【連載】インカレ直前特集 『和』 第5回 前川晋作主将×小山雄太副将×中田敦志

相撲

 集大成に向け成長を続ける相撲部を引っ張るのが前川晋作主将(社4=東京・早実)、小山雄太副将(スポ4=神奈川・向の丘工)、中田敦志(社4=埼玉・大宮)の3人だ。ついに最後の舞台へと立つ4年生に心境、意気込みなどを聞いた。

※この取材は10月2日に行われたものです。

「高いレベルを経験した」(前川)

春シーズンを振り返る前川

――春のシーズンを振り返ってみていかがですか

前川 最初は選抜大会で、ことし初めて出してもらった大会で、団体は予選通過できなくて、Aクラスのレベルを実感したところだったんですけど、そこから、東日本でさらに悔しい思いをして、そこから次金沢で初めて団体戦で勝利して、リーグ戦でもなんとか1部残留して、団体は上がってきてるとこだと思います。個人としては、同じように初めて全国大会に出させてもらって、そこで全然勝てなくて、全国の実力を実感しました。7月の金沢では初めて勝つことができて、そこから体重別で全国決めてということで、ちょっと上がってきたところで、最近は全国体重別とリーグ戦では、あまり目標としていた活躍はできなかったんですけど、ことし1年間そうやって選抜大会とかに出て、高いレベルを体験したりして、いろいろな体験を積めて、例年以上に出場機会も多くて、充実した年にはできていると思います。あとは最後のインカレだけなので、しっかり結果を残してきたいと思います。 

小山 自分は最初は補欠選手だったんですけど、東日本からはメンバー外で、怪我とかもあって、あまり出れなかったり、出てもあまり自分のいい相撲がとれなかったというのが、反省です。

中田 自分が出られる公式戦といえば、体重別で65キロ未満級で、この4年間ずっと65キロ未満級で勝つことを目標に、東日本大会で全国に出てメダルを取るということでやってきたんですね。結果的にはメダルには手が届かなかったんですけど、ことしでいえば相変わらずの上がり症なので、緊張しすぎて体が動かないということがありながらも、そこそこいい相撲が取れたかなという気もします。

――試合前のルーティーンはありますか

前川 めちゃくちゃあります。遠征とかでホテルに泊まっているときは、大体早く寝る。大体9時間は寝るように、早めに寝るように心がけています。前の日の夜も、試合の日の朝も、遠征だったら行くバスの中なかとかで、いつも音楽を聴くようにしています。試合前で気持ちを高めるために聴いています。miwaのdon’t cry anymoreを聴いていて、すごく気持ちが高まります。昔、怪我してた時に聴いていて、頑張ろうと思える曲なので、そこから試合前には聴くようにしています。土俵のルーティーンは、土俵に上がるときにいつも、団体戦で上がるときに、最初に伸脚をして、屈伸してからジャンプして、体をたくさんたたいてから最後に、チームの5人のメンバーの人に背中を2回たたいてもらっています。

小山 自分は前の日に、ヨーグルトと野菜ジュースを飲むっていうのと、まわしは試合前に必ず洗うようにしています。

中田 自分はそんなにないです。普通に決まり通り礼をして蹲踞して、ただ足を滑らせたくないので、足元の砂を払ってから相撲を取るようにしています。前の晩は10時までに寝て、行きの電車で音楽を聴きます。ZARDを聴きます。

――相撲において自分の強みは

前川 自分は体が小さいので、大きい人に勝つには中に入って自分から攻める相撲を目指していて、特に決まり手で言ったら足取りとか、中に入ってひねりを決めれたらいいなと思ってやっています。

小山 自分はまず当たってから横に横にずらして、最終的に押し出しとか、寄り切りとかですね

中田 自分は体が小さいので、体重別では特に足取りとかが多いですね。自分と同じように大学から相撲を始めて、同じ体重の人の中では前に出る力があるつもりなので、そういうところが強いて言えば強みです。体重が軽い者同士だとレスリングのような感じで、お互い前傾になってにらみ合って、お互い触れずに見合って、相手の隙を見て中に入ったりするので、アマチュア相撲ならではというか、新鮮ですね。

――好きな力士やなりたい力士はいますか

前川 相撲はめちゃくちゃ見るので、自分と同じような体格で、大相撲の中では小さい人をすごく参考にしていて、特に石浦という10両の力士を参考にしています。大きい人を倒す技とか攻め方とか、どうすれば倒せるかってことをすごく参考にしています。

小山 横綱の日馬富士ですね。昔の安馬の時代がいいなと思います。ねばっこいところが好きですね。

中田 自分と同じタイプというわけではなくて、単純に相撲ファンとして引退してしまったんですけど、栃東がめっちゃ好きです。見てて本当に面白くて、豪快に相手をぶん投げるとかそういうのではないんですけど、下からおっつけて堅実に出ていくようなのが印象に残っていて、大学に入って相撲を始めてからも、試合ではあまり出さないんですけど、稽古場で結構、おっつけて前に出たりとかってちょっとやったりします。

――大相撲は見られますか

中田 僕は見ます。

前川 僕はめちゃくちゃ見ます。ダントツで一番見てると思います(笑)。

小山 自分はあまり見ないですね。ニュースで見る程度です。

――他の部員の方と大相撲の話はされますか

前川 他の部員でも相撲が好きな人と、そうでない人が結構いて、一番相撲好きで話すのは谷本ですね。結構自分の部屋に来て、一緒に見たりしてますね。専門的な技術的な話をしていて、あの攻め方がいいとかっていう風に見てますね。

中田 自分は相撲同好会の方と見てますね。自分は相撲部なんですけど、同時に相撲同好会っていう早稲田の一般学生を集めたサークルにも所属していて、その同好会の人と相撲を見ています。最近のも見るんですけど、結構昔のやつもネットやDVDで見ていて、同好会員の一人が戦前の双葉山っていう横綱が大好きで、一緒にDVDを見てめっちゃ語り合いましたね。同好会は会員名簿とかが一切なくて、4人ぐらいいるんですよ。でも実質参加しているのは2人で、1人が今行方不明で、もう1人が猫に噛まれて怪我をして以来、最近来ていないです。半年前にカナダに1カ月留学に行きますって言ってから、それっきり音沙汰なしなんですよ。自分は最初の2年間は同好会だけでやっていたので、部員の方の胸を借りて当たって押す練習を中心に、そういう風に一から教わってました。同好会が5年前にできたばかりなので、これから発展させていきたいと思います。

――相撲部が来年で100周年ということで今思うことはありますか

前川 来年で100周年ということで、伝統ある部活に所属していて、自分も伝統ある部の主将として、活動しているので伝統の重みを感じています。100周年を迎えるからには、やはり結果を残すことが大事だと思っているので、99年目の今なんとかリーグ戦でも1部残留とか、今度インカレでAクラスに上がれるようにとか結果を残すことで、来年の100周年にいい状態で迎い入れられるようにしたいと思っています。

小山 まず、100年続いたっていうことはいろいろな人に支えてもらったので、その人たちに感謝して、来年の100周年に向けて最高な形で、ことしが終われればいいと思います。

中田 いいことを先に言われてしまったので、自分なりに言うんですけど、100年と一口に言っても、全然実感がわかないんですね。道場に写真が飾ってあるじゃないですか。大隈重信が映っていたり、そういう写真を見ると歴史の積み重ねがあって自分たちに繋がっているんだなと実感できる時なので、歴史の厚みというか、道場においてある物の一つ一つが凄味があるので、そういうのを背負っているんだなっていうのは感じますね。

――休日の過ごし方はいかがですか

前川 相撲以外というと、他の部の応援に行きます。体育会の友達と結構遊びに行ったり飲みに行ったりが多いので、他の部の試合を見に行って体育会の友達が頑張っている姿を見るっていうのをよくやります。

小山 自分も応援に行きます。あとは釣りに行きます。東京湾の横須賀とかに行きます。何回か船にも乗りました。

中田 一人旅に行きますね。最近はまっているのが、誰もいない秘境駅に行くことですね。この前の夏に行った飯田線は秘境駅が五つくらいあるというので、全国有数の秘境駅を求めて行ったんですよ。電車がひどい時は4時間に1本なんですよ。秘境駅を巡るのにコツがあって、行きに1方向だったら4時間に1本なんですけど、行きの電車で降りて帰りの逆方向の電車に乗れば、2時間とかで済ますことができるんですよ。なのでこれを上手く駆使すると一日で5か所の秘境駅を巡ることができるんですよ(笑)。電車はあまり詳しくないんですけど、秘境駅が好きで、秘境駅の周りが結構廃墟だったり、ものすごい自然だったりするんですよ。それを次の電車を待つまでの2時間を使って、巡るのが好きですね。いままで行った秘境駅の中で一番よかったのは、田本駅というところで、断崖絶壁の駅なんですよ。崖があってその横にホームが張り付いているんですよ。地震が起きたら崩れるような駅で、一応出入り口があるんですけど、人ひとりがなんとか通れるような細い道が横にあって、そこをひたすら歩いて、1時間くらいすると民家にたどり着くんですよ。地元のおばあちゃんが使っているという話を聞いたんですけど(笑)。それ以外は何もないので本当に秘境ですね。非現実的な感じが楽しいです。

「前に出る力も付きました」(中田)

体重別での活躍が期待される中田

――合宿での個人目標はなんでしたか

前川最初の合宿では、実践的な相撲の中で勝ちパターンを見つけていきたいと思っていたんですけど、足をけがしていて後半2回しか練習に参加できませんでした。あまり思うようにはいかなかったです。2回目では自分ができる中で限界まで追い込むようにしました。特に長丁場のリーグ戦が控えていたので、走り込みとかで持久力と精神力を鍛えるようにしました。

小山プラスアルファで自分の武器をもっと強化していくというのが目標でした。2回目ではダッシュなどで下半身強化をしました。

中田相撲中心の合宿は、体重別の試合で負けた直後だったので一応立ててはいましたが、意識し切れたということではないです。ただ、体重別にとらわれずどんな相手でもよい相撲を取る。そのためにひとつテーマを見つけてやっていこう、という考えでした。それから、体が小さいのでスピードを付けるというのが大事だと思い、ダッシュを多く取り入れたりスピードを意識しました。

――具体的に印象に残っている練習などはありましたか

中田個人的には、外周ですね。坂道が多くて、ひたすら下った後にゴールまでずっと上りなんですよ。蛇行しながら登るので、曲がり角を曲がって終わるかなと思ったらまだ続いてました。

前川そうそう、終わりが見えなかった。

中田心が折れそうになりました。

小山あと、1分間走もやりました。

――合宿で思い出に残っていることはありますか

小山最終日の打ち上げですね。

前川盛り上がったね(笑)。

――合宿を通して、お互いに変わったと感じることはありますか

小山(前川は)最近前に出るのが多くなりましたね。トリッキーな技も増えました。

前川みんなを見てると体重も増えたので、他の試合とか見てると全員前に出る力が付いたと思います。

中田僕は相撲の稽古に参加するというより、外から見ている立場だったんですけど、実際前に出る力も付きましたし去年の試合と比べると、前川主将とかスピードも技術も増したように思います。

前川ほんとかよ(笑)。

「悔いのないように終わりたい」(小山)

小山は副将として主将を支える

――インカレの目標はありますか

前川チームとしては集大成となるので、BクラススタートですがことしこそはAクラスに上がって、予選だけではなくベスト8以上に入りたいと思います。個人としてはこれが本当に最後になるので、15年間やってきて相撲が大好きなので、これでできなくなると考えると、絶対悔いは残したくないです。この1カ月でできることをすべてやって、最高な状態でインカレに臨めるようにしたいと思います。

小山自分はまず5人の中に入ってそこで結果が出るようにしたいです。11年間やってきてその最後なので、悔いのないように終わりたいです。

中田僕は4年間しか相撲はやってないですけど、それでもこの4年間ずっとワセダの相撲部にお世話になって、これがなければただの相撲ファンで終わっていました。そう考えると本当に感謝しているので、ワセダがAの優秀8校に入れるようにできるだけサポートををしていきたいです。

――チームの現状はいかがですか

小山けが人がいて、その中でもリーグ戦の1部に残ったので、チームとしては徐々に上がってきていると思います。

前川専大と明大に勝てました。しかも専大に勝ったメンツと明大のメンツが同じではなく、カバーし合ってチームの総合力で勝てました。チームがどういう状態でもみんなで助け合って試合に臨みたいです。いまは5人が誰になるのかわからない状況なので、自分も入れるように頑張りたいですです。

――主将、副将としてどのような取り組みをしていきますか

前川実力だとAクラスのベスト8に行ってもおかしくないところまで来ていると思うので、あとはわずかの差です。ベストなパフォーマンスを発揮できるか、チームワークで勝てるかというところなので、そこをしっかりできるように気持ちを一つにしてやっていきたいです。主将としてみんなの意識を高められるようにまとめていきたいと思います。

小山試合まで1カ月くらいなのでコンディションを整えられるように、練習の強度とかも考えながらやっていきたいです。やりすぎな時は主将にしっかり言えるように。

――練習メニューは自分たちで決めているんですか

小山平日は基本的にそうですね。

前川自分たちで考えて決めています。自分が決めるというより、それぞれが自分の課題に取り組んでいる感じです。

――4年生として感じていることはありますか

中田自分が入ってきたときは部員が4人で、その時とは活気とか勢いが格段に違うんですよ。この勢いで1年ずつ段々よくなっていくとしたら、ことしはAでベスト8に入るところまで来ていると思います。盛り上げる手助け、積極的に声をかけたり、荷物を運ぶでもいいし何かできることをひとつでもできたらな、と思います。

――最後の試合に向けて今一度、意気込みをお願いします

中田自分ならではの役割として同好会があります。すごく人数が少なくて僕が引退した瞬間に消滅するくらいの規模です。それでも一応同好会に入りたいという人がたまにいるんですよ。そういう人たちをうまく集めて、まとまって稽古をするというのはなかなかできないんですけど、それでも僕が辞める前に一人でも多くの人に相撲の楽しさを知ってもらいたいなと思います。その点でも同好会の方も怠らず一生懸命やりたいと思います。

小山小学校からずっとやってきて支えてもらった人に恩返しがしたいです。出れても出られなくてもチームが最高のパフォーマンスをできるように頑張っていきたいです。

前川インカレの目標はさっき言ったようにAクラスでベスト8以上なんですけど、そこに行くまで4年生として主将としてチームをベストな状態に持っていきたいです。そうすればベスト8に行けると思います。個々の実力があるという前提でそれをどう本番に持っていくかというのは主将としてやるべきことで、そこをしっかりしたいです。個人的には大学の相撲部には高1の時からお世話になっているので、監督やコーチの方々に結果を残すことで恩返しをしていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 高橋団、成瀬允)

◆前川晋作(まえがわ・しんさく)

1994年(平6)7月16日生まれ。身長172センチ、体重83キロ。東京・早実高出身。社会科学部4年。しっかりと言葉を紡ぐ姿勢に、主将としての真面目な一面が見えました。大の相撲好きで大相撲についての知識は部内でも群を抜いているそうです。

◆小山雄太(こやま・ゆうた)

1994(平6)年6月9日生まれ。168センチ、110キロ。神奈川・向の丘工業高出身。スポーツ科学部4年。主将を静かに支える寡黙な副将。先日のリーグ戦では大将戦で見事勝利し1部残留を決めました。インカレでもその勝負強さに期待です。

◆中田敦志(なかだ・あつし)

1993年(平5)6月28日生まれ。165センチ、64キロ。埼玉・大宮高出身。社会科学部4年。相撲同好会から入部した選手で、体重別での活躍が期待されます。趣味は一人旅。秘境駅が好きなそうで、効率的な駅の回り方を熱く語ってもらいました。