復活の兆し、全国レベルの戦いに初参戦

相撲

 早大が全日本大学選抜に出場するのは実に21年ぶり。昨年の全国学生選手権でAクラス16校中11位についたことによりこの大会への出場権を得た。団体戦は勝利数により得点が加算され上位8チームが決勝トーナメントに進むことができ、個人戦は勝ち抜き方式だ。出場校は全12校。新たなスタートを切った早大は全国の強豪を相手に果敢に攻めていくが勝利数は伸びず、初の全国レベルの洗礼を受けた。

 団体予選第1回戦は昨年の優勝校・日大に力の差を見せつけられた。先鋒から中堅まで立て続けに3つの黒星が並ぶ。しかし、本田煕誉志(社3=大分・楊子館)が土俵際に追い込まれながらも相手の力を利用し掛け投げ、貴重な一勝をもぎとった。続く大将戦は、若林魁(スポ2=岐阜農林)が足をよく動かし粘り強く攻めるが一歩及ばず。初戦は1勝4敗と厳しい結果となった。第2回戦、こちらも強豪の拓大が相手だ。度々相手を追い込む場面が見られたが勝利にはつながらずまたも連続で黒星がつく。しかし、若林が意地を見せ張り手で相手の状態を起こし、素早く懐に潜り込み突き倒した。これで早大の勝利数は2となる。最終戦、九州情報大を相手に1勝4敗。鬼谷智之(スポ3=愛知・愛工大名電)は体重が40キロ上回る相手に足で対抗。体の下に入り込みすくい投げで白星をあげた。結果、勝利数3となったが決勝トーナメントに進むことはできなかった。

鬼谷は団体戦、個人戦共に粘りの相撲で白星を挙げた

 個人戦には早大から7人の選手らが出場した。新入生の橋本侑京(スポ1=東京・足立新田)はこれが大学での初の試合となる。しかし、気後れすることなく積極的に前に出て豪快な押し出しを披露。惜しくも2回戦で負けてしまったが「最初にしてあれだけ取れるのは評価したい」と室伏渉監督(平16人卒=東京・明大中野)も笑顔をのぞかせた。早大で唯一3回戦まで進んだのは調子を上げてきている鬼谷。2回戦で東農大のエースと対戦し、バランスを崩しながらも立て直し相手の隙をつき突き出した。「自信がついた」(鬼谷)と本人も納得の相撲だったようだ。早大から決勝まで残る選手は出なかったが、新戦力の台頭、初の全国レベルの大会出場、昨年からの成長、など内容の濃い試合となった。

大学生として初勝利を手にした橋本

 結果だけ見れば完敗かもしれないが、選手たちは口をそろえて「自分たちの実力で十分通用する」と話す。ことしはまだ始まったばかり。復活の兆しはすでにその姿を見せ始めている。そして、次の宇佐での全国大学選抜でまたひとつ成長した早大相撲部が見られるはずだ。選手から感じられる闘志は日を追って増してきてる。そう遠くはない未来に早大復活は実現しそうだ。

(記事 高橋団、写真 本田理奈)

結果

団体予選

第1回戦 対日大 1勝4敗

先鋒 ●谷本参段(押し出し) 片村参段○

二陣 ●鬼谷参段(突き落とし)木崎参段○

中堅 ●前川参段(突き倒し) 古川参段○

副将 ○本田参段(掛け投げ) 中島参段●

大将 ●若林参段(はたき込み)斉藤四段○

第2回戦 対拓大 1勝4敗

先鋒 ●谷本参段(押し倒し) 勝呂初段○

二陣 ●鬼谷参段(引き落とし)黒川参段○

中堅 ●前川参段(突き落とし)志村参段○

副将 ●本田参段(引き落とし)川本参段○

大将 ○若林参段(突き倒し) 寺沢参段●

第3回戦 対九州情報大 1勝4敗

先鋒 ●谷本参段(寄り切り) 大原初段○

二陣 ○鬼谷参段(すくい投げ)橋本参段●

中堅 ●前川参段(上手投げ) 海上参段○

副将 ●本田参段(寄り倒し) 梅崎弐段○

大将 ●若林参段(突き落とし)宮地弐段○

※団体戦予選落ち

個人戦

前川参段

1回戦

対今参段(近畿大)寄り倒し●




鬼谷参段

1回戦

対酒井弐段(日体大)押し出し○

2回戦

対鈴木参段(東農大)突き出し○

3回戦

対小山内参段(日大)送り出し●




谷本参段

1回戦

対宮野参段(近畿大)引き落とし●




堀越弐段

1回戦

対寺沢参段(拓大)寄り切り●




本田参段

1回戦

対トゥルトクトホ(同志社大)押し出し○

2回戦

対白石参段(東洋大)送り出し●




若林参段

1回戦

対早田弐段(日体大)押し出し○

2回戦

対田中大弐段(中大)突き出し●




橋本初段

1回戦

対岩村弐段(明大)押し出し○

2回戦

対松永参段(日体大)肩透かし●




コメント

室伏渉監督(平16人卒=東京・明大中野)

――相撲部がこの大会に出るのは何年ぶりですか

21年ぶりですね。僕が出て以来です。

――21年ぶりに帰ってきましたが、どのような心境ですか

本当によく出られるところまで来たなという気分です。いままで選抜大会は遠い話であったので、部員集めから始まってそれがこういう結果につながって、特に今の4年生が1年生の時は部員が少なくて大会すら出られるかわからない状況だったので、この大会に出られたというのは非常にうれしく思います。

――きょうの試合は勝利数が3でしたが、全体を振り返っていかがでしたか

やっぱり、本人たちの力を出す前に負けてしまったという感じです。決して悪い相撲を取っているわけではないのに負けたというのは、自分たちの力がまだ出せていない、普段の稽古でやっていることが出せていないというのが正直なところです。

――今季初の試合でしたが、選手たちの動きに固さなどは見えましたか

この大会に出るのは誰もが初めてですし、誰も経験したことがない全国大会でしたが、常連校とやることが自分たちの経験となって、6月の東日本学生選手権に向けての大事な一戦だと思っていました。ただ、今日の内容だと勝ち切れていない、厳しさがないというのが正直な印象です。

――逆に昨年と比べて動きがよくなっていると思うところはありましたか

きょうの団体戦では、若林や前川(晋作主将、社4=東京・早実)も悪くなかったです。前川は全国大会は初めて出るので、それでも何かをやらなきゃいけないと思っているのが、すごく伝わってきたというか初めてにしてはよくやったなと思います。ただポイントゲッターの本田、鬼谷、谷本(将也、スポ3=鳥取城北)の3人の元気がなかったのは残念です。

――個人戦では1年生も出ていましたが、いかがでしたか

橋本は非常にいい相撲を取ったと思います。最初にしてあれだけ取れるのは評価したいです。あとは鬼谷が徐々に良くなっています。本田、鬼谷の二人は個人戦も決して内容は悪くなかったです。だから、本来の力を出せれば東農大の選手に勝ったりできるので、いかにしてそれを出せるのか、というのをあしたも学校で練習しますが、5月3日までにやりたいと思っています。

――きょうの大会でどのような収穫がありましたか

この土俵で試合に挑めた、ということですね。試合に出られたというのは唯一の経験になって雰囲気がわかるので、4日後の宇佐大会は絶対に予選を通りたいです。ベスト8までいってより上を目指す、それができるチームなのでそれをやりたいです。

――4日という短い期間でどうチームを変えていきますか

精神的な面だけだと思います。自分たちが土俵で力を出せるかはメンタルが一番です。体力的に勝っても負けてしまうのはメンタル(が原因)で、練習をして急にうまくなることは絶対にないので、冷静に試合を振り返りながら反省点を洗っていきたいと思います。

――ことしのチームの目標をお願いします

Aクラスでベスト4、あるいはその上を狙いたいです。狙えるチームだと思うのでそこは狙っていきたいと思います。

前川晋作主将(社4=東京・早実)

――惜しくも勝つことはできませんでしたが、反省などはありますか

チームとしても勝てない相手ではなかったので、もう少し勝ちにこだわって勝負したいと思います。

――いままでとは違う相手との試合でしたが、強さの違いなどは感じましたか

確かにこの大会に出ている大学はみんな強いですけど、自分らの実力でも充分やっていけるというのがわかったので、そこまで圧倒された感じはありません。勝負していけるなという感じはしました。

――主将として初めての試合でしたが、どのような意気込みで臨みましたか

今回は団体戦の5人に入ることができたので、出るからには絶対に勝ってチームを引っ張っていこうと思っていました。

――よく相手の体の下に頭を入れていく印象がありましたが、なにか狙いはあったのですか

各大学や、選手たちの研究はしっかりとしてきているので狙ってやっていました。

――次の大会まで4日間ですが、短い期間でチームをどう変えていきますか

きょうは、勝ちを意識できていなかったと思います。自分たちの実力は通用するとわかって、内容は良かったのでそれを勝ちにつなげられるようにしていきたいです。

鬼谷智之(スポ3=愛知・愛工大名電)

――どのような意気込みでこの大会に臨んだのですか

団体戦で決勝トーナメントに上がろうという意気込みで、みんなで臨みました。

――団体戦でのご自身の取組を振り返っていかがですか

1回戦で足が滑ってしまって。1、2回戦はだめでした。

――チームメイトの戦いぶりはいかがでしたか

みんなすごく頑張っていたので、自分も頑張らなきゃいけないなと思いました。

――個人戦では三回戦まで進みました

もう一番勝ちたかったです。

――今回の大会での収穫は何でしょうか

東農大のエースに勝って、自信がついたので、次の宇佐大会では今度こそ団体でベスト8に残れるようにみんなで頑張りたいですね。

――宇佐大会までに修正しなければならない部分はありますか

きょうは自分から攻めることができていなかったので、しっかり自分から攻めることを意識したいです。

橋本侑京(スポ1=東京・足立新田)

――大学入ってから初めての試合でしたが、どのような意気込みで臨んだのですか

1年生なので、胸を借りるつもりで思いっきりやろうと思いました。

――団体戦で先輩の取組を見て、どのように感じましたか

負けてはいたのですが、力の差はそこまでないと思いましたし、ある意味自分にも自信が持てました。

――個人戦を振り返っていかがですか

1回戦で大学初勝利を得られたのでよかったです。2回戦は強豪校のレギュラーとやって、惜しいところまでいって負けてしまって悔しいのですが、差はないなと感じることはできました。

――ご自身の強みはどのようなところですか

当たって前に出る、どんどん攻め続けるところだと思います。

――宇佐大会では団体戦のメンバー入りするということですが、意気込みを聞かせてください

宇佐大会は先鋒で出るので、先輩の足を引っ張らないように、そして一番最初に相撲を取るので勝っても負けても良い流れを作りたいと思います。