東日本学生個人体重別選手権での優勝から約1ヶ月。橋本がまたしても靖国の土俵で快挙を成し遂げた。強い日差しが降り注ぐ晴天の中、第42回全国学生個人体重別選手権が靖国神社相撲場で行われた。早大からは東日本大会を勝ち抜いた、橋本侑京(スポ2=東京・足立新田)、若林魁(スポ3=岐阜農林)、谷本将也(スポ4=鳥取城北)、長谷川聖記(スポ1=愛知・愛工大名電)の4人が出場した。
東日本王者として135kg未満級に出場した橋本。その実力は全国の舞台でも健在だった。今大会、顔のけがを押しての出場だったが、それを感じさせない積極的に前に出ていく相撲で相手を圧倒。一回戦は左四つ右上手からの寄り倒し。二回戦、準決勝はともに立ち合いからの激しい突きで押し出し、相手に付け入る隙を与えず、危なげなく決勝へと駒を進める。そして決勝は、東日本大会の決勝でも対戦した寺沢(東洋大)との一戦。立ち合いで左に変化されるもしっかりとついていき右の上手を取る。その後、苦しい体勢になりながらも左の下手をつかみ、左四つ右上手のかたちに。そこから左の下手で豪快に投げにいった。両者はほぼ同時に土俵外へ飛び出し微妙な判定となったが、軍配は橋本に上がる。その直後、土俵下の勝負審判より物言いがつき審議となったが、判定変わらず橋本の勝利。この瞬間、同階級における早大史上初の全国優勝が決まった。「けがをして、この大会に出るかどうかも迷っていた」と本人が語るなかの優勝だけに、室伏渉監督(平6人卒=東京・明大中野)も「本当に信じられない」と興奮冷めやらぬ様子だった。
強い精神力で全国優勝の快挙を成し遂げた橋本
115kg未満級に出場した若林も、後輩の橋本に劣らない活躍をみせた。一回戦は東日本大会で敗れた大木(日体大)との一戦。若林はリベンジに燃えていた。序盤から突き合いとなる激しい相撲だったが、最後は落ち着いて寄り切り、雪辱を果たした。初戦の勢いそのままに、二回戦も積極的な攻めからの上手出し投げで快勝。そして迎えた準決勝。立ち合いで変化されるも必死の突きで前に出る。しかし最後はうまくかわされ、投げられて惜敗。決勝進出とはならなかったものの、3位という立派な成績を残した。135kg以上級には谷本が出場した。取組前から気迫に満ちあふれていて、期待感はあった。しかし、立ち合い早々にうまく右を差されてしまい、そのままなす術なく寄り切られ、初戦で苦杯をなめた。無差別級には長谷川が、この階級で唯一の1年生として出場した。一回戦は右前みつをがっちりつかみ、寄り倒して快勝。「自分の体の使い方ができた」と振り返る納得の一番だった。二回戦は体格が勝る相手に、果敢に攻めた。惜しくも寄り切られてしまったが、内容的には悪くない、今後につながる一番となった。
奮闘した1年生の長谷川。無差別級でのベスト8も胸を張れる成績だ
「夏合宿の成果が非常に出ているなと感じた」と、室伏監督が振り返った今大会。橋本の優勝、若林の3位と大健闘だった。だが、それと同時に課題が見えてきたのも事実。今後は、9月末の東日本学生リーグ戦、11月の全国学生選手権と、主要な大会が続く。今大会で躍進しただけに、そこではさらなる結果が期待される。ことしの早大相撲部は強い。これからも目が離せない戦いが続きそうだ。
(記事 吉岡拓哉、写真 本田理奈・小林理沙子)
結果
▽115kg未満級
若林魁参段(スポ3=岐阜農林)
一回戦 ○対大木弐段(日体大)寄り切り
二回戦 ◯対川井参段(東洋大)上手出し投げ
準決勝 ●対藤原弐段(明大)上手投げ
※115kg未満級 第3位
▽135kg未満級
橋本侑京弐段(スポ2=東京・足立新田)
一回戦 ○対松原参段(拓大)寄り倒し
二回戦 ○対中村参段(中大)押し出し
準決勝 ◯対井本弐段(九州情報大)押し出し
決勝戦 ◯対寺沢参段(東洋大)下手投げ
※135kg未満級 優勝
▽135kg以上級
谷本将也参段(スポ4=鳥取城北)
一回戦 ●対中島参段(日大)寄り切り
▽無差別級
長谷川聖記参段(スポ1=愛知・愛工大名電)
一回戦 ◯対大原弐段(九州情報大)寄り倒し
二回戦 ●対城山四段(東洋大)寄り切り
コメント
室伏渉監督(平6人卒=東京・明大中野)
――まずは、優勝された橋本選手についてお聞きしたいと思います
実はちょっと怪我をしていて、出すか出さないか正直迷ったんですけど、本人がチャンスなので出たいという話をして、色々話をして出ることになりました。まさか本当に優勝できるとは思いませんでした。
――出場された他の3選手についてはいかがですか
合宿が終わって、夏合宿は1週間だったんですが、非常にその成果がすごく出ているなと思いませした。負けている選手もいましたけど、ただ一番一番見て、それぞれみんな出てきたなというのを実感しています。
――今後リーグ戦なども始まりますが
そうですね。とにかくリーグ戦とインカレがもう11月なので、そこで優勝、Aクラス以上での優勝というのを目標にこの一年やってきたので、なんとか良い結果を出したいと思います。
若林魁(スポ3=岐阜農林)
――3位入賞おめでとうございます。3位という結果をどのように受け止めていらっしゃいますか
嬉しいのですが、やっぱり決勝までは行かないといけないトーナメントだと思っていたので、嬉しさ半分悔しさ半分という感じですね。
――やはり優勝を目標に臨んだということでしょうか
そうですね。決勝までは行って、決勝で一発勝負しようという気持ちで臨みました。
――夏合宿ではどのような部分を強化したのですか
夏合宿はまわしを持って行かずに、体の使い方やバランスを鍛えて、あとはチームの一体感を強化するというものでした。きょうの相撲を振り返ってみて、バランスはすごく良かったと思います。
――準決勝の取組を振り返っていかがですか
1回戦と2回戦も前に出る相撲はきょう思い切ってできていました。準決勝もその前に出るというところはできていたのですが、自分の課題である最後の詰めが甘かったかなと思います。
――後輩の優勝は刺激になりますか
そうですね。僕ら下が頑張らないといけないので。先輩に頼っているだけではだめなので。後輩が頑張った、優勝したというのは褒めてあげたいのですが、自分ももっと頑張らないといけないなというのはあります。
――今後リーグ戦がありますが、どのような稽古をしていきたいですか
自分の前に出るという相撲を磨いていって、今日の準決勝で出た詰めの甘さっていうのをしっかり直して、もっと自分の良さを出した相撲が取れるようにしたいです。
橋本侑京(スポ2=東京・足立新田)
――優勝おめでとうございます。今のお気持ちはいかがですか
この間の試合でけがをして、この大会に出るかどうかも迷っていました。ただ、チャンスがあるので、出たいという気持ちがありました。全勝できたので、よかったと思っています。
――けがを押しての出場でしたが、怖さはなかったですか
前日は頭で当たるのは怖いなと感じていましたが、土俵に上がったら、気にしていたら絶対勝てません。全国大会なので、16人しかいないので、気持ちで引いたら絶対負けると思っていました。1週間ぐらい、気持ちを作ってきました。
――東日本大会での優勝は、自信になりましたか
そうですね。東日本で優勝して、十和田大会でも自信を持って相撲を取れています。成果につながってきているので、つかんだ自信は大切にしたいと思っています。
――相撲の内容についてうかがいます。準決勝までは、かなり相手を圧倒するような相撲に見えました
初戦は体が硬いかなと思いましたが、準々決勝や準決勝は自分の相撲を取れたかなと思います。
――決勝の相手は寺沢選手(東洋大)で、東日本大会決勝の再戦になりました
そうですね。東日本では勝利したのですが、実績は寺沢選手の方が上なので、東日本で勝ったことは考えず、挑戦者の気持ちで行くしかないなと思っていました。
――秋になり、4年生の引退も近づいています。これからチームを引っ張っていこうという意識はありますか
今まで4年生は人数も多く、強くて、4年生に支えられてチームが成り立っていたというところがあるので、1つ上の代は若林さん1人なので、佐藤(太一、社2=大分・楊志館)と共に若林さんを支えていかないとチームが成り立っていかないと思います。これから、相撲の練習から、引っ張っていけたらと思っています。
――最後に、リーグ戦とインカレに向けて意気込みをお願いします
リーグ戦は自分の力を出して、敢闘賞を取れるように頑張ります。きょう、全国のタイトルを取れたので、インカレでも優勝を目指して、また団体戦でも落とさないように、頑張りたいと思います。
長谷川聖記(スポ1=愛知・愛工大名電)
――今日に向けて夏合宿ではどのような稽古をしてきましたか
合宿では体の使い方を意識して取り組んだのですが、それが今日の相撲に活かせたと思います。
――初戦は立ち会いから積極的な相撲で勝利を収めましたが、いかがでしたか
しっかりと自分の体の使い方を実践して前に出ていけたので良い相撲だったと思います。
――2回戦では体格の勝る相手に惜しくも敗れてしまいましたが、いかがでしたか
まず自分のかたちになろうと思って入りました。内容的には力負けせず自分の体の使い方ができたので悪くなかったんですが、投げのところで呼び込む投げをしてしまったのが反省点ですね。もっと踏みとどめてじっくり出ればよかったかなと思います。
――最後に今後に向けての意気込みをお願いします
リーグ戦とインカレがまだ残っているので、今日の相撲の反省点も踏まえてこれからもしっかり練習していきたいと思います。