【連載】王座直前特集『覇者の挑戦』 女子・第1回 高田千奈美主将×細沼千紗

庭球女子

 今季、主将と主務を兼任し重責を担う高田千奈美主将(スポ4=静岡・浜松西)と、既にワセダの軸の一人へと成長している細沼千紗(スポ1=東京・富士見丘)。4年生と1年生ではあるものの強い信頼関係を築いている2人に、現在のチーム状況や全日本大学対抗王座決定試合(王座)に向けた意気込みを伺った。

※この取材は10月10日に行われたものです。

厳しい練習を乗り越えて

対談中も笑顔を見せる高田主将(左)と細沼

――現在のチーム状況はいかがですか

高田 チーム状況としては、いろいろな面で準備をしている最中です。あす、あさってには対抗戦を控えていて、その2日間でチームを完成させるという目標を持ちながら、分析であったりそれ以外の練習面であったり、いろいろな面で部員全員や上級生、下級生で話し合っています。あす、あさっての対抗戦でチームを完成させるというところに向けて、まとまりはできてきていると思います。

細沼 リーグ戦(関東大学リーグ)を初めて経験して、早慶戦(早慶対抗試合)とはまた違ったまとまりができているなと感じています。1年生の私から見てもすごくまとまっていて、王座優勝という目標にみんなで向かっていっているなと思います。

――リーグ戦終了後も厳しい練習が続いていると思いますが、どのようなスケジュールで動いていますか

高田 まず先ほども言ったように、王座を想定して対抗戦を連戦で組んでいます。またリーグ戦が終了した次の日には全員でミーティングを行って、リーグ戦でどこがダメだったのかということや、逆に良かった面をもっと伸ばしていこうという観点で、全体、レギュラーメンバー、サポートメンバーがさまざまな部分からチームを高めていこうと話した上で、何をやればいいかを考えてやってきました。審判やボーラーなどのサポートをつけた練習をしたり、いつも以上に練習時間を長くして球を打つようにしたりしてきました。

――具体的に練習時間はどれくらいになっているのでしょうか

高田 いまは少し短くはなったのですが、1週間前の土日は休憩も挟みながら朝の8時から夜の8時とかまで練習した日もありました。

――ミーティングも何度も重ねられているのですか

高田 そうですね。全てが全体ミーティングというわけではありませんが、学年別や上級生、下級生など各々でやるようにはしていました。

――高田主将は土橋登志久監督(平元教卒=福岡・柳川)やコーチの方と話す時間も多いと思いますが

高田 いろいろな話をします。もちろんワセダが優勝する可能性もありますが、準決勝以降では山梨学院大や関西の大学といった強豪と必ず対戦するので、まだ対戦カードは発表されてないのですが、正直負ける可能性もゼロではないということを覚悟しなければいけないと思います。リーグ戦では勝っているのでリードはしているかなとは思っていますが、本数が5本になって戦い方も変わってきますし、どういったふうに戦えばいいのかというオーダーの話ですとか、かなり深いところまで話をしています。

――細沼選手は厳しい練習の中でも1年生の仕事があると思いますが、その忙しさについてはいかがですか

細沼 1年生がその仕事の場面で怒られることが多くて…。練習は大変なのですが、先輩方も年々厳しかったと思いますし、練習と仕事とのどちらもすることは大変ですけれど、私たちは甘えている部分が結構あります。先輩方に指摘されているので、今後はしっかりとやっていきたいと思います。

ワセダの一員として

1年目のシーズンでありながら、細沼はリーグ戦で全勝を挙げた

――今季も残すところは王座のみとなりましたが、ここまでを振り返ってみてどのようなシーズンになっていると思いますか

高田 最初に春の早慶戦に焦点を当ててやってきて、そこで勝てたことが自信にもなりました。逆に男女共に何かを間違えれば負けていたかもしれないということを感じていて、そこからは「リーグ戦は気が抜けないんだ」という一心でやってきました。結果的に女子はリーグ戦ではいい戦いができたのではないかと思っていますが、いままでやってきた経験上リーグ戦から王座にかけての1カ月半が大事であることは分かっていたので、本当にここ1カ月半はより集中して取り組んできました。

――細沼選手は大学1年目ですが、今季をここまで振り返ってみていかがですか

細沼 入学した当初はいまの結果よりももっと高いところに目標を置いていたのですが、結果的には自分の納得するような結果は出ませんでした。夏関(関東学生選手権)で準優勝できたというのはいい結果なのかなとは思いますが、悔いが残りますし、インカレ(全日本学生選手権)でももっと上を目指していたので、来季は優勝したいです。まずは王座に向けて頑張りたいと思います。

――ワセダの庭球部として戦うことには大変なプレッシャーがあると思いますが、いかがですか

高田 (王座を)連覇しているということでもちろんプレッシャーもありましたが、その中でも毎年毎年チームは変わっていきます。先輩方が続けてきてくださった連覇を途絶えさせないことはもちろんですが、このチームで新しく優勝できるように挑戦者の気持ちで頑張ろうとみんなに声掛けなどをしていました。ただ実際のところ最終的にはワセダというプレッシャーが勝っていますね。

細沼 高校と大学とでは違った雰囲気で。ワセダは王座で連覇を続いていて、歴史も伝統もある部活で、その一員として戦っていることはすごく誇りに思います。ただ1年目であまり分かっていないだけかもしれませんが、リーグ戦のときはプレッシャーを感じることもなく伸び伸びとできました。やはり1年生は伸び伸びとやることが一番かなと思うので、その気持ちでやっていきたいと思います。

――普段から1年生は伸び伸びと活動しているのでしょうか

細沼 1年生はすごく元気がいいのですが、オンとオフをうまく切り替えられないこともあって…。

高田 元気すぎるんですよ(笑)。

細沼 それでよく怒られてしまいます。

一同 (笑)

――やはり先輩から見ていても元気の良さが伝わってきますか

高田 はい。元気なことはすごくいいことだとは思いますし、全体的にも活気づいていいですね。その中でも細沼は特に元気です(笑)。

――具体的に細沼選手の元気の良さを感じさせるようなエピソードはありますか

高田 練習のときにはみんなが頑張ろうという気持ちでやっているので、特に細沼だけが目立つといったことはないですが、遊びに行ったときにはカラオケとかがすごいですね(笑)。

――学年混ざって遊びに行くこともあるのですか

高田 そうですね。そういったこともあります。

細沼 私がすごく大食いで、きょうも高田さんとお昼にカレーを食べに行ったのですが、すごく大きなナンを3.5枚も食べました(笑)。

――すごいですね。それでも体は動くのですか

細沼 全然大丈夫です。いまも何でも食べられます(笑)。

――1年生から見た高田主将や4年生はどのような先輩ですか

細沼 4年生はすごくお姉さんで、4つ上と考えるとすごいなあと。

高田 3つだよ(笑)。

細沼 あ、3つか(笑)。林さん(恵里奈、スポ2=福井・仁愛女)とよく話すのですが、2人ともベンチコーチが高田さんなので、私たちが姉妹で、高田さんがお母さんみたいだねと言っています。本当にお母さん的な存在で、何でも分かってくれているので頼りにしています。ワセダに入る前からお世話になっているので、ここにいられるのも高田さんのおかげです。

高田 持ち上げるね(笑)

――いまベンチコーチの話が出ましたが、高田主将が細沼選手と林選手のベンチコーチになった経緯を教えてください

高田 毎年レギュラーメンバー全員に、サポートメンバーの上級生の中で誰にベンチコーチをしてもらいたいかの希望を取っています。私が林と細沼のベンチコーチになった経緯としては、林は昨季からやっていて、希望もしてもらっていたので、ことしもやります、と。細沼は他のサポートメンバーよりも入学前から関わりがあって知っていることも多かったことと、希望をしてくれていたということもあって、本人がやりやすいのであればと思ってやらせていただいています。

――2選手のベンチコーチに入られているということですが、試合中の声掛けなどで選手によって変えている点などはありますか

高田 特に細沼の場合は、うまくいっていて勝っている場面でもしょぼんとしてしまうことがあるので、とにかく「元気出していこう」と声を掛けてやっています。林の場合、昨季は細沼と同じようになることが多かったのですが、ことしは比較的メンタルの部分は保ちやすかったかなと感じています。選手によって変えるという意識はそんなにありません。ただ細沼は「笑顔でいてほしい」と言うので、もし負けていたとしても笑顔は心掛けていました(笑)。

細沼 (笑)。

――そのように要望を出すこともあるのですか

細沼 人の笑っている顔を見ることが好きなので(笑)。負けているときに高田さんの笑顔を見ると、「頑張ろう、頑張ろう」と思います。だから「笑顔でお願いします」と言っています。

――具体的な試合の話に移りたいのですが、まず6月の早慶戦では勝利したものの、4-3と苦しい試合になりました。振り返ってみていかがですか

高田 春の早慶戦は、個人的には主将として臨む最初の大きな試合だったので、プレッシャーもすごくあり、細沼がチームの勝ちを決めてくれて終わったときには泣いてしまいました。とにかくプレッシャーが強かったですね。全体としては慶大が力を入れて強化している部分もありましたし、新しく強い1年生も入ってきていました。4-3という僅差ではありましたが、早慶戦という一つの目標に向けて準備をしっかりとして「全員で慶大に勝とう」という気持ちでできたことが、勝ち切れた要因だったのではないかと思います。

細沼 早慶戦は入部してすぐだったので、わけも分からずに自分の試合だけを頑張っていたのですが、隣のコートも結構競っていてどうなるか分からなかったので、私が勝ちを決定させて気持ちを楽にさせてあげようと思いながら戦っていました。あまりはっきりとは覚えていないのですが、プレッシャーは感じることなく伸び伸びとやっていた記憶があります。

――リーグ戦では3試合を7-0、山梨学院大、慶大にも勝利し、優勝を決めました。振り返ってみていかがですか

高田 リーグ戦はとにかく最初の3試合で7-0という差をつけて勝利した上で、2日間の空きを迎えられたことがチームの勢いにつながったのではないかと思っています。やはり一つもポイントを落とさないということは昨季も難しかったことで、選手もサポートも山梨学院大と慶大という大事な2戦に向けて一つもポイントを落とさずに勢いをつけていこうという気持ちでやれたので、 7-0、7-0、7-0で勝てたことが一番大きかったです。

細沼 リーグ戦も初めてだったので、朝早くに有明まで行って、男女でアップをするところから1日が始まって、20時くらいまで試合をするというすごく長い1日だったのですが、自分の試合はシングルスがほとんどでした。待機している間などは先輩と話すなどリラックスできていて変に緊張することはなく、試合にはいいコンディションで入れました。初戦は緊張もありましたが、2戦目からは緊張もなく試合ができました。早慶戦はすごく緊張してしまったのですが、春も秋も自分が早慶戦の勝利を決めることができてうれしかったですし、チームに貢献できたなと思って。ワセダの部員の一人としてコートに立っているのだなと実感することができました。

――あまり試合で緊張することがないという細沼選手がリーグ戦の早慶戦で緊張してしまったのには、何か理由があるのでしょうか

細沼 相手もすごく波に乗っていました。高校のときから緊張すると手足が震えるタイプだったのですが、それが再発してどうすればよいのか分からなくなってしまいました。ファーストセットを取られ、セカンドセットもシーソーゲームになって。これは落とせないと思っていたのですが、タイブレークではすごく緊張しました。ただそのタイブレークを取ってからはリラックスできて、相手がプレッシャーを感じて動きも悪くなってきました。体力は残っていたこともあって、体力だけでは絶対に負けないと思いながら試合をしていました。

――高田主将も早慶戦では細沼選手が緊張しているなと感じていましたか

高田 そうですね。ただいつもみたいにしょぼんとなってしまうことまではなくて、緊張している中でもしっかりと自分で声を出し、「気合で勝ってやるぞ」というような雰囲気が見えていました。タイブレークの場面は表情からも緊張が見えていましたね。

みんなを信じて

高田主将は細沼(左)のベンチコーチを務める

――王座が直前に迫ってきましたが、いまの心境はいかがですか

高田 このチームでの最後の試合でもありますし、自分にとって4年間の大学生活の中で最後の戦いにもなります。全員が全力を出し惜しむことなく臨んで、いままでやってきたことをできれば、絶対に優勝できるチームであるという自信があります。みんなで協力して優勝してきたいと思います。

――細沼選手は初めての王座となりますが、観戦した経験などはありますか

細沼 見に行ったことはないのですが、速報を10分間に1回くらい更新して見ていた記憶があります。

高田 そうだったの(笑)。

細沼 その憧れの舞台に部の一員として立てることは、わくわくした気持ちもありますけれど、緊張の方が大きいですね。練習だけはたくさんやってきていてそこは絶対に負けないと思うので、それを自信にして頑張ってやってきたいと思います。

――王座に向けてモチベーションを高めるためにみんなで行っていることなどありますか

高田 ダッシュですかね。 毎年王座やリーグ戦に向けて、負担にならない時期になるべくみんなで集まって、「頑張ろう」ということでたくさん走ります。それでメンタルを強くしたり、みんなで気持ちを一つにしたりするということは毎年恒例でやっています。

――主将として王座に向けてみんなに心掛けてもらいたいことはありますか

高田 リーグ戦でも春の早慶戦でも言ってきていることではありますが、一人一人がチーム全員のことを信じ切って、みんなを信じて戦おうということはずっと言ってきていて。サポートが選手を信じることはもちろんですし、選手一人一人もサポート一人一人のことを信じて、みんなで一つになろうということは言ってきていました。

――それでは最後に、改めて王座に向けた意気込みをお願いします

高田 男女でアベック9連覇が懸かった試合で、厳しい戦いにはなると思いますが、部員同士が信じあって、絶対に勝ちにいきたいと思います。

細沼 やってきたことが全て出ると思います。やってきたことは正しいことだと思うので、それを信じて庭球部全員で優勝という目標に向かって頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 井上雄太、高柳龍太郎)

王座への意気込みとして、かっこいい言葉で締めていただきました!

◆高田千奈美(たかだ・ちなみ)(※写真左)

1992(平4)年4月19日生まれ。157センチ。静岡・浜松西高出身。スポーツ科学部4年。後輩とも仲の良い高田主将は一緒に食事に行く機会も多いそう。細沼選手のようにたくさん食べる後輩なら連れて行くかいもありますね!

◆細沼千紗(ほそぬま・ちさ)(※写真右)

1996(平8)年3月26日生まれ。168センチ。東京・富士見丘高出身。スポーツ科学部1年。今季の主な実績は関東学生トーナメント女子ダブルスベスト8、関東学生選手権女子シングルス2位、女子ダブルスベスト4。全日本学生ランキング女子シングルス10位、女子ダブルス39位(2014年10月15日現在)。昨季、早スポの王座直前特集を見たという細沼選手。1年が経ち、今度はご自身が登場する番になりました!これからも引き続き登場していただきたいですね。