【連載】インカレ直前特集『進化』 第1回 市川拓弥×本田煕誉志

相撲

最終学年時に相撲部創部100周年を迎える5人がそろって入部してきたのも、1年と半年前。市川拓弥(社2=長野・更級農)と本田煕誉志(社2=大分・楊志館)も、2年生の今では頼れる先輩として部を引っ張っている。普段から仲良しな社会科学部の同級生コンビに、お二人の相撲に関するエピソードなどと合わせて、全日本学生選手権(インカレ)のお話を伺った。

※この取材は9月27日に行われたものです。


半世紀ぶりの舞台へ

リーグ戦昇格を喜ぶ市川


――一部昇格おめでとうございます

本田 ありがとうございます。


――昇格が決まったときの気持ちを教えてください

本田 純粋に嬉しかったですけど、その反面気が引き締まったというか。今まで1部と団体とかで戦ってみて、どうしても力が通用しない部分があったりしたんで。

市川 やっぱ自分らが入学、というか入試のときから1部昇格っていうのを目標にがんばってきますってことを言い続けてきたので。リーグ戦での1部昇格はすごいうれしかったです。でも、チームとしては勝ったんですけど、自分が負けてしまった身なので。これからはインカレで次、1部昇格狙ってるんですけど、そのときは自分が勝って、貢献していけるようにがんばりたいなっていう気持ちにもなりましたね。


――一部リーグの印象はいかがですか

本田 9人制ですし…。見てのとおり9人ぎりぎりで。これからもっと稽古しないといけないなっていう気持ちはやっぱりあります。

市川 今までは7人で、交代何人とかだったんですけど、全員出るわけだから。これからひとりひとり、個々に力を持ってかないと…。

本田 自覚持っていかないとな。

市川 そう。やってかなくちゃ、1部ってほんとレベルが全然違うので。

本田 1人でも、レギュラー争いというか、それから脱落してきても、たぶんその人ずっと脱落していくことになると思う。みんな自覚持ってやんなきゃいけないかなと思います。


――1部リーグでの目標や意識は

本田 まあリーグ戦なんで。目標というか、まずは。さすがに、すぐこれから日大、日体、東洋とかに勝てるかっていったらたぶん無理な話で。僕が思うだけなんですけど。ちゃんと、例えば専修だったり、拓殖大学とか。そこらへんに、実力的に勝てそうなところには絶対勝って、もう2部には落ちないっていう。入れ替え戦に出ないっていうのを僕はまず目標にしてます。

市川 せっかく1部上がれたんで、これでまた2部下がっちゃうっていうのは。

本田 もったいないよな。

市川 恥ずかしいというか。せっかくここまで来たんだから、上をどんどん目指して、あと自分の相撲をとりきって、いかにワセダをアピールできるか。勝ちたいですけど。

本田 とりあえずそこでとって。上位に食い込めるようにな。


土俵を降りた素顔

――お二人の相撲を始めたきっかけは

本田 母が相撲やらせたくて。僕は相撲がしたくて、みたいな感じですね。近くに相撲道場あるから連れていかれました。

市川 小学校1年生のとき、クラスの担任の先生に、地元の大会に出てみないかって言われて。そのときたしか2位で負けて、その子に負けたのがすごい悔しくて。で、次の大会も出たらその子に勝って、優勝したんですね。それで楽しいなって思って。それで始めました。


――相撲で挫折した経験は

市川 自分はきょねん、9月に腰を怪我して。それもきょねんのリーグ戦の2日前に怪我したんですよ。で、ヘルニアってわかって。それからインカレも出れなくて、金沢大会も出れなくて、体重別も出れなくて。またことしリーグ戦も、二部の戦いには出れなかったんですよ。いいかなあと思ったら、また腰が痛くなったり。今もちょっと腰痛めて練習できない状況なんですけど。そうやって、みんながんばってるのに自分だけ端っこで練習してっていうのが、すごい申し訳ないというか。はやくよくして、チームに貢献したいですし。それぐらいですかね。最近挫折したのは。

本田 あんまり物事を深く考えないです。挫折っていう挫折はあんまりないです。そんな物事深く考えるタイプじゃないんで。まあ、なんとかなるっしょという感じで。


――思い出に残ってる試合は

市川 リーグ戦もそうなんですけど。自分、高校3年生のとき、国体…国体って県で5人選ばれて、その人たちで戦うんですけど。その5人っていうのは、今まで1番弱いって言われてたんですよね。それでも自分らががんばって、決勝トーナメントまで進めたんです。決勝トーナメント、ベスト16で強豪の県とやることになって。みんなちょっと「えっ」って思ったんですけど。でもそのチームに勝って。それでベスト8が5位になれて。それも長野県の史上初入賞…。

本田 それすごいね。

市川 だから1番弱いって言われてたチームで、その史上初の入賞獲れたっていうのが、1番の思い出。

本田 まあこの前かな、リーグ戦の。入れ替え戦のときかな。あれは相手が強かったんで、勝ったときはすごい印象に残ってますね。あれは嬉しかったですね。

市川 みんなで盛り上がった。

本田 みんな必死だったんで。あの場面で勝ったのは結構大きかったですね、自分の中では。僕元々調子悪くて。調子悪かったの相撲だったんで、自分の中ではあれは大きいですね。


――相撲部における、自分の立場や役割はなんだと思いますか

本田 僕は…なんですかね。飯つくるのもそうですけど。みんな結構固いとこあるんで、笑わせにいくっていうの?ボケが多いです。ボケ役。

市川 自分…かなりいじられる。

本田 (笑)。おい、谷本(将也=スポ2、鳥取城北)!気にしとんよ!

谷本 (隣で取材中の谷本選手が反応。)え?

市川 いじられキャラ(笑)。

谷本 谷本はいいやつって書いといて!

一同 (笑)。

本田 愛されキャラってことだよな。

市川 ありがとう。

本田 (笑)。

市川 (本田は)優しいです(笑)。


――相撲をしていてよかったことは

市川 相撲ってなんか、マイナースポーツ、珍しいって思われるじゃないですか。で、「なにやってんの」っていろんなおばあさんとか、地域の方に言われて「相撲やってます」って言うと、「おお、がんばってね」って応援されるんですよ。そういうのが1番、やっててよかったなって。

本田 うーん、よかったことかあ。今の、このチームに、出会えたこと!これや!って書いて(笑)。今までの出会いかな、やっぱ。ここのチームメイトにしても、高校のときのチームメイトにしても。そのクラブだけじゃなくて、他の大学だったり、他の高校だったりとかの、相撲やってる人たちとの出会い。

市川 相撲やってなかったらこんな出会いなかったなって。やめたいなって思うけど、やめたらここまでこれなかったなと。


――ワセダの相撲部のイメージとは

本田 イメージは、とりあえずみんな仲いい。

市川 アットホーム。

本田 人数もこうやって増えてきて、5人制の試合が多い中で、9人おるってやっぱみんなレギュラーに対する意識があがってきて。仲のいいなかにもひとりひとりが自覚持って、馴れ合いとかじゃなくて稽古できてるっていうのはすごいいいチームになってきてるのかなって。


――大学に入ってから、高校以前との違いを感じたことは

市川 自由かな。

本田 自由なあ。ほんとに自由。やるやつはやるし、やらないやつはやらんで。高校とか今までは、たぶんみんなそうやと思うけど、やらされてきたっていう人が多い、よなたぶん。それでもいいかなとは思うけど、稽古やらされるっていう感じが強くて。こっち(ワセダ)は土日しか監督こんし。平日は、自分でやるしかないというか。やらんかったらやらんかったで、さっき言ったみたいに、レギュラー争いから脱落するし。自分のやったぶんだけ強くなるっていうか。やっぱ自由が1番大きいかな。のびのびやれるっていう。


――お互いに対して思っていることは

本田 思っていることかあ。すごいんです。1人でなんでもできる。たとえば机壊したら直したりとか。ほんとに生活力が高くて。で、俺こんななので。料理はできるけど、他はあんまりできないというか。あんまりそういうのに気がまわらなくて。すごい、お世話になってます…。

市川 ありがとうございます。(本田は)すごい優しくて…。

本田 めっちゃいい部屋だなあ、俺ら(笑)。

市川 話をおもしろくしてくれるし、ちゃんと知識もあって。すごい頼りに。

本田 かなりいい人だ、俺。俺らいい部屋。どこよりもいい部屋(笑)。

市川 同じ学部だしね。お互い助け合って。俺がほとんど助けられてるけど。

本田 いやいやお互いもう。学部も一緒やし。

市川 授業もほとんど一緒だから。お互い協力してやってるかんじで。

本田 俺らすげえ仲いいよな。みんなはなんか、実は仲悪いんだ、みたいないじられるけど。めっちゃ仲いいから。


――社会科学部のお二人ですが、他学部(スポーツ科学部)のイメージは

市川 スポ科ってスポーツの子たち多いから話が合うというか、楽しそう。

本田 (人数が)多いしな。話もスポーツ系で通じそう。授業も体動かしたりとかできるけん、まあよさそうやけど。俺は俺で別に社学が楽しくないとは思わんし。スポ科で言ったら、スポーツやってきた人が多いけん楽しそう。


――オフの日の過ごし方は

市川 出かけたいときは出かけるし、特にないときはゴロゴロする。

本田 俺も結構寝るの好きで。暇というか、本当に疲れてる日は一日中寝ているし。暇なときは、友だちと遊ぶのもそうだけど、一人で原宿とか渋谷とかふらっと行ったり。あと吉祥寺とかも。近いんでここから。バス1本で行けます。スニーカー好きで吉祥寺は結構いいスニーカー屋があるんです。


――寮生活はいかがですか

本田 レスリング部とか、あとはア式が最近ちょっと入ってきたし。他の先輩もいっぱいで。体育会の横の繋がりもあって、楽しいです。

市川 いろんな部活の人や学部の人とかいるし。

本田 だいたいスポ科だけどな。

市川 相撲部だけじゃなくて、いろんな人と会えるから。一人暮らしにはない楽しさ。

本田 他の先輩も結構かわいがってくれるし。おもしろいよ。


――その中でも特に関わりのある部活は

本田 俺らレス部かな。すぐ横で、部屋が。

市川 準硬?

本田 そう準硬。あとハンドと。同級生にハンドがいて。そこらへんかなあ、俺らは。たぶん他にきいたら全然違うと思うけど。

市川 たぶんスポ科だとア式とか。

本田 剣道とか。

市川 あ、そうだ。いろんな部活あるから。いろんなとこで会ったら話すし。


――もし相撲をしていなかったら、やりたいスポーツなどは

本田 いっぱいあるね。俺バスケやりたい。中学校3年間バスケ部入ってて。相撲やってなかったらバスケ続けてたかな。んでもっとこう、シュッとしてた(笑)。

市川 特に。俺も、兄の影響でバスケ、ミニバスちょっとやってて。だから、バスケやってたかなあっていう。でもずっと相撲だから、そんな考えたことなかった。


――将来は何をしていたいですか

本田 最近ゼミとかでも経営とか経済の勉強をしてるんで、まあそっち系に進めたらいいなと思ってます。元々そういうのに興味あったりするんです。金融とかも結構興味あるかもしれません。

市川 高校のときから環境について学んできてるんですよ。ゼミも環境についてやってるから、環境について携われる仕事に就きたいかなって。環境の知識を活かせる仕事の1つとして教員も考えています。


――先日のスポフェスでは何をされてましたか

本田 俺ずっとちゃんこを作ってました。かなり盛況していて、15分ごとにお客さんがくるので忙しかったです。

――ちゃんこはお一人で?

本田 1人じゃないけど。味付けとかは誰にもできないから俺が全部しました。忙しかったなあ。夕方の4時ぐらいまでずっと閉じこもりっきりで。

市川 前日から準備もしてたしな。

本田 そうそう。みんな外に遊びに行ってて。体験みたいな。俺ああいうの行ってみたいので、来年は料理できる後輩が入ってほしい。

市川 俺はパレードとか行ってないんで、ずっとちゃんこの人の対応とかしてた。でもいろんな人と出会えるから、いい機会だったなと。

――スポフェスは大学生が多かったですか

本田 地域の人とか。

市川 あと子供連れの親子とかが。

本田 ファミリーねファミリー。ファミリー層と、お年寄りの方々。


――相撲以外の特技は

本田 特技なあ。市川はエンジンの音きいただけで車種当てられる。

市川 (笑)。たまに。あっ、どこどこの会社だなって。

本田 これきいて、「あっ何何!」で、ぱっと見たらはい正解!みたいなのある?

市川 たまに。

本田 じゃあ市川は利きエンジン。特技利きエンジン(笑)。

市川 「こいつやべえやつだ」って(笑)。


「団体で宇佐・宇和島へ」(本田)

前に出る相撲が持ち味の本田


――インカレにあたり、現時点での課題は

本田 個人的な内容で言うと、前に出れなくなって。ちょっとした怪我が重なって、手足がバラバラになって前に出れないってのがあって。今後、インカレに向けてやっぱそこが課題かな。僕は前に出る相撲なんで、それができないとどうしても勝てなくなってくると思うので。インカレに向けて前に出る力を取り戻して、レギュラーに入りたいなと。

市川 自分は早く腰治して、体力作って、ちゃんとレギュラーに入れる力を取り戻したい。だから、試合に通じるように早く。あと1か月しかないので。とりあえず監督に早く腰専念して治せって言われてるので。とりあえず腰治します。


――対戦するインカレでの注目校はありますか

本田 西の学校の大学も出てくるんで。きょねん優勝した朝日大学とか。東日本では負けた法政だとか。あとは上に大東文化とかいるかな。

市川 きょねん負けたところには必ず勝ちたい。

本田 まあそういうとこかな。2部では油断しなければ勝ち進めると思うんで。あとは1部上がってどうやって勝つかっていう話になってくると思います。

市川 東日本みたいに一部上がって、圧倒的な力でわー、じゃなくて。ちゃんと1部上がってからも。

本田 番数が。ベスト16で一番やって、たぶん一部に行くまでに四、五番とるんで。そっからまた三番狙ってくのは体力的にもきつい部分が…。一部上がってからまた四、五番とってきた中でさらにハードな相撲とるって考えたら、体力がいると思うんで。考えながら稽古して、朝日と法政あたりには勝ちたいですね。


――インカレに向けてどのような稽古をされてますか

本田 まあたぶんそれぞれ東日本だったりリーグ戦だったり、課題が見えてると思うんで。それを克服するような。みんなが一緒の課題ってわけじゃないから。稽古したあとに軽く東日本とかリーグ戦を反省して、筋トレだったり力つけたり、あとはすり足で下半身を。みんなそれぞれ個人の課題を克服するように向けた稽古してます。

市川 自分は稽古やってないんですけど。リーグ戦とか東日本とか、今までのを振り返って、通用しなかった部分を補えるような稽古をしたいなって。


――インカレでの目標は

本田 目標はとりあえず、選抜大会。宇佐・宇和島に行くことすかね。最低でも2部でベストに4入って、1部で勝って選抜大会に行くこと。ちょうど宇佐は地元なんで。地元に団体で帰りたいすね。個人は出れるんですよ。地元枠的な。そうですね…団体で帰りたいですね。

市川 それと一緒なんですけど。リーグ戦で1部上がれたんで、インカレでも1部上がれたらなって。1部上がれなくても選抜大会はもちろん出たい。大学によって出れる大会が全然違うので。

本田 選抜大会やっぱ、試合って結構経験値になるじゃないですか。まあ、試合がないよりはやっぱりあったほうがいいので。


――最終学年の4年生には相撲部が100周年になりますが、その時点での目標は

本田 やっぱ歴史に残るような、30何年ぶりに2部優勝、50何年ぶりに1部昇格、みたいなかんじでこれからどんどんこうやって自分たちで歴史作っていって、卒業したときにすごい世代だったなって言われるような。いつもは2、3人なのが俺らの代は奇跡的に5人入って。すごい歴史作ってくれた世代だ、みたいなかんじで言われるような、卒業の仕方したいですね。

市川 100周年には1部で戦っていけるような状態にして、さっき言ったみたいに、歴史に名を残せるようにしたいなって。せっかくワセダに入って相撲続けてられてるんで。「100周年で一部上がれるように」って入って来たから、その目標を果たしていきたいなと。


――最後にインカレの意気込みを、一言で

本田 勝ちます。応援してください。

市川 早く腰治します。

本田 (笑)。


――ありがとうございました!

(取材・編集 廣田妃蘭)

仲良くポーズを決める二人


◆市川拓弥(いちかわ・たくや)(※写真右)

1995年(平7)7月12日生まれ。171センチ、122キロ。長野・更級農高出身。車が大好きな市川選手。特に好きな車種はあるかをお聞きしたところ、「トヨタかな」とのこと。魅力的な優しい笑顔で、楽しそうに車について語る姿が印象的でした。

◆本田煕誉志(ほんだ・きよし)(※写真左)

1995年(平7)11月14日生まれ。175センチ、125キロ。大分・楊志館高出身。調理師免許を持つ本格派料理長の本田選手。取材陣に煮込み料理を振る舞ってくださいました。「おかわりありますよ」のお言葉に甘えてしまった記者。ごちそうさまです!