大会の途中には雨も降り、肌寒ささえ感じられるなか開催された東日本学生相撲リーグ戦。各チーム9人で編成されるものの、部員数7人の早大は、助っ人の2人を加えて大会を戦い抜くことに。そんな状況でも全員が懸命な相撲を取り、なんとか1つの勝ち点を獲得した。リーグ戦を7位で終えた早大は、見事に1部リーグ残留を決めたのだった。
1部残留のキーマンとなったルーキー田太(左)
初戦、早大の前に立ちはだかったのは優勝候補筆頭の日体大。部員それぞれが健闘を見せたものの、チーム成績は9戦全敗。そのため、続く明大戦に活路を見出すことに。ところが3連敗スタートとなってしまう。これ以上の連敗は避けたいところで、土俵に上がったのは田太隆靖(スポ1=東京・足立新田)だった。立ち合いは相手より腰が高く、一時不利な体勢に。それでも突きの手が相手のはずにかかった瞬間、一気に形勢逆転。最後は土俵際に追い込んだ相手の胸を突き切り、早大に今大会初の白星をもたらした。「前に出る」という意識通りの快心の相撲だった。続く中堅・長谷川聖記(スポ3=愛知・愛工大名電)は動きの良さを見せ、最後は豪快な小手投げを決めた。連敗からの連勝で会場からも早大への歓声の声が大きくなる。この勢いに乗りたい早大だったが、六陣・鳥居邦隆(社1=愛知・愛工大名電)は相手に左を差され、かいなを返されると、力が伝わらず、あっけなく土俵を割った。これで、この明大戦を勝つためには残る3人が1敗もできないという絶体絶命の状況に。ここで魅せたのは、これまでチームに貢献できずに歯がゆい思いをしてきた浅田大介(社3= 石川・金沢学院)だった。「勝ちたいというより勝たなきゃいけない」。浅田は決死の覚悟で土俵に上がった。本人が「粘りに粘った相撲だった」と語ったように、まずは相手の攻めを受ける相撲展開に。立ち合いから相手にやや有利な形を作られるも、頭をつけ、脇を締め、さらに絞り上げるようにして防戦。こらえきれなくなった相手は引き落としを試みるも、浅田はついていく。今度は左四つに組むと、一呼吸おいて下手投げを打つ。態勢有利になった浅田は相手を難なく寄り倒した。その後も佐藤太一(社4=大分・楊志館)、橋本侑京(スポ4=東京・足立新田)共に前に出続ける気迫の相撲で、危機的状況から勝利をもぎ取った。こうして明大を相手に5勝4敗で終え、貴重な勝ち点を獲得したのだった。
粘りの相撲で早大相撲部に貴重な1勝をもたらした浅田
残りの試合では長谷川、佐藤、橋本を中心に白星を重ねたものの、勝ち切ることはできなかった。そうした中で、5回戦の東洋大戦では強豪校を相手に4勝5敗と拮抗(きっこう)。ここでは二見颯騎(スポ2=東京・足立新田)と鳥居がそれぞれ白星を挙げた。これにより、今大会に出場した相撲部員全員が1勝以上したことに。「(勝ち点を)取る人が取って、他がどう勝つかを考えていた」という室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)の考え通りの試合運びとなった。
数では劣る早大だったが、全員相撲によって1部残留を決めた。また、これまでなかなか結果が残せずにいた部員も快心の相撲を見せ、勝利した。今大会はそういった意味では非常に価値のある大会だった。ここでの経験は約3週間後に迫る全国学生選手権(インカレ)につながる大きな糧となるに違いない。まずは大会ベスト8の目標に向けて、部員たちは自分のため、チームのため、日々の稽古を重ねていくことだろう。
(記事 大貫潤太、写真 吉岡拓哉、森村崇太)
結果
1回戦 対日体大 0勝9敗
先鋒 ●松田選手(押し出し)今関弐段
二陣 ●勝山選手(押し倒し)深野弐段
三陣 ●二見弐段(押し出し)石崎涼初段
四陣 ●田太弐段(上手投げ)デルゲルバヤル参段
中堅 ●長谷川参段(叩き込み)松園参段
六陣 ●鳥居弐段(押し出し)シャグダルスレン弐段
七陣 ●浅田参段(押し出し)中村弐段
副将 ●佐藤弐段(押し出し)鈴木参段
大将 ●橋本参段(押し倒し)石崎拓
2回戦 対明大 5勝4敗
先鋒 ●松田選手(押し出し)小川初段
二陣 ●勝山選手(押し出し)村上弐段
三陣 ●二見弐段(押し出し)藤原参段
四陣 ◯田太弐段(押し出し)佐藤初段
中堅 ◯長谷川参段(小手投げ)東参段
六陣 ●鳥居弐段(寄り倒し)篠田参段
七陣 ◯浅田参段(寄り倒し)松村弐段
副将 ◯佐藤弐段(叩き込み)福井弐段
大将 ◯橋本参段(引き落とし)八幡弐段
3回戦 対中大 2勝7敗
先鋒 ●松田選手(寄り切り)由留部初段
二陣 ●勝山選手(引き落とし)近藤初段
三陣 ●二見弐段(小手投げ)土居弐段
四陣 ●田太弐段(押し出し)西川参段
中堅 ●長谷川参段(寄り倒し)住木参段
六陣 ●鳥居弐段(小手投げ)高垣参段
七陣 ●浅田参段(突き出し)田中参段
副将 ◯佐藤弐段(押し出し)中村参段
大将 ◯橋本参段(押し出し)納谷参段
4回戦 対日大 2勝7敗
先鋒 ●松田選手(押し出し)岩永弐段
二陣 ●勝山選手(押し出し)大庭参段
三陣 ●二見弐段(上手投げ)川副参段
四陣 ●田太弐段(突き出し)石岡参段
中堅 ◯長谷川参段(寄り切り)榎波四段
六陣 ●鳥居弐段(突き出し)イェルシン参段
七陣 ●浅田参段(押し出し)沢田参段
副将 ●佐藤弐段(押し出し)宮崎参段
大将 ◯橋本参段(押し出し)加藤四段
5回戦 対東洋大 4勝5敗
先鋒 ◯松田選手(不戦勝)
二陣 ●勝山選手(上手投げ)小野弐段
三陣 ◯二見弐段(寄り切り)竹原初段
四陣 ●田太弐段(突き出し)羽出山参段
中堅 ◯長谷川参段(極め出し)大塔弐段
六陣 ◯鳥居弐段(寄り倒し)干場参段
七陣 ●浅田参段(押し倒し)重松参段
副将 ●佐藤弐段(押し出し)深井参段
大将 ●橋本参段(寄り倒し)オドフー弐段
6回戦 対拓大 3勝6敗
先鋒 ●松田選手(寄り切り)立花弐段
二陣 ●勝山選手(押し倒し)松浦参段
三陣 ●二見弐段(突き落とし)萩原参段
四陣 ●田太弐段(押し出し)勝呂隆参段
中堅 ◯長谷川参段(叩き込み)勝呂歩参段
六陣 ◯鳥居弐段(押し出し)長内弐段
七陣 ●浅田参段(寄り切り)ジャミン弐段
副将 ●佐藤弐段(叩き込み)井田参段
大将 ◯橋本参段(押し出し)山市参段
7回戦 対東農大 1勝8敗
先鋒 ●松田選手(押し出し)岩田弐段
二陣 ●勝山選手(寄り切り)有瀬弐段
三陣 ●二見弐段(突き落とし)石川参段
四陣 ●田太弐段(叩き込み)丸山参段
中堅 ●長谷川参段(押し出し)志賀参段
六陣 ●鳥居弐段(吊り出し)山内参段
七陣 ●浅田参段(寄り切り)佐藤参段
副将 ●佐藤弐段(押し出し)日下参段
大将 ◯橋本参段(送り倒し)加藤参段
コメント
室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)
――7位で1部残留を果たしました。振り返っていかがですか
本当に良かったなと思います。やはり、部員7人に助っ人2人で残れたのは非常に良かったです。
――きょうは2回戦の明大戦が大きなヤマ場となりました。あの勝利はどう評価されますか
あそこはきょうのキーマンに挙げていた浅田と田太が勝ってくれたんで、そこが大きいなと。あの二人がいなければ勝てなかったので良かったと思います。
――その二人は普段は出場機会が少ないですが、今回結果を残しましたね
今回の東日本のリーグ戦とかは、チーム全体で勝ちにいかないと勝てないよと稽古のときから再三言っているので、そういうところが伝わっていたのかなと思います。
――明大戦のほかに、東洋大戦も勝ち越しにあと1点と迫りましたね
あそこで勝たないと。ああいう場面で勝ち切りたいと思いますね。
――昨年は入れ替え戦まで戦っての残留でしたが、比較してどうですか
(勝ち点を)取る人が取って、他がどう勝つかを考えていたので、そこが今年はできたのかなと思います。
――最後に、来月のインカレに向けての意気込みをお願いします
最終戦の東農大戦のように簡単に負けるのではなくて、3点でも4点でも取るような、そういったところを課題にできるかどうか、そこを考えて残り1ヶ月稽古をできるかどうかだと思います。
橋本侑京(スポ4=東京・足立新田)
――約2ヶ月ぶりの団体戦となりましたが、どのような気持ちで臨みましたか
リーグ戦は僕が入学した時にちょうど50何年ぶりに1部のステージでやれるということになっていて、僕は一応4年間ずっとAクラスの中で戦わせていただきました。なので、僕としてはやっぱり4年生としての最後の一つの仕事としてやっぱりリーグ戦は次の世代にも1部で戦わせてあげたいという気持ちがあったので、人数的な問題もあるのですが、本当に残留目指して頑張ろうと思っていました。
――東日本学生個人体重別選手権で悔しい結果に終わって以降、どのような稽古をしてきましたか
特別何か変わったことってしてないですが、基礎の見直しだったり、ぶつかりの角度などを見直しました。正直、今は教育実習中であまり稽古ができていなかったのですが、その前にしっかり感覚は磨いといて、それをある程度は出せたのかなとは思いました。
――きょうの結果を振り返っていかがですか
もっと上を目指せるっていう意味では足りないのかもしれないですが、現状のチームとしてはすごくいい試合ができたかなと思っています。僕が教育実習中でずっとチームにいなくて、きのうも体調崩して熱があって練習に出られてなくて、きょう結局ぶっつけ本番だったので、主将なのですがチーム事情をチェックしたり把握することができていなかったので、どうなるのかなっていう思いがありました。本当に明治戦が勝負だなと思っていて、最初日体戦が駄目だったんですが2戦目に照準を合わせようという話をしていました。本当にあそこで浅田であったり田太であったりが本当によく取ってくれたなと思います。今までポイントを重ねてこられなかったところが取れたので、それはすごいチームとしても自信になると思うし、個人としても自信なったんじゃないかなと思いました。
――明大戦では4勝4敗という状況で土俵に上がりましたが、その時の気持ちはどうでしたか
本当に今言ったように浅田とか田太が頑張ってくれたので、自分は主将で大将で落とすわけにはいかないなと。明治戦では本当に自信を持って普通にやれば勝てるなと思って平常心で臨むことができたので良かったかなとは思っています。
――今のご自身の状態としてはどのような感じですか
自分としてまず第一に体調悪いのでまずは体調をしっかり治したいなというのと、あと一週間の教育実習あるので、早稲田の相撲部とはちょっと距離を置いちゃっている状況なのですが、しっかり母校行って、相撲部があるのでしっかり練習したいです。(教育実習から)帰ってきたらインカレまであと2週間、3週間ぐらいになってしまうので、本当にチームとして集大成としてしっかりチームを盛り上げられるように、久々に帰ってきて相撲取って、弱くなったなって思われたらやっぱり顔が立たないので、自分でしっかりそこは計算を重ねてやっていきたいなと思っています。
――最後にインカレに向けて一言お願いします
早稲田はインカレ弱いんですよね(笑)。毎回リーグ戦までいい流れでくるんですがインカレでコケることがすごく多くて、もう一種の流れというか。リーグ戦なんとか(1部に)残ったぞで(インカレは)駄目でってことが多いんですが、やっぱり今年こそはベスト8の壁を破って、上位進出したいです。まずは(ベスト)8の壁を破ることを目標として、そこから流れに乗れば本当にベスト4、準優勝、優勝とか狙えるチームだと思っているので、本当にまず流れに乗らせる意味でもまずBで優勝して、やっぱりベスト8の壁を破って、頑張って本当に最後チームとして胸を張って卒業できればなと思っています。
浅田大介(社3=石川・金沢学院)
――きょうの大会にどのような気持ちで臨みましたか
先輩たちが1部に残留してきたので、このメンバーで1部残留をやり遂げないとなと思ってやりました。
――これまで苦しい戦いが続きましたが、どのような気持ちで土俵に上がりましたか
勝たないといけないという部分もあったのですが、とりあえず自分の中でいい相撲が取れるようにやるということを念頭に置いてという感じです。
――明大戦での相撲を振り返っていかがですか
自分的に珍しく粘りに粘った相撲だったなと思います。
――気持ちのこもった相撲でしたね。
「勝ちたい」というか「勝たなきゃいけない」という気持ちだけで(相撲を)取っていました。
――久しぶりの白星となりましたね
リーグ戦に関しては勝ったのが初めてなので、貴重な1勝になったなと。
――監督や仲間からは何か声をかけられましたか
明大戦が終わった後、「やったね!」って感じでみんなに言われて、それも自分の中で結構うれしかったです。
――インカレに向けての意気込みをお願いします
今のところは控えなんですけど、いつ代わっても自分がやり遂げられるように仕上げていくというか頑張っていきたいなと思います。
田太隆靖(スポ1=東京・足立新田)
――きょうの大会全体を振り返ってみていかがですか
全体的には結構レベルの差を感じる大会でした。ですが一番実力が近い明治戦ではちゃんと勝ち切ることができて、それはチームのためにも、自分が少しは貢献できたのではないかなと思います。
――久しぶりの団体戦ということでしたが、どのような気持ちで臨まれたのですか
一番はチームの足を引っ張らないようにしようという気持ちでした。結果的には1勝しかできなかったんですが、それでも1勝できたし、この大会で得るものも多かったので、次また団体戦で(メンバーに)選ばれたら、今回の反省を生かして、やはりチームのために貢献していきたいです。
――明大戦での白星は早大相撲部としてきょう初の白星でした。そのことについてどのように思われますか
うれしいの一言です。
――個人戦、団体戦ともに最近の大会では、なかなか勝ち切ることができていなかったなかでの白星でした。勝った直後のお気持ちはどのようなものでしたか
チームのために1勝できたので、また、明治戦では僕が1つ勝つか負けるかで試合の流れが変わってしまうという勝負どころだったので、そこで勝てたことに良かったという気持ちでした。
――今大会に向けて主に技術的な面で意識した部分はありますか
思い切り当たって、前に出るということを心掛けていたんですが、できていたところとできていないところの差が極端だったので、そこは直していけたらなと思います。
――次戦への意気込みを教えてください
今度はインカレがあるので、チームのためにもっと勝率を上げて貢献できるように頑張っていきたいと思います。