目標達成ならず…屈辱の終戦

相撲

 まさかの敗退だった。今季最終戦である全国学生選手権(インカレ)二日目。悲願のAクラス(1部)との入れ替え戦を目指し、団体戦に挑んだ早大は国士舘大と対戦。しかし先鋒の小山勇太(スポ1=神奈川・向の岡工)が何もできず敗戦。二陣・塚本直紀主将(スポ4=鳥取城北)も寄り倒しで土がつくなど2-3で国士舘大に惜敗。年間を通して目標にしてきた入れ替え戦に手が届かず、不完全燃焼でシーズンを終えた。

これが競技生活最後の立ち合いとなった塚本

 前日の個人戦で出場全選手が初戦敗退を喫した早大。雪辱を果たすべく、勝利だけを求めて臨んだ団体戦。先鋒の小山は前日の個人戦で緊張から思うような力が出せなかった。「(団体戦は)みんながいるので大丈夫」と挑んだ小山。しかし立ち合いで強く当たることができず、その直後には土俵から押し出されてしまった。チームの雰囲気占う先鋒の敗戦に、続く二陣・塚本も持ち前の相撲が発揮できない。まわしをつかむことなく、土俵際に追い込まれると、寄り倒しで黒星。悪い流れを断ち切ることができなかった。中堅戦には榊原祥孝(社2=千葉・専大松戸)が出場。いつも通りの押し相撲を展開し、前日の反省を活かし最後まで気持ちを切らさなかった。押し出しで危なげなく白星を手にする。

 榊原が勝利し、首の皮一枚つながった状態で土俵に上がったのは相撲同好会所属の上坂拓矢(政経4)だ。上坂は相撲部員の胸を借り、突っ張りの練習を繰り返してきた。その成果をインカレの舞台で活かし、勢いよく相手を押し込む。しかし上坂が「あと一押しできないのが自分の弱み」と振り返ったように、最後に体を入れ替えられてしまい万事休した。今季最後の取り組みと分かった状態で戦った大将・前川晋作(社1=早実・東京)。前日の鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように寄り切って勝利を収めた。それでも序盤の2人の黒星が響き初戦敗退。待っていたのは団体戦でも早々に姿を消す悔しい結末だった。

最後まで相手を押し切る榊原

 来季より主将を務める榊原は「誰一人として力を出せていないことに危機感を覚える試合だった」と二日間のインカレを振り返った。古豪復活に向け、榊原は部内の意識改革を強く誓った。指導者が常時いるわけでなく、部員も少ない環境下において、いかにモチベーションを高く保つかが最大の課題だろう。新入部員の獲得に加え、現有戦力の底上げを図り、春には新生・早大相撲部の姿を見ることに期待したい。

(記事、写真 佐藤裕樹)

結果

▽二回戦 対国士舘大 2勝3敗

先鋒 小山弐段●(押し出し)○村井参段

二陣 塚本参段●(寄り倒し)○丸山直人

中堅 榊原参段○(押し出し)●狩俣参段

副将 上坂(同好会)●(押し倒し)○土山大輔

大将 前川初段○(寄り切り)●吉川晃司

コメント

塚本直紀主将(スポ4=鳥取城北)

――きょうで引退ということですが、率直な感想を教えてください

疲れました(笑)。ことしは全然勝てなかったのは自分の責任です。自分の中では、きょう負けたことは悔しいですが、やり切ったというか、これ以上は無理ですね。

――やり切ったと思えることは何ですか

練習とかで満足したわけではないですが、やっていないわけではありません。ワセダで練習できることは目いっぱいやったと思います。

――きのう悔いは絶対残るというお話がありましたがいかがですか

悔しいですね。負ければ悔しいので。まさか一回戦で負けるとは思っていませんでした。

――これからOBということになりますが、まずは1年生にメッセージをお願いします

まだ甘いというか、らいねんは新入部員の人数次第では試合に出られるかも分かりません。メンバーになるのも厳しくなります。練習を見ていて甘いのですが、自分はなるべく言わないようにして、分かってもらえるようにやってきました。でもそれが1年間通用しなかったので、榊原(祥孝、社2=千葉・専大松戸)新主将に何とかしてほしいです。

――新主将に対してメッセージをお願いします

新主将は実力があるので、あとは自分以外をどうするかということを頑張ってほしいと思います。榊原の場合は、チームとして勝たせてあげられなかったので申し訳ないです。

――最後に応援してくれた方にメッセージがあればお願いします

ことし1年に関して言えば、監督(室伏渉監督、平7人卒=東京・明大中野)に選手で好き勝手やらせてもらったので感謝しています。両親には相撲をやらせてもらったことに感謝しています。高校も家を出て、大学も家を出ていてお金がかかっているので感謝しています。

 

藤本愛主務(法4=東京・雙葉)

――主務としてチームを支えていらっしゃいましたが、振り返っていかがですか

相撲部とは別にボランティア団体やゼミを掛け持ちしていて忙しくて、いろいろと迷惑をかけることが多かったです。それでも選手たちが助けてくれて、室伏監督や選手たちの温かい人柄に支えられていままでやってこれたなと本当に思います。

――相撲部に入部したきっかけは何ですか

きっかけはボランティア団体で相撲部のOBの方と知り合って、大相撲が好きだという話をしました。そしたらいま相撲部の人数が少なくて困っているというお話を伺い、当時の主務の方を紹介して頂き入部することになりました。

――引退となりますが、選手たちにメッセージをお願いします

みんな責任感があって頑張り屋さんです。チームワークは良いと思いますし、まだまだ課題が多いチームですが、これから何年間かで乗り越えてほしいです。伸びしろはあるので強くなると思います。

――主務の引継ぎが最後の仕事かと思いますが

探さなければと思っています(笑)。相撲部は温かい雰囲気ですし、選手たちはみんな優しいです。入ったら本当に相撲の良さが分かります。募集中なので、是非入ってほしいです。

 

榊原祥孝(社2=千葉・専大松戸)

――全国学生選手権(インカレ)を終えて感想をお願いします

全体的な感想で言えば、日頃の怠けが出たかなと思います。もっと力があると思うのですが、誰一人として出せてないことに危機感を覚える試合でした。一発勝負の中で、勝つか負けるかしかないので、負けることもあるのはしょうがないですが、もう少しできたことがあったと思える大会でした。

――勝つことができなかったことを部としてどう捉えていますか

ただの負けではない負け方でした。これで変わらなかったら一生変わらないと思います。特にきょうの一件で変わらなければ、いまの1年生がいる間には変わらないと思います。

――来季以降に向けてどういうお考えをお持ちですか

私自身は基礎からやり直すしかないです。汗をかく稽古をしなければ勝てないと思います。それをやらなかったら、きのうの個人戦みたいにまた負けると思います。稽古場でやったら結構な割合で勝てる相手に試合で負けてしまう自分を改善するためには、また基礎からやるしかないとは思います。部としてあと2人の1年生をどうしていくかということですが、自主性を重んじるのというのが部の伝統であります。しかし自主性を重んじるということはそれぞれに堅い意志はなくてはいけません。それを1年生がどう感じているかというのが問題です。変えるところといえば意識改革で、結局2人も基礎からやるしかないです。落ちるところまで落ちてしまったので、(部が)消えて無くなるか復活するかの二択です。

――常時指導者がいるわけではなく、部員が少ないという難しい状況で自主性を維持するために必要なことは何ですか

トップの人間がしっかりやるしかないと思います。自分は高校時代から耳にタコができるくらい言われてきました。自分が率先してトレーニングをしたり、勝ち残り練習では自分は絶対に土俵を譲らかったりということを意識したいです。

――試合後、小山勇太(スポ1=神奈川・向の岡工)選手に声を掛けていました

きょう自分は何も言うつもりはありませんでした。こんなところで言っても意味がないからです。稽古場で言って、会場では褒めるだけと決めています。それで自信をつけてもらえれば良いと考えているからです。しかしきょうは少し酷かったです。そういう褒める言葉を言うべきレベルではなかったので、きょうのことは忘れては駄目だよと伝えました。いちばんは先鋒に置かれたという自覚が足りなかったと思います。塚本先輩(直紀主将、スポ4=鳥取城北)の相撲に影を落とすくらいの相撲を取っていました。気迫が足りなかったです。小山を先鋒に置いたのは、上の朝日大戦を見据えたという戦術的理由もありますが、室伏監督はきょうの朝まで考えて考え抜いて小山を先鋒にしました。それは最近の稽古の姿を見て、小山が先鋒にする価値があると思っての起用です。にも関わらずあの相撲だと何を考えているのだということになってしまいます。単純に考えれば、5人で3つ星を取れば良いので先鋒の黒星は関係ありません。でも先鋒というのは、チームの雰囲気を決めてしまいます。小山が勝っていたら5-0で国士舘大に勝っていたと思います。

――あした以降長い期間主将を務めることになり大変なことが増えると思います

一応中学校、高校で主将は務めていました。まずは応援してもらえる相撲部にしたいなと思います。きのうも相撲うんぬんよりも覇気がないと言われました。改めて思ったことは、私たちは本当に元気がないということです。どんなに素晴らしいトレーニングをしても、元気がないチームは元気があるチームに勝てません。それは1部のチームを見ていれば分かります。そういう点からすれば、元気がないチームは応援をしてもらえませんので、頑張っているなと応援してもらえるようなチームにしたいです。そのあとから結果を求めていきたいです。自主性を重んじるということでおのおのに考えさせていますが、求める結果を何にしても良いというわけではありません。プロセスは違っても、ゴールは一緒でなければいけません。2年間主将を務めますが、最初の1年間は結果を求めません。しかし良いチームになったと言われたいです。自主性を重んじながらもチームワークを作りたいです。2年目はそのでき具合にもよりますが、4年後の創部100周年に1部で戦って勝てるチームにしたいです。個人としてもコンスタントに勝って、大学相撲界に早大という古豪を復活させられたらなと思います。主将が頑張るのは当たり前だと思います。主将は頑張って0点です。結果残して1点、2点付いてくるものです。それ以外に後輩たちに底上げしてもらう必要があります。

――きょうで引退する塚本主将にメッセージをお願いします

胴上げをしたかったですね。ある程度の結果を残して、喜んで送り出したかったです。先輩が笑ってすがすがしい気持ちで引退させてあげたかったのですが、それができなくて申し訳ないという気持ちです。2年間自らの体にムチを打って頑張っていた塚本先輩の姿は戒めになります。自分はやはり大きいのでやることなすこと全てがつらいのですが、体重が違うとはいえ、しっかりやり切るという先輩の姿は目をそらしてはいけない事実だと思います。そういう姿を見ていたので、最後は笑って送り出したかったのですが、苦笑いさせてしまうことになってしまいました。結果よりも気持ちの面で残してくれたものは非常に多いと思います。先輩の後輩で本当に良かったです。

 

前川晋作(社1=早実・東京)

――インカレを振り返っていかがでしたか

やはり全然駄目でしたし、正直不完全燃焼な感じがあります。団体戦は朝日大と勝負したかったですし、不完全燃焼です。

――1年間を振り返っていかがですか

1年間やってきて、実力がついてきたと言われています。多少自分でも分かるのですが、まだまだ上のレベルには届かないと思います。もっとさらに上を目指して、一から力をつけたいと思います。

――力をつけるために必要なことは何ですか

らいねんから後輩が入ってくるので、チームの一員として自覚を持って、チームに貢献できるようにしたいです。

――来季の目標をお願いします

らいねん以降は、今回達成できなかったAクラス(1部)との入れ替え戦に臨むことをまずは目標にします。

 

小山勇太(スポ1=神奈川・向の岡工)

――まずはインカレの個人戦を振り返っていかがですか

きのうは、きょう勝てば戦う予定だった朝日大の選手と団体戦を前に戦う機会でした。しかしそれをあまり活かせなかったです。立ち合いで当たっても相手が動かなかったですし、逆に吹っ飛ばされてしまったのを改善したいです。

――今朝になって先鋒として団体戦に臨むことが決まったそうですが、どんな気持ちでしたか

知っている相手だったので、勝ってやろうと思っていました。

――土俵に上がったときの気持ちはいかがでしたか

少し緊張してしまって、思うようにできなかったです。

――どういったところが上手くいかなかったですか

立ち合いで全然当たれなかったということと、すぐに引いてしまったことです。

――きょうのインカレが今季の集大成となりますが、入学して1年間はいかがでしたか

自分の相撲が取り切れないで終わってしまったというのがあります。

――来季以降に向けて目標を教えてください

この試合のない期間に体を鍛えて、もっと大きくしたいです。らいねんのインカレでは、1部の入れ替え戦に出たいです。

――4月には後輩が入部して、練習や試合で引っ張る立場になりますがいかがですか

4年生の先輩が絶対に弱音を言わなかったので、自分も見習いたいです。