相手を押し倒した瞬間、早大関係者たちは歓喜の輪に包まれた。学生力士にとって最大の目標であり、最高峰の舞台である全国学生選手権(インカレ)。大会初日に行われた個人戦では橋本侑京主将(スポ4=東京・足立新田)がベスト8入りの快挙を果たした。
ベスト8入りを果たした橋本
「体が動いていた」。試合後にこう何度も口にしたように、上々の仕上がりを見せた橋本。初戦、2回戦を危なげのない相撲で制し、難なく優秀32選手決勝トーナメントに駒を進めた。3回戦では実力者の高橋優太(日体大)と激突。先手を許し、土俵際まで攻め込まれる苦しい展開となったが、二本のぞかすとあごを引いて辛抱。左をねじ込んで矢継ぎ早に攻め立てた。続いて対戦したのは近大の梅木竜治郎。勝てばベスト8という期待がかかる中での一番だった。ほぼ互角の当たりから突き放す両者。次の瞬間、梅木はほんの一瞬引きを見せた、しかし、これは橋本にとっては想定内。「死ぬ気で残した」との言葉通り、相手の引きにも落ちずに付いていくと、休まず前へ。重圧をものともしない会心の相撲でベスト8入りを決めた。準々決勝では持ち味こそ発揮したが、あと一歩及ばず。表彰台を目前にしたところでの敗退となった。しかし、インカレベスト8は早大相撲部にとって歴史的快挙。「あと一番勝ちたかった」と悔しさをにじませる橋本の表情にはどこか清々しい笑みが浮かんでいた。
初戦で押し出しで勝利した佐藤
同じく最後のインカレとなった佐藤太一(社4=大分・楊志館)。初戦では持ち前の伸びのある押しを披露した。2回戦敗退という結果に終わったが、室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)は「小さい体でよくやった」と健闘をたたえた。また、昨年のインカレからの成長を大きく感じさせたのは二見颯騎(スポ2=東京・足立新田)。体が一回り大きくなったのに加え、動きの良さを見せた。
大会二日目はいよいよ学生相撲の本命ともいえる団体戦。この1年間の集大成だ。インカレで団体ベスト8入りを果たすため、そしてみんなでうれし涙を流すため、これまで稽古に励んできた早大相撲部。そんな彼らの努力が『結実』する舞台はもう目の前だ。「有終の美を飾れるように」。そう口にした橋本はすでに翌日の団体戦を見つめていた。
(記事 望月清香、写真 元田蒼)
結果
橋本侑京参段(スポ4=東京・足立新田)
一回戦 ◯対伊藤初段(広島大)突き落とし
二回戦 ◯対丸山弐段(朝日大)押し出し
三回戦 ◯対高橋参段(日体大)寄り倒し
四回戦 ◯対梅木参段(近大)押し倒し
準々決勝 ●対田中参段(中大)押し倒し
佐藤太一弐段(社4=大分・楊志館)
一回戦 ◯対金選手(関大)押し出し
二回戦 ●対村上参段(同大)押し出し
長谷川聖記参段(スポ3=愛知・愛工大名電)
一回戦 ●対竹内参段(日大)押し出し
浅田大介参段(社3=石川・金沢学院)
一回戦 ●対石川参段(東農大)押し出し
二見颯騎弐段(スポ2=東京・足立新田)
一回戦 ◯対梅澤参段(朝日大)浴びせ倒し
二回戦 ●対中西参段(近大)上手投げ
コメント
室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)
――ついにインカレを迎えましたが、選手たちの状態はいかがですか
やることはやったので、本当にベストの状態だとは思います。
――橋本選手がベスト8入りを果たしまたが、振り返っていかがですか
本来の力を出せばそのくらいになれる選手だと思うので、きょうもベスト32から強豪の選手と当たっていって見ていて本来の自分の相撲が取れていると思いました。体がどんどん動いていたのでそれが良かったと思います。
――ベスト8入りは早稲田としていつぶりでしょうか
さっき調べたんですが、30年ぶりだと思います。井上太さんという私の大先輩が2位になったのが67回大会でちょうど30年前なので、ベスト8になったのはそれ以来だと思います。
――ベスト8入りを決めた一番も体がよく動いていたのではないでしょうか
そうですね。よく残ったなとも思います。
――準々決勝では敗れはしましたが、健闘したのではないでしょうか
あそこはもっと押し切らせたかったですけど、相手も思いですし、実力者なのでそう簡単には勝たせてもらえませんでした。
――佐藤選手はきょうが学生相撲最後の個人戦となりましたが、監督としてはいかがですか
本当に小さい体でよくやったと思います。後はあしたの団体戦に向けてどれだけ自分の力を出せるかだと思います。
――あすの団体戦のポイントはどこだと思いますか
やっぱり佐藤太一です。橋本、長谷川(聖記、スポ3=愛知・愛工大名電)は絶対に2枚で看板にして後は誰が取れるかです。そこはやっぱり佐藤に期待しています。
橋本侑京(スポ4=東京・足立新田)
――ベスト8入りおめでとうございます!振り返っていかがですか
きょうはすごく体がよく動いていました。最後のインカレだったので勝っても負けても悔いのないようにしようと思っていたので、体が動いていて良かったんですが、やっぱりあと一番勝ちたかったですね。表彰台まであと一歩だったので。
――それでもベスト8入りは快挙なのではないでしょうか
そうですね。ベスト32に残るのが10年ぶりと聞いたので、良かったです。
――初戦はなかなか立ち合いが合いませんでしたが、インカレということで意識することはありましたか
いや初戦はそんなに。角度的に相手が手を付いているのかよく見えなかったので、付いるかな付いていないかなって感じで(笑)。緊張とかというのはあまりなかったです。
――全体を通していい相撲内容だったのではないでしょうか
体が動いていて、3回戦目で日体の選手(高橋優太)とやった時に立ち合いでちょっと立ち遅れたんですが、その後引かなかったので体が動いている証拠かなと思います。
――ベスト8入りを決めた梅木戦(近大)を振り返っていかがですか
とにかく攻めました。みんなからは「引いてくるぞ」と言われたので死ぬ気でなんとか残しました。良かったです。
――敗れた準々決勝を振り返っていかがですか
やっぱり重かったです。やっぱりあともうちょっと勝ちたかったです。
――最後のインカレの個人戦を終えた今のお気持ちは
満足とは言わないですけど、体が動いていたのであしたにつながるかなと思います。本番はあしたので、最後しっかり締めくくりたいです。
――最後にあすに向けての意気込みをお願いします
まずは1部に残れるように。2部でも決勝トーナメントに残れるようにしっかり頑張って、なんとか有終
の美を飾れるようにしたいです。