出身。今季の主な成績は、関東学生トーナメント女子シングルスベスト16、女子ダブルスベスト8、全日本学生選手権女子シングルスベスト8、関東学生選手権女子シングルスベスト8。全日本学生ランキング女子シングルス22位、女子ダブルス14位(2015年10月20日現在)。先輩二人との対談でしたが、落ち着いてしっかりと受け答えしてくださった辻選手。4年生の引退の話題になると寂しそうな表情を浮かべていました。最近のビッグニュースは、年明けの関ジャニのコンサートが当たったことだそうです!